○黒田
参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び
金融の調節に関する
報告書を国会に提出しております。本日、我が国経済の動向と
日本銀行の
金融政策運営について詳しく御
説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。
最初に、我が国の経済
金融情勢について御
説明申し上げます。
我が国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出、
生産面に鈍さが見られるものの、企業部門、家計部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで、基調としては緩やかな回復を続けています。先行きについては、当面、輸出、
生産面に鈍さが残ると見られますが、
国内需要が
増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに
増加すると見られます。このため、我が国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられます。
物価面を見ると、生鮮食品を除く消費者物価の前年比はゼロ%程度となっています。もっとも、生鮮食品、エネルギーを除く消費者物価の前年比は、二十八カ月連続でプラスを続け、最近では一%を上回る水準で推移するなど、物価の基調は着実に改善しています。先行き、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面ゼロ%程度で推移すると見られますが、需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の上昇を背景に物価の基調は着実に高まり、物価安定の
目標である二%に向けて上昇率を高めていくと考えています。原油価格が
現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提に立てば、二%程度に達する時期は、二〇一七年度前半ころになると予想しています。
このように、メーンシナリオとしては、我が国経済は基調として緩やかに拡大し、消費者物価の前年比は二%に向けて上昇率を高めていくと考えていますが、年初来、原油価格の一段の下落に加え、中国を初めとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感などから、
金融市場は
世界的に不安定な動きとなっています。このため、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しています。
日本銀行は、こうしたリスクの顕在化を未然に防ぎ、二%の物価安定の
目標に向けたモメンタムを維持するため、一月の
金融政策決定会合においてマイナス金利つき量的・質的
金融緩和を導入しました。マイナス金利つき量的・質的
金融緩和は、
日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買い入れを継続することとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていくことを主たる波及経路としています。国債のイールドカーブは、マイナス金利つき量的・質的
金融緩和の導入以降、大幅に低下しており、これを受けて貸し出しの基準となる金利や住宅ローン金利も低下するなど、金利面では政策効果は既にあらわれています。今後、その効果は、実体経済や物価面にも着実に波及していくものと考えています。
日本銀行は、二%の物価安定の
目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点までマイナス金利つき量的・質的
金融緩和を継続します。今後とも、経済、物価のリスク要因を点検し、物価安定の
目標の実現のために必要な場合には、量、質、金利の三つの次元で、追加的な
金融緩和措置を講じます。
国際
金融市場では、なお
世界的に不安定な動きが続いています。
日本銀行としては、こうした動きが我が国の経済、物価にどのような影響を与えるかについて、しっかりと注視していく方針です。
ありがとうございました。