○碇山
参考人 参考人として
意見を申し述べます。
まず第一の柱でございますが、
地方の
疲弊の原因は何かということです。
一つは、これまでの誤った
農林水産業政策であると考えます。
国際競争力に制約のある
産業部門で
輸入自由化を進めたということが大きな問題と考えます。
地域の
基幹産業においてその
方向性を誤ったということは大きな問題であると考えます。
二つ目は、
リゾート法の失敗の問題であります。
各地で同様の
開発計画が乱立したということに大きな問題があると考えます。
次に、大
規模店舗出店攻勢による
地元商店街の
衰退です。
シャッター通りと言われるような光景が
各地に現出しております。
四つ目に、二〇〇〇年代以降の
地方での
公共事業の無秩序な
大幅削減です。いわゆる無駄で有害な
公共事業という問題はありますけれ
ども、二〇〇〇年代以降は、大
規模な
公共事業が温存される中で、
地方における小
規模な
公共事業が大幅に削られました。財政の
地域間所得再
分配機能が低下したことが問題だと考えております。
五つ目に、他方での
東京一極集中です。
集積の利益を大
企業が独占する一方で、
集積の不利益が
中小企業や
住民に転嫁されてきたということが問題であります。ここには
開発規制の
緩和ということが大きくきいているというふうに考えております。
全体として条件不利な
地方の
経済に、
規制緩和、
自由化、
民活路線を適用してきたわけであります。そして、二〇〇〇年代以降、そうした
基本線を継承しながら、異質とも言える
段階に入ってきました。大
企業の多
国籍企業化の進展、それに伴う
国民経済保全への関心の著しい低下ということが、とりわけ、
地方での
公共事業の
削減というところに見られるように、大きくきいているということがあるというふうに考えております。
二つ目の柱として
お話ししたいのは、
地方創生政策は
地方が抱える問題を解決できるかということであります。
そもそも、
地方の
衰退、
疲弊を引き起こしてきた過去の
政策の総括と反省が十分になされていないという問題があると思います。そうしたことですから、正しい処方箋が書けないことになっているのではないかと危惧しております。
一つは、
地方創生は
地方再生とは異なるということを強調したいと思います。
地方再生というのは
衰退した
地域経済社会の復興、再建であるのに対して、
地方創生というのは
地方統治機構の再編ということでありまして、両者は似て非なるものであります。
これは、
石破担当大臣の御
発言にも見られます。明治以降連綿としてつくってきた国家の形を変えるものという御
発言や、
地方再生でなく
地方創生と言っているのは、中央と
地方、あるいは民間と政府の関係を全く違うものにしていきたいからだと。こういった御
発言にも見られるように、
地方創生というのは
地方再生とは異なるものだというふうに考えるべきだと思います。
二つ目の問題として、
地方創生の方法の問題であります。
第一
段階としては
地方版総合戦略を策定するわけでありまして、第二
段階として
KPIに対する
事後査定が行われます。
KPIは、形式上は
地方自治体の自主的な
数値目標でありますが、達成できたか否かを自治体の自己責任とするわけでありますから、端的に言えば、やる気のない自治体、頑張らない自治体は
衰退、消滅してもやむを得ないという構造になっています。これは大きな問題であると考えます。
三つ目に、国家の役割の回避という問題があります。
人口減少問題、総
人口対策は、本来、国家の役割であります。総
人口減少の原因は何かといえば、非正規雇用の拡大や、低賃金、長時間
労働、超過密
労働といった問題がありますし、居住環境の悪化、子育ての困難、それから人々の社会からの孤立化、将来展望のなさといったことが総
人口減少の原因であると考えます。
特に問題なのは、合計特殊
出生率が最低である
東京に対する対策がないことであると思います。
東京一極集中の是正といいながら、年間十万人の
流入を想定していることに、それはあらわれていると思います。
地方人口の増加策というのが、
地方間競争、
地方自治体への責任と負担の転嫁となっていると考えます。
移住策としては、連携中枢都市圏での雇用づくりが中心
政策となっており、これは若者のニーズと不適合になっているというふうに考えます。
現在進んでいる
Uターン、
Iターンの実態というのは、いわゆる田舎の田舎への田園回帰が多いということです。この田舎の田舎というのは、村役場だとか学校だとかそういう村の中心部への
移住ではなくて、村の中でもさらに不便な田舎のそのまた田舎といったところへの
移住がふえているというところに注目しなければいけないと思います。そして、
移住目的としては、生きがいや働きがい、子育て、そういったことが中心となっておりますので、求められる条件というのは、その
人たちが頑張れる
地域のステージをつくること、それから集落での助け合いということが大事になってくると思います。
大きな柱の二番目の
四つ目ですけれ
ども、小さな拠点の問題について申し述べたいと思います。
小さな拠点というのは現在の
地方の
状況を考えると必要な
政策であるかというふうに考えますけれ
ども、拠点が集約化されて、どんどんと
住民から遠いものになっていくことが懸念されます。そうしたことがないような
政策が望まれます。また、拠点
地域と周辺
地域の対等、平等の確認、相互の自治の保障、圏域全体の
住民生活向上を基本に据えることが不可欠であるというふうに考えます。
さて、三つ目の大きな柱ですけれ
ども、では目指すべき方向はどこにあるかということです。
これは先ほ
ども申しましたが、大きな流れとして田園回帰が始まっているというふうに認識しております。そして、先ほ
ども申しました田舎の田舎への人の流れができてきているわけです。
この背景としては、やはり大震災それから原発事故を契機とした安全神話、成長神話の崩壊ということがありますし、それから大都市圏での構造的格差社会の矛盾と生きづらさといったことがあるというふうに考えます。
そして、田園回帰を求める
人たちは、働きがいと生きがいを求めている、これが
一つです。それから
二つ目には、安心して子育てできる
地域を求めているということです。そして三番目に、安心できる
地域共同社会を求めているということです。特に、集落での人々のつながりといったことを求めているというのが現実であるというふうに思います。
そうしたときにどういう
政策が求められるかというと、
一つは重層的自治の保障であります。
自治の中に自治を築くというふうに言っておりますが、集落、コミュニティーを基礎にして、普通でいいますとその上に市町村があるわけですけれ
ども、その集落、コミュニティーと市町村の間に、合併前の旧町村単位などの自治の単位で自治の機構を置く、つくるということであります。そうすることによって、
地元の
人たちが実質的な自治に参加することができるということであります。
そしてもう
一つは、これが決定的に大事だと思うわけですけれ
ども、集落、コミュニティーの活性化こそが全ての基本であるということです。集落、コミュニティーというのは、その
地域を支える最も大事な基礎単位でありまして、そこでの地縁的共同体の役割ということを重視する必要があります。そして、そこでの相互扶助の意義を認めていく、そしてそれを
支援するということが
政策としては求められているというふうに考える次第です。
今、
衰退しつつある
地方を
支援するということは、非常に大きな意義があると考えています。
一つには、やはり日本は非常に災害が多い国でありまして、とりわけ地震のリスクというのが大きいわけです。そうしたときに、都市部の
人たちを受け入れる
地方が
衰退している、
疲弊しているという
状況では、都市部で被災した
人たちを受け入れる余地がないということになってしまう。それでは大変困るわけです。それが
一つです。
それからもう
一つは、私が考えるのは食料問題です。
というのは、発展途上国や新興国で、今後いよいよ
経済成長が進み、そして
人口もふえる、また世界で民主化が進んでいくということになりますと、当該国での食料の消費というものが非常に大きくなっていきますし、また付加価値の高いものが求められるということになってきます。日本は食料の四〇%しか自給できないわけでありまして、そうしたときに、そうした諸外国での食料の
必要性というものが高まってきますと、日本の食料安全保障というのが非常に危ういものになっていくというふうに考えます。
これは、
経済学でも、絶対地代の理論の中で、最劣等地であっても耕作しなければいけないという話がありますけれ
ども、
地方で今放棄されつつある、あるいは放棄された農地を復活させて、それをまた維持していくということが、今後あり得べき食料問題に対応する非常に大きな担保になるというふうに考えております。
全体として、
地方に対して財政的な移転を行って
地方を支えていくということの
重要性を強調しまして、私の
意見とさせていただきます。ありがとうございました。(
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