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2016-02-29 第190回国会 衆議院 財務金融委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十八年二月二十九日(月曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 宮下 一郎君    理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君    理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君    理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君    理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君       青山 周平君    井林 辰憲君       岩田 和親君    越智 隆雄君       大岡 敏孝君    大串 正樹君       大野敬太郎君    大見  正君       勝俣 孝明君    神山 佐市君       工藤 彰三君    國場幸之助君       新谷 正義君    助田 重義君       鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君       高橋ひなこ君    武井 俊輔君       中山 展宏君    長尾  敬君       根本 幸典君    野中  厚君       福田 達夫君    宮川 典子君       務台 俊介君    宗清 皇一君       山田 賢司君    落合 貴之君       玄葉光一郎君    小宮山泰子君       階   猛君    鈴木 克昌君       前原 誠司君    宮崎 岳志君       鷲尾英一郎君    上田  勇君       斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君       宮本  徹君    丸山 穂高君       小泉 龍司君     …………………………………    財務大臣政務官      大岡 敏孝君    参考人    (SMBC日興証券株式会社金融経済調査部部長)    (金融財政アナリスト)  末澤 豪謙君    参考人    (三菱UFJリサーチコンサルティング経済社会政策部主任研究員)    片岡 剛士君    参考人    (静岡大学名誉教授)   安藤  実君    参考人    (慶應義塾大学経済学部教授)           竹森 俊平君    参考人    (中央大学法科大学院教授)            森信 茂樹君    参考人    (全国商工団体連合会副会長)           太田 義郎君    財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君     ————————————— 委員の異動 二月二十九日  辞任         補欠選任   井上 貴博君     高橋ひなこ君   越智 隆雄君     青山 周平君   國場幸之助君     神山 佐市君   田野瀬太道君     大串 正樹君   竹本 直一君     武井 俊輔君   鈴木 克昌君     小宮山泰子君   宮崎 岳志君     階   猛君 同日  辞任         補欠選任   青山 周平君     岩田 和親君   大串 正樹君     長尾  敬君   神山 佐市君     國場幸之助君   高橋ひなこ君     宮川 典子君   武井 俊輔君     竹本 直一君   小宮山泰子君     鈴木 克昌君   階   猛君     宮崎 岳志君 同日  辞任         補欠選任   岩田 和親君     越智 隆雄君   長尾  敬君     大見  正君   宮川 典子君     工藤 彰三君 同日  辞任         補欠選任   大見  正君     新谷 正義君   工藤 彰三君     瀬戸 隆一君 同日  辞任         補欠選任   新谷 正義君     田野瀬太道君   瀬戸 隆一君     井上 貴博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源確保を図るための公債発行特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第一六号)      ————◇—————
  2. 宮下一郎

    宮下委員長 これより会議を開きます。  内閣提出東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源確保を図るための公債発行特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、SMBC日興証券株式会社金融経済調査部部長金融財政アナリスト澤豪謙君、三菱UFJリサーチコンサルティング経済社会政策部主任研究員片岡剛士君、静岡大学名誉教授安藤実君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人各位からそれぞれ二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。  それでは、まず末澤参考人にお願いいたします。
  3. 末澤豪謙

    末澤参考人 おはようございます。SMBC日興証券末澤でございます。よろしくお願いします。  私からは、足元経済金融市場動向特例公債法に関する私の考え方を申し上げたいと思います。  それでは、こちらの「経済金融市場動向特例公債法」と題されました資料をごらんいただきたいと思います。  一ページをおあけいただきたいと思います。二〇一六年、ことしの世界経済でございますけれども、これは、リーマン・ショック、二〇〇八年九月でございますが、その後を底とした緩やかな景気回復局面が続くと見込まれます。ただし、二〇一五年以前と比べますと、相当リスク要因は増加しているというふうに認識しております。具体的には、資金のシフト・偏在リスク新興国リスク中国リスク地政学的リスク気候変動リスク政治リスクなどなどが挙げられます。  こうした中、経済動向先行性のある金融市場では、変動率が一段と拡大する可能性が見込まれます。実際、年明け後、相当金融市場が荒れているのは御案内のとおりでございますし、先週末に開催されましたG20でもこのあたりが言及されておるわけでございます。  次の三ページ目でございます。では、ことしどういった経済成長が見込まれるかということで、これは最も権威があるとされますIMF、国際通貨基金が一月十九日に発表した見通しでございますけれども、二〇一六年の世界経済はプラス三・四%成長、これは三カ月前、十月の見通しに比べまして〇・二ポイント下方修正されています。  ここでちょっと色をつけておりまして、下方修正された国を青色、上方修正された国をピンクとしておりますけれども、大半の国が下方修正され、特に資源国が相当下向きに下方修正されているのはおわかりかと思います。これは、中国景気減速資源安影響が大きい、また、米国利上げが新興国等に悪影響をもたらしているということでございます。  一方、四ページでございますけれども、これは二〇一三年以降の各国通貨の対円レート推移ということでございまして、わかりやすくするために、上に行くと円安、下に行くと円高ということでございます。  二〇一四年ごろまでは、全ての国の通貨について日本円は大体売られておった、円安だったわけですけれども、二〇一四年に米国量的緩和の縮小がスタートし、その後それが終了、昨年末には利上げに転じる中、むしろ最近は円高が進んでいる。特にこの年明け以降は相当急激な円高が進行しているということはこのグラフからもおわかりかと思います。  続きまして五ページでございます。済みません、ちょっとこのあたりは早送りでやらせていただきます。  各国株価推移でございますけれども、これをごらんいただきますと、二〇一三年一月を一〇〇として、その後の展開を御説明させていただくと、実は昨年、二〇一五年の前半までは主要国全ての株が大体上がっていたんですね、資源国は別でございますけれども。ただ、アメリカ利上げ観測が高まって以降下落に転じ、特に中国株下落が、昨年の八月、ことしの一月に世界の株式に相当大きな影響を与えているということがおわかりかと思います。ただ、この中のオレンジ色、これは日本株でございまして、パフォーマンスはまだいいんですね。  ただ、六ページをごらんいただきますと、日本株は誰が買っているか。左上グラフでございますけれども、バブル崩壊後、最も買っているのは海外投資家、今やもう三分の一は海外投資家が持っています。特に、右上でございますけれども、二〇一三年は十五兆円の買い越し、これが最近急激に減っておりまして、むしろ年明け以降は売り越しに転じているということでございますから、やはり海外経済金融市場動向日本にも無縁ではないということでございます。  八ページ、ここからは、リスク要因につきましてちょっと具体的に申し上げます。  この八ページのグラフ日米欧長期金利推移でございますけれども、全般的にごらんいただくと、欧州財政危機に揺れた二〇一一年、一二年は、イタリア、スペイン、フランスといった国の金利は上がりましたが、足元は相当急低下しているということがわかります。これは、特にECB、また日本追加緩和等影響が大きい。  ただ、九ページでございますけれども、昨年来、日米欧金融政策方向性相当差がある、むしろ方向が逆向きの動きも出ているということであります。  日本ユーロ圏追加緩和マイナス金利政策が導入される一方、米国では昨年十二月に、九年半ぶり利上げ転換という面では十一年半ぶり利上げに転じております。また英国も、これは動いてはおりませんが、方向としては利上げ方向にあるということで、ことしは日、ユーロ圏米英金融政策方向性が異なり、これが、やはり政策協調が困難となる可能性を一つ示唆しているということかと思います。  十ページでございますが、原油価格は、この右上のグラフをごらんいただきますと、青いグラフでございますが、二〇一四年の秋以降、相当急激な下落が続いております。この背景には、左に書いておりますように、シェール革命影響、また中国需要減退米国原油輸出再開、イランに対する経済制裁解除、OPECの価格調整能力の欠如、米利上げドル高、またエルニーニョ現象による暖冬等が指摘されております。  最も影響の大きいのが、十一ページでございますけれども、やはりアメリカシェール革命影響。これは左上グラフをごらんいただきたいんですが、青色折れ線、これがアメリカ原油輸入をあらわしておりまして、二〇〇六年をピークに今や三分の二の水準減少。一方、赤色の折れ線、これは生産でございますが、こちらは逆に倍になっているわけですね。やはりこのシェール革命影響が二〇〇六年以降、相当じわじわときいて、それが特に二〇一四年秋以降、顕在化している。そういう意味では、これは相当構造的な問題であるということが言えようかと思います。  十二ページでございます。中国の問題ですね。  中国は、先般、昨年のGDP実質成長率を六・九%と発表しました。これは一九九〇年以来の低水準ではありますが、GDP第二位の国としては極めて高成長と言えます。  この折れ線のとおり本当に動いているのであれば、実は心配することはないと思いますが、ただ、金融市場等が気にしていますのは、右上でございますが、中国外貨準備が二〇一四年六月をピークに、四兆ドルから三兆二千億ドル、一挙に一年半で八千億ドル、日本円にしますとこれはもう百兆円近い減少を示しているということなんですね。この間、中国経常収支黒字ですから、これはややおかしな現象でございます。  実は、似たようなグラフが下にございまして、マカオのカジノ収入、これはちょうど二〇一四年の年央がピークでございます。また一方、これは八項規定精神違反件数と書いておりますが、いわゆる中国の反腐敗運動ですね。この影響が二〇一四年に相当進行しているということでございますと、やはり中国の問題も相当構造的と考えるべきであります。ただ、構造改革を進めるということは極めて重要ではありますけれども、そういう意味では中国の問題も一朝一夕にはなかなか解決しないということかと思います。  十三ページでございます。これは、WEFという、ダボス会議で有名な会議資料をお出ししておりますけれども、このダボス会議は、毎年一月にグローバルリスクレポートということで、ことしのリスクは何だということを発表しております。  昨年は、左側のグラフでございまして、オレンジ色が多いですね。オレンジ色というのは地政学的リスク、戦争、紛争リスクでございます。一方、右側です。これはことしなんですが、ことしは緑色が多くなっています。これは環境リスクですね。ことしをとってみると、世界経営者、エコノミストの多くが気候変動リスクを相当認識しているということがこのグラフからもわかります。  十四ページ、リスク最後でございますけれども、これはアメリカ大統領選です。きょうは詳しくは御説明しませんが、やはり大混戦であり、事前予想とは相当異なる展開にあるということで、これから、今週、スーパーチューズデーを控えております。また、七月の民主党、共和党の全国大会でどういった顔ぶれが最終的に選出されるのか、このあたり市場としては相当気にしているということを御指摘したいと思います。  十五ページ、十六ページに行っていただきます。このあたりはハイスピードで申しわけございません。  十六ページでございますが、日本国債市場財政問題でございまして、日本長期金利、ここでは九八年以降をお出ししておりまして、基本的には一%台の低位安定が続いておったんですが、二〇一三年四月の異次元緩和、二〇一四年十月の追加緩和以降、一段と金利が低下しておりまして、特に年明けマイナス金利政策導入後は、これはちょうど先週末でございますけれども、長期金利マイナス〇・〇七五%、過去最低の金利をつけております。  そういう意味では、このあたりを見る限り、余り財政の問題は支障がないように思われるんですが、ただ、十七ページをごらんいただきますと、これは各国財政収支政府債務残高推移でございますが、フローベースで見ても先進国日本は最悪の水準でございますし、ストックベース債務残高で見ると、これはグロスの残高ではございますが、むしろギリシャをしのぐ多さであるということで、日本財政問題は解決されたわけではない。私は、これから五年後、十年後を展望しますと、日本財政問題はより深刻化するのではないかと考えております。  十八ページでございますが、私は、昨年二〇一五年を実は少子高齢化本格化元年と申し上げております。これはどういう意味かといいますと、団塊世代方々が昨年末に皆さん六十五歳以上になられました。一方で、団塊ジュニア世代方々、この方々も昨年末でちょうど四十歳以上に上がられたわけです。そういう意味では、今後、これから五年後、十年後を展望しますと、一段と少子高齢化問題が深刻化し得るということを御指摘したいと思います。  次のページ、十九ページでございますが、そうすると、いろいろな問題が多分顕在化してくる。日本はよく、社会保障につきましては低負担・中福祉ということが言われております。十九ページのグラフは、右横軸国民負担率縦軸政府社会保障支出をとっておりますが、高負担・高福祉代表国はデンマーク、低負担・低福祉代表国は韓国でございます。実は、この線を結んでいただいて、この二国を結んだ線の一番上にあるのが日本になるんですね。つまり、日本負担に比べて受益が現状では最も多いということになっています。これはやはり過去の人口ボーナスの反映でございますが、今後は、日本人口動態を考えるとむしろ人口オーナスなんですね。今度は逆のことが起こり得る。  これは年金の問題でございますが、二十ページの右下をごらんいただきますと、もう一つ高齢化に伴った大きな問題が発生すると見込まれるのが、医療費介護給付費の増大ですね。現時点で、六十四歳以下と七十五歳以上の国民医療費は約五倍の差があります。ただ、最も大きな差があるのが介護給付費でございまして、こちらは、六十五歳以上七十四歳以下と七十五歳以上、実はそんなに世代の差はないんですが、ここで九倍の格差がある。これはなぜかと申し上げますと、この真ん中でございますが、平均寿命健康寿命格差は、男性で大体九歳、女性だと大体十一歳ある。ですから、七十歳代になるとむしろこの高齢化の問題がより深刻化するということでございます。  最後に、二十一ページから御説明させていただきます。今回の特例公債法案に関する私の考え方でございます。  私はこの債券市場にもう約三十年おりますけれども、二〇一二年には、実は特例公債法案成立が相当おくれました。これは、やはりねじれ国会にあったことが背景なんですが、その結果、建設国債、借換国債復興国債財投国債発行がほぼ終了し、残りは特例公債のみとなったんですね。その結果、間もなく国債発行停止されるという寸前に、十一月、追い込まれました。また、その間、特別会計への一般会計繰り入れの一部停止地方交付税配分抑制補助金の一部停止等も実施されました。  その後、最終的には特例公債法案成立したわけでございますけれども、仮に国債発行停止されると、金利は一旦急低下した可能性が見込まれます。ただし、その後は今度増発しませんといけませんので、金利が急上昇し、これによる変動率の拡大が、今の金融機関さん等のリスク管理上は、一段の金利上昇をもたらす可能性があった。また、国債格下げリスクも増大すると見込まれまして、これは実際、その後、日本国債格付は一段と低下したということでございます。  二十三ページでございますが、同じような状況がより深刻化して具現したのが米国でございます。  米国は、二〇一〇年に中間選挙がございまして、ここでティーパーティーが台頭するわけでございますが、その後、与野党対立深刻化しまして、二〇一三年初頭には、いわゆるフィスカルクリフの問題がございます。また、二〇一三年九月には、暫定予算が通らずに、十八年ぶりにガバメントシャットダウン、政府機関が閉鎖され、それこそ自由の女神に上れないと小さい少女が泣いている映像がテレビに映ったわけでございます。  また、これは最近の状況でございますが、昨年は短期の暫定予算が二回編成され、暫定予算だけで三回、本予算は四回ということになっています。  また、債務上限デットシーリングの問題、これは今回の日本特例公債法にやや近い問題でございますが、米国では九十五回債務上限が変更されているんですが、二〇一一年八月には、米国債格付が、デットシーリングの引き上げおくれによって引き下げられております。  ただ、最近は、与野党対立債務上限の引き上げすらできない。なぜかといいますと、債務上限を引き上げようとすると、新しい上限を決めなきゃいけないんですね。その新しい上限を決められないということで、最近は一時的な債務上限の撤廃が恒常化しているということでございます。実際は、昨年も、約八カ月間新たな資金調達ができない状況になっています。  ただ、昨年十一月に超党派予算法というのが成立しまして、今回は、来年の秋ごろまで約二年間、米国資金繰りが安泰になるような法律が通っておりまして、そういう意味では、米国も、与野党対立深刻化する中、今度は財政問題について少し棚上げしようという動きが最近は出ております。  最後に、二十四ページでございます。  今回の法案につきまして、五年間、特例公債発行を可能とすることでございまして、これはむしろ単年度立法による財政規律を維持すべきだという考え方もあろうかと思います。  ただ、今回、経済財政再生計画で、二〇二〇年度までのPB黒字化、その後の債務残高GDP比の安定的な引き下げを掲げておるわけですね。かつて、一九七五年十二月三日に、当時の大平大蔵大臣衆議院大蔵委員会で、こちらの委員会でございますが、答弁されている。ちなみに、大平元首相は、私の郷里、四国の香川県の大先輩でございますが、大平大臣は単年度にすべきだとおっしゃったんです。そのときは当然、赤字水準も低い、近い将来に特例公債からの脱却が見通せるという状況でございましたが、今回はそういう状況ではないということでございます。  また、国会審査につきましては、具体的な特例公債発行総枠は各年度一般会計予算総則に明記し、国会審査を経るという手続がございます。  仮に、二〇一二年のように特例公債法案成立がおくれますと、国債発行停止し、また、一般会計から特別会計への繰り入れ地方交付税交付金配分補助金の支給の停止等が発生する。こういうことになりますと、日本経済国民生活にも多大な影響が及びます。  また、国債発行停止、増発や公的年金資産売却等により、金融市場が混乱する可能性もございます。仮に一段と国庫が枯渇すれば、それこそ、物品購入費や電気、水道代派遣社員費用支払い遅延国会議員皆さんの歳費や公務員の給料の支払い遅延可能性も想定され、二〇一三年に米国で起こったような、日本版ミニガバメントシャットダウンの様相を呈することも否定できないということでございます。  そういう意味では、経済財政再生計画で掲げられた、国と地方PB赤字の二〇二〇年度黒字化を着実に達成し、また、その後の債務残高の対GDP比の安定的な引き下げを実施する、この計画を具体的にきちっと遂行していくこと、これが重要だと考えておりますし、より長期的には、財政健全化には、成長戦略とともに歳出歳入改革が極めて重要であるというふうに私は認識しております。  以上でございます。(拍手)
  4. 宮下一郎

    宮下委員長 ありがとうございました。  次に、片岡参考人にお願いいたします。
  5. 片岡剛士

    片岡参考人 皆さん、こんにちは。三菱UFJリサーチコンサルティング主任研究員を務めております片岡と申します。  本日は、お招きをいただきまして、まことにありがとうございます。二十分程度、私の意見を述べさせていただければと思います。  お手元の方に、「日本経済動向財政健全化」、こういう題名の資料がありますけれども、そちらをごらんいただければと思います。  一枚おめくりいただければと思いますが、最初に、アベノミクス以降の日本経済の概観ということで何点か挙げさせていただいております。  日本経済は、二〇一三年以降、株高円安を起点としまして民間消費公共投資回復が進んでいたといったところでございますけれども、二〇一四年四月以降、消費税増税を機に消費が大きく落ち込んだまま回復せず、内需の弱さが露呈した状態でございます。輸出及び設備投資の増加も、現状、マイルドなものにとどまっている、こういったような状況です。  こうした中で、二〇一四年の半ば以降、先ほどお話もありましたけれども、ギリシャ危機ですとか新興国景気の停滞、それからアメリカのFRBの利上げといったようなリスク要因顕在化深刻化をしまして、現状外需頼み景気回復はなかなか望めない、こういった状況です。  二〇一四年の末に、政府は、消費税増税を延期する、こういう判断をされたわけですけれども、このときのマクロ経済シナリオ自体は、二〇一六年の半ばまでに二%のインフレ目標を達成する、それから二〇一七年四月に消費税増税、そして増税影響が一服した段階で出口政策を実行する、こういうような形で財政金融政策、ポリシーミックスをしていこうというものであったというふうに考えられるわけですけれども、現状はなかなか物価が二%の目標に届かない、こういう状況でありまして、政策枠組みの変更が必須の状況であるということです。  日本銀行自体は、二%のインフレ目標達成時期を二〇一七年度の前半ごろとしております。一七年度の前半ということですので、二〇一七年の四月以降ということですよね。こうなりますと、ちょうど消費増税のタイミングとバッティングしてしまうわけですね。これは、過去、二〇一四年の四月に増税をしたときと同じことになりますので、今回はこういった愚を繰り返すべきではない、こういうふうに考えています。  以上からは、政府、日銀の経済政策プランを見直すべき段階である、こういうふうに言えると思います。  次をおめくりいただければと思いますが、足元経済状況というところでございまして、こちらの方は、一番左側が実質GDP成長率、右側の方に消費、住宅投資、設備投資、それから輸入までのGDP成長率に与える寄与度というものを棒グラフで描いております。  青い棒グラフが二〇一三年度でございますが、これを見ていただくとおわかりのとおり、二〇一三年度は二・〇%であって、そして、民間消費の寄与度というのが一・四%、消費主導で成長率が高まった、こういったところでございます。  ただ、二〇一四年度、実質GDP成長率はマイナスになりまして、これは、消費税増税等々によって消費と住宅投資が大きく落ち込んだ、こういう流れになっております。  二〇一五年度現状まだ二〇一六年の一—三月期のデータが出ておりませんので、三四半期の平均値をここでは挙げておりますけれども、現状ではマイナス、こういう状況であります。この中で、依然として消費が弱いというのが、先ほどお話ししたとおりの展開になっております。  それから、四ページ目でございますが、GDPの中で落ち込みが非常に深刻であるというところでございますけれども、四つ図表がございますが、まず一番左上をごらんいただければと思います。  現状足元、二〇一五年度ですけれども、実質GDP水準はどうなのかといったところでございますが、二〇一五年の十—十二月期が五百二十七・四兆円、こういう状況でございまして、二〇一五年に入って、GDPはほぼ横ばいで、上下しながら推移している、景気は足踏みといったところがこうしたところからもわかるというところでございます。  それから、左下の図をごらんいただければと思いますが、消費が落ち込んでいるわけですけれども、今回、二〇一五年の十—十二月期のデータからは、過去十年間の消費のトレンドから有意に下振れた動きになっているというところが確認できます。  こちらの方は、青い線で実際の家計最終消費支出を並べておりますけれども、それに対して黒い点線といいますのが、二〇〇二年の一—三月期から二〇一二年の十—十二月期までのデータから計算しました家計消費のトレンドです。  前期比の伸び率は〇・二%ぐらいなんですが、一三年に入りまして、このトレンドから青い線が有意に上振れてくるような感じで、要は、前期比〇・二%の伸びからだんだんだんだん家計消費が高まりつつある、こういう状況であったわけですけれども、そこから、一四年の駆け込み需要で、赤い点線、これは統計的にトレンドに入るというところを超えたことを意味しているんですが、そこを越えて上振れるような状態になったんですね。  ただ、消費増税以降、大きく家計消費は落ち込みまして、今度は赤い点線の下限を超えるような形で二〇一五年の十—十二月期が入ってしまった、こういったところがわかります。  では、この家計消費の落ち込みはどういった原因によるのかというところですけれども、右下の図をごらんいただければと思いますが、これは、GDP統計ベースで、耐久財、それから半耐久財、非耐久財、サービス別に家計消費を見たものです。  これを足した合計の伸びというのは当然ながら落ち込んでいるんですけれども、これを見ていただきますと、青い棒グラフ、耐久財の落ち込みというのが深刻であることによって消費が落ち込んでいる、こういったところがわかるというところです。  次の五ページ目でございますけれども、増税と原油安によって後ずれしたインフレ目標達成時期、こういったところでございます。赤い線は、これは消費動向調査から計算できる予想インフレ率なんですが、二〇一三年に入りまして予想インフレ率はぐっと上がっていくといったところが観測されたわけですけれども、二〇一四年の四月以降、がくんと予想インフレ率が落ちまして、それから、原油安等も相まって、今、足元では急速に落ちてきている、こういった状況であります。  それによって物価も、二〇一四年の前半までは、点線で描いております二〇一五年四月に二%インフレを達成する経路を若干超えるような形で推移していたわけですけれども、物価上昇率は落ち込んできている、こういった話になっております。  それから、次の六ページ目でございますけれども、金融政策財政政策をどう考えるかというところでございますが、私自身は、金融政策は非常によくやっているというふうに思います。ただ、財政的にやや緊縮していますので、それによって金融政策への負荷が非常に高まっている、それによって例えば日本銀行はマイナス金利政策のようなことを導入している、こういう話になっていると思います。  次をおめくりいただければと思いますが、では、財政健全化をどう考えればいいのかというところでございますけれども、七ページ目をごらんいただければと思います。  財政再建の定義といいますのは、債務残高の名目GDP比が安定的に横ばいから減少に転ずることです。これを達成するためには、二つの必要条件がございます。  一つは、プライマリーバランスの名目GDP比を、赤字を減らしていって黒字化していくこと、それから、ドーマー条件というふうに言われますが、名目GDP成長率が実際の国債の利回りよりも高くなる状態をつくり続ける、この二つであります。この二つを、どちらかないしは両方満たしていけば、長期債務残高の名目GDP比は横ばいから低下にいく、こういう話になります。  現状日本経済はどうなのかというところなんですが、八ページ目をごらんいただければと思います。  こうしたことを申し上げますと、是が非でもプライマリーバランスを黒字化しないといけない、それから財政を緊縮して健全化を一刻でも早く達成しないといけない、こういう話になるわけですけれども、私自身は、日本経済のフェーズに合わせて回復をしていくことが大事だと。  ここでいろいろフェーズを書いておりますけれども、現状はデフレ脱却期であります。このときには、プライマリーバランスというのは緩やかな黒を目指すということで、現状政府はそうやっておりますけれども、赤字でも長期債務残高GDP比というのは改善できます。  なぜ改善できるのかということなんですけれども、成長率と金利の関係でいいますドーマー条件が満たされてくるから、そういった状況になるわけですね。デフレから脱却しますと、名目GDP成長率は伸びます。それから、金利につきましては、日銀の金融緩和によって長期金利は非常に低位に抑えられます、今起きていることでございますが。そうなりますと、ドーマー条件が満たされていくので、プライマリーバランスの黒字化を必ずしも急がなくても長期債務残高GDP比が減っていく。  ただ、経済が正常化していくあたりになりますと、プライマリーバランスの黒字化は緩やかに必須になるということであります。  次をおめくりいただきまして、そうしたところを考えるに当たりまして、幾つか図表を挙げておりますけれども、日本の特徴、名目GDPは、過去、一九九〇年から二〇一三年までほぼ一貫して横ばいでした。前年比の平均の伸び率でいきますと〇・三%ぐらいですので、これは諸外国と比べますと非常に低率な伸びということがわかります。  それから、金利なんですけれども、名目長期金利自体は世界的に低下傾向であります。その中で、日本は最も低いわけですね。ただ、二〇一三年までは、名目成長率よりも名目の長期金利の方が高い状態が続いていました。ドーマー条件が満たされていなかったわけですが、なぜ満たされていなかったのか。これは、名目成長率が高まらなかったからということになります。  そして、現状財政状況でございますが、左下、右下両方に書いておりますけれども、こちらは内閣府の中長期試算の結果を見ておりますけれども、二〇一四、一五あたり、プライマリーバランスは緩やかに黒字化方向に向かっております。二〇二三年度あたりで、ちょうど、経済再生ケースであればプラス・マイナス・ゼロぐらいになるといったところです。  そして、国、地方公債残高、長期債務残高GDP比でございますけれども、二〇一四、一五、一六年度あたり、緩やかに拡大傾向にあったものが、現状、横ばいになっているわけですね。  ですから、非常に微妙な、財政状況としては重要な情勢で、ここで対応を間違えるとまた再び財政悪化の方向に向かってしまうということです。  十ページ目でございますが、ギリシャの事例を挙げております。  ギリシャといいますと、財政が非常に悪いということで、日本としてはギリシャのようにならないようにしないといけない、そういう教訓として挙げられている国だと思うんですけれども、ギリシャ自体は、次をおめくりいただければと思うんですが、プライマリーバランスの名目GDP比といいますのは、二〇〇九年の時期ですとマイナス一〇・二%の赤字だったんですね。二〇一四年になりますと、一・五%の黒字になります。真ん中あたりに書いてありますけれども、黒字になったんですね。五年間で黒字になりました。日本の場合ですと、五年間で三・二%ぐらい減らしたということなんですけれども、ギリシャはプライマリーバランスの黒字化を五年間で達成したんですね。  では、それで何が起こったのか。右の長期債務残高名目GDP比をごらんいただきますと、一二六・二%から逆に一七七・二%まで拡大してしまいまして、この結果から何が言えるかといいますと、要は、プライマリーバランスの黒字化を急ぎ過ぎると、名目GDPが減って失業率は高まり、デフレになり、それによって国民生活は破壊されて、結果として財政健全化も達成できない、こういったようなことがギリシャの事例としてはわかるということでございます。  次の十二ページ目でございますが、軽減税率自体は、これは経済学者のほぼ九割あたりが反対であります。なぜかといいますと、逆進性対策たり得ないからでございます。ここにはいろいろ理由が書いてございますけれども、さまざまな観点から見て軽減税率は愚策である、こういうふうに言わざるを得ないというふうに思います。  そして、十三ページ目ですが、今、株価は大きく低下してきているわけですけれども、二〇一六年、それから一九九〇年、一九九八年、二〇〇八年、二〇一四年、これらは、年初来の株価というのが去年末から比べて大幅に下がった年であります。こうした年といいますのは、大きな経済変動が起きているという年ですね。例えば、九〇年ですとバブル崩壊、それから九八年ですとアジア金融危機、そして二〇〇八年はリーマン・ショック、一四年は消費税増税による景気の停滞、こういう話でございます。  お手元の図表、十三ページの方は、青い線で二〇一六年の株価の動きを見ています。これは、前年末の株価一万九千円をちょっと超えたところを一〇〇にしまして、足元、三十八日ぐらい営業日で経過しているんですけれども、それを見ますと、大体一五%ぐらい下がっている、八五・一ということであります。この株価の推移といいますのは、九〇年、九八年、二〇〇八年、二〇一四年と比べても最も悪いということであります。  もちろん、株価の状況が実体経済に即座に影響するわけではございませんが、ことしは非常に大きな変動が起こる可能性があるということを株価の動きは示唆しています。  最後なんですが、現下必要な財政金融政策ということでお話をさせていただければと思います。  まず、財政政策につきましては、現状政府は、名目GDP水準目標政策、六百兆円達成という話をやっておりますけれども、これは非常に考え方としては私は真っ当だと思います。ただ、問題は、そのための具体策が全く出てきていないといったところが問題で、特に財政健全化につきましては、名目GDP水準を六百兆達成するということ、これは年当たりの平均の名目成長率を三%強にしないといけないわけですけれども、過去は〇・三%なんです。このためには、財政金融政策成長戦略、全てを使って成長のために政策を機動的にやっていく必要があります。  ですから、こうした観点からいきますと、私は、近く予定されている増税ですとかそういったものはとんでもないというふうに考えているわけです。  それから、二点目は、増税の凍結という話です。  そして、三点目なんですけれども、私自身は、財政政策のメニューとして、一時的に消費税減税もありかなというふうに考えます。  それはなぜかといいますと、要は、足元消費というのは非常に低迷しているわけですね。国民としては、わかりにくい経済対策をやっても効果はありません。ですから、先行きの消費税の凍結と、それから、現状足元を、一時的に消費税を減税してみる。こういったような話は、例えばイギリスですとかもしくはカナダですとか、こういったところでもやられていますので、全くやったことがない話では当然ないんですね。こういうことも一つのメニューであります。  それから、低所得労働者を対象とする給付つきの税額控除、こういったようなものを主なメニューとする経済対策、現状ですと十兆円ぐらい必要かな、こういうふうに思っています。  そして、こういうことを申し上げると必ず財源という話になりますが、この財源は、三・四%の名目成長を前提とした税収増、それから特会整理を通じた歳入改革、国債増発等によって行うということが必要になります。例えば外為特会ですとか、いろいろありますけれども、そうしたような特会の整理ということも重要だと思います。  それから、最後なんですが、公共投資なんですけれども、足元、増発しても人手不足とかそういったような問題もあるかもしれませんが、ただ、重要な点は、中長期的に、緩やかながらも公共投資を拡大しながら必要なインフラ整備をやっていくというスタンスを国会ないしは政府できちんとお示しいただくことだと思うんですね。こうしたことをしますと、建設業者の方もその先の事業展開をしやすくなりますし、仕事もしやすくなる。ですから、こうした公共工事計画の策定、実行というのをぜひやっていただきたいというふうに思います。  金融政策につきましては、時間もあれですので、簡単にお話しさせていただければと思いますけれども、ポイントは、やはり、政府と日銀のデフレ脱却に対するコミットメント、約束というのをきちんと強めていくということが必要になります。  現状足元では、物価上昇率はゼロ%ぐらいですね、生鮮食品を除く総合で。ただ、これはエネルギーが含まれております。エネルギー価格といいますのは、これは世界経済世界のマーケットで決まりますので、日本国内ではコントロールできません。現状、例えば中央銀行の幾つかは、食料とエネルギーを除く総合とか、そういったベースで見ております。日銀でも、生鮮食品を除く、エネルギーを除く総合といった指数で基調を見ておりますので、これを目標値にしてもいいんじゃないかなというふうに考えています。  あと、日銀法の改正ですとかこうしたところを通じて、雇用の安定化といったようなものをより強調するような形で中央銀行は変わっていくべきだ、こういうふうに私は考えております。  以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 宮下一郎

    宮下委員長 ありがとうございました。  次に、安藤参考人にお願いいたします。
  7. 安藤実

    安藤参考人 安藤です。どうぞよろしくお願いします。  お手元に簡単なレジュメをお配りしていると思いますので、それに従って御報告したいと思います。  まず、財政法と公債との関係ですけれども、財政法第四条は公債発行を原則的に禁止しております。これは健全財政の原則とも言っておりますが、なぜ原則的に禁止したかといいますと、これは憲法九条と関係があるんだと。要するに、日本は憲法九条で平和主義をとっているわけですが、戦争しないと。近代の戦争というものは国債なしにはできないんだ、だから戦争と国債というのは非常に関係が深い、だから戦争しないということであれば国債を原則的に禁止してもいい、そういう関連でできたというふうに言われております。  ただ、財政法第四条のただし書きがありまして、例外としまして、公共事業、出資金、貸付金、そういうものについては公債発行を認めておるわけであります。  公共事業、出資金、貸付金と三つ並べているわけですが、この三者に共通な性格というのは一体何か。例えば、出資金であると配当金の収入がある、貸付金であれば利子収入がある、公共事業は、財政法の制定当時は国鉄だとか電信電話事業があったわけで料金収入がある。つまり、それ自体に償還性がある、つまり税金に頼らない、そういうことでただし書きで認めていた、そういう経緯であります。  それで、二番ですが、一九六五年度に戦後初めて国債発行するわけですが、これは特例公債として発行しております。いわば戦後初めての国債発行赤字国債発行であったというわけですが、このときの福田大蔵大臣の説明を見ますと、年度途中で税収が落ち込んだ、それに対して公債を出す、これは歳入補填の公債である、そういう性格の公債だ、だから、財政法第四条の特例として審議をしてもらいたいということであります。これは、赤字国債発行ということを非常に明確に把握して出した、そういうことだと思います。  それで、翌年の一九六六年度から、財政法四条に基づく公債と言われるいわゆる建設公債というものが発行されます。  この財政法第四条のただし書きの公共事業を、当時の福田大蔵大臣は、資産として後に残るもの、そういう説明をしております。これは、公共事業に自償性がある、料金収入がある、そういうようなことではなくて、資産として残るといわば一種の拡大解釈をしている。そういうことで、その公債を建設公債というふうに呼びました。建設公債あるいは四条債という言い方をしたわけであります。いわば償還性ということに触れていない。償還性ということに触れずに、資産として後に残るということを理由にして建設公債なるものを発行したということであります。  このときに、大蔵省は「財政新時代」という本を出しております。それを見ますと、福田大蔵大臣が一番主張していた点というのは、ここにありますように、政府は借金をする、そして政府が借金をして民間の肩がわりをするんだ、何を目指すかというと、ゆとりある家庭、蓄積ある企業を目指すと。当時、日本の企業というのは借金経営をやっていたわけですが、そこを政府が肩がわりして、ゆとりのある家庭、蓄積ある企業を目指すんだということであります。これが、いわばこの国債政策の目的というふうに言っていいかと思います。  それから、四ですが、財政法の制定から、当時、約二十年たっております。この間、料金収入のある公共事業は公社、公団というふうになりまして、国の一般会計で残っていたのは道路や港湾など単なる資産であった。だから、建設国債というふうに名づけても、その元利償還は租税によるしかない。つまり、租税で元利を償還しなければならないということであれば、これは赤字公債と言わなきゃいけないわけですが、それを赤字公債と言わずに建設公債と名づけたというのが福田大蔵大臣の工夫であったというふうに思います。  当時、一九六五年十二月の参議院大蔵委員会の議事録を見ますと、私ども財政学を研究している者は、大蔵委員会の議事録、この財務金融委員会がそうですけれども、そういうものを非常に資料としてよく使うということをやっております。その中で、当時の社会党の木村禧八郎議員と福田大蔵大臣とのやりとりというものは非常に興味深い内容のものであります。  その中で、ちょっと一部ですが、ここで引用してあります。木村議員の発言です。国の資産として残っても会計上回収性と収益性がない場合は赤字公債であります、赤字公債であるのに建設的だからいいんだ、そういうふうに考えて出す場合は非常に膨張する危険性があるんですと。赤字公債だということをきちんと見ないで、別な何かいい公債であるかのように観念する、それの危険性をここでは指摘しております。  当時、この問題について鈴木武雄東大教授がどういうことを言っているかというのをここで参考として出しました。不況にはむしろ赤字国債発行するのが筋だ、景気回復に従ってその必要がなくなる、したがって一定の歯どめの効果がある、ところが、公共事業というものはいずれも長期財政計画にのっとってやられたわけですけれども、そういう長期財政計画の一環として建設国債発行するのは、実質的に赤字国債なのに、それにあたかも健全な装いをさせ、かえって国債を累積するおそれがある、そういうことを指摘されています。これは「日本公債論」という本ですけれども。  それで、五番ですが、一九七五年度から特例公債発行というふうになります。  一九七五年度中に生じた歳入欠陥というものは、補正予算建設国債を目いっぱい発行する。目いっぱいということは、建設国債は公共事業を対象経費としてその対象をどんどん広げてきたという経緯がありますけれども、そういう対象経費いっぱいの公債発行ということをやっても足りない、そういうことであります。目いっぱい発行しても追いつかない。  そこで、ついに財政法に特例法を設けての公債発行ということになりました。建設公債主義だというふうに言っていたものが、この段階で破綻したということだと思います。そういうことで、一九七六年度からは、財政運営としては異常な、当初予算からの特例公債発行というふうになります。  異常だというふうに書きましたけれども、その異常の意味は、その後、一九七六年二月の衆議院予算委員会で、渡辺佐平法政大学教授、この方は金融論の学者ですけれども、この渡辺先生が、財政特例法というものは、年度途中なら結果的に公債発行の限度が示されるが、予算提出の当初に制定するということは、歳出をまず決めて赤字公債発行額を決めることになる、こういうやり方は赤字公債発行の限度をなくす、そしてこういう財政特例法というものが毎年制定される前例をつくることになると。  つまり、七五年度年度途中で特例公債発行しているわけですが、七六年から、当初予算から特例公債というものを予算に組み込んで、そういうような運営をする。そういうことについて、こういうやり方が毎年制定される前例をつくることになる、これは、今日の事態も見通した指摘だというふうに思います。  この渡辺教授は、別の機会に、こういう財政特例法を年度当初に制定するやり口を恥知らずなことというふうに述べております。これは恥知らずな財政運営日本人の道徳観としては、恥の意識ということが特徴だというふうに言われておりますが、日本財政運営がそういう日本独特の恥の意識のない運営になっている、そういうことを指摘されているというふうに思います。  それで、二枚目に移ります。  特例公債の償還については、建設公債の場合は、その対象が資産として残る、物として残っている、だから、それの期限を考えて六十年で償還すればいい、そういう六十年償還というようなやり方をとっておりますが、特例公債の場合は、そういう見合いの資産がないから、期限が来れば、つまり満期になれば全額償還ということで始まっております。  ところが、一九七五年以降発行した特例公債の満期が迫った約十年後、一九八四年に、全額現金で償還するということになると極端な歳出カットに陥る、そういう理由で借換債を発行するということに変更しました。  その際、借換債の償還を、差し当たり建設公債と同じ六十年にしました。差し当たりというのは、ほとんど、暫定的といいますか、このときだけだというような意味合いなわけですが、この差し当たりの措置がそのままずるずると続く、そういうことになっております。日本財政運営で、差し当たりとか暫時とか、そういう言い方が非常にルーズな使われ方をしている、その例だと思います。そういう意味からいけば、建設公債特例公債を区分する意味がほとんどなくなっている、そういうふうに考えております。  七ですが、財政法の第五条が形骸化したという問題です。  財政法は、公債の日銀引き受けを禁止しております。しかし、異次元の金融緩和のため国債を買い続けた結果、日銀の国債保有額は急増して、二〇一五年八月現在で二百五十八兆円。国債保有の量的規制たるいわゆる日銀券ルールとか一年ルール、そういうものを破って国債を買い入れている。これはもう財政ファイナンスじゃないか、つまり、事実上の日銀の公債引き受けと変わらない、そういうような声も出ております。  それで、問題の、このたびの公債発行特例に関する法律案ですけれども、これは五年先まで特例公債発行し続ける、そういうことだと思います。これは、予算の単年度主義に反するというだけじゃなくて、財政法違反の赤字公債発行を常態化する、そういうことになるというふうに思います。これは、あえて言えば財政法暗殺法案ではないか、こういうものをこういう議会で認めるということは議会の自殺行為になるのではないか、そういうような言い方をあえて、忌憚なく言えというふうにさっき委員長がおっしゃいましたので、そういうふうに言いたいと思います。  私の提案というのを最後に出しておりますが、これは原因者負担論と公債区分の廃止論であります。  日本は、高度成長の結果、七〇年代の初めに非常に大きな公害問題が発生しました。今、中国はひどいそうですけれども。その公害問題を処理した。処理できたのは、原因者負担原則、つまり、公害の発生源の企業にその処理の責任を負わせる、そういうことが有効だったというふうに思います。  公債累積の問題を解決するためには、公債発行政策を推進し、その恩恵を受けてきた財界がそれ相当の税負担を負う、それが筋だというふうに思います。  そして、公債というのは租税と切り離すことができません。それはある意味で租税の先借りであります。あるいは、租税の変形であります。公債というものを媒介として、大法人や富裕層が負うべき租税負担を大衆の負担に置きかえるというようなことは許されないというふうに思います。そういう意味で、現在進められている逆進性の強い消費税増税路線というものは筋違いだというふうに考えております。  それから、建設公債特例公債の区分を廃止するという意味は、要するに、建設公債という考え方だと、これは公共事業の目的公債、あるいは公共事業の特定財源という位置づけになります。いわば、国家財政のいろいろな経費の中である特定の経費が財源的に優先経費として扱われる、そういうことになると、例えば財政合理化をする、節減をするという場合にその対象外になってしまう、そういうことではおかしいのではないか。ほかの経費と同じ扱いにする、そういう意味合いからも、建設公債という区分は廃止すべきであるというのが、私の提案というか意見であります。  以上、意見を申し上げました。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 宮下一郎

    宮下委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 宮下一郎

    宮下委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。
  10. 神田憲次

    ○神田委員 おはようございます。自由民主党の神田憲次でございます。  本日は、財務金融委員会参考人質疑ということでございまして、末澤先生、片岡先生、安藤先生、お三方におかれましては、お忙しい中お越しいただきまして、心から感謝を申し上げます。  特例公債法に係ることはもちろん、経済動向見通しなど、お三方の貴重な御意見を拝聴し、本日賜りました御意見をしっかりと理解し、参考とさせていただきたいと考えております。  私は、二〇一二年に初当選いたしまして、まさしくアベノミクスとともに、与党の国会議員として国民の皆様方から御負託をいただいておる立場でございます。今御意見をいただきました特例公債法は、アベノミクスの第一段階の三本の矢、金融政策財政政策、規制緩和という三本の矢のうちの二本を支える重要な法案だと思っております。  ただいまより二十分ということでございますので、できるだけ参考人の先生方の御意見を伺いたいということに尽きますので、前置きは手短にいたしまして、早速質問に移らせていただきます。  まず、片岡参考人にお伺いしたく存じます。  企業収益は過去最高でございまして、有効求人倍率は御承知のように一・二七倍、それからこの数値が二十四年ぶりの高水準であること、それから、失業率も低減、つまり三・三%ぐらいになっているかと存じます。  そういった良好な数値の一方で、足元では、中国経済の変調などもありまして、国内でも株安が進んでおる。為替レートの部分でも、一時期より円高となっておるわけですが、日本のファンダメンタルズをどのように見ていらっしゃるかをお聞かせ願いたいと存じます。
  11. 片岡剛士

    片岡参考人 御質問いただきましてありがとうございました。  今の御質問にお答えしたいと思いますけれども、御指摘ありましたように、例えば雇用につきましては、失業率は現在、足元で三・三%になっております。それから、有効求人倍率は一・二倍を超えるような形になっておりまして、これは神田委員の御指摘のとおりだと思います。  他方で、景気の中で、消費、投資、輸出といったところの動きを見ていきますと、先ほど申し上げましたように、消費がなかなか持ち直ってこないといったところで、国内の総需要がちょっと弱い状況ですね。他方で、雇用は改善してきております。その中で、賃金も緩やかながら拡大の状況にありますので、目先、消費が拡大する、こういった期待はあったわけですけれども、なかなか現状、そういった動きが起こってきていない。  その中で、例えば海外要因等々によって、製造業の業況ですとか、こうしたところに少しリスク要因が強まってきている、こういったところが今の足元現状であります。ですので、この動きが強まっていきますと、例えば賃上げの動きですとか、もしくは設備投資の拡大ですとか、こうしたようなものが今後しぼんではいかないかというふうに心配される状況であるということです。  ですので、今申し上げたような消費の落ち込みの話、それから雇用の改善ないしは企業行動といったところをあわせて考えますと、現状足元の景気状況というのは横ばいというような格好で、ちょっと方向感を失っているような現状なのではないかな、こんなふうに思っております。
  12. 神田憲次

    ○神田委員 ありがとうございます。  次に、安藤参考人にお伺いしたく存じます。  二〇一二年度のように、万が一、特例公債法成立いたしませず、特例公債発行根拠というものを欠いた事態になると、予算執行はもちろん、国債市場などにも悪影響が生じると思います。  その上で、二〇一二年度のような事態を避けるために特例公債法を複数年度化するというふうな対応策となった評価と、今回の特例公債法成立がおくれた場合について生じる問題点についてお考えを伺わせていただきたいと存じます。
  13. 安藤実

    安藤参考人 私が疑問に思っているのは、数年度にわたってこういうような措置をとるということに反対しているわけで、事情によって、単年度、例えば今年度なら今年度特例法を出す、そういうことは別に差し支えないというふうに考えております。
  14. 神田憲次

    ○神田委員 次に、末澤参考人にお伺いしたく存じます。  日銀の金融緩和に加えまして、さきのマイナス金利政策の導入によりまして市場金利が現在大きく低下して、十年物の国債金利マイナスを記録するなど、政府資金調達コストというのは一層低下しております。  こうした国債発行環境も踏まえまして、財政健全化への取り組みを緩めても問題ないのではないかという見方も出てくるのではないかと思いますけれども、財政健全化の必要性について、どのようにお考えでしょうか。
  15. 末澤豪謙

    末澤参考人 今回、先ほど申し上げましたように、日本長期金利マイナス圏に入っております。ただ、マイナスと言いますと皆さんびっくりするんですけれども、レベルは大きくはないんですね。四%が二%に低下したわけではございません。  当然ながら、元本の返済は必要でございますし、先ほど申しましたように、日本の場合、足元はまだ、過去、高度成長期、またその後、私どもの先輩方が本当にある面勤勉に蓄えられた資産がございます。ただ、今後、少子高齢化、グローバル化が進展すると、行く行くは相当厳しい状況も想定されるということでございますから、ここでそういう手綱を緩めるということはできない。着実に、財政健全化計画経済財政再生計画を実行していくことが重要だというふうに考えております。
  16. 神田憲次

    ○神田委員 ありがとうございます。  続きまして、片岡参考人にお願いしたいと存じます。  内閣府の中長期試算では、名目三%超の成長率を仮定した経済再生ケースでも六・五兆円の赤字が残るとされております。二〇二〇年度にプライマリーバランスの黒字化が達成できないという指摘もあるわけですが、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化についてはどのようにお考えでしょうか。
  17. 片岡剛士

    片岡参考人 お答えさせていただければと思います。  二〇二〇年度、確かに現状、内閣府の試算ですと、達成できない、こういう状況になっております。  ただ、一年前の試算によりますと八兆円強の財政赤字だったと思うんですけれども、これ自体、新たな試算が出てきますと、二〇二〇年度のプライマリーバランスの赤字というのがどんどん縮小傾向にあるんですね。今回初めて、二〇二四年度以降になりますとプライマリーバランスが黒字化する、こういうような結果が出てきておりまして、私自身は、是が非でも二〇二〇年度黒字化しなければいけないという話では必ずしもないんじゃないかと思います。  むしろ、財政健全化、プライマリーバランスないしはドーマー条件に沿った形で緩やかに改善の方向を続けていく、もちろん、その中で政府としては最大限の努力をする必要はあるかと思いますけれども、結果として二〇年度赤字が残ったからといって、国債金利が急騰するとかそういったような話には決してならない、私はこういうふうに理解しております。
  18. 神田憲次

    ○神田委員 続きまして、安藤参考人にお伺いしたいと存じます。  特例公債法において、先ほど来先生おっしゃっておりますように、単年度主義でなければならないというお話なんですけれども、複数年度にわたっての特例公債発行根拠規定を設ければ財政規律が緩むという不安というか考え方がございますが、こういった見方については参考人はどうお考えでしょうか。
  19. 安藤実

    安藤参考人 恐らく、財政規律は緩むと思います。  要するに、予算というものは、それこそ国民生活を含めて基本なわけですけれども、そういうものについては単年度主義という原則があるわけですね。これは、要するに、納税者の代表がきちんとそれをチェックする、そういう趣旨だと思います。そういうものは毎年きちんとやるべきであって、それをあらかじめ決めてしまうというようなやり方は、いわば有権者の権利を阻害する、それから当然、議員の発言権というものを制限する、そういうことなので、財政民主主義の見地からいって非常に問題だ、そういう考えです。
  20. 神田憲次

    ○神田委員 次に、末澤参考人にお伺いをいたします。  法律財政健全化目標を政府の方に義務づけなければ財政健全化はなし遂げられないという議論もあるわけなんですが、どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  21. 末澤豪謙

    末澤参考人 過去の経緯で申し上げますと、かつて財政構造改革法が成立しましたが、その後の金融危機によって凍結されたということもございます。  基本的には、法律は、ある面予算と同格でございます。毎年、予算の審議も行われております。そういう意味では、今の状況を考えますと、中長期的な計画を着実に達成することが重要であります。  ちなみに、ドイツにおきましては、二〇〇九年、リーマン・ショック後でございますが、当時大きく膨らんだ財政赤字を縮小するために憲法改正をやっておりまして、そこまでやるのはちょっと別なんですけれども、必ずしも法律で縛る必要が、実効性があるというふうには考えておりません。
  22. 神田憲次

    ○神田委員 私も、財政健全化、つまりプライマリーバランスの黒字化は、現実にアベノミクスで特例公債発行減少ということは達成しておるわけですから、日本財政が国際的な信認を失わないような状況でさらにこの健全化、プライマリーバランスの二〇二〇年度黒字化というのは当然やっていかなきゃならない、それが日本国の信用を維持するための大きな要因であることは十分理解しております。  そこで、これは最後の質問になるかと存じますが、片岡参考人に御質問を申し上げたいと思います。  今回、安倍政権で、六百兆円GDPを達成するという目標を掲げられております。そういう目標に対して、我が国としての取り組み、それから逆に、この思いは国の国力をあらわすわけですから、この数値目標に向かって日本国民みんなの総意でもって努力をしていくというようなことが望まれるのかと存じます。  そうした意味で、これから先、日本がとるべき政策であり、どういう手法が必要であるとお考えか、聞かせていただきたいと存じます。
  23. 片岡剛士

    片岡参考人 御質問ありがとうございます。  名目GDP六百兆を目指す、その中で、アベノミクス第二ステージということで、現状政府は政策をとられる動きを進めておると思います。先ほど意見陳述で申し上げましたけれども、私はこの政策は正しいと思っています。  ですから、六百兆円といいますのは、失われた二十年における名目GDP五百兆円台を乗り越えるという、非常に強いコミットメントだと思うんですね。ただ、そのためには、財政政策、金融政策成長戦略、全ての三本の矢をきちんとフルに生かしていくことが必要で、この間においては、行き過ぎた、例えば増税とか緊縮策とか、そういったようなものをとってしまうと、景気を悪化させてしまいますので、当然届かなくなるであろうなというふうに思います。  ですから、財政政策につきましては、現状、より緊縮を強めるという話もございますけれども、緊縮を強めるのであれば、例えば政府資産の売却整理とか、こういったような国民生活に直接余り関係のないところを中心として財政の削減を進めること、他方で、足元の景気に対しましては、特に家計の懐を暖めるような財政支出が必要だ、こういうふうに考えています。  そして、五年間という話がございましたけれども、五年間の中ではいろいろございます。当然、景気の悪いときもあるし、景気のいいときもあります。ですから、景気の悪いときに、例えば、予定どおり歳出を絞っていくとか増税をやっていかないといけない、これを決めてしまったから是が非でもやるということではなくて、ぜひ、景気の状況に合わせて、中長期的な観点に立った財政健全化成長というものを両立させていただきたい、こんなふうに思っています。  あと、名目成長拡大のためにはデフレ脱却が不可欠です。ですから、そのためには、二%のインフレ目標の達成、こういったものが政策のもう一つの柱になると思います。そのために、国民が、これからも緩やかながらも成長していくんだ、こういった期待の持てるような政策を、さまざまな観点からぜひやっていただきたい、こういうふうに思っています。
  24. 神田憲次

    ○神田委員 お三方の参考人の先生方には、本日、大変貴重な意見を賜り、ありがとうございました。  私の質問は、これで終わらせていただきます。ありがとうございます。
  25. 宮下一郎

    宮下委員長 次に、伊藤渉君。
  26. 伊藤渉

    ○伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。  きょうは、早朝より、末澤先生、片岡先生、そして安藤先生には、当委員会にお運びをいただきまして、大変にありがとうございます。  二十分間という限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。  まず、今回の参考人質疑の本質は、いかに財政再建をなし遂げていくか、この議論に尽きると考えています。その一つの、今回議題になっている特例公債、あるいは復興のための、歳入のための公債発行法律の議論をしている、こういうことだろうと思います。  よって、財政再建に向けて、三人の先生方から大事なポイントを御指導いただきたい、そんな思いでこれから御質問をさせていただきますので、いずれの質問も三人の先生方にお答えを頂戴したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、これまでの我が国の財政再建を含む取り組みを俯瞰的に確認させていただきたいと思います。  歳入歳出の推移を見れば明らかなとおり、一九九〇年代初頭より、我が国では歳出に見合った歳入が得られておりません。要因の一つは、長期的な時系列で見た場合に、欧州に比べまして、直接税と間接税の割合の見直し、つまり間接税である一般消費税の導入時期がおくれたことが挙げられると考えております。  ヨーロッパでは、一九五〇年代半ば、フランスから一般消費税の導入が始まりました。日本では、一九七〇年代後半から議論が始まるものの、現に導入ができましたのは一九八〇年代後半、一九八八年、昭和六十三年の竹下内閣における消費税法成立を待たなければなりませんでした。欧州に比べて約三十年、一般消費税の導入がおくれたと言えるのではないかと思っております。  ちなみに、当時の社会保障研究所、これは日本ですけれども、社会保障給付費の将来推計が一九八四年からスタートをしておりますから、当時から社会保障給付費が将来に増大をしていくであろうことはある程度予測ができていたもの、こう思っております。  また、日本における一般消費税の導入時期がバブル崩壊期に重なったことも、歳入と歳出のバランスが直ちに改善するに至らなかった理由の一つとも言えるのではないでしょうか。税制改正の経済への影響、先ほど来、片岡先生がおっしゃっておられますけれども、経済への影響というものもよく考えなければならない一つの大きな事例と捉えることもできると考えております。  こうした経過を踏まえ、この二十年で試行錯誤を繰り返しながら、やっと状況の改善のめどが立ちつつある、現時点はこうした局面にあると思っております。本来なら、歳出に見合った歳入が得られる税制を整備しなければならないことは当然でございますけれども、そのタイミングを間違えると、歳入の増、そして財政再建につながらないところに難しさがあると言えます。  そこで御質問ですけれども、まず、直近の目標である二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化に向けて、経済財政政策全般、そして、それらを具現化する税制改正並びに予算編成において留意すべきポイントについて、三人の先生方にそれぞれ御所見をお伺いしたいと思います。
  27. 末澤豪謙

    末澤参考人 先ほど、お時間の関係で御説明できなかった点をちょっと補足させていただきたいんですが、私の資料で二十七ページをごらんいただきたいと思います。  なぜ一九九〇年以降、日本財政が悪化したか。当然、バブルの崩壊、いろいろな、さまざまな要因がございますが、一つ、実は、人口動態的に試算しますと、こちらに書いておりますが、二十七ページ左下でございますけれども、日本のいわゆる実効為替レートのピークはいつかと見ますと、名目は二〇一二年一月、一方、実質面で見ますと、赤色でございます、これはちょっと逆になっておりますが、実質の方は一九九五年四月、阪神・淡路大震災の直後がピークだった。つまり、二〇一二年、大震災の後、名目的には最も円が買われているんですけれども、物価等をより反映した実質で見ますと、九五年がピークだ。  つまり、これはバブル崩壊後ではございますけれども、ちょうど日本の生産年齢人口が九五年にピークになっておりますので、いわゆる人口動態影響が相当背景にあるのではないか。それが、総人口ピークをつけた二〇〇八年以降、より本格化している。  そういう意味では、二ページ飛んでいただいて二十九ページでございますけれども、今後、日本財政の持続可能性を高めるためには、私は実はアンチエージングという言い方をしているんですけれども、やはり少子高齢化対策は最も重要だ。つまり、日本の企業さんはなぜ設備投資をしないかというと、日本の将来の消費市場が行く行く縮小していく、このもとではなかなか投資ができない。  そういう意味では、今回、一億総活躍政策にも掲げられておりますけれども、希望出生率一・八を実現していく、これが最も重要でございますし、やはり次元の異なる成長戦略、我が国にしかできないものをつくる。また、対外投資の運用利回りを向上するとともに、中長期的な財政再建プランを実行していく、これが極めて重要というふうに考えております。
  28. 片岡剛士

    片岡参考人 お答えいたします。  私の資料の八ページ目をごらんいただければと思うんですが、私自身、財政健全化は非常に重要なポイントだと思うんですけれども、ただ、重要な点は、日本経済のフェーズに合った形で再建を図っていく、こういったところだと思うんですね。  先ほど、過去三十年間といいますか、二、三十年間の動きの話を御紹介いただいたかと思いますが、この時期といいますのはデフレ期でございまして、デフレが続く状態ですと、プライマリーバランスはほぼ必ず赤字であるということですね。それから、名目成長率が非常に低い状態、金利よりも低い状態ですので、こうした状況ですと、長期債務残高GDP比というのは拡大し続ける状態で発散してしまう、こういう状況なんですね。  ですから、財政健全化の鍵は長期債務残高GDP比を低下させることでございますけれども、このためには何をやらなければいけないのか。次の九ページ目をごらんいただきますとおわかりいただけますように、九〇年代以降横ばいが続く日本の名目GDPを、諸外国と同じように安定的に、緩やかながらでもいいので増加していくということが必要である。  特に、日本の場合はデフレでしたから、デフレから脱却すること、それから実質成長を緩やかに高めていくこと、こうしたところを通じて、とにかく名目GDPの方が金利よりも高い状態をつくるということがポイントだと思います。  そして、現状ですが、デフレ脱却ということでございまして、成長率の方が金利よりも高い状態が続いております。ですから、このことにもよりまして、例えば国の一般会計の歳入を見ても、これも九二年あたりのところまで改善をしておりますので、ですから、足元は悪くなっているというより、よくなってきているんですね。よくなってきている中で、ただ、足元の景気は余りよくありません。  ですから、そうしたところを考えつつ、財政健全化のペースを緩めるのではなくて、成長率を高めないと財政健全化には結びつかないから、そのために、きちんと経済対策をやりながら健全化と両立させていくということが必要なのかなというふうに私は思います。  最終的にはプライマリーバランスの黒字化といったところを達成する必要はありますけれども、ただ、これも、では、十兆、二十兆、三十兆とどんどんどんどん黒字幅を拡大していけばいいのかということではなくて、安定的に少しの黒字をずっと維持していくということが重要であります。  ですから、こうやっていきますと、長期債務残高GDP比は緩やかに低下傾向に入ってくる、こうなると健全化という話になるというふうに私は理解しています。  以上です。
  29. 安藤実

    安藤参考人 大問題というのか、非常に難しい問題ですが、私は、やはり建設公債主義に固執しているということが一つあると思います。それからもう一つは、税制改革が筋違いであったというふうに考えております。  これは、日本の場合は、ヨーロッパ各国とは違って、消費税というものについて非常に違う感覚を持っている。その大きな原因の一つは、戦後間もなく導入した取引高税です。取引高税の失敗というのがずっと根強く残ってきた。そういう土台の上に消費税を導入して、それをメーンの税にしようというのがやはり間違っているのではないか。  やはり税制というものはそれぞれの国民性というものがありまして、そういう日本の国民性とか歴史とか、そういうことを踏まえてやるべきだ、そういうふうに考えております。
  30. 伊藤渉

    ○伊藤(渉)委員 ありがとうございました。  難しいことをお聞きしているのは承知の上で、ただ、このことが我が国において最も大きな課題であり、解決をしていかなければならないことでございますので。  もう一つ、また非常に難しいことをお伺いしたいと思います。  過去の我々の先人がそうであったように、私たちも今議論をしていることは、将来の子供や孫たちによい国を残していくために、今やるべきことを着実にやらなければならない、こういうことなんだろうと思います。  そう考えたときに、二〇四〇年、これから二十四年後です。どういう状態になるか。今は、いわゆる団塊の世代方々皆さん前期高齢者になり、二〇二五年で皆さんが後期高齢者になる。そして、二〇四〇年というのは、いわゆる第二次ベビーブーム世代皆さんがほぼ全て前期高齢者になる、こういう時代でございます。ここに向けて我々は今大きなかじ取りを任されている立場にある、こう理解をしております。二〇四〇年から二十年間、二〇六〇年までが、人口構成上、現在の推計によれば、生産年齢人口の割合が最も低くなる状況でございます。  今でも高齢化は大きな課題であります。私は、いつもこの話をするときに気をつけていることは、ただ、世界で冠たる長寿国になったこと自体はすばらしいことだと思っています。高齢化自体を否定するような発言が見受けられることを大変危惧しておりまして、これ自体はすばらしいことだと思います。であれば、それでもなお皆さんが快適に暮らせる国づくりということを今考えていかなければならない。  これも非常に難しいことを聞いているのは重々承知の上ですけれども、こうした状況、今から二十四年後、それから二十年ですから、ここから先五十年を俯瞰したときに、今なすべきこと、これは現在、現に取り組んでいること以外に御提案があれば、ぜひ三人の先生方にお知恵をおかりしたいと思います。
  31. 末澤豪謙

    末澤参考人 委員から今御説明ありましたように、私も、これから二十年後、三十年後は相当実は心配しております。  いわゆる団塊の世代方々、一九四七年から四九年の方々が、二〇二五年になると皆さん後期高齢者になられるんですね。ただ、一般論で申し上げると、団塊世代方々はそれなりに勝ち組でございまして、多分、御自身の生活のことはそれなりに対応できる資産等もあろうかと思います。  ただし、一方で、団塊ジュニア方々、一九七一年から七四年生まれの方々でございますが、この方々は、本当にある面かわいそうな方々でございます。これは御自身がどうこうではなくて、当時、金融危機以降の就職氷河期で、なかなか大企業等にも就職できない、仮に就職しても正規雇用でなかった方々も多くて、そういう意味では、本当に厳しい時代に社会に入られた方々でございまして、彼らに対しての支援を今後も引き続きやっていく必要があろうかと思いますし、やはり、彼らが六十、七十になられたときに日本の医療、介護を含む社会保障制度全体が持続可能なように、本当に今からやっていくということが極めて重要だと思います。  その際、先ほども申しましたが、日本が今後見習うのは、やはり米国だとか英国とか、先進国、ある意味先輩の方々。今、彼らのどういう産業が時価総額で上位に入っているかというと、例えば米国の場合ですと、IT、エネルギー、金融、航空宇宙といった、やはり本当に強みのある分野なんですね。  ですから、日本も、今後はより選択と集中をもっとしっかりして、本当に二十年後、三十年後に残るような産業、企業を育てていくことが重要かというふうに考えております。  以上でございます。
  32. 片岡剛士

    片岡参考人 お答えいたします。  お話しされていた話題は、まさに私もちょうどその年代でございまして、非常に人ごとではないところではあるんです。  そうした観点でいきますと、やはり今後十年間というのが一つの勝負かなという気がしております。例えば、デフレ脱却という話につきましても、ことしを含めて、今後五年、十年あたりでは是が非でも安定的な物価上昇率を維持する、こういうフェーズに入っていかないと非常に厳しい状態になるというふうに思います。  それから、今後四十年あたりを展望して考えますと、私自身は社会保障制度改革というものが不可欠かなというふうに思います。これは、例えば現状の修正賦課方式をどう変えていくのか、こういった議論もございますし、それから、当然、社会保障の給付と負担の関係の見直しといったところも重要になると思います。  あと、財源につきましては、現状消費税増税によって賄う、こういう話をしておりますけれども、私はこういった話題を考えるときに、例えば、よくEUとか欧州の話が消費税率を二〇%台に引き上げている国ということで挙げられているわけですけれども、欧州が現状どうなのかといいますと、押しなべて成長率は余り高くないですね。むしろ、消費税を導入してなかなか成長できない、こういったわなに陥ってしまっている、こういったふうにも言えると思うんですね。  ですから、社会保障財源として消費税を考えた場合に、ポイントとなりますのは、一つ逆進性の問題というところが出てきます。  逆進性といいますのは、要は低所得者の方ほど負担率が高いというお話でありまして、これを改善するために、例えば軽減税率の導入ですとか、給付つき税額控除とか、そういったようなお話を議論されていると思うんですけれども、消費税自体は、やはり貧しい方に対して負荷が大きい税なんですよね。これを財源にして、社会保障というのは何をするかというと、貧しい方に給付をする、困っておられる方にお金を分配していくという話ですから、困っている方から取って困っている方に分配するというのは本末転倒じゃないかな、私自身はこんな気がするんですね。  ですから、例えば、財源として、所得税等々の税収増を目指すということも重要ですし、それから、例えば資産課税、特に相続税とか、そういったようなものを使いながら、いわゆる豊かな方から多く取って、それを社会保障に分配していくとか、こういったような議論もこれからどんどん進めていく必要があるんじゃないかな、こんなふうに私は思っております。
  33. 安藤実

    安藤参考人 先のことと言われますが、多分私は生きていないと思うんですね。  それで、どうも予想は余り意味がないのではないかと考えています。というのは、今まで政府がやってきた財政健全化目標は一つとして成功していないわけですね。それはやはり予想が外れているわけです、なぜ外れたかという問題はあると思いますが。  私は、やはり今できることに集中すべきだ。とりあえずは、とにかく平和国家でいたい、それが一番の願いです。それであれば、いろいろ問題が起きても何とか処理できる、日本国民の力というのは十分ある、そういうふうに考えています。
  34. 伊藤渉

    ○伊藤(渉)委員 ありがとうございました。  非常に難しい問いかけにもかかわらず、真摯にお答えを頂戴して、きょう先生方からいただいたヒントをまた一つの足がかりにして、この国の改善のために取り組んでいきますことをお約束申し上げまして、時間でございますので、質問を終わらせていただきます。  大変ありがとうございました。
  35. 宮下一郎

    宮下委員長 次に、玄葉光一郎君。
  36. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。  きょうは、貴重なお時間をありがとうございました。  まず、末澤参考人に二、三お尋ねをしたいというふうに思います。  一つは、たしか末澤参考人は、二〇一五年の十月の増税について、八から一〇に、従来どおりというか、方針どおり上げるべきだった、当時は少なくとも上げるべきだというふうにお話をされていたように記憶をしております。現在も上げるべきだったというふうにお考えかどうかということと、結果として延期になったわけでありますけれども、来年四月、予定どおり一〇%に消費税を上げるべきだというふうにお考えかどうか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  37. 末澤豪謙

    末澤参考人 どうもありがとうございます。  今御指摘いただいたのは、当時、消費税点検会合に私も委員として出席いたしまして御説明したところなんですが、当時、私は消費税を上げるべきだと申し上げまして、一向にこれは現在でも変わっておりません。  ただ、そのとき御説明したのは大きく二つございまして、消費税を上げるというのは何のためかと。一つは、世代格差の是正等、中長期的な日本社会保障制度の持続可能性を高めるため。これは今でも全くその意義は変わっていないと思います。ただし、当時も、GDPマイナスになるということで、世界経済はやや変調しておりました。ですから、そのときに私が申し上げたのは、増税はするんだけれども、一方で、さまざまな経済対策をしっかり打つべきだというふうに申し上げました。  これも現在変わっておりませんので、そういう面では、引き続き、来年四月の消費税については予定どおり上げるべきだ。ただし、本日申し上げましたように、ことしは昨年以上に世界経済の不安定要因は拡大しておりますから、それに伴う相当の対策はむしろ不可欠というふうに考えております。  以上でございます。
  38. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 ありがとうございます。  最近、安倍総理、あるいは菅官房長官、さらには麻生財務大臣の言いぶり、特に、麻生財務大臣は余り変わりませんけれども、安倍さんと菅さんの言いぶりが微妙に変化をしてきているなというふうに思うんですね。  特に菅さんの発言などは、橋本龍太郎さんの政権のときに三から五に上げた、あれはいわば失敗だったというふうに受け取れる発言だというふうに私は思うんですね。つまり、あのような状況であれば上げるべきではないというふうにも言ったように私は受けとめているのであります。  そこで、末澤参考人にもう一つお聞かせいただきたいのは、仮に一〇%にすることについてさらに再延期したといった場合の、いわゆる国債格付が下がるということについてのリスクをどういうふうにお考えになっておられるか、お聞かせいただけますか。
  39. 末澤豪謙

    末澤参考人 前回、消費税の引き上げ延期に伴いまして、海外格付機関は軒並み日本国債格付引き下げております。これはきょうお示しした資料にも示しておりまして、場合によっては、仮にまた今回再延期となれば、一段の格下げもあり得ると考えております。  ただ、足元日本長期金利は、日本銀行の金融政策影響で相当低下し、むしろマイナスになっております。だから、格付が下がったから日本長期金利が急騰するということは見込んでおりません。  ただし、中長期的な問題があると思うんですね。今の日本の異次元緩和も、では、五年後、十年後、ずっと継続できるかという問題はあります。仮に経済がよくなってどこかで出口に移ったときに、そのときに、本来のフェアバリュー、本来あるべき金利水準とそのときの金利水準のギャップが大きくなればなるほど、その反動も大きくなるということでございます。  そういう面では、日本国債格付を中長期的に維持向上させていくということは、先ほど申しましたように、特に日本人口動態の今後の変化等を鑑みますと、極めて重要というふうに考えております。
  40. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 バーゼルの標準手法とかを見ていると、シングルA格水準が幾つも出てくるとリスクウエートというのは高まっていくんだろうなと思いますので、やはり注意はしておく必要があると私は考えているんです。  もう一問、末澤参考人にお聞かせいただきたいのは、先ほどもお話が出ていたんですけれども、政府経済再生シナリオでも、二〇二〇年度はたしかPBマイナス六・五兆なんですね。マイナス六・五兆に加えて、軽減税率の一兆円のうちの〇・六兆がまだ示されておりませんので、そういう意味ではマイナス七・一兆だということですね。  PBを真面目に黒字化しようというふうに考えていくと、確かに歳出改革もあわせて必要だというふうに考えるのでありますが、末澤参考人は、歳出改革も成長戦略とあわせてセットで必要なのだというふうに明確におっしゃっていて、末澤参考人からごらんになって、現在の政権の歳出改革の内容、評価、このことをどうお考えになっているか。  私は、率直に申し上げて、歳出改革について何が具体的になされているのかということについて、よくわかりません。末澤参考人の評価をお聞かせいただきたいと思います。
  41. 末澤豪謙

    末澤参考人 現在審議中でございますけれども、二〇一六年度一般会計予算につきましては、私の評価では、特に診療報酬の改定等、従来に比べれば相当踏み込んだ部分もあったというふうに認識しております。  ただし、私自身は、どちらかというと、高齢者と現役世代、また今後のお子様、年少世代等を考えますと、日本の場合、やはり高齢者にやや厚い施策が今回もとられているかな、特に補正予算なんかではそういう部分は考えております。  そういう意味では、歳出改革について進んだ部分とまだちょっと未達の部分もあろうかと思うんですけれども、今後、特に医療、介護の問題等は、ある面、より効率的に、別にこれはサービスの質を低下させるという意味ではなくて、より効率的な面で見直しというのは必要になってくるというふうに考えております。
  42. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 現実、もともと見込んでいた実質GDP一・二も全く達成できそうもない。二〇一五年度、今のままいくと、たしか一—三が年率で九%近く成長しないと見込みどおりの実質GDPにならないという状況でありますので、まさに全てがうまくいってもマイナス七・一だということを考えると、やはり相当社会保障も含めた努力をしないととても達成できないんじゃないかと私は思っています。  片岡参考人にもお尋ねをしたいというふうに思います。  片岡参考人は、もう主張はある意味明確で、一〇%への引き上げはすべきじゃない、少なくとも当面すべきじゃない、むしろ減税をして八から六にすべきだ、こういう御主張でもあるわけであります。これは一つの考え方だと思いますが。  片岡参考人は、それでは、この消費税について、さはさりながら、いずれはどこかの段階で上げるべきだというふうに考えておられるのか。もしそうであれば、どういう条件がそろえば上げてもいいというふうにお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  43. 片岡剛士

    片岡参考人 どうもありがとうございます。  私自身は、政府の点検会合というところに二回出させていただいていまして、そのときには、五から八%に引き上げた際というのが一回目、それから、二回目が八から一〇に引き上げる際、ともに反対してまいりました。  結果として、経済状況を見ていきますと、当時、例えば、一回目、五から八に引き上げたときには、二〇一四年度の実質成長率がマイナスになることはないというのがほぼ大方のエコノミストの予想だったと思います。ただ、私自身は、マイナスもあり得る、それによって税収も落ち込んでしまうので、結果的に、消費税率を引き上げても財政健全化になかなか結びつかない可能性もある、むしろこういう話をしていました。  今後、例えば二〇一七年四月に消費税を引き上げるか否かというのは、財政健全化で一つ考えるポイントというのは、税収がちゃんとそれによってふえるのかどうか。例えば、消費税以外の税目も含めて安定的に税収がふえていくような状況を、消費税を引き上げても達成できるのかどうかといったところが一つのポイントかと思います。  それから、もう一つのポイントは、消費税を引き上げることによって物の値段が上がるわけですね。これは、日銀の金融政策が原因ではなくて、消費税を引き上げることで物の値段が上がるということが起こります。物の値段が上がりますと、当然、賃金がなかなか物の値段に対して伸びなければ、実質的な所得が減ります。ですから、これが消費を下押しする材料になります。  消費税といいますのは、これは上げたらずっと恒久的に、減税をしない限りずっとマイナス影響が作用していきます。ですから、駆け込み需要の反動減だけではなくて、今申し上げた実質所得の減少というのが起きてきます。  ですから、こうした消費税の悪影響をオフセットするためには、名目賃金が少なくとも三%以上は伸びるということ、そうしたような経済環境をつくっていくことが私自身は重要であるというふうに思っています。  以上です。
  44. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 そうすると、例えば菅官房長官が、消費税を上げても税収が上がらないような状況であれば、上げても意味がないというか、上げない方がいい、そう考えている、こういうふうにおっしゃっているわけでありますけれども、片岡参考人は、今の状況の中では、一〇%に引き上げたときに税収はむしろ下がってしまう、そういうふうに判断をしておられるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。     〔委員長退席、神田委員長代理着席〕
  45. 片岡剛士

    片岡参考人 御指摘のとおりでして、むしろ、税収が政府経済財政モデルないしは財政健全化計画で見込んでいるほど伸びてこない可能性がある、こういうふうに認識しています。
  46. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 それと、先ほどお話を聞いていてちょっと気になったのは、経済再生シナリオで、ずっと表をお示しになられたんですけれども、ドーマー条件というのを提示されたわけです。  たしか、政府経済再生シナリオでいくと、二〇二〇年以降ぐらいからむしろ金利成長率を上回る、これは経済再生シナリオで上回る、こういうことになって、私は、あのままいくと、二〇二〇年以降、場合によっては発散してしまうのではないかというシナリオじゃないかとさえ実は考えるんですね。借りかえていったときに、最初は低い金利ですけれども、だんだん高い金利になりますので、そうなってしまうのではないかという気さえするのでありますが、片岡参考人はこの点についてはどういうふうにお考えですか。
  47. 片岡剛士

    片岡参考人 御指摘の点なんですけれども、きょう資料でお示ししましたプライマリーバランスないしは長期債務残高の際に、内閣府が計算として使っております長期金利の想定といいますのは、今、足元長期金利マイナス化するような状況を生じる前の試算なんですね。ですから、足元金利自体が全体的にまずは低くなっているんじゃないか。足元状況を考えますと、試算の当初と比べてそうした変わった現象が起きています。  ですから、将来の金利というのは、内閣府が想定しておりますような、例えば三%、四%というようなところまで二〇二三年度あたりに上がってくるという可能性はちょっと低いんじゃないかな、私はこういうふうに見ています。  それから、財政負担ということで、例えば金利負担という話が出てきますけれども、これ自体は過去借りていた資産との見合いで決まる部分もございます。ですから、実際、足元長期金利水準がそのまま金利負担につながるわけではない、こういうふうに思います。  ですので、そうした観点からしても、内閣府さんの試算の長期金利の想定はちょっと高過ぎるかなというのが個人的な感触でございます。  以上です。
  48. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 安藤参考人にも一言お聞かせいただきたいんですが、先ほど、公債発行をしないで、財界がいわばその税負担を負うべきだというふうにお話をされたように思うのでありますが、例えば、消費税も上げずに、そういった負担はあくまで財界が負うということになると、かなりの財源の規模になってしまうのでありますけれども、その点は、それでもなお経済界が負うべきだというふうにお考えになられますか。
  49. 安藤実

    安藤参考人 財界にそれ相応の負担をお願いする、そういうふうになりますと、財界は、与党あるいは政府を突き上げて、財政合理化の圧力が強くなる、そういう効果が出ると思います。  そういう意味で、財界にそれ相応の負担をお願いするというのは財政合理化の一つの試みになる、そういうふうに思います。
  50. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 片岡参考人にもう一つ。  先ほど、そもそも消費税を上げること自体に反対なのでありますが、他方で、給付つき税額控除に比べて軽減税率は愚策である、そういうことをおっしゃったわけでありますが、具体的に、かつ端的にお話しをいただけますか。     〔神田委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 片岡剛士

    片岡参考人 お答えさせていただきます。  軽減税率自体は、逆進性を除去する、そういった対策たり得ないということでございます。  お手元の資料の十二ページ目をごらんいただければと思いますが、格差是正効果。今回、食料品を中心にかかるわけですけれども、我が国の場合ですと、所得階層別の所得に占める食費の割合はほとんど変わりませんので、ですから、一律に軽減税率をしても格差是正効果にはつながらない。  それから、財源についても、給付つき税額控除と比べた場合に、やはりちょっと多いなという印象がございます。  あとは、軽減する対象の品目ですね。具体的にどういうものなのかという話につきましては、国会でもいろいろ議論されていると思いますけれども、これについて、なかなか決めるのが難しい、決めることによって逆に利権に結びついたりとか、そういった話になります。  あと、事業者負担が高いということですね。例えばインボイス制を導入しないまま暫定的に軽減税率を導入する、こういったことを仮に決めたとすると、これを導入した国というのは日本が初めてになります。ですから、こうしたところもあわせてリスクが大きいというふうに私は思っています。
  52. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 最後に、末澤参考人に。  日銀による量的・質的金融緩和というのは限界はあるというふうに私は考えている、黒田さんはないと言っておるわけでありますけれども。末澤参考人は、その点についてどのようにお考えになっているか。  また、今回のマイナス金利、特に地方への影響。私は、長くなるとやはり地銀に影響があるのではないか、そういう心配をしておりますし、特に黒田さんがマイナス金利をさらにマイナスにするというふうに何度もおっしゃるので、そうなると、設備投資をしようとしていた企業などは、現に私の友人などもそうなのでありますが、いわゆる後送りをするというか、二年後、三年後に延ばそうという動きが今出てきているんですね。  そういったことについて評価をお聞かせいただきたいと思います。
  53. 末澤豪謙

    末澤参考人 二〇一二年末に安倍政権が打ち出したアベノミクス、第一の矢、第二の矢、第三の矢、金融、財政成長戦略ということなんですが、私は、これは一つ、順番に意味があると思っておりまして、いわゆる即効性ですね。金融が一番早く実行できるし、きく。財政にしたら、当然、これは予算の問題もありますし、時間がかかります。成長戦略だともっと時間がかかる。そういう意味では、私は、金融政策に効果はあると思うんですけれども、ある面、時間稼ぎ、財政出動また成長戦略が実際に効果を発揮するための時間稼ぎの部分は大きいんだろう。  週末のG20でも、金融政策だけには頼らずに、財政の問題と、特に構造改革、こちらを二十の地域、国で合意したわけでございますので、私は、金融政策だけではなくて、今後は成長戦略、特に少子高齢化対策、産業振興政策が重要だと考えておりまして、ここを打ち出していくということが中長期的には極めて肝要だというふうに考えております。
  54. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 どうもありがとうございました。
  55. 宮下一郎

    宮下委員長 次に、宮本徹君。
  56. 宮本徹

    宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。  きょうは、お忙しい中を参考人の皆様に御出席いただいて、ありがとうございます。  まず、末澤参考人片岡参考人にお伺いいたします。  今、大量の赤字国債発行しているわけですけれども、これは超低金利ということがある意味大前提になっているというふうに思います。仮に金利が一%上がれば、利払い費は、一年目は一兆円、二年目は二・二兆円、三年目は三・七兆円ということで、雪だるま式にふえていくことになるわけですよね。そういうことを考えますと、今日銀がやっている異次元の金融緩和の出口戦略がうまくいくのかどうかというのは、日本財政の命運もかかる仕事になるんじゃないかなというふうに考えております。  そういう点では、日銀の今の異次元金融緩和政策の出口戦略についてどうお考えなのか、お聞かせいただければと思います。
  57. 末澤豪謙

    末澤参考人 もともと、今回の異次元緩和が二〇一三年四月四日に導入されたときは、本来は二年でむしろ出口の方向性が出てくるということだったと思うんですが、これはもう丸三年たっているわけでございまして、やはり一般論を申し上げると、現状の政策が長く続けば続くほど、より出口は難しくなる。これは欧米の過去のケースでも同様だと思うんですね。  そういう意味では、先ほど申しましたように、出口に向かえるような状況を、その他の政策、特に成長戦略等でしっかり推進していって、普通に日本の潜在成長率が上がり、結果として雇用、賃金等もふえ、いわゆるディマンドプル型の物価上昇に持っていく、これが極めて重要というふうに考えております。
  58. 片岡剛士

    片岡参考人 お答えいたします。  先ほど末澤参考人がおっしゃった部分に関連しているところもあると思うんですが、デフレから脱却するのがおくれれば、それによって出口のリスクというのが高まるのはそのとおりだと思います。  逆に、ではどうしたらいいのかということなんですけれども、デフレから脱却するためには、金融政策財政政策、それから成長戦略、三本の矢全てを使ってデフレから脱却する、これが二十年間デフレに苦しんできた日本経済としてはやらなければいけないことだと思うんですね。ですので、金融政策の足を財政成長戦略が引っ張らないような状態にする、こういうことがむしろ逆に出口政策リスクを低めることにもつながるんじゃないか、こういうふうに認識しています。
  59. 宮本徹

    宮本(徹)委員 ありがとうございます。  安藤参考人にお伺いいたします。  先ほどのお話の最後で、原因者負担論というお話がありました。  私も若造なもので歴史には疎いんですけれども、原因者ということを考えた場合に、赤字国債がそもそも発行されていく過程というのがあると思うんですけれども、発行に至る経過、あるいは赤字国債を積み増してきた経過、こういうことを見た場合の歴史的責任はどういうところにあるのかなというのをお伺いしたいと思います。
  60. 安藤実

    安藤参考人 公債発行については、まず、一九六四年の九月に当時の池田総理大臣が病気になりました。その後が佐藤内閣ということになるわけですが、佐藤首相に、当時のいわば財界の大御所と言われたコバチュウこと小林中さんが国債発行を入れ知恵したというふうに言われています。これは、小林さんが自分の腹心の者を佐藤首相の特別秘書に送り込んでそういうことをやったということが報じられております。  そういう意味で、公債発行は当時の福田大蔵大臣の発案だというふうに普通思われているようですが、実際は、そういう財界筋からの働きかけがあった、そういう事実が一つあります。  それから、赤字公債発行のときですけれども、これは、財界が総力を挙げて当時の三木内閣に圧力をかけた、そういうことがあります。  まず経団連の土光会長、日経連の桜田武会長、日本商工会議所会頭の永野重雄さん、経済同友会代表幹事の佐々木直さん、そういう財界の首脳が、それこそこぞって、当時の三木首相、それから自民党の幹事長は中曽根さんでしたけれども、そこへ直接、赤字国債発行に踏み切るべきだ、そういう圧力をかけたということがあります。これを受けて、中曽根幹事長は愛される国債にしたいと言ったということが新聞で報じられております。  そういうことで、公債発行政策については財界の働きかけがあって、それを当時の内閣が実現していった、そういうふうに考えております。
  61. 宮本徹

    宮本(徹)委員 ありがとうございます。出発点が財界だったというお話でした。  ここまで積み増してきた、まあ、出発点は財界だということなんですけれども、さらに、国と地方を合わせて一千兆ということになっていますけれども、ここまで積み増してきた責任というのはどうお考えでしょうか。
  62. 安藤実

    安藤参考人 これは、政府国会は責任があると思っています。
  63. 宮本徹

    宮本(徹)委員 ありがとうございます。  それから、引き続いて安藤参考人にお伺いしますが、一九七六年の予算委員会での渡辺法政大教授の公述も引用されて、それから、その発言の、赤字国債発行についてのやり方についての恥知らずなことという言葉も引用されておりました。  当時の議論を見ると、歳出をまず決めて赤字国債発行額を決めるのは、赤字国債発行の限度をなくすものだという批判がされているわけですけれども、そうすると、基本的に、赤字国債を組む場合の考え方としては、歳出を出発点にするんじゃなくて税収が出発点なんだ、年度途中で補正を組むべきだというのが当時のものを見ると出てくるんですけれども、これは今日でも言えることなんでしょうか。
  64. 安藤実

    安藤参考人 最初に赤字公債発行したとき、一九六五年の場合はそういうやり方をやりました。つまり、年度の途中で歳入欠陥が生じた、それの穴埋めとして赤字公債発行する、これが筋であると思います。ただ、いかにも今の日本財政状況から見ますと、それでは多分予算を組めないんだろうと思いますね。  そういう意味で、そういう事態は好ましくない、非常によくないということを自覚しながら、限度を決めてやるしかないのではないか、当面それしかないのではないかというふうに思います。
  65. 宮本徹

    宮本(徹)委員 引き続き安藤参考人にお伺いしますが、公債は租税の前借りだというお話がありました、いずれ税金で返さなきゃいけないと。それから、公債の場合は、発行すれば、今はマイナス金利でありますけれども、一般的には利子がどんどんつくわけです。そうすると、赤字国債発行がふえればふえるほど、国債の所有者に利払いという形で所得が移転していくということになると思うんですね。  そうすると、国債がふえればふえるほど、税制のあり方としては応能負担を一層強めなきゃいけない、こういう改正が必要になるという理解でよろしいんでしょうか。
  66. 安藤実

    安藤参考人 その理解で結構だと思います。
  67. 宮本徹

    宮本(徹)委員 ありがとうございます。  あと、これはお三方にお伺いしたいと思います。  片岡参考人の方から、きょうのお話で、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化については、そこにこだわる必要はないというお話があったというふうに思います。長期債務残高GDP比が下がっていく状況が生まれればいいんだ、名目GDPの伸びが金利を上回っていればいいんだというお話があって、私もそれはそのとおりだなというふうに思います。  ただ、今回の法案には、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化という文言が実は入っていまして、それがあるから野方図に赤字国債が出るわけじゃないんだという仕掛けになっているわけです。  ただ、何が何でも二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化ということをやろうとしたら大変なことが起きると私は思っています。政府成長シナリオということでやっても、プライマリーバランスの黒字化には六・五兆円足りない、ベースラインケースでいえば十数兆円足りないということになっています。  一方で、今回国会に出されています所得税法等の税制改正の法案では、二〇一八年度以降に中間評価をやって、消費税を含む税制の構造改革を行うという文言がありますね。私はこの文言の意味を総理に聞きましたら、それは、二〇一八年度以降、消費税増税ですね、一〇%を超える増税も選択肢に含むんだというお話だったんですよね。  そうすると、この二つの法案をくっつけて並べると、二〇二〇年度にはプライマリーバランス黒字化だ、そこに向かって、二〇一七年度は一〇%に上げて、その先には十数%に上げる道というのが敷かれていくことになるんじゃないか。そうすると、税の逆進性は一層強まりますし、ましてや、この間の消費税増税が与えた日本経済そして国民の暮らしへの影響というものを考えたら、それはやってはならない道だということを私は思っているんです。  そういうことを考えると、法案に二〇二〇年度黒字化目標というのが書かれているのは非常に問題があると思うんですけれども、これをお三方に御意見をお伺いしたいと思います。
  68. 末澤豪謙

    末澤参考人 今回、なぜ二〇二〇年度PB黒字化しなきゃいけないか、こういう前提を考えますと、先ほど御説明しましたように、二〇二〇年度に入っていきますと、団塊世代方々が徐々に七十五歳、いわゆる後期高齢者の年代にお年を召されるわけですね。最終的に二〇二五年の年初には皆さん七十五歳でございまして、先ほど申しましたように、医療費介護給付費の相当急激な増加も見込まれる。やはり、少なくともそこまでにPB黒字化する。これは、黒字化したとしても、別に財政が再建されるわけじゃないわけですね。債務残高を別途引き下げていくことが必要ですから、これはもう本当に最低限の目標だと考えております。  そういう意味では、今回の特例公債法が五年間という期限つきというのも二〇二〇年度PB黒字化が前提であり、これは極めて重要な目標であり、そういう規定だというふうに考えております。
  69. 片岡剛士

    片岡参考人 先ほど来からもお話をしていますように、健全化自体、プライマリーバランスの黒字化というものを二〇二〇年度に達成する、こういう形で目標を立てられるのは結構なことだと思うんです。  ただ、経済の場合は生き物でございまして、実際の足元の景気の状況ですとか、もしくは、経済成長するというのは政治家の先生方がやるのではなくて我々国民がやるわけですね。ですから、これは、例えば世界経済リスク要因が高まってくるとか、いろいろな要因がありますから、当然、計画したとおりに淡々と進むというわけではありません。  ですから、そうしたところをお考えいただいて、私自身は、二〇年度は目指すとしても、実際、では達成できなかったらそれでだめだというわけではなくて、できる限り早いタイミング、二〇年代の早いタイミングで黒字化方向に向かっていけばいい。  逆に、過度に、ギリシャのように五年間で赤字黒字にするようなことをしてしまうと、そうすると、デフレが起こり、名目所得は減り、そして失業率は高まって、国民経済生活が破壊されてしまうんですね。その中で、では財政健全化が達成できたかというと、長期債務残高の名目GDP比は逆に発散しているわけであります。  だから、こうした例も参考に、バランスをとった形で健全化をすべきだというふうに考えています。
  70. 安藤実

    安藤参考人 経済は確かに生き物だと思います。だから、決めようといったってなかなか決められない。ところが、税制は決められるんですね。消費税の引き上げを想定しているということになると、これは国民生活にとって非常に問題だと思います。  税制については、やはり応能負担原則、そういうようなことを追求すべきだ。当然、負担すべき者が負担をする、そういう方向を目指すべきだ、そういうふうに考えます。
  71. 宮本徹

    宮本(徹)委員 ありがとうございます。  あと、最後の一問ぐらいになるかと思うんですけれども、歳出の改革についてもお伺いをしたいと思います。  私は、当委員会でも予算委員会でも、歳出の問題で、安倍政権のもとで防衛費が伸びていることを取り上げてまいりました。  一つは、後年度負担という形で、それまで防衛費の後年度負担は、安倍政権以前の十年間ぐらいは三兆円でずっと推移していたんですけれども、それが今、今度の予算で四兆六千億を超えるということで、急激に増加するということになっています。  それから、中期防衛力整備計画ということで、二〇一四年度から五年間で、閣議決定では二十三兆九千七百億円ということが決まった。これは毎年〇・八%ずつの伸びなんですけれども、それを上回る伸びをこの三年間繰り返していまして、私の計算では、この三年目で既に五千億円オーバーということになっています。  ですから、こういうところを聖域にしてはならないということを先日も麻生大臣にも意見を述べさせていただいたわけですけれども、歳出改革といった場合に、いろいろなところに手をつけなきゃいけないと思いますけれども、防衛費も含めて、皆さんの御意見をお聞かせいただければと思います。
  72. 末澤豪謙

    末澤参考人 今回こちらの委員会に招致されるに当たりまして、一九七五年十二月三日の大平大蔵大臣の答弁書、これはたしか官報で六十六ページほどございまして、ちょっと読み直させていただいたんですが、その中でも同じような表現がございまして、大平当時の大蔵大臣、元首相でございますが、防衛費も当然聖域ではないというふうにおっしゃっています。  ただし、私は、ある面、予算全体をより効率的な観点で、やはりコストとリスク、コストとベネフィットの管理をすべきだと考えておりまして、そういう面では、昨今のいわゆる地政学的リスクを含む世界の安全保障状況は相当変わってきているのも事実でございます。  また、先ほどの後年度負担でございますが、大量に発注すれば安く買えるのであれば、効率的な観点では妥当だ。つまり、後年度負担が大きいからどうこうではなくて、より効率的に、コストとリスク、コストとベネフィットの管理を私は徹底すべきだというふうに考えております。  以上でございます。
  73. 片岡剛士

    片岡参考人 歳出改革についてのお話ですけれども、軍事費については私は専門外でございますので、一般論として申し上げれば、名目GDPと呼ばれます名目所得自体はだんだんだんだんふえてきているんですね。ですから、この名目所得に対して、例えば、必要な歳出みたいなところも、もちろん現下の財政の厳しさもありますけれども、必要なところは適度にふやしていく、こういったところも必要なのかなというふうに思います。  あと、歳出改革ということで申し上げれば、先ほどもちらっとお話をさせていただきましたけれども、特別会計の改革といったようなところは、私は、実はまだかなり切り込む余地があるんじゃないかというふうに思っています。例えば外為特会もそうですし、その他にも特別会計はございますけれども、こうしたところは剰余金も含めてお金が非常に潤沢なところもありますので、これは足元財政状況を考えると合理化をするということも重要なんじゃないか、こういうふうに思っています。
  74. 安藤実

    安藤参考人 軍事費の問題というのは、これは一旦動き出せばそれ自体が非常に膨張する、そういう経費だと思っています。とりわけ継続費であるとか後年度負担だとか、いわゆる単年度主義の例外、そういうものを利用してふえていく、あるいは先取りをしていく、そういう経費なわけで、これは非常に危険だ。  私は、日本は憲法第九条をしっかり守って平和ということを世界に発信していく、そういう立場を守るべきだというふうに思っておりますので、そういう日本が軍事費をこの非常に財政事情の苦しい中であえてふやしていく、そういうことは非常に問題だというふうに考えております。
  75. 宮本徹

    宮本(徹)委員 時間になりました。終わります。きょうは、お忙しい中、本当にどうもありがとうございました。
  76. 宮下一郎

    宮下委員長 次に、丸山穂高君。
  77. 丸山穂高

    ○丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。  本日は、参考人のお三方の皆様、お時間を賜りまして本当にありがとうございます。私で最後でございますので、もうしばしおつき合いいただきまして、御質問させていただければと思います。ぜひとも忌憚のない御意見を賜りますよう、私からもお願い申し上げます。  本日、参考人の皆様方のお話を伺っておりまして、興味深く、なるほどと思うようなお話が幾つもございました。  一番なるほどと思ったものの一つに、たしか片岡参考人が言っていただいたと思うのですけれども、ギリシャの例を挙げられて、ギリシャでもプライマリーバランスの改善に取り組んだのだ、しかし、取り組んだ結果、財政を緊縮させて、それによって結局経済が悪化してしまって、そうすると、名目GDP比でプライマリーバランスが悪化してしまう、プライマリーバランスを改善させようとしたのに結果としてそれが反対に裏目に出てしまうという事例を挙げられていて、これは日本でも起こり得る可能性があるなというのは十分感じたところなんです。  少しその点について、片岡参考人からの補足なり細かいところを含めて、日本ではどうすればいいかも含めて、もしお話を伺えればと思います。よろしくお願いします。
  78. 片岡剛士

    片岡参考人 どうもありがとうございます。  私の資料の十ページ目と十一ページ目をちょっとごらんいただければと思いますが、二十分間の意見陳述のときに、時間の関係もありまして、かなりはしょってお話をさせていただいたんですが、ギリシャの事例ということで、その一といいますのは、名目GDP、失業率、就業者数、物価上昇率というところでございまして、赤い棒グラフで書いてございますのが、これは、いわゆるGIIPSというふうに言われますけれども、重債務国ですね。欧州の中でも債務が非常に悪化して苦しんでいる国ということで挙げさせていただいています。  特にギリシャといいますのが、名目GDPは五年間で二四・六%、要は四分の一が飛んでしまった、こういう状況であります。物価も、ここに挙げております欧州の国の中でギリシャだけ、二〇〇九年と比較しますと、二〇一四年というのは三・三%物価が下がった、就業者数も二二・四%減るということでありまして、いずれも悪化度合いは突出しているということですね。これは経済の悪化です。  次のページでございましたが、プライマリーバランスの名目GDP比、こちらは赤い棒グラフと緑の棒グラフという形で、真ん中の方にギリシャがございますけれども、プライマリーバランスが二〇一四年度黒字化していた国というのは、見ていただきますと、キプロス、エストニア、ドイツ、そしてギリシャ、そういった国々ですね。あと、欧州の国の中でも全ての国がプライマリーバランスが黒字化しているわけではないんですが、特にギリシャの場合は、マイナス一〇・二%から一・五%の黒字化になったということでして、相当財政を絞ったということですね。  ですから、さっき私が申し上げましたように、プライマリーバランスを黒字化すれば必ず、長期債務残高GDP比が横ばいから低下をしていって、財政健全化できるという話では決してない。やり過ぎてしまうと名目GDPが急減します。そうすると、債務残高が多少減ったとしてもGDPが大きく減るので、むしろ財政状況は悪化して発散してしまう。こういったような話がギリシャの事例として重要なお話だというふうに私は思っております。  以上です。
  79. 丸山穂高

    ○丸山委員 ありがとうございます。  このやり過ぎとやり過ぎじゃないかのラインというのがお話を聞いていてすごく大事なところだなと思ったんですけれども、そのラインについてはどのように理解すればよろしいんでしょうか。
  80. 片岡剛士

    片岡参考人 それはずばり、デフレの状況になるかならないか、こういったところだと思いますね。  ですから、日本の場合ですと、ずっとデフレ状況で、ようやく最近デフレから脱却しつつある、こういう状況になりました。ですから、こうなりますと、名目GDPも上がり、失業率も下がる、こういう好循環が二〇一三年に入って見えてきているわけですね。ですので、このときにプライマリーバランスの黒字化を目指してギリシャのように黒字化のペースを進めますと、そうすると、やり過ぎると、ギリシャが陥ったようなデフレになり、失業率は高まり、就業者数は減り、そして所得も減る、こういう悪循環に陥りますので、そこがやり過ぎかやり過ぎではないかというところの分水嶺といいますかデッドライン、分ける道だというふうに思います。  以上です。
  81. 丸山穂高

    ○丸山委員 つまり、デフレ下においてというところが要注意だということで、現に今の日本がそういう状況でございますので、そういった意味で、プライマリーバランスの黒字化というのは、常に、この委員会でも言われますけれども、非常に注意しながらこの点を議論しなければ逆効果になるという重要な御示唆をありがとうございます。  そういった意味で、財政再建にこだわり過ぎると、逆にそれとマイナス方向になるというのは、ほかの参考人の先生方はそのあたりをどうお考えになるのかを詳しくお伺いしたいんですけれども、末澤参考人はそのあたりをどのようにお考えになられますでしょうか。
  82. 末澤豪謙

    末澤参考人 まず、ギリシャのケースでございますけれども、私もかつてギリシャを訪問したことがございますが、ギリシャ財政問題の根幹は、ユーロ圏に加入する一方で財政は統合されなかった、これが根幹だと考えています。  かつて、一九九五年当時、私の記憶ですと、ギリシャ債務残高は大体五百億ユーロでございますが、財政粉飾が二〇〇九年の十月に発覚するわけでございますが、その段階では二千五百億ユーロ程度だったと思いますが、その間の増加分約二千億ユーロはほぼ全て海外からの資金流入でございます。つまり、ドラクマ時代に海外の投資家はギリシャ国債に投資しようと思う方はほとんどいらっしゃらなかったんですが、ユーロになるということで一斉に資金が入ったわけですね。  問題は、その二千億ユーロをギリシャ政府が何に使ったか。大半が年金の支払いだとか、二〇〇六年だったと思いますが、アテネ・オリンピックがございましたが、そのときのインフラ整備等に使ったわけですね。ただ、アテネ五輪で使ったインフラも、最近の報道にございますけれども、例えば、そのときの野球場、ベースボール場は全く使われてない、プールも使われていないということで、やはりそのときの資金を効率的に国際競争力を引き上げるために使わなかったのが、その後の財政粉飾の発覚によって、またリーマン・ショックがその前に起こっていますけれども、今のギリシャ財政危機を招いた。  そういう面では、やはりきっちりと着実に進めていくことが重要であって、長期金利も含めてですけれども、ふだん急に金利が上昇するということはないんですが、本当に厳しくなったときに市場は相当しっぺ返しをしてきますので、私は財政再建には特効薬といいますか魔法のつえはないと思うんですね。経済成長に至るような成長戦略を着実に、これは本当にゆっくりですけれども着実に進めることが必要ですし、あわせて、歳出歳入改革日本の場合、特にこれから少子高齢化に伴って社会保障のコストが相当膨らむと考えられますので、ここを進めていくしかないというふうに考えております。
  83. 丸山穂高

    ○丸山委員 ありがとうございます。急激ではなくて、ゆっくり着実にやることが根本として必要だというのは大事な視点だと思います。  そういった意味で、今回、震災の特例公債法ということで、震災というところでいうと、どうしても必要性があるんだなというのを強く感じてしまうところなんです、中身はもちろん詰めていく必要があるんですが。一方で、着実に財政再建をしていっているかどうかというのが、特例公債発行するにしろしないにしろ、観点として持っておかなければ、ギリシャのようになってしまうというところだと思います。  次に、安藤参考人財政再建をやろうとすれば逆に経済が悪化して、結局財政再建につながらないんじゃないかという片岡参考人のお話だったんですけれども、このあたりの議論に対して参考人はどのように思われますか、お伺いできますでしょうか。
  84. 安藤実

    安藤参考人 戦後の日本財政を見ていても、財政改革に成功したというのはほとんど例がないんですね。唯一成功した例はドッジ・ラインであったと思います。ドッジ・ラインの場合は、日本経済を国際経済へ復帰させる、そういう大きな目的があって、しかも、占領下にあった、占領軍の意向で成功した。  当時の財政問題について東京大学の大内兵衛先生は、日本人はできないんだというふうに言われているんですね。要するに、占領下にあって、占領軍の権威というか、そういうもとで初めて成功した、日本政府自身はそういう気持ちもないし能力もない、そういうふうに慨嘆されております。  その後の日本財政改革について、一つとして成功しておりません。これは日本人としては非常に残念に思います。ひとつこの機会に、この委員会を中心に財政改革を成功させてもらいたい、そういう希望です。
  85. 丸山穂高

    ○丸山委員 歴史的な視点からの御指摘、ありがとうございます。  確かに参考人がおっしゃるように、日本の歴史を見てみたら、大きく変わるときはどうしても外圧があって変わるということが多くて、国内から沸き上がるように大きな変革をなし遂げるというのは難しい国なんじゃないかなというのは歴史を見ていて思うんです。しかし、この現状を考えたときに、今参考人がおっしゃるような、内側から変えていくという視点は非常に大事だと思いますので、しっかりこの委員会でも議論していきたいと思います。ありがとうございます。  時間も短くなってきましたので、最後、軽減税率について少しお伺いしたいんです。  片岡参考人から逆進性の対策たり得ないという御指摘をいただいて、まさしく私もそのように感じているところなんですけれども、このあたり、軽減税率に限ったときに、私も経済畑なので、どうしても経済学的にこの手はないだろうという中で、このタイミングで与党側から軽減税率が出てまいりましたが、タイミングもしくはその手法を含めまして、ほかの先生方はどのようにお考えになるのか、お伺いしていきたいと思うんですけれども、末澤参考人はどのようにお考えになりますでしょうか。
  86. 末澤豪謙

    末澤参考人 私がきょうお持ちしました資料の二十九ページの右下に、消費税率、いわゆる付加価値税、VATの国際比較のグラフを載せております。ぱっとごらんいただきますと、欧州の諸国で消費税率、付加価値税率が二〇%前後の国では、この青い部分と赤い部分の差が軽減部分ということになるんですけれども、大半の国で軽減税率が導入されている。やはりこれにはそれなりの理由があるんだろうと思うんですね。  今回八パーから一〇パーにするに当たって、今回の軽減税率は意味があるのか、そういう逆進性に対して何か効果があるのかという御異論は重々承知しておりまして、私も、それだけ見るとそんな大きな効果はないのかもしれません。  ただし、実は税には三つ原則があると言われております。公平、中立、簡素ですね。この中で、特に中立、簡素で見ると、今回二パーのところで導入するのはいかがなものかという御議論があるのは事実だと思うんですけれども、ただ、欧州諸国等の状況を見ますと、私は、やはり行く行くは日本消費税率が二〇%前後に達する可能性は否定できないと思うんですね。そのときに、やはり日本の税についてのインフラをきちっとここで整備しておく必要はあるだろう。  ですから、今回、二%分ではございますけれども、もう一度、日本消費税の基盤、インフラをきちっと見直して整備をすることが、将来の安定的な、特に公平公正の部分、私は、日本方々というのは割とこういうところをすごく重要視する方が多いと思っていますので、むしろ、将来的な公平公正の見地をしっかり納得していただくためには、今回軽減税率を導入することは極めて重要というふうに考えております。  以上です。
  87. 丸山穂高

    ○丸山委員 他国の例を挙げられて、今後日本も二〇%近くなるというお話で、それを見越した上で今のタイミングから仕組みを整えていくことが大事だというお考え、なるほどというふうに考えました。  政府の話を聞いていると、二〇%に上げるとは口が裂けても決して言わないんですけれども、しかし、多くの方が今の財政状況を考えたときに将来的には上がる可能性があるとお考えになっている中で、今の段階からというのは、確かに一つの視点としてなるほどと感じさせていただきました。  そうしましたら、安藤参考人にもお伺いしたいんですけれども、軽減税率についてどのようなお考えをされているか、お伺いできますか。
  88. 安藤実

    安藤参考人 これは、消費税の税率を引き上げていく、そのためのこけおどしだというふうに思っています。  軽減税率と言うけれども、据え置き税率なわけですね。要するに、我々は現在を基準に考えますから、軽減税率というのは現在の税率というものを下げるのかと普通思ってしまうわけです。ところが、据え置きだと。そういう意味で、これはこけおどしであるというふうに思います。軽減税率と言うならば、イギリスのゼロ税率のようなことをやるべきだ。そうでない軽減税率はこけおどしだ、そういうふうに思っています。
  89. 丸山穂高

    ○丸山委員 非常に厳しいお言葉で、こけおどしとまでいうお話がありましたけれども、特に他国の、イギリスの例と比べられていた。やはりこの消費税も、どうしても欧州の例と比べるという議論がこの委員会でも多うございます。  例えば、私は、新聞が軽減税率に入っているのはどうしてかという話を常にお話ししているんです。私はおかしいとずっと思っているので取り上げるんですが、しかし、マスコミの皆さんは自分なので、決してニュースにはならないんですけれども。  しかし、そうした中で、新聞がなぜ入っているのかというときに、ヨーロッパで入っているんだという議論を政府は言うんですけれども、いや、ヨーロッパは新聞以外も入っているでしょう、なのに日本だけ、食品があって、間が飛んで新聞だけ、書籍や雑誌も入らず新聞だけ入っているということに対して、私は、すごくおかしいということと憤りをお話しさせていただいているんです。  済みません、脱線してしまいましたが、新聞はさておき、お話で触れていただいてもいいんですけれども、今のお二人の参考人のお話を聞いていただいて片岡参考人はどのようにお考えになるのか、もう一度お伺いできますでしょうか。
  90. 片岡剛士

    片岡参考人 どうもありがとうございます。  軽減税率につきましては、私は、こう言うと語弊があるかもしれませんが、全品目軽減税率には賛成しております。ですので、そういう意味では、例えば特定の品目を軽減することで、それが逆進性の緩和策になるという状況は、特に現状の食費の動向とかデータとかを見ると、ちょっと厳しいなというふうに感じている次第でございます。  新聞がなぜなのかという話はありますけれども、私自身も非常に批判的なんですが、例えばメディアとか、社会の公器であるのは確かに事実だと思うんですけれども、若い方で新聞を読んでいる方というのはそんなにいないような気がするんですね。そうすると、では、必需財としての扱いが新聞というものに付されて本当にいいのかどうかというところは、これはもう少し検討していただければなというふうには感じるところでございます。  以上です。
  91. 丸山穂高

    ○丸山委員 ありがとうございます。  そのお話も前回の委員会でお話しさせていただきまして、記憶が確かであれば、十代の新聞をとっている率が男性七%、女性四%だそうで、二十代もたしか一〇%台。九割近い二十代、十代の方が新聞をとっていないというのが今の日本状況ですね。年齢を見ても全世代が公平にとっているとは言えませんし、所得で見ても、低所得の方はやはり新聞を真っ先に切られるんです。所得が低い場合、普通に考えれば、今、ネットも見られる時代に、もう新聞はとらないよという方が普通であるのに、なぜか財務省だけ、家計調査という平均の調査を出してきまして、結局、平均で見たら逆進性があるとかいうよくわからない理論で押し通しているんです。  そういった意味で、新聞一つとってもおかしいと思うんですけれども、私は、先ほど片岡参考人からありましたけれども、全部軽減税率にしたらいい、つまり標準税率を下げればいいというお話がありましたけれども、それも考えるべきだなという立場の方でございます。しかし、現状を考えて、将来的にもし税率が伸びるのであれば、今の段階から制度を整えなければならないという末澤参考人のお話も、一つ見方として、なるほど、そういう考え方もあるなというのを強く考えさせていただいたところです。  いずれにしても、この財務金融委員会を中心にこの税制の議論をしっかりやっていかなきゃいけませんし、もしこの軽減税率が仮に成立したとしたら、恐らく毎年毎年、どれが入ってくるんだとか、また、税率を今後どうしていくんだみたいな議論を細かいところまでやらなきゃいけない委員会になってくると思います。しかし、先ほど安藤参考人からありましたけれども、しっかり財政再建の行く末も見据えた上で長期的な議論もしろというお話、御示唆もありましたので、細かい話だけじゃなくて、全体の長期的な、日本としてどこに向かうのかという財政の議論もしっかりこの委員会でやっていきたいと思います。  これで時間になりましたので、私からの質疑を終えさせていただきます。ありがとうございました。
  92. 宮下一郎

    宮下委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十三分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  93. 宮下一郎

    宮下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学経済学部教授竹森俊平君、中央大学法科大学院教授森信茂樹君、全国商工団体連合会副会長太田義郎君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人各位からそれぞれ二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。  それでは、まず竹森参考人にお願いいたします。
  94. 竹森俊平

    ○竹森参考人 どうも、慶應大学の竹森です。  私は、こういうところへ出てくることが余りないので、上がるといけないと思いまして、一応レジュメを書きましたが、このとおり読むわけではないかもしれませんので、申しわけございません。  まず、日本経済についての現状認識を申し上げたいと思います。  クルーグマンが、昨年九月にお会いしたんですけれども、自分は、日本経済危機に対して非常に手おくれな政策をしてきたということを、政府、日銀に対して批判をしてきたけれども、リーマン・ショック以降の世界経済の落ち込みに対してほかの国が何をやったかを見てみると、日本はむしろ立派だった、自分は天皇に謝らなければならないなんというようなことを、彼らしい軽い発言をしているわけであります。  九〇年以来、これだけ長期にわたって成長が低いということであれば、普通の国であれば、財政破綻であるとか政治の混迷であるとか、経済組織が壊れて社会不安が高まるといったことが起こって当然なんですが、日本の場合は、そのような兆候が全くないわけではなかったが、概して言えば、社会も経済も政治も安定しているわけですね。財政も、直近で財政破綻が起こるということは余り言われていないということであります。  次のページですが、しかし、停滞の中で安定するというために、日本経済も代償を払った。自然環境が変わって過酷な条件に長いことさらされると、生物は変異を遂げる。日本も、奇跡の高度成長を続けていた状態から低成長に環境が変化して、日本の企業の体質に変化が起こったということであります。  企業セクターにおいて強気な行動をとるとか、金融機関が大胆な貸し出しをするとかしますと、失敗することが多いので、金融機関も製造業の企業も大胆な行動を慎むようになった。ともかく現金を抱え込んでいる限り倒産しないで済むというような、それが一種のビジネスのキーワードになって、今でも若干、かなり企業収益が改善しているんですが、設備投資、賃上げ、雇用について消極的である。  加えて、今はちょっと違いますが、昨今の円高が進んだときにアウトソーシングが進んだということがございます。  次のページで、目指すべき経済政策の方向ですが、当初は、景気が低迷しても経済、社会の秩序が特にほころびがなかったということで、日銀、政府の方も安全策をとるということを考えたことがあるかもしれない。しかし、これからは日本は低成長に移るんだということを何度も言われましたけれども、高度成長をもとにしてできた社会というものが低成長になるということは、大変なレガシーコストを抱え込むことになって、これでは破綻が目に見えている。低成長が続くことは財政経済、社会の安定を脅かすという認識ができたので、安倍政権のもとで、アベノミクスと呼ばれている政策の転換があったということであります。  私は、やはり成長を重視するべきであるけれども、その際、鍵になってくるのは設備投資だと思います。  アベノミクスの目標はデフレの解消だというようなこともよく言われます。そういう話をすると、デフレを解消するには、まず成長が上がらないとなんというようなことを言う人もいますけれども、これは本末転倒であって、デフレを解消しなきゃいけないのは、それがないと成長が呼び戻せないからであって、デフレのもとでも成長が起こるぐらいだったら、デフレなんかそのまま続いたっていいというのが私の認識であります。  そういうことを考えますと、設備投資の本格的な復活があったときに初めてアベノミクスは成功を見たというふうに言えるんだろうと思います。  次のページですが、どうやったら設備投資を促進できるかというと、一言で申しますと、あめとむちですね。英語だとキャロット・アンド・スティックで、あめではなくてニンジンなんですけれども。  例えば、日銀の金利引き下げを例にとってみましょう。  それは、金利が下がるので、安全な投資に置いておいても金が稼げないということなので、もっとリスクを求めてどこかへ資金を動かせ、そういう意味でのむちとしての効果がございます。昨今日銀がとっているマイナス金利というのはそれを一歩進めたもので、そこに現金を寝かせておくとペナルティーがかかるというので、どこかへ動かせというむちが働くわけですね。  他方で、金融機関がどこかに高い収益がないかと探して海外に資本が流れるとすると、それは多くの場合、ドル買い・円売りを生みますから、円安が起こってくるわけです。円安というのは、企業収益を改善させることを通じてあめとしての効果を持つということであります。これまでのところ、かなりそういう円安に依存していることがあって、円安で企業収益が上がった後は、それが賃金の上昇に結びつくか、投資の上昇に結びつくかという期待が抱かれていたということであります。  次のページに参りますが、では、あめとして、これまでほかの政策を安倍政権は用意しなかったかというと、そういうわけでもなくて、特に環太平洋経済連携協定、TPPは、これまでの通商政策の進行がゆっくりしていたので、それに比べれば画期的な進歩なんですが、しかし、残念なことに、今、アメリカの議会がそれを批准するという体制にないために、たなざらしにされているというのが問題だと思います。  昨今の世界経済の不安もよく議論されていますが、私も最初は中国と考えたんですが、今の問題はむしろ中国よりもアメリカであって、アメリカがリーダーシップを期待され、しかも、TPPのような具体的な政策があるのに、それを実行しないということが問題なんだというふうに考えております。  具体論に行きますので、セーフヘイブンによる円高効果というものを次のページに書きましたが、そこを飛ばしまして、ちょっと法人税改革に行かせていただきます。  今回の所得税法の一部を改正する法律案について、二つの政策に注目したい。法人税改革と消費税、特に軽減税率であります。  今申しましたように、高い経済成長率の実現のためには設備投資が鍵になります。法人税率を二〇%台に引き下げるということは、税引き後の企業収益率を改善させるということを通じて設備投資のメリットを引き上げますから、あめとしての効果はもちろん期待できます。  加えて、昨今の経済回復でボトルネックになったのは、余りにも海外へのアウトソーシングが進んだために、輸出の量の拡大が目覚ましいとは言えないということでありますから、法人税率の引き下げは、アウトソーシングした企業を国内に呼び出す効果もあるということであります。  次のページでありますけれども、他方において、税収入についての中立性の観点というふうに言われていますが、そこから外形標準課税が同時に拡大されることが決まったというわけであります。  所得を実現していない赤字企業であっても、資本金が一億円以上の場合は付加価値に応じて課税される、そこの部分が大きいわけですね。それが拡大されるということであります。これが企業行動へどういう影響を持つかというのが重要な点であります。  これは、どの企業だって最初から赤字を目指している企業はないんだろうと思いますが、事業がうまくいかずに赤字に転落した場合に、事業面で赤字が出たというのに加えて付加価値割の税負担が加わるということになります。これは、赤字になった場合のリスク、損失が拡大するということであります。  今赤字である企業を考えてみますと、今後もまた赤字という可能性は高いわけですから、その場合、生産規模そのものを抑えて付加価値を減らそうとするだろう、スケールを減少させようとするだろう。したがって、外形標準課税の拡大に対応して、赤字企業は、徐々なのか急なのかわかりませんが、退出をしていくということであります。  黒字企業にとっても付加価値分の課税というのは事業拡大のマイナス効果を持ちはしますけれども、しかし、この場合には、成功した場合の所得に対して課税が少なくなり、実効税率が軽減されるということですから、全体としてはあめの効果の方が強く働くということだろうと思います。  次のページに参りまして、したがって、所得割を減税し、付加価値割を増税するというコンビネーションを行いますと、赤字企業が退出すると同時に黒字企業が生産を拡大するという、これを経済学の言葉で言うと創造的破壊につながる効果が見込めるというわけであります。こういう企業の新陳代謝であるとか創造的破壊が実際に生まれるためには、ミクロ面での整備ももちろん必要だと思います。これは財政委員会で話すことではないと思いますが、そういう問題もあるだろう。  こういうことが成功するかどうかというのは、何か一つひな形があるとイメージがつかみやすいんですが、今、非常にテストケースとなるようなものがあって、それは、今まだ検討中である、シャープを鴻海が買収するという案件でございます。これは、まさにこの改革に合わせてこういうことをやっているんじゃないかと思うぐらいにうまい話であります。  一方で、シャープは昨年、資本金を一億円以下に下げて減資した。そうすれば赤字企業に対する外形標準課税を免れることができるというようなことがございましたから、この外形標準課税が赤字企業に対して何かしなきゃいけないというインセンティブを高めたことは確かだと思います。  他方で、鴻海も、日本企業はコストが高いとかシャープの負債があるとかいう事態の中で、日本の企業の買収をためらっていたところもあるのかもしれませんが、今後、法人税率が実効的に下げられるのであれば、鴻海は黒字を出すことに絶対の自信を持っていますから、プラスになるというふうに踏んでいるんだろう。  したがって、こういう買収は、もし成功したとすれば、まさにここで考えられている改革案の具体的な実現というふうに言うことができるだろうと思うわけであります。  さて、一番コントロバーシャルである軽減税率について、議論が分かれている軽減税率について申し上げます。  消費税の経済理論ということで申しますと、今でも財政学の教科書の一番最初に出ているのは、夭折した天才経済学者であったフランク・ラムゼーの一九二七年の論文の考え方で、これはラムゼー・ルールとして知られております。  そもそも私は、なぜ昨今の消費税の議論で、一流の財政学者によるものも含めて、ラムゼー・ルールが全く議論されていないのか、それが不思議でしようがなかったわけです。私は、財政学者のグループというものには属していなくて、財政学会というものはあるんでしょうが、それにも属していないんですが、外の方から見ていると、どうもその点が不思議でしようがないというわけであります。  一般的には、経済学者というのは価格体系のゆがみが嫌いだというのは本当であります。私も嫌いであります。何か線が横に曲がっているのを見るだけで嫌なわけです。例えば、国際経済学が私の最初の領域でありましたが、関税をかけるときにはでこぼこがないように、滑らかに全部一律にかけろというようなことを教えております。  ところが、ラムゼーに言わせると、消費税については一律の課税がかえって消費のゆがみを拡大するというわけで、消費税にはでこぼこが必要だということであります。  なぜそういうふうにラムゼーが言っているのか、それを理解している財政学者というのはひょっとしたら少ないのではないか。周りの者をつかまえて聞いてみましたら、誰もわかっていないんですね。  次のページになりますが、ラムゼーの論点は、消費財に対する課税はする。一方において、その代替案として、何も消費しないでごろごろしているということがあるわけですよ。これを経済学で余暇といいますが、それに課税をしない場合、一部の消費は余暇によって代替される、何もしないことによって代替される、それで不当に消費が下がるんだというわけであります。  したがって、ラムゼーの議論によれば、余暇への課税がもし可能だとすれば、そのときは一律の課税がベストだということになります。  例えば、ごろごろに置きかえられるものとしては、読書、音楽鑑賞、美術などですよね。これが文化。それに対して、食品のようなものは、ごろごろしていてもおなかはすきますから、代替は少ないわけであります。  したがって、ラムゼーの場合は、文化への消費税率は低目に抑えて、食品の消費税率は高目でいいというのがその考え方であります。次のページに参りまして、したがって、消費税についての基礎理論というのは、一律税率が経済をゆがめるということを言っているわけです。  なぜこれが財政学者によって余り取り上げられないかというと、文化に低課税、食品には高課税というのは逆進的だということで、このことは議論されるけれども、こういうことを言っている人がいるけれどもねというだけで、そのままにされているわけであります。  ところが、文化というもの、特に活字を読む活動について申しますと、今その文化は、ごろごろしていることだけではなくて、ほかのことによっても重大な挑戦を受けている。それはインターネットであり、スマホであります。  そういった媒体を通した情報の収集というのは、消費者の立場からは無料なわけです。実際には無料ではなくて広告料収入で賄っているわけですが、無料というふうに受け取られている。したがって、消費税率が活字媒体に対して上がっていく一方で、スマホ、インターネットについてはただという認識があると、そういう媒体についての需要がどんどん減っていくということであります。  こうした文脈から、次のページでありますが、今回の税法改正で新聞についての軽減税率が提案されていることを私は高く評価いたします。  なぜかと申しますと、新聞がなくなったとしますと、一般国民はテレビとかインターネットのような広告収入によって賄われる媒体で情報を得るようになる。その場合、そういう媒体は、スポンサーはアクセス数や視聴率だけに注目して出資を決めるから、一つのテーマについて掘り下げた分析といったような新聞だけによって得られる有益な情報は、もはや一般国民の手に届かなくなるというわけであります。  それで、書籍については今後の軽減税率の検討課題とされているので、それを私は評価しますが、ぜひそれは前向きに検討していただきたいというふうに考えます。  一律税率が認められない、要するに一律税率を変えるのであれば、変える税率の中には、累進性というものを考えて、食品を入れるということも認められる。食品の課税が高くなった場合、低所得者層は本を買うお金がなくなりますから、本を読まなくなる。私にとっては、結局、食品についての消費税率の増加は、本を読まなくなる、特に低所得者層が本を読まなくなるという問題につながるんだと思います。  今回の意味は、ともかく軽減税率というものを導入することでありまして、今後、軽減税率が定着した将来を考えてみますと、その場合は、一つの税率を余計に上げる一方、ほかの税率を下げるというような調整ができますので、いろいろな選択肢が広がってくるんだろうと思います。  ちょうど二十分になりましたので、ここまでにさせていただきます。どうも失礼しました。(拍手)
  95. 宮下一郎

    宮下委員長 ありがとうございました。  次に、森信参考人にお願いいたします。
  96. 森信茂樹

    森信参考人 中央大学法科大学院の森信でございます。  きょうは、私は、消費税の軽減税率に的を絞ってお話をしたいと思います。  まず、私は、消費税率一〇%引き上げ時の軽減税率導入には反対の立場であります。  一七年四月からの消費税率一〇%引き上げ時に軽減税率を導入することにつきましては、次のような問題があると考えます。  第一に、所得再分配政策上の効果です。  軽減税率は、高所得者ほど多くの恩恵が及ぶので、低所得者対策ではないという点であります。加えて、今回、軽減税率一兆円の財源として、低所得者対策である総合合算制度の取りやめが予定されていますが、これら二つをあわせて考えますと、政策の軸が低所得者から高所得者へシフトしている、こういうことになると思います。これまで推し進めてきた税・社会保障一体改革の理念に逆行するのではないかと思います。  二番目の問題は、軽減税率の実施に伴い、国民全体の手間、コストが増大するということです。  そもそも消費税の長所は、収入から経費を差し引いて計算する所得税と比べて、納税コスト、徴税コストが少ないという点であります。  経費というのは法律で定めた概念で、税務当局も納税者も、この概念をめぐってはいろいろ争いがあるところでございます。しかし、消費税にはそういう問題がないということです。  これが軽減税率の導入により、区分経理をする必要が出てきます。納税義務者である事業者だけでなく、消費者や国、税務当局のコストも増加します。外食サービスにおけるイートインとテークアウトの区分は今も欧州諸国で悩みの種となっており、今後、我が国でも同様の問題、混乱が生じることが予想されます。  また、複数税率による益税や不正の拡大も予想されます。  このようなコストは、全て最終的には国民の負担になるわけです。  三番目に、今後、軽減税率の適用拡大をめぐって利権型政治が繰り返される可能性が高いという問題があります。  既に、医療、これは社会保険診療報酬ですが、それから住宅などが、今後の軽減税率の導入を目指して世論喚起を進めている動きがあります。かつて行われていたような陳情合戦、利権政治が復活し、政治と金の問題がまたぞろ大きな問題となりかねません。欧州諸国では、政党の選挙マニフェストに軽減税率の拡大をうたうという例が多々見受けられますが、今後、我が国でも同じようなことが懸念されると思います。  二〇一四年の六月、我が国でOECDが主催しましたVATフォーラムが開催されまして、先進諸国の税制当局者が一堂に会しました。私も呼ばれてその場に参加しましたが、その場では、軽減税率は極めて効率の悪い制度であることが共通の話題となりました。  OECDの事務局、それからIMFのエコノミストなどが、欧州の軽減税率、非課税制度は消費税制度の効率性を損なっており、なるべく縮小すべきだという見解を述べ、参加者全員が賛同し、プレスリリースに次のように書かれております。「低所得者世帯の負担を緩和するため、軽減税率を導入している国もあるが、消費税グローバルフォーラムにおける議論においては、軽減税率は、低所得者を支援する方策として、対象者を限定した給付措置に比べると極めて非効率であるということが確認された。」と。これはプレスリリースにちゃんと書かれております。  また、その場で会いましたパスカル・サンタマンというOECDの租税委員会事務局長、私の友人ですが、彼と雑談した際に、私に、軽減税率についてはドント・フォロー・ヨーロッパというふうにアドバイスをしてくれました。  さて、私が最も問題だと考える点は、軽減税率を決定する際に、その財源もあわせて国民に提示すべきだということですが、それが提示されていないという点です。軽減税率という減税部分だけを国民に見せておいて、その財源、つまり増税部分は参議院選挙後に議論するというその発想、手法は、私は国民を愚弄しているのではないかと考えます。  本来の議論のあり方は、一兆円の軽減部分については消費税の標準税率を引き上げることにより補填するということだと思います。私の目の子の計算では、軽減税率を導入するのであれば、標準税率は〇・五%引き上げて一〇・五%にならなければつじつまが合わないと思います。そもそも消費税は全額社会保障財源に充てられる目的税なので、こう考えるのが筋ではないでしょうか。  つまり、国民に、標準税率一〇%か、標準税率一〇・五と軽減税率八%かの選択肢を示して、消費税改革法の選択肢である給付つき税額控除とメリット、デメリットを比較しながら議論することが本来の議論のあり方だと思います。しかし、今回行われてきた議論は軽減税率導入賛成か反対かだけでした。このような議論の方法では、国民は減税である軽減税率に賛成することは目に見えております。  最後までこのような議論に終始したことの責任の一端は、私は、新聞の報道ぶりに問題があると考えています。  新聞業界は、みずからの新聞への軽減税率の適用を与党に長年要望してきました。したがって、軽減税率の代替案である給付つき税額控除についてのメリット、デメリットなどを議論する機会はほとんどありませんでした。その報道は公平、中立なものからはかけ離れていたと思います。  今後も、軽減税率の適用を受けるということで、新聞の報道には公平性、中立性に疑念が持たれる可能性がありますが、そういうことのないような報道をお願いしたいというふうに思います。  では、軽減税率にかわる低所得者対策としてはどのような政策が考えられるでしょうか。税制改革法は給付つき税額控除を挙げていますが、その具体案を考えてみたいと思います。  その際、ヒントとなるのはカナダの給付つき税額控除です。今お手元に配付しております資料の二ページを開いていただきたいと思いますが、このカナダの制度は、世帯収入大体三百万円以下の者に対して、大人一人当たりざっと二万円強、子供はその半分を、家族の人数に応じて定額で給付する制度です。  この給付額というのはどうやって計算したかと申しますと、低所得世帯の基礎的な消費支出に係る消費税額を計算したものであります。納税者が所得税申告時にこの控除の適用を希望する旨の申請を行って、その申請に基づいて、当局が有資格かどうか所得条件などを審査して、納税者の口座に直接給付額を振り込むようになっておりますので、不正もほとんどありません。  これは、現在我が国で行われている児童手当、これも所得制限がありますが、これと基本的には変わらないわけであります。決して複雑でも面倒でもありません。現在、自治体を窓口にして簡素な給付措置が実施されています。そのインフラがそのまま活用できるわけです。本年一月からマイナンバーを導入したわけですから、世帯の収入を合算して低所得者世帯に給付するということも可能になります。制度設計は国が行い、実際の給付事務は自治体が行うということであります。  カナダの制度にはもう一つ注目すべき点があります。この一番下の単身者のラインを見ていただきたいんですが、これが途中から右肩上がりになっております。これは、勤労所得に応じて給付額がふえるということにより、勤労インセンティブが働くように設計されております。つまり、これはワーキングプア対策の役割も担っています。このような制度を我が国に導入することは、単に消費税の逆進性対策ということだけではなくて、ワーキングプア、非正規雇用層への支援にも役に立つと思います。  これを参考にしつつ、三ページの図でございますが、これは私が勝手につくった案でございますが、例えば、三百万円未満の世帯に一人当たり四万円、大人も子供も四万円です、三百万から四百万未満の者には一人当たり二万円、これを定額で給付する案をつくってみました。  この制度の必要財源は、三ページに書いてございますが、大体五千四百億。ただ、年金生活者には給付をしないということでつくっております。なぜならば、年金の場合には、物価スライドを通じて消費負担が相殺されるというふうに思っております。  次の四ページでございますが、この両方の案、つまり、軽減税率と、この軽減税率で失われる一兆円の半分の財源でつくりました、日本型といいますか、私の給付つき税額控除の案を比較いたしますと、四ページのような図になります。  この緑のラインが消費税率一〇%のときの世帯年収ごとの消費負担割合でございます。これが右肩下がりになっている。逆に向いているじゃないか、普通、税の負担は累進構造で右肩上がりじゃないといけないのではないかということで、逆進性と言われているわけですが、これが食料品の軽減税率を入れますとどうなるか。これは紫のラインでございまして、ほぼ下に少しずつ平行移動するというふうな形になるわけでございます。  これが、先ほどの給付つき税額控除の案を入れますと、この赤いラインになりまして、一部は累進になっていく、つまり逆進が完全に累進になるというふうな効果があるわけです。  そういう意味においても、この制度の方がはるかに簡素で効果があるというふうに私は考えております。  以上述べてきましたように、軽減税率で失う一兆円の社会保障財源があれば、単なる低所得者対策だけでなくて、子育て支援や非正規雇用、ワーキングプア対策にも活用できる給付つき税額控除ができます。百三十万円の壁と言われているパート労働者の問題もこれによって解決することができます。  我が国の経済を取り巻く環境はますます悪化しておりまして、国内経済に目を転じても、中国経済の不振や円高による企業業績の下振れが生じており、個人も実質賃金が三年連続でマイナスとなるなど、アベノミクスのほころびが目立ってきております。  このような状況のもとでは、政策の軸を高齢者から若年層、勤労世代に移し、少子化対策により多くの財源を振り向けることによって、非正規雇用の増大に伴うワーキングプアへの抜本的な対策を行うこと、このような政策こそが経済を下支えするのではないかと思います。  実は、ワーキングプアについての整合的な政策を持っていないのは、私は、先進国では日本ぐらいだと思います。アメリカでもイギリスでもフランスでもオランダでも、どの国でも給付つき税額控除でワーキングプア層というものを、勤労インセンティブを高めながら対策をとっているわけでございます。  最後にもう一つ、益税と不正、それからインボイスの問題について述べたいと思います。  軽減税率導入となれば、二つの税率を区分して経理する必要が生じるので、インボイス、適格請求書の導入が必要になります。売り上げと仕入れのあらゆる取引につきまして、適用税率ごとの税額を算出して消費税額を計算する必要があります。  インボイスには、適正なものかどうかをチェックするために、VAT番号、登録番号の記入が義務づけられます。このインボイスには事業者の抵抗が強いと言われており、今回の法案でも二〇二一年まで導入が先延ばしされております。  しかし、長年、欧州諸国でインボイスを実際に自分の目で見ていろいろインタビューをしてきた私にとりましては、これは大きな誤解であります。  インボイスというのは、まず第一に、消費税に伴う益税とか不正を防止する大きな役目を持っております。しかし、それだけではなくて、それ以外にも大きなメリットを持っているわけです。  それは、まず第一に、軽減税率導入に伴う複数経理、この納税計算を簡素にするという役目です。  それから、次に大きな役目としては、事業者間の価格転嫁を容易にするという大きなメリットがあります。  これは、図五でインボイスの役目を図示しておりますが、時間の関係で、もし御質問があればお答えしたいと思いますが、基本的には、インボイスがあれば、事業者間の取引は、その消費税の額だけ、この五ページの図でいえば、1、2、3と行って買い手は売り手に消費税を支払いますが、売り手はそれを納税する、その納税を待って国は控除する、この三つの三面等価がきちんと行われるので、消費税額分だけちょっとまけてくれよというふうな、日本で行われているような直接税的な感覚というものが全く排除されます。したがって、インボイスがあれば事業者間の価格転嫁というのは極めてスムーズに行われる、これは非常に大きなメリットでございます。  それから、インボイスの導入は二〇二一年四月からとなっていますし、また、その後六年間はインボイスの出せない免税事業者からの仕入れについても一定割合で税額控除ができることになっております。つまり、この間は益税を黙認することになると思います。  インボイス制度が導入されると免税事業者が取引から排除されるといいますが、これも間違いです。実際、欧州諸国の例を見ますと、免税事業者は、みずからの特権を放棄して課税選択をしております。その理由は、課税選択をした方が仕入れ税額控除ができるから有利になるからです。  また、事務手間は、インボイスがあるから、そのインボイスを集めておいて、売り上げに係る消費税額と仕入れに係る消費税額をインボイスで足し算をして、あとは引き算をすればいい。足し算二回、引き算一回で消費税額が計算できるわけです。  こういうことで、私は、インボイス制度の導入はもっと早く行うべきだと思います。  消費税制度というのは、事業者、消費者、国民全員の信頼の上に成り立っている制度です。その信頼性を損なうような特例措置、例えば免税事業者からの仕入れ税額控除を認めるということは速やかに廃止することが必要だと私は思います。  以上、いろいろ述べましたが、消費税軽減税率を消費税率一〇%引き上げ時に導入するということにつきましては、私は反対の立場であります。  以上です。ありがとうございました。(拍手)
  97. 宮下一郎

    宮下委員長 ありがとうございました。  次に、太田参考人にお願いいたします。
  98. 太田義郎

    ○太田参考人 私は、太田義郎と申します。  名古屋市内の中村区で米穀業を五十年以上やっております。いわば町の米屋のおやじであります。今回、自営業者の代表として意見表明の機会を与えていただいたことは大変ありがたく、感謝申し上げたいと思います。  私は、全国商工団体連合会の副会長をしております。私どもの団体について一言だけ御紹介をさせていただきます。  私どもは、私の業種であります米屋だとか酒屋、肉屋、八百屋はもとより、町の飲食店、それから建設業者、そして物づくりに携わる町工場など、異業種で構成されており、全国に約二十万人の中小業者が組織をされております。  何よりの特徴は、その中でも五人以下の小規模の事業者と個人業者を中心に構成をされている点であります。そのような町の事業者の営業と生活、諸権利を守り、社会的、経済的地位の向上を図ることを目的に、この六十五年間、終戦後からずっと活動してまいりました。  本委員会で審議をされている所得税法の一部を改正する法律案には、消費税の軽減税率導入のための消費税法の一部改正が含まれております。二〇一七年四月に予定される消費税率一〇%への増税と同時に、一部の品目を現行税率の八%に据え置く、いわゆる軽減税率を導入するというものです。この改正案はぜひ取り下げていただきたい、廃案にしていただくようにお願いしたいと思います。  この点について、なぜなのかという理由を三点述べたいというふうに思います。  理由の第一は、軽減税率の導入は、適格請求書等保存方式、すなわちインボイスの導入が前提とされています。  インボイスの導入は、課税業者に新たなる膨大な事務負担を負わせるものとなります。中小業者の経営を直撃するものとなるからです。レジ変更だけで数十万円の負担、軽減税率で八万店が消滅すると述べている経済アナリスト、東京商工リサーチの方からこんな意見も寄せられております。  先生方はよく御存じのように、今の経済環境は引き続き大変厳しい状況が続いております。先日発表されましたGDPマイナスが続いております。デフレを脱却したとは言いがたいというふうに思います。  二月二十三日に発表された全国中小企業団体中央会の一月の中小企業景況調査によりますと、一月のDIは全指標で悪化し、中でも売上高DIは前月比マイナス一〇・六ポイントになっております。世界的な株価下落に加え、円相場も上昇傾向にあるため、内需のさらなる縮減を懸念する声も高まっております。中小企業の先行きは不透明で、一層増大しているとここで述べられております。  こうした中で、軽減税率導入は、中小業者にいわばどえらい事務負担を要求することになります。複数税率に対応するためのレジの導入、あるいはシステムの仕様変更、値札の変更、税率区分集計など、事務負担が求められます。人件費もかさみます。一人、二人の小さな商売でも、今の実務の二倍、三倍の時間がかかると言われております。夜中まで伝票と格闘しなければならないことになるでしょう。  政府は、レジの導入には二十万円の補助やシステム変更についても助成すると言われておりますが、問題は、日々の実務負担がふえて煩雑化するということです。私について言えば、業務用のお米の配達の伝票四枚複写を毎回発行し、それを長期間保存し、整理して、その実務だけでも大変になります。  私ども中小業者というのは、地域で生まれて育って、こよなく地域を愛して過ごしてまいりました。営業をやっているだけでなく、町の町内会の役員をやり、消防団をやり、防火をやり、防犯をやり、いわば営業をやりながら町のコミュニティーの中心になっております。私も、毎週火曜日の朝、学校へ行く子供の見守り隊の隊員として、町内会の役員として、地域に貢献をし、頑張ってきております。  ほとんどの業者はインボイスなど知らないのが現状です。聞いたことがない、そういうのが現状だと思います。日本には、商習慣上、全くこういうものはありません。税の知識も不十分な中に、このような複雑な仕組みを押しつけること自体が問題だと思います。新たな事務負担に耐えられず、廃業や倒産に至る業者がふえることになることは間違いありません。新規開業の若い芽も出なくなるのではないのかという心配があります。  理由の第二は、免税業者を取引から排除するという問題です。  本委員会でも御審議されていますように、全事業者八百二十五万者のうち、売り上げ一千万未満の免税業者というのは五百十三万者に上っております。インボイスの導入は、この免税業者を取引から排除するという大変大きな問題があります。免税業者は、免税でありながら課税業者になるか、あるいはインボイス不要なBツーC、つまり、直接消費者相手の商売に特化すればいいのではないかという議論もあるようですが、問題は、現場ではそんなに簡単なものではありません。  そこで、幾つか事例を紹介させていただきます。  まず第一です。  山梨県の笛吹市の電気工事業、この人は個人でやっております。免税業者であります。したがって、税金八%をいただいていないという方です。創業四十年、お客さんは個人宅や工場、工務店です。得意先には、地域の名産品である和菓子を製造している店も含まれています。インボイス制度が導入されると、その得意先からは適格請求書が多分求められる、本人はそう言ってみえます。売上高の三、四〇%をそこで占めております。得意先を失うことはできないので、免税業者でありながら、課税業者の選択を本人は考えている。そうすると、今まで消費税をもらっていなかった個人宅や工務店にも消費税を今になって求めるということになります。当然価格は高くなりますので、影響は出るだろう。果たして消費税納税ができるのかと考えると、それも厳しい。どっちを選んでも苦しい状況に追い込まれる、困ったなと本人は言ってみえます。  次に、岐阜の方の例です。  岐阜で三十五年間にわたって、夫婦二人でお持ち帰りのすし店を営んでみえる方です。この業者は、お客のほとんどは個人なんです。しかし、近くの観光ホテルやスポーツ団体からまとまった注文があります。そういった個人以外の売り上げが約一五%ですが、みずから進んで課税業者にならない限り、この一五%のお客さんは消えてなくなるということになります。営業が成り立たない、困ったと言ってみえます。  このように、免税業者は個人だけを相手に商売をしているわけではありません。法人や課税業者のお客さんとの取引も一〇%とか三割とかあります。それが営業の存続のためにはなくてはならない売り上げの一部なんです。課税業者になるのかBツーCでいくか、選択は免税業者にとって大変悩ましいものになり、結局、どちらを選んでも、将来的には潰れるんじゃないかという思いがしている。これは岐阜の方の御意見です。  第三の理由は、軽減税率の導入の狙いは低所得者への配慮ということですが、その効果は薄いばかりでなく、対象品目の線引きを初め、経済、社会に混乱を拡大するという点です。  食料品といっても、食材そのものだけでなくて、包装費や運送費など、さまざまなコストがかかります。全体の税率が一〇%に上がれば、商品の価格は現行のまま据え置くことはできません。軽減なのになぜ値上がりしているのか、業者はお客さんにお叱りを受けることになります。また、八%に据え置きたいと考えている販売店から納入業者にコスト削減、値引きを求められて、苦境に陥ることも必定です。  うどん屋、そば屋、ラーメン屋という外食の業者では、食材を八%の税率で仕入れて、お客さんからは一〇%をいただくという形になりますけれども、結局、この場合、差し引きの消費税納税額はふえることになります。価格は競争関係の中で売れるかどうかで決まりますから、計算上、消費税は受け取っていても、納税できない、滞納になるという苦境に陥ります。結局、こういう業者では売り値を上げることが非常に難しい。外食産業では、十円、二十円上げるのに死ぬ思いをして上げざるを得ない、そういうのが現状です。  私は、かつて、カナダやヨーロッパの付加価値税の調査に全商連を代表して行ってまいりました。カナダでもEU各国でも、この軽減税率は、範囲の設定をどうするのかということで、限りなく混乱が続いております。適用範囲を合理的に設定することは困難だと言われております。  新聞には軽減税率が適用されるということですが、国民の知る権利に奉仕するものは新聞だけではありません。書籍、雑誌はなぜ対象にならないのか。イギリスでは全部これは対象になっております。こういう疑問です。  また、軽減があるからと、際限のない税率引き上げに道を開くのではないのかとの不安も高まっています。  このように、軽減税率は社会や経済に大変な混乱をもたらすものである。ぜひとも御理解をいただきたいと思います。  最後に申し上げたいことは、二〇一七年の消費税一〇%への増税はぜひとも中止をしていただきたいという点です。  総務省が発表した平成二十六年経済センサスによりますと、小規模事業者は、二〇一二年の三百三十四万者から、二〇一四年までの二年間で三百二十五万者へ、九万者減少しております。二〇一四年四月の消費税増税による消費の落ち込みから今日まで、依然これは抜け出せない状況であります。こういう中で一〇%へのさらなる増税とインボイス導入が行われれば、困難にあえぐ中小企業、小規模事業者はひとたまりもありません。  大阪のビニール加工の業者、この人は売り上げが数億円あります。当然、課税業者です。商品の代金の請求時には消費税八%を漏れなく請求し、いただいております。本体価格は、結局、顧客の要望を受けざるを得ない。なぜなら、見積もり段階でお客さんの希望に応えなければ、黙って注文はよそへ行きます。加えて、資材の高騰、仕入れ価格が下がらない、適切な利益確保が極めて困難な状況にある。結果、転嫁ができていた消費税は利益の中に埋没をして、納税資金が足らなくなる。後になって、消費税一〇%になった、このお金を納めないかぬということで、大変心配をしている。結局、えらいこっちゃということになる。  消費税の問題というのは、八%、一〇%と転嫁できている人もできない人も、問題は、取引の段階で価格はお客さんが決めるということです。現実の相対取引はお客さんが価格を決めてくる。そうすると、それに対応するために、仕事を確保するために価格を引き下げて受注をする、仕事をとるということになります。  当然、大阪のビニール加工業者は、転嫁して八%を請求して、いただいておるそうです。しかし、本体の価格を値引きして受注すれば、それは結局苦しいことになります。  そもそも、日本の卸、小売、流通、飲食、そして建設業の下請、こういった庶民の生活にかかわった営業所では、粗利益がおおむね卸では一割、小売では二割というのが長い日本の歴史と伝統です。小売が三割も四割も利益があるなんというのは聞いたことがありません。卸も二割、三割あるなんというのは聞いたことがありません。  したがって、日本の商習慣として、小売は二割前後、卸は一割前後、こういう中で、今八%で、結局、小売業では粗利益を三割近くに上げないと営業が続けられないということになります。まさに消費税は、業者にとって、転嫁できても転嫁できなくても最悪の税金です。  私どもが実施をしております二〇一五年下期の営業動向調査によりますと、消費税問題が営業上困っていることのトップであります。四三・三%です。消費税が転嫁できない免税業者が六七・七%です。一〇%になった場合、廃業せざるを得ないという業者は、流通、小売、商業関係で一〇・二%、宿泊、飲食業で一五・三%に上ります。  そもそも消費税は、低所得者ほど負担が重い、大変不公平な最悪の大衆課税です。生活費非課税、応能負担というあるべき税制の原則。税制は再配分をするということで、納税の義務が課せられております。したがって、消費税は廃止こそが求められています。  この経済状況消費税の一〇%への増税が果たして可能なのかということも含めて御論議をいただきたいというふうに思います。  事業所の六割、五百万者を占める免税業者を取引から排除するようなインボイス制度は、多くの免税業者を市場から退場させることを強いるものになります。地域経済への打撃ははかり知れません。政府が掲げる一億総活躍社会のスローガンにも反するものになるのではないでしょうか。  所得税法等の一部改正に関する法案を廃案にし、消費税増税を中止し、真の景気回復を講じられることをお願いしたいというふうに思います。  以上です。ありがとうございました。(拍手)
  99. 宮下一郎

    宮下委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  100. 宮下一郎

    宮下委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤井比早之君。
  101. 藤井比早之

    ○藤井委員 自由民主党の藤井比早之です。  本日は、竹森参考人森信参考人、太田参考人、三名の参考人の皆様に、お忙しい中、意見陳述をしていただきまして、ありがとうございました。  これより、消費税法等の一部を改正する法律案につきまして、参考人に対する質疑を行わせていただきます。  まず、安倍政権三年間の経済政策への評価についてお伺いさせていただきたいと思います。  平成二十四年、二〇一二年十二月の第二次安倍内閣発足後、この三年間で名目GDPは二十七兆円増加し、企業の経常利益は過去最高水準となっております。  平成二十七年、二〇一五年十一月現在で、就業者数は百十万人以上増加し、失業者数は五十三万人減少し、有効求人倍率は一・二五と二十三年ぶりの高水準となっております。不本意非正規雇用者数は二十一万人減少し、二〇一五年の賃上げ率は十七年ぶりの高水準となっております。  経済再生なくして財政再建なし。税収増で財政健全化も着実に進んでおります。基礎的財政収支、プライマリーバランスの対GDP比は、二〇一五年度のプライマリーバランス赤字GDP比半減目標のマイナス三・三%を達成し、二〇一六年度マイナス二・九%へと縮小する見込みとなっております。特に、国と地方を合わせての税収は二十一兆円の増収になっております。消費税率引き上げ分を除いても十三兆円の増収ということになります。  こうした安倍政権三年間の経済政策への評価につきまして、竹森参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
  102. 竹森俊平

    ○竹森参考人 どうもありがとうございます。  私は、安倍政権が発足する前から、金融緩和を中心として経済を刺激するということを提案しておりましたので、私の考えたとおりのことが実行されて成果を上げているということは、大変うれしく考えております。  ただ、先ほども申しましたように、これから本当に成功するということのためには、設備投資が盛り上がることがポイントであるというふうに考えています。これは、昨今、盛り上がる景色が何度か見えながら、海外状況が不安定なために落ち込んでいるということです。  私としては、今の状況は、例えば二〇〇八年とか二〇〇七年のように危機的ではないので、今の方針を貫いていけば、海外が安定してきたときに、徐々に設備投資も盛り上がるだろうし、輸出もふえるだろうというふうに期待しております。
  103. 藤井比早之

    ○藤井委員 ありがとうございます。  まさに、ことしに入ってちょっとぐずつきぎみというところがございまして、中国経済の減退や資源エネルギー輸出国、新興国の危機だけではなくて、先ほど竹森参考人は、米国政治の混迷が世界経済の不確実性の要因となり得るというお話がございました。  現下の世界経済金融情勢と日本経済への影響につきまして、その点、もう少し詳しく、外部要因につきまして、具体的に竹森参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
  104. 竹森俊平

    ○竹森参考人 結局は、投資の問題だと思います。つまり、二〇〇九年に、リーマン・ショックが起こりました後に、貸し出しが世界的に大幅に下がりまして、それで需要が下がって、日本輸出も大打撃を受けました。ああいうような危機というのは考えられません。  結局は、中国が景気については元凶で、中国世界の鉄の半分をつくっているんですが、そんなにもやっていられないんだろうということで、需要が少し下がったことで新興国が苦しんでいる。また、新興国のウエートが小さいので、結局、中国ですね。ただ、中国は、景気が物すごく落ちると政権の存亡問題になりますから、何かやるだろうというふうに考えています。  ですから、大崩れはないけれども、ただ、これを安定させて、次はどこへ行くか、その次のステップですね。ですから、TPPをアメリカが批准でもしてくれれば、次は何を目指しているかがはっきりするんですが、そういうことが見えないというのが今の問題だと考えております。
  105. 藤井比早之

    ○藤井委員 ありがとうございます。  先ほど、設備投資が本当に鍵であるというふうにおっしゃいました。まさに、成長なくして分配なしといいますか、このたび、GDP六百兆円規模の経済を実現するために、設備投資の拡大、賃金の引き上げ、そして雇用の安定、労働参加、こういったものを推進していくことが重要だと考えております。  金融政策として、日本経済としてこれから必要なことと、このたび税制を提案させていただいておるところなんですけれども、そういった政府としての取り組みについて、ここは必要だというものを竹森参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
  106. 竹森俊平

    ○竹森参考人 税制について申し上げますと、先ほど申しましたように、外形標準プラス法人税の所得分への引き下げ、私は、これは、目標は非常によくわかるけれども、実際に、そのとおりの例、つまり、利益を上げる企業が投資をふやし、一方、不採算の企業が撤退するというような具体例が出てくる必要がある。そのためには、ミクロ面で、例えば企業買収についての自由化とか、そういったものが進められる必要があるだろうと思います。  先ほど申しましたように、シャープと鴻海の例はいわば試金石で、まさに赤字企業が退出し黒字企業に取ってかわられるということで、これが成功するようであれば、こういうふうにシナリオが描けるんだというので、後に続く企業が出てくるということが期待されると考えております。
  107. 藤井比早之

    ○藤井委員 ありがとうございます。  本法案には、国際競争力強化、投資の拡大、海外移転の防止などの観点から、法人実効税率の引き下げが盛り込まれておるところでございます。  法人実効税率は、平成二十五年度の三七%から、平成二十六年度は三四・六二%、平成二十七年度は三二・一一%、本法案による改正によりまして、平成二十八年度は三〇%を切ります二九・九七%、平成二十九年度は二九・七四%へと引き下げられることになります。これによりまして、欧州各国と遜色のない、フランスは下回って、ドイツと変わらないという法人実効税率を実現することができるんです。  このたびのこうした法人実効税率の引き下げに対する評価、効果につきまして、竹森参考人森信参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
  108. 竹森俊平

    ○竹森参考人 もちろん、引き下げということは、いわば国際競争が法人税について起こっているということも考えて、必要だとは思います。  ただ、他方で、今、租税協定をいろいろ結んだり、あるいは国際的な税のハーモナイズを考えているというのも重要でありまして、余りお互いにどんどんどんどん下げる競争をしていくと、税収がどんどん下がっていく割に、どこにもそのプラスがないという可能性も考えられるので、税のハーモナイズを図ると同時に、その引き下げを前向きに進めるということがプラスだと思います。
  109. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  私の考えは、法人税率の引き下げというのは、日本が好んで下げる話ではなくて、国際環境の中で引き下げざるを得ない、したがって引き下げてきたというのが正しいのではないかと思っております。  といいますのは、結局、法人税というのは、国際競争の中で日本以外の国がどういうふうな税率を張ってくるのか、これが一つ、我が国の立地の競争力という観点からは大きな影響を持つと思います。そういう意味で、引き下げ自体については、私は、やむを得ない選択としてこうせざるを得なかったというふうに前向きに評価をしております。  ただ、その中身にやや問題があると思います。  一つは、先ほどから御議論がありましたが、外形標準課税につきまして、ここまで税率を下げてきた財源として外形部分の拡大というのがあったわけですが、これは実質は付加価値への課税、つまり、付加価値の大部分は賃金ですから、結局、賃金へ課税することになるわけですね。  それで、実は、これは国税ではありませんので、そういうことが余り問題になっていないのかもしれませんが、基本的に、賃金への課税というのが、結局、企業にとっては、雇用をたくさんふやす、あるいは非正規から正規雇用にするといったことへのディスインセンティブになる可能性が高いんですね。  したがって、外形標準課税、外形部分を拡大して法人税率を下げるということ自体は、私は、必ずしもまだデフレから脱却できていない中では、本当に正しい選択かどうかというのは、若干これから見守っていく必要があると思いますし、今後、この外形部分をさらに拡充していくことにつきましては、これは都道府県税ですが、日本の税制が世界のほかの国の法人税制と違ったものになってくる。つまり、ほかの諸外国の税制は所得に対する税負担、しかし、日本の場合には、中身を見てみますと外形部分の負担が相当あるじゃないかということで、日本の税制がちょっと違った方向に行くのではないかというふうに思うわけです。  以上です。
  110. 藤井比早之

    ○藤井委員 ありがとうございます。  国際環境を重視しなければいけない、また、いずれにいたしましても、設備投資と賃上げや雇用を重視した政策展開が必要だということなんだと思います。  特にGDPにつきましては、公債残高の対GDP比を見る必要があるというふうに思いますけれども、何よりもそうしたGDP比で考えていく、その考え方の大切さにつきまして、竹森参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
  111. 竹森俊平

    ○竹森参考人 今ビジネスの国際競争の話が出たのでお話ししますと、今、二つの企業が競争していて、ある企業が一千億円出した、では、うちも一千億円出さなきゃいけないということがあったとして、一方の企業はもう一つの企業の倍の内部留保があったというときに、内部留保の小さい方にとっては一千億円というのは痛いわけですね。  そういう例えを何で申し上げたかというと、日本GDPというのは公的債務の二分の一しかない、つまり公的債務は二倍ある。そういうときに、公的債務を下げるのはいいけれども、大事なのはGDPが減らないようにするということであって、同じだけ公的債務とGDPが下がると痛いわけですよ。  これは、例えば、アメリカやイギリスと別でありまして、アメリカやイギリスではGDPの方が公的債務よりも大きいわけです。そのときは、一生懸命財政再建をやって同じだけ下がっても、向こうはいいけれどもこちらはだめだということがあります。  両方を視野に入れるということであれば、GDP分の公的債務という数字に注目するべきだというふうに私は考えています。
  112. 藤井比早之

    ○藤井委員 ありがとうございます。  いずれにいたしましても、GDP六百兆円といいますか、GDPを上げる、そのような政策展開が本当に必要だということ。ありがとうございます。  この法案には、まさに消費税の軽減税率導入でございますけれども、国民の皆様が毎日購入されております飲食料品の消費税の軽減税率、これが盛り込まれております。  飲食料品に係る消費税の軽減税率につきましては、飲食料品は国民の皆様が日々消費していただいているものであり、買い物の都度、痛税感を緩和していただけるということになろうかと考えます。日々の生活の中で痛税感の緩和を実感していただけることは、消費者の皆様の消費行動にもプラスの影響が、まさに増税によるGDP減少を抑えるのに意義があると考えるところでございます。  また、酒類、外食を除く飲食料品の消費支出に占める割合は、家計調査をもとに一定の前提のもと機械的に試算した場合、年収千五百万円以上の世帯では一五%程度、年収二百万円未満の世帯では三〇%程度と約二倍になっておりまして、酒類、外食を除く飲食料品への軽減税率制度の導入は、消費負担の軽減の効果が所得の低い皆様の方により大きく及ぶことから、消費税の逆進性の緩和につながるものと理解しております。  本法案における酒類、外食を除く飲食料品への軽減税率制度の導入は、消費税の逆進性を緩和しながら痛税感の緩和につながるものと考えますが、本法案における消費税の軽減税率制度導入への評価につきまして、竹森参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
  113. 竹森俊平

    ○竹森参考人 どうもありがとうございます。  先ほどの発言では景気効果を話さなかったので、それをつけ加えますと、今、景気が悪いということを考えると、増税が起こったときに、それを貯蓄で受けとめてもらいたいわけですよ。貯蓄を減らして消費は余り減らさないでもらいたいわけですね。  ところが、消費税というのは、低所得者の方が食品の消費が全体の所得に占める割合が多いし、二番目に、低所得者の方が支出性向が高いんです。貯蓄が少なくて支出性向が高い。ですから、それを考えれば、消費税が上がれば低所得者の所得が減ると同時に支出全体が下がって、それは景気に対する悪影響が出てくることは間違いないというふうに思います。  ほかの点は先ほどの発言にある程度ありましたので、とりあえずその点を発言させていただきます。
  114. 藤井比早之

    ○藤井委員 ありがとうございます。  低所得者にとったら、ここを高くしてしまうと、本当に飲食料品の割合が高いので、支出全体が減ってしまうということで、軽減税率の必要性というのを教えていただきましてありがとうございます。  先ほど、各参考人からお話を伺っておりますと、特に太田参考人から、インボイスの非常に懸念といいますか、現場での懸念、そういったお話を伺ったというふうに理解しております。一方で、森信参考人からインボイスのメリットというのを触れていただいたんですけれども、その点をもう少し具体的に、特に価格の転嫁の関係でのメリットを森信参考人から、また、インボイス制度そのものの導入につきまして竹森参考人から御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  115. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  私が配付いたしました資料の五ページを見ていただきたいんですが、五ページは、基本的に、消費税の仕組みとインボイスの機能を図示したものでございます。これは事業者間の取引の例でございます。  売り手が、ここは卸売と書いてありますが、買い手に物を売る、買い手が売り手から物を買う。例えば、税抜き価格千円の物を買うといったときに八十円の消費税がかかるわけでございますが、この千円の物を買う場合には、まず本体価格千円の請求が行きますけれども、それと、観念的に、別途に消費税、支払い消費税額ということで八十のものが別記されるわけです。これは、もちろん一枚の請求書の中に書かれるときもありますし、別のときもあるかもしれませんが、観念的には、この取引に係る消費税額ということで、八十の消費税を書いたものが買い手から売り手に渡る。  売り手は、それを見て、そのインボイス、この1で渡ったインボイスを売り手は買い手から受け取って、インボイスとともにこの八十を受け取って、それを国に納税するわけですね。これは納税するわけです。  国から見れば、その納税を見ながら、今度は、買い手が次の段階に取引をいたしますときの取引全体に係る仕入れ税額控除といったときに、その部分だけを控除するということになるわけです。これが3なわけです。  つまり、消費税は、買い手から売り手に八十を払いますが、それは国に納税されますが、買い手にとって、それはその同額だけが控除される、払うけれども国から控除される。こういう仕組みをつくることによって消費税というものが初めて間接税になるわけなんですね。  消費税というのは事業者が負担する税ではございません。最終消費者が負担をする、そういう税なわけで、事業者は要するにくるくる消費税を次の段階に転嫁させていく、そういう機能の税なわけですね。  したがって、インボイスがあることによって支払い消費税額がはっきりして、それが次の段階では自分のところに必ず仕入れ税額控除として返ってくるということですから、ここで支払い消費税額を安くしろとか値切ってしまえとかいうことが基本的には起きにくいわけなんですね。  つまり、日本の今の消費税のシステムだと、課税売り上げ掛ける百八分の八、課税仕入れ額掛ける百八分の八をして、割り算をして、後、引き算をするわけですね。今申しました売り上げ掛ける百八分の八引く仕入れ掛ける百八分の八というのは、括弧でくくりますと、売り上げから仕入れを引いたものに百八分の八を掛けている、こうやって今日本の事業者の方は消費税額を計算しているわけです。  これは、言ってみれば直接税なんですね。税率が百八分の八という直接税というふうに頭の中ではでき上がってしまうんです。  したがって、例えば、よく、リフォーム会社が、いろいろリフォームを頼んだときに、最後に、消費税八%分が書いてあったら、これぐらいはちょっとまけてほしいよねというふうなことが起きやすいんですね。しかし、このインボイスがあれば、それは全く間接税として機能する。ぐるぐる回るものですから、そこの八%の分だけ請求しないでくれというふうなことは、まず事業者間では起きないと言われております。  したがって、私も、フランスもドイツも課税当局の人と話をしましたが、事業者間で転嫁の問題があるということは一切、まあ一切とは言っていませんが、基本的にはないというふうに彼らは言っておりました。  ちょっと長くなりましたが、以上です。
  116. 竹森俊平

    ○竹森参考人 先ほど議論を聞いておりまして、森信さんは軽減税率は反対だけれどもインボイス賛成ということで、太田さんはインボイスそのものが反対ということですね。  私は、消費税というものに国の歳入を期待した以上、ちゃんと入ったものが計算されて、これだけ間違いなく納めましたという仕組みができることは当然だろうと思っています。したがって、私は、今の点については森信さんに全く賛成であります。  ただ、何でインボイスの問題が出てきたかというと、そもそも軽減税率ということが問題になったので、このままではやれないだろうということで、日本国民の多くも、えっ、今までこんないいかげんなことをしていたのというのが率直な意識だと思います。  それが正常化されるというのは非常に望ましいことですが、しかし、今までこういうふうなやり方をしていて、それが変わるということであれば、残念ながら、対応する側もいろいろと問題があるということは先ほど聞いていてわかりました。したがって、ある程度の時間は必要だろう、時間の猶予が必要だというふうに考えています。
  117. 藤井比早之

    ○藤井委員 ありがとうございます。  インボイス制度をいろいろと具体的に御説明いただきまして、ありがとうございました。  ただ、最初の意見陳述にありましたように、太田参考人がおっしゃったように、本当に現場で物すごい懸念の声があるというのは確かでございますので、このたびは平成三十三年四月までということで移行期間を定めておるんですけれども、こうした点について、やはり政治としては現場の声を含めた実現ということが必要なのかとは思います。  時間が参りましたので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。
  118. 宮下一郎

    宮下委員長 次に、斉藤鉄夫君。
  119. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。  きょうは、三人の参考人の方には、お越しをいただきまして、御意見を頂戴いたしました。本当にありがとうございます。  早速ですが、質問をさせていただきます。  まず初めに、竹森参考人森信参考人にお伺いをいたします。  先ほどの藤井委員の議論でも話題になりましたけれども、消費税の軽減税率が逆進性対策になっているのかどうかという点をもう一度確認させていただきたいと思います。  竹森参考人のお話で、最後のページにそのことが書いてあったんですが、お話を伺っておりましたら、最後、時間がなくなったせいか、ここについては余り説明がありませんでした。この点についてお伺いしたいという点。そして、森信参考人からは、お金持ちにより恩恵が大きいという言葉もございました。つまり、逆進性対策になっていないということかと思いますが、このことについて、二人の参考人の御意見を伺いたいと思います。
  120. 竹森俊平

    ○竹森参考人 では、私からお答えさせていただきます。  時間がなかったので先ほどはあれですが、この議論は非常に混乱しておりまして、この間も日経に、エール大学の博士号を取っている方が、軽減税率は高所得者の方が控除額が多いから逆進的だという議論をされていたんですね。  ちょっと簡単な例を考えていて、今、高所得者は一億円の所得で、低所得者は二百万円の所得です。高所得者には一%の所得税をかけて、低所得者には一〇%の所得税をかけたとする。これはとんでもない逆進的な税制であります。  ところが、高所得者は、一億円の一%ですから百万円納税する。低所得者は、二百万円の一〇%ですから二十万円納税する。額からすれば低所得者の方が少ないから、こういうのを累進的というかというととんでもない話で、これは逆進的であります。  正しい考え方は、高所得者は食品に所得の一割を使う、低所得者は九割を使うとすると、低所得者の場合は軽減税率の八%に近いものが実効税率であって、高所得者の場合は基本税率の一〇%に近いものが実効税率になりますから、これは累進的ということになります。
  121. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  私の資料の四ページを開いていただきたいんですが、これは世帯年収ごとの消費税の負担割合、消費税が年間収入に占める割合をグラフにプロットしたものでございます。  これが、先ほどもちょっと申し上げたんですが、右肩下がりになっている。税のいろいろなグラフを見ますと、基本的には高所得の層ほど負担が重くなる。これが一般的な姿で、これをプログレッシブ、累進性と呼ぶならば、この姿は逆になっているので、逆進性じゃないかということでございます。  それで、私が申し上げたのは、軽減税率を入れますと、この緑のラインが青のラインになるわけでございますが、この青のラインは、いまだ逆進性という性格においては変わっていないのではないかと。確かに、緑から青への下がり方が、低所得者層の方が少し大きい、空間が少しあいておりますが、それにしても、トータルでぱっと見たときには、逆進性というのは何ら解消されていない。  それが、もし代替措置ということでほかの政策が許されるならば、この赤いラインでつくっております給付つき税額控除を入れれば、例えば二百万から四百万の間は右肩上がりになっている。これは、逆進性ではなくて累進的になっている、そういう姿が描けるということで、私は、軽減税率には逆進性対策としての効果はないというふうにちょっと申し上げました。  以上です。
  122. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 この四ページの図ですが、実は私もこの委員会でこういうグラフを使って説明をさせていただいたんですが、つまり、この水色の線から軽減税率を入れた青の線に負担率が下がる、その下がり方、幅が問題であると。  明らかに、この幅は低所得者層ほど大きくなっているわけです。右に行くほど小さくなっています。右端と左端で、実は五倍の差がございます。そういうことは、明らかにこれは逆進性対策になっているというふうに、しかもそれは連続的になっている、一部の人だけではなくて、連続的な逆進性対策になっている、このように私としては申し上げさせていただいたところでございます。  その点についてはいかがでしょうか。
  123. 森信茂樹

    森信参考人 お答えいたします。  私としては、この右肩下がりが逆進性だというふうに認識しておりますので、右肩下がりが直っていないというところで、逆進性対策としては、必ずしも十分じゃないというか効果がないのではないかというふうな意見であります。
  124. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。  それから、森信参考人にもう一問。  最初のコメントの中で、一〇%段階では軽減税率に反対であるということで、一〇%段階ではという言葉が入っておりました。ということは、将来、少子高齢化が進んで社会保障がもっとお金がかかるようになる、税率も今のままではないかもしれない、そういう場合には軽減税率も対象になり得る、このようにお考えということでよろしいでしょうか。
  125. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  結論的にはおっしゃるとおりです。私は、一〇%引き上げ時、既に使途が社会保障に張りついている中で、後出しじゃんけんと言うと怒られますが、そういった感じで軽減税率を入れていくというのは、あるいは、さらにその財源確保されていなくてそのまま軽減税率だけを決めていくというのはおかしいのではないかと思います。  といいますのは、将来的に、我が国の財政事情とか社会保障状況を考えますと、どうしてもさらなる一〇%を超えた引き上げというのは私は不可避ではないかというふうに思います。  そういう中では、諸外国の例を見ましても、むしろ軽減税率で必要最小限のところはピンどめして、寸どめというんでしょうか、そのかわり標準税率を上げていくというふうな政策をとっていかざるを得ない。  生活必需品も含めて標準税率一本で一〇以上に上げるということは、なかなか日本国民も受け入れないのではないかと私は考えておりますので、一〇を超えて上げるときは、私は、軽減税率というものが税率の引き上げに対して緩和措置になるのではないかというふうに考えております。  以上です。
  126. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。  竹森参考人にお伺いいたします。  余暇への課税が可能ならば、そのときは一律の税率がベストだと。余暇、つまり何もしないことへ課税することが可能だったら一律の課税がベストだ、ラムゼー理論の重要なポイントはそこなんだ、このように最初に御説明いただいたんですが、ちょっとよく理解できませんでしたので、我々にわかりやすく説明していただけますでしょうか。
  127. 竹森俊平

    ○竹森参考人 何か頭が混乱していて、大変申しわけありません。  我々は、一律の税率だと価格のゆがみというのはないというふうに考えるわけですね。ところが、今、消費税をずっと上げていって、たまたま一つの消費だけはどうやっても課税しようがないというものがあったとします。そうすると、そのものと比べて、代替性の高いものはどんどんどんどん消費が不利になっていくんですね。ラムゼーが考えたころは、理論的に考えて、余暇というものは何もしていない、ということは、何もしていなくても百円ずつ払えというわけにはいかないので、これはできない。  ところが、最近は、広告収入による媒体というものができてからは、消費者にとって、テレビを流しているのはただだと思っている、スマホはただだと思っているという、強力なものが出ているんですよ。  ですから、今回、例えば一〇%にしたときに、ではスマホは、それからインターネットはそれだけコストが高くなったと思いますかといったら、恐らく誰もそうだと思わないというわけですね。それと比べて、活字媒体というのは不利に立たされているというのが私のポイントでございます。
  128. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 もう少し私も勉強させていただきたいと思います。  それから、竹森参考人、もう一問。  活字、書籍は軽減税率の対象にすべきだという御趣旨でございました。  議論の中で、新聞の場合は、今回、週二回以上発行される定期購読のものということで、比較的線引きが可能だったわけですけれども、書籍の場合は、この言葉が適当かどうかわかりませんが、有害図書をどう排除するかということで線引きが難しい、我々政治家のレベルではそうなったわけですが、この議論を通じては、いや、そもそも有害図書ということ自体がおかしいんだという議論もございます。  書籍への軽減税率の適用について、その線引きについてどうお考えになるか、竹森参考人の御意見を伺いたいと思います。
  129. 竹森俊平

    ○竹森参考人 先ほどの件、ちょっとわかりにくかったかもしれないので、もう一回申しますと、例えば、新聞は百五十円のものが二割消費税がかかるようになると百八十円になる。それに対して、インターネットをあける分にはただだと。今度またさらに上がれば、新聞はどんどん高くなる、インターネットはただだというと、どんどんインターネットに流れていくということです。それで、結局何になるのかというと、広告媒体によって支配されるメディアだけをみんな頼るようになる。  私は、今回、アメリカ大統領選挙でトランプが何であんなに人気があるかというと、要するに、インターネットをあけるとトランプのニュースが出ているわけですよ。彼が活躍すると、またどんどん出てくる。それでほかのニュースは入ってこないわけです、インターネットでは。それで何かどんどんどんどんトランプ人気というのが出ているんだと思いますが、国民の形が変わると思います。  そういう観点から、有害、有害でないということを国が全部分けられるのかというと、私は分けられないと思います。むしろ、広告媒体だけによって情報が伝わるようになるというのがどうなのかというふうに、将来的にはそういう議論をぜひ進めていただきたいというふうに考えております。
  130. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。  森信参考人にお伺いいたします。  先ほど見させていただいた四ページの図を見ても、給付つき税額控除が、対象を絞った形で、低所得者対策としてより効率が高い、その論旨は非常によく理解できるものでございます。  他方、給付つき税額控除については、所得の把握が難しい、資産の把握もまた難しい。また、申請主義になります。実際にその方々の申請を受け付けて給付をするという、行政上の業務も多大なものになって、今の人員では対応できない、こう言われております。現実、簡素な給付も、申請率は決して一〇〇%というわけではありません。  ということを考えますと、給付つき税額控除は、確かにメリットもある、それは認めますが、現実、行うのは難しいのではないか、実行するのは難しいのではないか、このようにも考えております。このことについての御意見を伺いたいと思います。
  131. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  確かに、今、斉藤先生おっしゃいましたように、給付つき税額控除の一つの問題点というのでしょうか、それはやはり、所得、資産の把握が完璧ではないじゃないかというふうにおっしゃる、その点にあることは私も認めざるを得ないと思います。  ただ、まず二点申し上げたいんですが、一つは、しかし今も、所得、資産の把握が十分でないままに、例えば児童手当、それから、いろいろな保育園の保育料などでも必ずしも資産調査をやっておりませんし、所得も、どちらか配偶者の片一方だけの所得で把握していたり、非常に不十分な社会保障制度が多々あるわけですね。  それが第一点ということで、つまり、それだからといってこの制度がだめだというふうにはならないのではないかと思います。  それから二番目に、その点をまさに解消するためにこの一月からマイナンバーが入ったわけですし、それから、来年中にはマイナポータルもできるわけで、このマイナポータルを通じて、例えば今おっしゃいました申請につきましては、マイナポータルというのは基本的には国民全員にできるポータルですから、御老人の方が本当にあけて見るかどうかはちょっと別としまして、基本的には行政からのお知らせ機能というのがついているわけですね。そういうものを活用して、今度こういう制度ができたので申請をしてほしいということをPRしていくというのは、一つ私はあり得るのではないかと思います。  それからもう一つ。やはり、マイナンバーができたことの成果、これは、世帯の所得、世帯の収入が把握されるようになったということだと思うんですね。税は個人単位ですから、税務署はAさんとBさんが同一世帯であるかどうかは一切興味がありません。しかし、このマイナンバーが導入されることにより、これは住民基本台帳とつながっておりますから、AさんとBさんが同一世帯であるということが把握できるようになったわけです。  したがって、やはり、こういった新しいツールを使っていけば、さらには、例の預金付番も始まるわけですね。これは任意の形で始まっていきますが、これが二〇一八年からですか、さらに三年後には義務づけされる可能性も出てきているわけですから、そういった、新しくどんどん政府の中にできてきている、我々の手元にできてきている新しいツールを使っていけば、不正受給の問題とかいう問題も私は抑えられるのではないかというふうに思っております。  以上です。
  132. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。  太田参考人に御質問申し上げようと思ったんですが、ちょっといらっしゃらなくなったので、次に質問させていただきます。  森信参考人に、インボイスの導入についてお話をいただきました。今回、四年間準備期間を置く。かつ、その四年間の後、また三年、三年と、いわゆる免税事業者の方への配慮期間を置きました。合計十年間ということでございます。これに対して、改革が遅いのではないかという声も聞くところでございます。  このことについて、森信参考人、そして竹森参考人からもお話を聞かせていただければと思います。
  133. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  私は、インボイスにつきましては、悪い面ばかり指摘されているが、決してそうじゃないと。特に、手間がかかるというふうによく言われますが、手間がかかるのは、私は、区分経理、複数税率の導入だと思うんですね。複数税率の導入による区分経理が手間がかかるのであって、インボイスはその手間を省くためにあるというふうに思うんです。  これはドイツで日本人のお土産屋さんに行ったときの話でございますが、そのお土産屋さんは、どうやって消費税を計算しているんですかと言いましたら、いや、とにかく全部レシートには消費税額が書いてあるから、売り上げと仕入れを全部、インボイスを二つの引き出しにためておいて、毎月来る税理士さんに渡して、そこで計算をしてもらいます、基本的には売り上げに係る消費税額を足していくだけ、仕入れに係る消費税額も足していくだけ、その差額が納税額になるので、インボイスがあるので非常に簡便に税額計算ができるということをしきりに言っておりました。  したがって、さらに事業者間の転嫁もできやすくなるということがあるので、インボイスというのはなるべく早く導入すべきで、中間的に星印をつける方式がありましたが、私は、その星印をつける区分記載請求書等保存方式というのは事業者に二回手間がかかるのではないかというふうに思うんですね。まず区分記載にした上で、さらに次のまた三年後に本格的なインボイスが入るということで、二回システムの変更が生じる可能性が高いので、私が聞いている限りでは、大企業等は一回で済ませたいというふうな意向だと伺っております。  それで、もう一つ、免税事業者のことにつきましてちょっとお話をしたいんですが、私は、益税の問題がいろいろあるというふうに申し上げているんですが、これは免税事業者にあるというわけでは必ずしもないと思うんですね。  つまり、今の、この益税というのは何かという問題がいろいろあると思いますが、基本的に、私が問題にしております益税は、簡易課税の問題は別としますと、免税事業者から仕入れたにもかかわらず、仕入れた側の方がその仕入れに対して仕入れ税額控除ができる。したがって、これは必ずしも免税事業者の方に益税があるというふうには考えておりませんで、免税事業者と取引をする双方の中で、消費税が、払っていないにもかかわらず控除がされる、先ほどのくるくる回る三面等価がどこかで断ち切られている、払っていないのに控除だけできるというこの制度が、今の消費税制度の中で、これは益税というのかどうかは非常に難しいですが、法律によってそういうことが認められている。  今度、インボイス制度が入りますとそれはできなくなるわけですが、そのできなくなるのが、さらに三年、三年ということで六年もかかっているというのは、私の感じからしますと少し長過ぎるのではないか。  免税事業者は、もしどうしてもであれば、ヨーロッパの例を見ましても、課税選択をして、その方がむしろ自分も、免税事業者も仕入れ税額控除ができるようになるから有利になる。例えば、個人タクシーさんなんかでも、これからは、もし課税選択をすれば、確かにお客さんには一〇%の消費税を請求せざるを得ませんが、仕入れにかかっているガソリンとか修理代とか、そこに係る消費税額は全部控除できるわけですね。  だから、そういったメリットがあるということをしっかり説明すれば、三年、三年の六年という猶予期間というんでしょうか、それは少し長過ぎるのではないかなと私は考えます。  以上です。
  134. 竹森俊平

    ○竹森参考人 太田参考人が戻られましたので、簡単に言いますと、先ほど太田参考人から景気の悪いときに大変だというお話がございまして、この猶予期間四年ぐらいというのは、これから経済政策が成功して経済が上向くというまでに四年ぐらいは考えていただきたいと思っていますので、ちょうどタイミング的にはいいのではないかというふうに私は考えます。
  135. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 太田参考人、失礼いたしました。  最後に、時間がないものですから、インボイスについても、転嫁対策等、大きく弱い立場の人の味方になるというお話が今あったところですけれども、このインボイス導入について御意見を伺えればと思います。
  136. 太田義郎

    ○太田参考人 やはりインボイスの導入というのは、日本の商習慣に歴史的にずっとないんですね、百年、百五十年の昔から。したがって、そういう新しい制度を導入する商習慣が根づいていくにはもっともっと時間がかかるし、生業層というのは、従業員を何人も抱えて、総務課がいて、帳面をやる人がいてという人よりも、お父ちゃん、お母ちゃんで商売をやっている、こういう層が日本では非常に多いということなんです。そこに過大な事務負担をかけるこのインボイスシステムというのは、やはり業者にとって大変つらいことになる、そういう意味でございます。  よろしくお願いします。
  137. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。  終わります。
  138. 宮下一郎

    宮下委員長 次に、古川元久君。
  139. 古川元久

    古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。  きょうは、参考人の皆様方には、お忙しいところ、大変貴重な御意見を拝聴させていただき、どうもありがとうございました。  私は、消費税の軽減税率問題について御質問をさせていただきたいというふうに思っております。  まず、森信参考人にいろいろお話を伺いたいと思っています。  私どもも、消費税の逆進性対策は給付つき税額控除で行っていくべきだというふうに考えておりますが、この給付つき税額控除というのは、私どもの政権でまさにこれを考えたときには、これは単に消費税の逆進性対策ではなくて、新しい社会保障制度の大きな目玉の一つだと、総合合算制度も同じなんですけれども。  特に、日本社会保障制度というのは、課税最低限以下で、そして生活保護まで陥っていない、そういう非常に低所得の人たちについては、これまで、課税最低限以下の人たちは申告義務もないものですから、所得状況が把握をされていないという状況で、そういった意味では、非課税の人たちの扱いというのは、例えば年収が百万の人であろうと二百万の人であろうと、課税最低限以下であれば要するに同じ扱いがされていたわけですね。とにかく何か免除になれば一斉免除とか、一律給付なら一律給付と。  そういうものをもう少し、所得が年収百万と二百万では倍違うわけですから、やはり同じ課税最低限以下でも相当違いがあるわけであって、そういう低所得の人たちの所得状況に応じてきめ細かい対応をしていくべきではないか。  社会保障制度を、どんどんどんどんと高齢化が進む、そういう中で膨れ上がっていく、一方で借金がどんどんどんどん積み重なっていくという状況でありますから、やはり、これを将来に向けて安定したものにしていく、持続可能なものにしていくためには、従来の社会保障の仕組みというものを根本から見直していかなければいけない。  高齢者に偏っていたそうした社会保障を、社会保障といえば年金、医療、介護という三分野であったのを、我々のこの社会保障・税一体改革の中で子育てというのを位置づけて、かつ、とにかく年齢さえいっていれば手厚くというんじゃなくて、やはり、人によって、若くても低所得とか、いろいろハンディキャップがあったりして大変な人たちもいる。ですから、年齢による区別じゃなくて、その人その人、個人個人の所得状況とかそういうものを丁寧に見て、社会保障制度を重点的、効率的に、真に救うべき人にきちんと手が届くような形にしていこう。  これが社会保障・税一体改革の一番の、最大の目的であって、そういう社会保障制度を将来に向けて持続可能なものとしていくためには、その財源を、借金でとにかく次の世代にツケ回すのではなくて、できるだけ今を生きている我々の世代で分かち合っていきましょうということで、消費税の御負担もお願いするという形だったというふうに私たちは考えております。  そういう中でいいますと、この給付つき税額控除というのは、今回、私どもも消費税での逆進性対策ということで考えてはいますけれども、将来的には、従来の所得税の所得控除を税額控除のような形に変えていくことは所得再分配機能を強化することにもつながっていきますし、また、先ほどカナダのGSTの話がありまして、勤労インセンティブの話もありました。消費税の逆進性対策以外に、ほかの面でもこの給付つき税額控除という仕組みを所得税の世界に入れていくということを将来的にも考えられる。  そういった意味では、この給付つき税額控除という仕組みは、新たなこれからの時代の社会保障の仕組みとして大変重要なものになってくるというふうに認識しておりますが、森信参考人の認識はどうでしょうか。
  140. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  基本的には、今の古川先生のお話と基本的な認識は私も同じくしております。  そもそも、給付つき税額控除というのは、何も消費税の逆進性対策のためにある制度ではありません。もともと、これは歴史をたどりますと、ニクソン、フォード政権のときに負の所得税から発展してきたものだということなんですが、それよりもむしろ欧州でいろいろな展開を見せております。  二つほど御紹介したいと思いますが、一つは、何といっても一番有名なのはブレアの改革であります。これはいわゆる第三の道というふうに言われて、ブレアがサッチャー、メージャーから続く保守党から政権を奪い返したときの最も国民に訴える政策が勤労税額控除。働けば低所得の間は給付がもらえる。インセンティブが働くのでみんなが働いて、有名な言葉は、社会保障の生活保護というセーフティーネットからトランポリンへ、それから、ウエルフェアからワークフェアへというふうにも言っております。  つまり、自分で勤労インセンティブを高めることによって将来の老後不安を解消していこうという、そういうある意味では非常にきつい政策だったと思います。  しかし、その結果、英国の社会保障のセーフティーネットである生活保護の受給は減りまして、結果的にはブレアは財政黒字に向けて達成ができたという大きな成果を持っております。  もう一つはオランダの制度なんですが、オランダは、オランダ病というふうに言われて非常に苦しんだ時代がありまして、そこでワッセナー合意というのを政労使で行いました。そのときに、やはり経済が悪いので、一・五人型の経済とよく言いますが、専業主婦の方も働かざるを得なくなる、しかし、市場に出ていって、それが一でカウントされると働く場所を奪ってしまう、そういうことで、旦那が〇・九だったら自分は〇・六とか、合わせて一・五ぐらいの形で労働市場に参加していくような政策を考えたわけなんです。  そのときに、しかし、専業主婦世帯の方が労働市場に出ていっても、すぐ税金がかかる、あるいは、オランダの場合には非常に高い社会保険料負担がかかります。三〇%ぐらいで課税最低限なしにかかってくるわけですが、そういったものがあるので手取りが減ってしまうということで、働いても損だと。それを防ぐために、オランダではいわゆるポバティートラップ、働いたけれども、かえって手取りが減ってしまうじゃないかというようなことがないために、この勤労税額控除、オランダでワーキングタックスクレジットと言いますが、そういうものを導入しているわけですね。  つまり、私は、これからの社会保障でやはり一番欠けておるのは、そういう非正規雇用といいますかワーキングプアといいますか、フルタイムで、最低賃金で、働いても二百五十万、三百万以下で、結婚ができない、そうすれば子供もできない、そういった状況への最も有効な日本以外の国の施策がいわゆる給付つき税額控除、ワーキングタックスクレジットであったり、チャイルドタックスクレジットであったりしますが、そういったものだと思います。  したがって、この給付つき税額控除というのは、何も軽減税率の代替だけのものではなくて、そういった新しい社会保障の地平線を、水平線ですか、開くものだというふうに思っております。  以上です。
  141. 古川元久

    古川(元)委員 ありがとうございます。  だからこそ、我々もマイナンバーを導入したのは、まさにそういう新しい社会保障制度をつくり上げていくためには、今まで把握されていなかった課税最低限以下の低所得の人たちの所得を把握すると。  この中でも議論があって、所得が把握できないんじゃないかという話。国税庁は確かにそうかもしれませんが、さっきから森信さんもおっしゃっているように、市町村とかなんかはそういう低所得の人たちの、別に課税は関係なくても所得情報を把握できることになるわけですから、そういった意味ではかなりきめ細かいことができるようになって、この給付つき税額控除を初め、また総合合算制度も含め、いろいろこれからの時代の新しい社会保障制度が設計していけるんじゃないかと思うんですね。  そういった意味でも、まずは消費税の逆進性対策としては、我々も、森信さんと同じように、給付つき税額控除を導入してやっていくべきだと。ただ、そこに至るまでには、これはマイナンバーの定着とかそういうのも見なきゃいけないですから、それこそ今の児童手当のように、給付という形で、当面は簡素な給付措置を拡充するような形でやっていくというのが我々の考え方であります。  その上で、先ほど斉藤委員との質疑の中で、きょう森信参考人から最初のお話であったのは、とにかく軽減税率の仕組み自体が、やはり仕組みが根本的に問題があると。それこそ、OECDで、もうこれは非効率だということが指摘をされているというお話もありましたし、私も森信参考人も役所でいろいろ消費税の導入を検討したときに、ヨーロッパは入れていますけれども、みんな後悔しているんですね、やらなきゃよかったと。しかし、やってしまうと、なかなかこれはやめられないからということでずるずるになっている。  ですから、そういった意味では、先ほどちょっと森信参考人は、一〇%以上になったときにはというお話を言われましたが、最初のお話の中で御指摘をされたさまざま問題点、特に、要はどこで区別をするかということですね。口でこれはと言って区別するのは簡単なんですけれども、実際に現場になると、この委員会質疑の中でも、やはり現場ではどうしてもそこの境界というのがはっきりしてこないし、混乱する。  結局、一度そういうものを入れると、まさにかつての個別物品税の時代、この中には個別物品税の時代を知らない方もふえてきているので、その混乱というのが、大変さというのがわからない人も多いんだと思うんですが、個別物品税のときに、結局政治的な力があるところが非課税になって、そうじゃないところが課税になるみたいな形で、かつまた、あのときは、何がぜいたく品かという、要するにぜいたく品の定義づけ、それが非常に難しいということ。  消費税の導入に至った一つの大きな理由は、個別間接税、物品税で、政府がこれはぜいたく品だ、これはぜいたく品じゃないというのは、価値観の多様化した時代にやはり無理があると。そういった意味では、付加価値に着目して、消費者から見れば、価格に応じて、高いものを買ったときは高い負担、安いもののときは安い負担という、消費税というのはそういった意味で公平だろう。まさにそういったところで消費税が入ったと思うんです。  この軽減税率を導入すると、昔の個別物品税のときと同じことがまた復活する。今度は、何がぜいたく品かじゃなくて、何が生活必需品か。先ほど竹森参考人の中でも話がありましたけれども、結局、これが生活必需品だと口で言うのは簡単なんですけれども、しかし、人によって、今の価値観の多様な時代には、やはり生活必需品のいろいろバラエティーもあるわけであって、そういった意味では、現実にこれを区別していこうとか、これだけとやろうとすると、やはりそこにいろいろなゆがみが生じてくる。  そういった意味で、私は、税率にかかわらず、やはり仕組みとしてこれは導入すべきではないんじゃないかと。そうじゃなくて、きょう議論されているように、給付つき税額控除という形でやっていくべきものだというふうに思いますが、その点、ちょっと確認をさせていただければと思うんです。
  142. 森信茂樹

    森信参考人 お答えします。  私も、一応消費税を勉強している学者としては、これは絶対入れるべきじゃないと思いますが、長年役所におりまして、現実の世界も少し知っておるものですから、やはり一〇%を超えて引き上げる場合には、これは入る可能性があるのではないか、しかし、もう既に入るわけですが、そういうふうな気持ちでお答えしました。軽減税率は基本的には入れるべきではないということは考えております。
  143. 古川元久

    古川(元)委員 ありがとうございます。  その上で、先ほどからも話がありましたが、森信参考人はヨーロッパのいろいろな、現場が混乱しているとか、問題になっている事例もよく御存じだと思うので、ぜひ少しここで具体的な例をお話しいただきたいと思うんです。  この委員会予算委員会なんかもそうなんですが、特にイートインとテークアウトの区別、区分け。今回ですと、とにかく買う段階でテークアウトとさえ言えば、あとは買った人がその場で食べようと何しようとこれは軽減税率だということだそうなんですけれども、そうなると、必ず現場で、イートインだといって食べている人と、その隣でテークアウトで買った人間が食べ始めたら、そこでやはりトラブルなんかが起きたりする。  ですから、やはり同じような問題がヨーロッパではあると思いますし、では、そこをどうクリアしているのか。中には、私が仄聞するところによると、そもそもイートインもテークアウトも同じ値段にしちゃう。テークアウトの分の値段を上げちゃって、それで値段を一緒にするというような例もあるとかいう話も聞いたりしますが、その辺のイートインとテークアウトの区別や混乱、ヨーロッパの実態について、わかりやすい実例があれば、ちょっとお話しいただけますでしょうか。
  144. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  私は、特に消費税に関心を持ちつつ、ヨーロッパに数回旅行したことがありますので、その点について少し申し上げたいと思います。  まず、これは御承知だと思いますが、特にテークアウトとイートインについて的を絞って話をしたいと思いますが、いずれの国も、この区分については今も頭を悩ませております。  例えば、イギリスの場合には、今、古川先生がおっしゃったような、その場でお客さんに聞いて判断するということになりますと、皆さんどうしても、テークアウトと言って買って、その場で食べるということが多かったものですから、数年前でしょうか、レギュレーションを改めまして、温度で管理するということになっているわけですね。したがって、マクドナルドでは、お客さんが注文してから温かいものが出てきますから、ホットフードということで、テークアウトしようが、そこで食べようが、標準税率が課されることになっております。  しかし、何がホットフードかというのは、これをめぐって訴訟もあります。ドミノ・ピザのデリバリーの訴訟とか、これは山のように訴訟が今も起きております。つまり、必ずしも温度だからといってうまくいっているわけではないというふうに思います。  それからもう一つは、むしろ日本の例に近いのはドイツだと思います。  ドイツは、基本的にはやはりファストフード店はお客さんに聞いて判断するということで、私も、ドイツのハーゲンダッツですか、行きまして、メニューを見ましたら、確かに、中で食べると一九%の標準税率で、テークアウトすると七%。しかし、店の外にはベンチが置いてありまして、そこはどうなんだと聞きましたら、そこはもう店は知らない、店のベンチだけれども店は関知しないということで、そこで皆さん食べているという実態が一つありました。  もっと私が驚いたのは、ドイツのマクドナルドですね。これは、実は、テークアウトの場合は先ほど言いましたように七%の軽減税率で、そこで食べますと標準税率一九%なんですが、値段は一緒にしてあるんですね。なぜ値段を同一にしてあるかというと、ここで値段を変えると、先ほど申しましたイギリスのようなことが起きて、皆さんテークアウトと言って買って、そこら辺で食べる。税務署から後で嫌みを言われるということを避けるために、とにかく、テークアウトしようがイートインしようが値段は一緒にしてあるんです。  しかし、ドイツのマクドナルドでは、必ず買うときに、お客さんにここで食べますか、それとも持っていきますかということをしつこく聞きます。それはなぜ聞くかというと、税務申告上はきちっと分ける必要があるということで、テークアウトの人が何人で、イートインの人が何人かというのを分けて区分しなければ、きちんとした税務申告ができない。  このドイツの方式は、さすがドイツ人らしいなということで、すぐれているなと私は思って、ドイツの税務当局の人と話をしたんですが、いやいや、それはそうでもないですよと。いろいろな申告を見ていると、みんなテークアウトしたような申告をしている店も相当あって、税務調査の一つとして、抜き打ちで、本当にテークアウトとイートインの比率が税務申告の比率と合っているかどうか、これを調査するのが消費税調査だというようなことも言っておりました。  それから、今のドイツの例について申し上げたいんですが、そうすると、先ほどから痛税感というお話がありましたが、結局、事務コストが面倒くさいから同じ価格にしようということは、これはもちろん店の価格戦略ですから自由なわけですが、結局、そうなってしまえば、何のための軽減税率かというのがわからなくなってしまう。  つまり、お店にとってみれば、価格は、トータルとして納税額がしっかり計算されておればいいわけで、したがって、価格をどうつけるか。この間の八%のときも、牛どんを下げたところと、上げたところと、据え置きのところと出てきましたが、そういうふうに価格というのは事業者の自由な戦略ですから、そういうふうに考えますと、軽減税率で、二%で痛税感が緩和されるというのは本当かなという感じもいたします。  ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
  145. 古川元久

    古川(元)委員 ありがとうございます。  もう時間がありませんので、事業者の対応について、まさに税務の現場とかをやられた森信参考人と、あと、まさに御商売をやっていらっしゃる太田参考人にお伺いしたいと思います。竹森参考人、済みません、ちょっと時間がなくなって聞けないんですが。  来年の四月というと、今からあと一年しかありません。このさまざまな、システム改修から、あるいは、今のお話でもあった、現場で取り扱いをどうするか決めて、それで教育をするということまで考えて、そもそも、この一年というわずかな時間でちゃんと対応ができる、混乱が生じないでやっていけると思われるか、お二人から御意見をお伺いしたいと思います。
  146. 森信茂樹

    森信参考人 私は、そこはきちっとやるしかないというふうに思いますが、きちっとやっても混乱は生じるということだと思います。  特に、テークアウトとイートインの区別については、日本のようにグルメの発達した国で、デパ地下もあれば、さまざまなコンビニもあれば、こういったところでは、ある程度のトラブルが起きるのは避けられないというふうにも思います。  しかし、きちっと決められた以上は、日本の税務当局、国税当局はしっかり全力でやるというふうにも思っております。
  147. 太田義郎

    ○太田参考人 一年でできるかと言われますと、無理だと思います。  結局、例えばインボイスにしても、それからマイナンバーにしても、言ってみるなら官僚統制といいますか、町の八百屋さんとか喫茶店だとか米屋だとか酒屋だとかという父ちゃん、母ちゃんで二人だけでやっているというようなところに、大企業がやっているような完璧性を求めたってそれは無理だと思うんです。だから、これは大混乱になると思います。  結局、生業と言われている一千万以下の小さな商売屋さんというのは、言ってみるなら、経済学的に言えば市場から退場していただくということになって、地方経済は大打撃を受けるようになるというふうに私は思っております。  以上です。
  148. 古川元久

    古川(元)委員 ありがとうございました。  時間になりましたのでこれで質問を終わりたいと思いますけれども、今のお話を伺っても、まだまだやはりいろいろと議論をしていかなきゃいけない問題はたくさんあると思います。それに、これは一度導入すると、繰り返しになりますけれども、本当にどんどんと穴が大きくなって、結局は、先ほど森信参考人からお話ありましたように、標準税率がどんどんと上がっていくということにやはりつながっていくんだと思います。  やはり、そういった意味でも、これは私どもとしてはもう一度立ちどまって、しっかり、我々が提案している給付つき税額控除と、そして与党の方が、政府が言われる軽減税率、何がいいのかと。その間は、ちゃんと法律上も、ちゃんと決まるまでの間は簡素な給付措置でやっていこうということは低所得対策で決まっているわけでありますから、そうした形で、法に基づいて、現場の混乱がないようにやっていくことこそが我々政治家としての、国会の責任だ。  そういった意味では、しっかり引き続き議論していただきたいということを与党の皆さん方、そして委員長にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  149. 宮下一郎

    宮下委員長 次に、宮本岳志君。
  150. 宮本岳志

    宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。  きょうは、三人の参考人の先生方、まことにありがとうございます。私の方からもお礼を申し上げたいと思います。  今回の、先ほどから軽減税率という議論も交わされているわけですが、これはもちろん、来年四月から消費税を一〇%に引き上げる、こういうことを前提にした議論なわけですね。  それで、昨年十—十二月期のGDP、これは速報がこの前出ましたけれども、御承知のとおり、二期ぶりマイナスということが明らかになりました。  先日、この委員会でも議論が交わされましたが、本田悦朗内閣官房参与も、来年の消費税増税は絶対にすべきではない、こういう御発言をされておられます。  本日、午前中の議論でも、実は、参考人でお招きをした片岡参考人は、来年四月の消費税増税は凍結すべきだ、むしろ消費税は八%から六%に減税すべきではないか、これだけ消費が落ち込んでいるときに、こういうお話もございました。  私は、このまま消費税を増税すると、やはり日本経済に重大な打撃をもたらすのではないか、こういうふうに思いますけれども、これは三人の参考人方々、全ての皆さんにひとつ御意見をお伺いしたいと思っております。竹森参考人から順番にどうぞ。
  151. 竹森俊平

    ○竹森参考人 どうもありがとうございます。  現在の経済状況については先ほど申し上げまして、今、日本経済というのは、どんどんどんどん対外的な依存度が強くなっておりまして、思ったほど輸出が伸びていないということはあります。ただ、崩れるというほどまでは、大崩れとまではいっていないので、非常に不安定が広がっている、これから中国はどうするんだろうなという様子見があるんだろうと思います。  ですから、私は、この段階の予算消費税をストップするというのは余り考えられないのであって、ただ、景気の状況というのはいつも見なければいけないので、その点については柔軟な判断がされるということを期待しております。
  152. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  私は、消費税の税率の引き上げは必要だというふうに思っております。  それは、一つは、今、竹森先生からもお話ありましたように、日本のそもそも潜在成長力というのは一%弱だと思うんですね。したがって、ちょっと何かあればマイナスになるというのは、それほど不況が、経済の底が抜けるというふうな感じではないと認識しております。  そういう中では、アベノミクスにやはり足りないのは、分配、社会保障政策だというふうに思います。つまり、異次元の金融緩和と適切な財政政策といいますが、この二つは、結局、時間を稼ぐだけの政策だというふうに思います。抜本的な成長戦略が打たれている状況ではありませんから、むしろ必要なのは、ワーキングプアとか非正規雇用とか、そういった人々への手厚い支援だと思うんですね。  そういう意味から考えて、消費税率を引き上げて、既に子供、子育て等々に予算配分が決まっているわけですから、そこをしっかりやっていくことこそ景気対策になるのではないかというふうに今思っております。  それから、莫大な借金を抱えている中で、財政がこれ以上悪くなることは、やはり不測のリスク日本経済にもたらすのではないかということもつけ加えておきたいと思います。  以上です。
  153. 太田義郎

    ○太田参考人 今の景気動向を考えて、やめるべきだというふうに思います。  理由は、とにかく、日本の中小企業、全体で八百万を超えるわけですけれども、そこの大体七割近くが赤字決算を出しているんですね。ところが、では日本経済全体がそんなものかというとそうじゃなくて、大企業ではかなり内部留保もふえているし、利益は上がっている。問題は、大企業の利益というのが国民全体に、下請や多くの国民にいわば滴り落ちてこないという現実がやはり問題だろうというふうに思うんです。  それが証拠に、預貯金ゼロという人が三一%になっているんですね。それで、格差はどんどん広がって、二百万の収入しかないというワーキングプアがどんどんふえている。若い人にあっては、実に五割近くの人たちが非正規労働しかない、正社員になれない。ということは、若い人たちが嫁さんをもらって、あるいは嫁に行って、若夫婦が二人生活するというのが大変難しい時代になって、子育ても難しくなっている。  したがって、こういう状況の中で国民全体が豊かになるような政策を政治は行って、全体の格差を縮めてやるべきだ、したがって、来年の導入については延期をすべきだというふうに思っております。  以上です。
  154. 宮本岳志

    宮本(岳)委員 ありがとうございます。少しこの評価が割れたわけであります。  今、ちょうど太田参考人から、大企業は随分もうけが上がっているんだけれども、それが滴り落ちていないというお話がございました。竹森参考人も、業績は上がっている、これが新たな設備投資に本当に回っていくかが鍵だと。もちろん、お話の中では、設備投資だけじゃなくて賃金に回って消費が喚起される、これが回っていかなければというお話があったと思うんです。  私、国会で大臣の方々と議論していても、そこがなかなかいっていないんだと。これは政府もお認めなわけですね。では、なぜ滴り落ちないのか、どこに問題があるのか。これは竹森参考人、どうお考えになりますか。
  155. 竹森俊平

    ○竹森参考人 まず、大企業がよくて中小企業がそれほどではないというのは確かだと思うんです。  一つは、大企業の方は輸出企業が多いからで、最初に申しましたように、今、円安のメリットを受けて、八十円が百二十円になれば五〇%収益が上がるということがあります。中小企業の場合、輸出を単体でやっているという企業は少ないということから、影響が少ないと思うんです。  問題は、その大企業の利益がどうやって中小企業に滴り落ちるかですが、これは、欧米の国を見ても、なかなか滴り落ちない。問題があることは確かであります。  ただし、私は、日本の場合は、滴り落ちないのはまだ十分水がたまっていないからだ、要するに、まだ滴り落ちるほどの前向きな気持ちになっていないからだというふうに見ていて、したがって、景気がよくなるような円安はまだしばらく続いていただく必要があるのであろうと思っております。
  156. 宮本岳志

    宮本(岳)委員 大企業の内部留保というのは、麻生大臣も明確に答弁されていますけれども、三百五十兆になんなんとする史上最高のたまりぐあいでありますから、私たちは、やはり現場で起こっていることというのはなかなか深刻なんじゃないかというふうに思っているんですね。  それで、こうして議論してみても、実際現場でどうなのかというのは随分やはり認識が違うと思うんですよ。私は、この間、本当に小売の方々の生の声もお伺いをしてきて、この場でも御紹介を申し上げました。そして、ぜひ、参考人質疑にも業者の代表の方に来ていただいて、現場ではそんな甘い状況じゃないよということをお聞かせいただくことが大事だということを申し上げてきたわけであります。  消費税の転嫁を一つとっても、これは現場ではなかなかそんな簡単な話じゃないと思うんですね。先ほど来、要するに、益税とかいいかげんなことになっているんじゃないかという議論もされるわけですけれども、現場ではむしろ転嫁できないという現状が広くあるというふうに私はお伺いをいたしました。  太田参考人の方から、少しそういう実情についてお話しいただければありがたいと思います。
  157. 太田義郎

    ○太田参考人 私どもが組織をしております事業者というのは、一千万以下の売り上げしかないというところが圧倒的に多いんですね。したがって、現実問題として、転嫁というような高尚な話ができるような状態ではないんです。突っ込み価格を幾らにしてくれるという相対取引なんです。そうすると、例えば一定の事業規模なら価格には今でいえば八%消費税をつけるのが当然だという認識があります。従業員を例えば十五人、二十人抱えているところとの取引でいえば、自動的に消費税八%を転嫁する、これは当たり前になります。  ところが、町のうどん屋さんやラーメン屋さん、あるいは小さな御商売をやってみえる町工場、そういうようなところでは、消費税は込みだというのが当然の認識としてあります。したがって、幾らにしてくれるのという話なんです。先ほどちょっと紹介しました大阪の事業者の場合は、数億円の事業規模ですから、ここは確実に八%常にもらっているそうです。でも、価格交渉、本体価格のときにどうなのかといったら、幾ら幾らと言って提示をして、価格が高いと思ったら、もうそこからは注文が来ないし、よそへ行く。したがって、怖くてなかなか、仕事を受注しなきゃいかぬから、価格はなるべく下げて、本体の価格を下げて、これぐらいでどうだろうという話をしていくわけです。  したがって、問題は、それは利益に食い込んで価格を下げるということに現実にはなるわけですね。その売り上げに対して八%というのはいただける。いただけるのなら、ちゃんとそんな滞納もなしにやれるはずじゃないのかというのが世間、普通の常識だと思うんですね。ところが、先ほども私が言ったように、小売や卸や何かでは、粗利益を含めてそんな二割も三割も、卸でいったら二割も粗利益があるというような商売は聞いたことがありません。そうすると、結局、身銭を切ってということになるわけです。  したがって、一千万以下の小さな御商売をやってみえるいわば生業層、これが五百二十万近くあるわけですけれども、ここでは六七%の人が現実には消費税を転嫁できていないという回答が出てきているんです。それが現状だというふうに思います。
  158. 宮本岳志

    宮本(岳)委員 軽減税率を入れて、そして消費税を引き上げたということをやった場合に、要するに、インボイス方式が導入されようとしているわけであります。先ほど、森信参考人の方からも、これの効果といいますか、よい面というお話もありました。  ただ、御承知のとおり、インボイス方式というものはずっと長い議論があって、私もこの委員会の場で税務大学校の望月俊浩さんの論文というのを紹介したんですけれども、インボイス方式には二つ大きな問題がある、一つは事務負担の増大、もう一つは、免税事業者からの仕入れが控除されないために免税事業者が取引から排除される、これを入れた場合には、望月さんは、この問題をやむを得ないものと割り切ることになる、こういうふうにおっしゃっているわけですね。  ですから、これが入ると、免税業者が、結局、課税業者になるか、あるいはもう免税業者のままで、やっていけなくなってやめざるを得ないか、こういうことになるということが私たちは非常に危惧されるわけでありますけれども、このことについて、森信参考人と、それから、もちろん、現場でこのことに本当に直面されている太田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  159. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  今の第一点の事務負担の増大という問題ですが、私は、先ほども申し上げたんですが、事務負担が増大するのは、複数税率にする、つまり、軽減税率を導入することが事務負担の増大を招くんだと思います。  インボイスは、その増大する事務負担を軽減するために考え出されたヨーロッパの一つの知恵だというふうに考えております。したがって、インボイスそのものが事務負担を増大させるという論理にはちょっと私は賛成しかねるというふうに思っております。現実問題、インボイスさえ集めておけば、消費税の計算は楽になるわけですから。しかし、複数税率になることに伴う事業者の手間は大変だと思います。  それから、第二点ですが、これもちょっと宮本先生のお考えとは違うと思いますが、私は、ヨーロッパの実態を見ておりますと、免税事業者も、課税選択をした方が自分たちも仕入れに係る税額控除ができるから得だなという意識がやはりあるようです。  フランスで聞いたんですが、フランスの税務当局が言っておりましたのは、本当に免税選択をしているのは、ブキニスト、これはセーヌ川でテントみたいなものを張って古本を売っている人たちのことらしいですが、そういった人ぐらいで、中小の事業者の方も免税という特権をむしろ使わずに課税選択をしていると。  それはなぜかと申しますと、結局、自分たちの仕入れには全部消費税がかかっているわけですね。免税事業者でも、小さな商店でも、自分の消費税申告は義務が免除されますが、仕入れには当然消費負担がかかっているわけで、それがそのままたまってしまう。むしろ、これこそが、先ほどからおっしゃっておりますような損税というんでしょうか、自分のマージンの中から仕入れに係る消費負担をせざるを得なくなる状況が続いているということだと思うんですね。  それを避けるためには、課税選択をすることによって、例えば日本の個人タクシーの方も、今はほとんど免税だと思いますが、むしろ、法人タクシーと同じように消費税率をお客さんに転嫁することによって、自分たちの仕入れに、つまり、ガソリン代とか修理代とかにかかっております消費税額が控除される、そういうことで利益を受けるのではないかというふうに思います。  ちょっとこれは、単に頭の中の体操だというふうに言われればそうかもしれませんが、現実にフランスではそういうふうなことが行われているし、その手間は、インボイスというものがあるから手間をかけずにそういう課税選択ができるというふうにも言っておりましたので、私もそうかなというふうに思っております。
  160. 太田義郎

    ○太田参考人 私は、先ほどの発言の中で、山梨県の笛吹市の電気工事業の人のお話をいたしました。  結局、商売を続けようと思うと、課税業者になる、それで商売を続けるという道と、課税業者はやめて、したがって、ということは、流通から、大手のところや公的な機関からの仕事というのは全部なくなりますよ、当然それは、三割のそういう公的なところやインボイスが要るところのお客さんがある場合は、売り上げが三割減るということになります。  そうすると、三割減っては大変だということで、課税業者になる。そうすると、事務の煩雑さと同時に、非常に極端な言い方をすると、今まで免税業者である特典で、安い価格で、うちは税金はかけていませんよ、消費税八%をいただきませんよといって商売をやっておった小さなお店屋さんが、結局、税金を含んだ高い価格にせざるを得ない。そういうことになると、今まで安かったのに何で高くなるのという話になって、結局は売り上げが落ち込む。  したがって、免税業者になるのか、課税業者になるのかというのは、小さな商売屋にとってみると大変難しい、どちらを選んでもやはり大変な税の状況だというのが今の現状だというふうに思います。  以上です。
  161. 宮本岳志

    宮本(岳)委員 重ねて太田参考人に聞きたいんですけれども、そういうことが起こるんじゃないのかという議論をここでやりますと、経過措置を設けたと。四年間の間は簡易なやり方で、それから、導入されてからも、結局インボイスは最初は八割、次は五割で六年間控除を見るというような、時間を置いたという話が出てくるんですよ。  なかなか、時間を置けば何とかなる問題ではなかろうと私は思うんですけれども、そのあたりはいかがですか、経過措置について。
  162. 太田義郎

    ○太田参考人 これは時間の問題ではないと思います。  言ってみるなら、日本の商習慣の問題が強い。例えば、ヨーロッパなんかとの比較についていえば、中小業者の社会的地位の低さだとか等々を含めた非常に歴史的、伝統的な商習慣、そして粗利益率の問題、それから、地域で生まれて育って地域貢献をしている、地域コミュニティーの中で商売をやっている。  そういう中でいえば、極端な言い方をすると、請求書も口約束で、幾らぐらいかかるよ、うん、大体そのぐらいだねと言って商売を現実には電気工事なんかでいえばやっておるのがかなりあるんです。それで、何、あんた、五万円だと言ったがねとなるわけね。いや、実はあんたがこっちの工事が追加だとかこっちを言ったので五万五千円かかった、ごめんねと言って、それで通用していくような社会の現実というのはやはりあるわけですね。  そうすると、何もかも書類に基づいて、インボイスに基づいてというのは、なかなか日本の商習慣に現実問題としてはなじまないのではないのか。ただし、それは生業層の五百十五万者ぐらいのところでの話であって、そこの中でちゃんとした企業化しているところ、事業として企業になっているところについては、インボイスだとかそういうのは簡単にやはり移行できるのではないのかというふうに思います。  いずれにしても、多くの人がこの問題で困難を抱えることは事実だ、時間の問題ではないのではないかというふうに思います。
  163. 宮本岳志

    宮本(岳)委員 先ほど森信参考人の方から、ヨーロッパの状況、軽減税率でイートインと持って帰るのと混乱しているという話が詳しく随分ありましたけれども、太田さんも、ヨーロッパの現場を見てそういうことを調査されてきたと冒頭のお話でもございました。まさに、日本の目の前の商慣行に通じているだけでなく、ヨーロッパやカナダのやっている現場も見てこられた、そういう立場から、少し、海外についてどうお感じになったか、太田参考人にお話しいただきたいと思います。
  164. 太田義郎

    ○太田参考人 先ほど森信先生の話からあったように、もう全くそのとおりで、私は、カナダへ行ったときには、調査団ですから十五人ぐらいで行ったんですけれども、パンは食料品になるのかならないのかということで、パンの中でも、あんパンから食パンから、いろいろなパンがあるんですね。それも、一つの場合はどうなのか、五つの場合はどうか、十買ったときはどうなのか。朝からあんパンを食べる人もおれば、食べない人もいる。  そうすると、それの食料品との区別はどこに境界線があるのか、結局、通訳を介してもなかなかわかりませんので、パンを五つ、あんパンを買ってきたり、いろいろのことをやるんです。結果、わかったのは、あんパンの場合に、上にゴマが振りかけてあるかどうかが基準だということがわかりました。  ことほどさように、食料品、この区別というのは、ヨーロッパでもカナダでも、消費税が高くなればなるほど非常に混乱をし、現場ではあの手この手で安い税率に向けて考える人が出てくるというのが現状ではないか。いずれにしても、大変混乱をするのではないのかというのが私の感想です。
  165. 宮本岳志

    宮本(岳)委員 我が党は、軽減税率の導入などというようなことではなくて、消費税の増税そのものをやめなさいということを繰り返し申し上げてまいりました。  それは、業者の方々の大変な負担ということもありますけれども、冒頭、先生方と論じたように、日本経済現状で本当にそういうことをやって、八%に上げたときの消費の落ち込みをいまだに引きずっていると、この前、総理がそこで、いまだにその影響が続いているとおっしゃるわけですから、そこへさらに一〇%をかければ、日本経済そのものが大変な打撃を受ける。日本共産党は、断固、この増税中止を求めて頑張ってまいりたいと思っております。  本日は、大変貴重な御意見、まことにありがとうございました。
  166. 宮下一郎

    宮下委員長 次に、丸山穂高君。
  167. 丸山穂高

    ○丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。  きょうも私が最後でございまして、あと二十五分間、おつき合いいただきますようよろしくお願いします。  まず最初に、参考人のお三方の皆さんには、お忙しい中、委員会にお越しいただきまして、本当にありがとうございます。今、種々の議論を聞いていますと、いろいろな、お三方それぞれのお考えと共通するところ、そして少し違うところがあるなというのをお聞きしながら感じていたところなんです。  これまで、この財務金融委員会でも、所得税法についてさまざまな観点から質疑を続けてきたんですが、私、おおさか維新の会は今、少数会派、少なくなっていまして、そういった意味で毎回質疑に立たせていただいているんですけれども、そうした中で、政府とやりとりをしていて、何か変じゃないかなというところが幾つかありまして、そこについて、御知見をお持ちの各参考人皆さんからお話をお伺いしていきたいというふうに考えているんです。  まず、今出てきました軽減税率についてお伺いしていきたいと思います。  政府は、なぜ軽減税率を適用していくかというときの数字を出せという話をしましたら、家計調査に基づいて、所得の高い低いを五段階に分ける家計調査の話をいつもします。そしてその中で、この軽減税率は逆進性を和らげたいということで今回やるんだという理由の中で、特に低所得の方の所得に占めるこの税額の割合が少なくなる分、低所得の方に対して痛税感を和らげるみたいな言い方をするんです。  一方で、額ベースで見たときには、やはり今回、軽減税率を適用できるものを見たら、食品とかを見ても、同じように高所得の方ももちろん食料品を買いますし、キャビアにしろ、A5の牛肉でもいいんですけれども、高級品、いわゆる嗜好品の方が値段が高いわけで、通常考えて、またデータでも、高所得の方の方が今回の軽減税率で税額としてはかなり控除される、高うございます。  具体的には、二百万円の所得の方は八千三百七十二円。この軽減税率、一〇%にせず八%にしたことで、二百万円未満の所得の方は八千三百七十二円。一方で、一千五百万円の所得の方は一万七千七百六十二円が免税という形になるそうで、税の額を見たら、圧倒的に高所得の方の方が、もちろん食料品の消費を考えても高くなっていくんです。  この辺、もちろん割合というのは一つの見方なんですが、私は額の面も、非常に国民の感覚からしたら、本当にこれで低所得者対策になっているのかなというのは疑問に感じるところだと思うんです。そのあたり、例えばヨーロッパにいらっしゃった参考人の方もいらっしゃいますので、どういった感覚で議論されているのか、もしくは御自身の価値観も踏まえた上で御発言いただければと思うんですけれども、そうしましたら、竹森参考人からお願いいたします。
  168. 竹森俊平

    ○竹森参考人 先ほど申しましたように、所得が多いということは、何でも額が大きくなるんですね。ですから、先ほど、所得税で、一億円をとったら一%でいいというとんでもない逆進的な所得税法をつくったとしても、一億円の一%は百万円払うということになる。それに対して、二百万の所得の人には一〇%の所得税をかける、幾ら払うかというと二十万円払う。百万円と二十万円では二十万円の方が少ないだろう、これは累進的だというのはないわけですね。ですから、これは明らかに逆進的で、パーセントで考えるべきだと思います。  私は、いろいろな問題があるけれども、やはりこういう議論をするときに、累進的か逆進的かというときに、何を言っているのかというのはパーセントでやはり確定するべきだと思います。パーセントで確定することの意味は、自分の所得が一%課税されるのと一〇%課税されるのでは働く意欲が変わってくるんですね。例えば自分の所得の九〇%課税されると、誰も余り働く気がしなくなるんです。  というようなことで、パーセントというのが誰が何をしたいということを決めるときに大事なので、パーセントで考えるべきだというふうに考えています。
  169. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  私の資料の四ページをちょっと開いていただきたいんですが。  私は、逆進性といった場合には、世帯年収階層ごとに負担割合を並べましたこのグラフの傾き、これが右肩上がりではなくて右肩下がりになっている、これが逆進性と呼ばれるものだと思います。  したがって、逆進性を解消するかどうかといったときには、この傾き自体が下に平行移動しただけ、低所得者の方に少し割合が多いにしても、この右肩下がりがなくなることが逆進性の解消、逆進性対策だというふうに思いますので、これは軽減税率では確かに低所得者層の方が下がる割合が若干多いと思いますが、それは逆進性の解消の議論ではないというふうに私は思っております。
  170. 太田義郎

    ○太田参考人 税の基本というのは、国税庁のパンフレットを見ていただくとわかりますけれども、税と社会保障というのは、たくさんお金をもうけている人には高い税金で、そしてそのお金を社会保障という形で再配分をして、全体が、社会がうまく回るようにしていく、これが基本的な考え方だというのが国税庁の方から出ております。  そういう点からいえば、軽減税率というよりも、税を例えば五%に引き戻せば、これは多くの人たちが恩恵をこうむるわけですから、逆進性も何も、引き下げればと。したがって、当然こんな、税を来年の四月に一〇%にするなんというのは、軽減税率を含めて許されないというのが私の立場です。  以上です。
  171. 丸山穂高

    ○丸山委員 ありがとうございます。  そういった意味で、食料品とか、一律に高所得の方も低所得の方も消費するものの中で割合を使うというのは、今の先生方のお話を聞いていても非常にわかりやすいなというふうに思うところなんです。  一方で、今回、新聞が食料品に次いで軽減税率の対象になっています。私は、この委員会でも、食料品の次になぜ新聞が来るのか、おかしいじゃないかというのをさんざん、役所とも何回も何回もやりとりしているんですけれども、いまだに私はこれは腹に落ちていないんです。  その意味で、新聞なんか、低所得の方も高所得の方も一律にとっているかというと、食料品のように一律性は余りなくて、特に低所得、所得が落ちた場合には真っ先に新聞というのはとらない方が多くて、ただ一方で、では食べ物は所得が落ちたからとらなくていいかというと、なかなかそういうわけにも、新聞ほど急激に落ちるものじゃないにもかかわらず、実は財務省は同じような割合のパターンを平均で組んで、数字の統計を使って彼らは入れているんです。そこはおいておいて、新聞に対して、私はそういった意味でも明らかにおかしいというふうに考えているんです。  ただ、彼らが言うには、ほかの地域でもやっていますよ、ヨーロッパでは入っていますよという議論で言うんです。でも、聞いていくと、ヨーロッパは、その前にガスとか電気とかもしくは書籍、やるんだったら書籍も一緒に入っているとか、その中の一部であるにもかかわらず、なぜか今回、食料の次に、飛んで新聞みたいな議論になっているんです。  私は非常におかしいと思うんですが、そうお考えになるかどうかも含めて、参考人皆さんの御意見をお伺いしたいんです。
  172. 竹森俊平

    ○竹森参考人 どうもありがとうございます。  きょうの私の発言は、最初に、軽減税率が理論的に正当化されるのは新聞だというのが私の考えでして、実際に新聞の売り上げがどんどん落ちているというのはどこを見ても出ていますよね。私は、これは明らかに消費税が入っているだろうというふうに考えています。ほかのものはそんなに落ちないだろうと。  先ほどから申し上げていますように、新聞の場合は、無料のメディア媒体というものと闘わなきゃいけないということがありますから、ちょっと値段が上がっただけでも大きく下がるわけです。  先ほど森信さんがヨーロッパの話をされましたけれども、ヨーロッパは二〇%ぐらいの消費税ですよね。それで、いろいろ問題があることは確かですけれども、では今、二〇%を導入したらどうか。ヨーロッパ人は、今グーグルがえらいでっかい顔をしているのが嫌で嫌でしようがない。グーグルだけがヨーロッパの情報を全部コントロールするようになりますよということを彼らに言ったときにどう考えるかというのは、ちょっと私は興味があるんです。
  173. 森信茂樹

    森信参考人 お答え申し上げます。  私は、今の竹森先生の話とはちょっと違うんですが、新聞の売り上げが落ちているのは、別に消費税のせいではないと思います。  学生に聞きましても、例えば三十人ぐらいの学生に聞きましても、新聞をとっている人は一人か二人なんですね、今若者では。それはなぜかといいますと、ここは竹森先生のお話なんですが、ネットでただで見られるからということで、したがって、消費税の軽減税率を適用したからといって、新聞の売り上げがふえる、あるいは下げどまるということは私はまずないというのが基本的な認識です。  したがって、今回の法律では、しかも税制改革法では低所得者対策としてというふうに書いてあるわけでして、新聞が軽減の対象かどうかは、決して低所得者対策ではないという点が一つ問題だと思います。  実は、私が最大の問題だと思うのは、表で、表というのはどこが表かというのは難しいですが、表でほとんど議論もなくて、連日連夜、食料品の軽減税率が問題になって、外食まで含めるのかどうかというふうなところが大きな議論になって、その報道が中心である中で、その議論がほぼ終了した後、実は新聞もということで入ってきたというふうに、中にいない人間としてはそういう印象を持っております。  そういう議論の仕方が私は公平ではないんじゃないかと思いますし、もう一つは、新聞が活字文化だということになれば、しかし、なぜ文化の中で活字文化だけを優遇しないといけないのか、文化といえばもっとほかにもいろいろな文化があるではないかという議論に必ず来年以降はなると思います。  そうすると、果てしなく範囲が拡大していくことになりまして、これがヨーロッパで二〇%まで消費税率が上がっている一つの原因かもしれませんが、そういう問題もあるということで、新聞に軽減税率を今回適用することについては、私は反対の立場であります。
  174. 太田義郎

    ○太田参考人 そもそも、新聞の購読が減っているというのは、税金の問題ではないと思います。  というのは、町の中で生活をしておりますと、私の町内に新しくワンルームマンションというのがぽこぽこできるんですね。そこで、町内会費を大家さんにお願いをして集めるわけですけれども、実は、ワンルームマンションに住んでいる若い人たちというのは、ほとんど新聞はとっていないです。  したがって、若い人たちが新聞を読まないというのは、それはスマホだとかインターネットだとか他の媒体で新聞を引っ張ることができるというようなことで、かなりそういう点では苦境になっているのではないのかというのが基本原因だというふうに思います。  それで、新聞がなぜ軽減税率に入ったのかというのは、僕はこれは、ヨーロッパの経験の中から、ヨーロッパでは新聞や書籍や旅行の電車賃、列車だとか、それから二泊三日程度の宿泊についてはイギリスでは税率が低いというような経過もあって、新聞が俎上に上ったのではないのかというふうに思います。  いずれにしても、私の立場というのは、そもそもインボイスが必要な軽減税率については反対だということからいえば、当然これは反対だということです。  以上です。
  175. 丸山穂高

    ○丸山委員 それぞれのお立場から御意見をいただきまして、ありがとうございます。  もう一つ御意見をお伺いしていきたいのは、先ほど少し、最後の太田参考人からお話がありましたインボイスで、以前もお話があったんですけれども、事業者間の取引から免税事業者が排除されてしまうんじゃないかという問題点についてなんです。  これを政府に聞きますと、政府側は、特にBツーBの商取引において、免税事業者さんがインボイスを出せないがゆえに排除されてしまう可能性があるというのは政府も認識している、特にBツーBに対して問題があるというのは答弁しているんです。  でも一方で、問題があるとわかっているのに、何をしますか、今からやるべきことがあるんじゃないですかと伺ったら、現時点では施行までの時間があるので、その間ウオッチする、ウオッチして、何か問題が出て声が上がってくるだろう、上がってきたら対処するという答弁をしているんですけれども、今の段階である程度問題がわかっている中で、これに対して政府側が何かできる対処みたいなものはないのかなというのが、常にその話を政府としていて思うところなんです。  そのあたり、お聞きになって、御知見や思うところがありましたら参考人皆さんにお伺いしていきたいんですけれども、まず、では、思いをお持ちの太田参考人、お願いします。
  176. 太田義郎

    ○太田参考人 先ほど、六年間の間に準備したらどうだという話でしたけれども、それは時間の問題ではないのではないか。  例えば、私、先ほど言ったように、米屋なんですね。そうすると、米屋が、お客さんは全部一般消費者だけなら、これは問題ないんですね。ところが、私が納入している中に例えば保育園があるとか、現実に何軒か保育園があります。当然、これはインボイスが必要になります。当然、民間であろうと公的な保育園であろうと、公費が名古屋市、愛知県からおりているわけですから、インボイスのない業者、インボイスがとれない業者との取引というのは、これは排除されるというのは事実です。したがって、そういうところの売り上げを全部諦めるかどうなのか、それとも課税業者になるのかという選択が六年間の間に迫られる。それか、最後は廃業するという手がある。こういうことになります。  したがって、僕は、時間があれば何とかなるという問題ではないのではないか。そういう点では対応というのは非常に難しい。そもそも、こういうインボイスが必要な制度というのは、日本の商習慣上から含めて大変難しいのではないのかというのが私の意見なんです。  以上です。
  177. 森信茂樹

    森信参考人 お答えします。  私は、結局、この問題は二つしか道がないと思います。一つは、免税事業者ですから、自分の付加価値部分には消費税がかからないわけですから、その分だけ価格を引き下げる、引き下げるというか、その分だけ価格競争で他の課税業者とは有利に立っているはずだということですね。しかし、これはマージンが低い中では必ずしもうまくいかない。これはもう太田さんが先ほどからおっしゃっているところだと思います。そうすると、残された道は課税選択しか私はないのではないかというふうに思います。  しかし、私が申し上げているのは、課税選択した方が結果的には免税事業者にとっても有利になりますよと。ただ、手間がかかるだけです。手間がかかるところは、しかし、そもそも軽減税率の導入ということで大きな政策が決まった以上は、この軽減税率の導入に手間がかかるわけですから、それを所与とするならば、インボイスというものを入れて、その手間を少しでも軽減していく方がいいのではないかというふうに思います。  それからもう一つ、今、六年間とかおっしゃいましたけれども、三年間ですか、済みません。一つは、やはり、消費税と価格というものの考え方を私はもう少し整理した方がいいんじゃないかと思います。  といいますのは、これはヨーロッパでいろいろな人と話をしますと、やはり日本のこれは商慣習かもしれませんが、日本の事業者の方の消費税に対する考え方、ひいては価格に対する考え方が非常に諸外国とは異なっている。例えば、諸外国では、四月一日から消費税率を引き上げるときに、三月三十一日に小売店が徹夜をして値段表を張りかえるということはほとんど見られません。それは、もう既に消費税はコストの一つだと。円安で輸入物も上がるし、人件費も上がる、そういった中で今度消費税も上がるよねと。そういったトータルの考え方でもって価格戦略を考えていくわけです。  わかりやすく言えば、例えばイギリスで消費税率を二年間で五%引き上げました、二・五%ずつ。そのときのいろいろな記録が「ファイナンス」という財務省の雑誌に載っております。五十嵐当時副大臣がイギリスに行ったときの記録ですが、事業者の方は、上がっていく消費税に、消費が落ちるのではないかということで、消費税込みの価格を例えばクリスマスの前には上げないとか、そういった価格戦略をとることによって何とか乗り越えたということが言われております。  つまり、日本の場合は、必ず税抜き価格と税込み価格、二つを表示しておりますし、原材料価格も含めて、人件費も含めて変わる中で、消費税だけは何か特に転嫁しなければいけないという意欲が強過ぎると、かえって価格競争には負けてしまうのではないかなというふうに思いますので、その辺の消費税と価格というものの関係をこの三年間の間にいろいろと考えてみることも私は有益ではないかなというふうに思っております。
  178. 竹森俊平

    ○竹森参考人 私はきょう、ずっとほかの参考人意見を聞いて大変勉強になって、これも勉強になったことですが、私なんかは、昔は、免税業者というのは何でそもそもあるんだろうというふうに思っていたんです。  そもそも消費税というのは、所得税だと捕捉が大変だというものを、消費だと捕捉が簡単だということで、ある程度小売の方に負担を押しつけたという面はある。それに対応できないということもあるだろう。  ただ、その中で、今、森信さんがおっしゃられたような、免税業者が課税業者に変わってインボイスをとるようになるというのは、税の構成とか効率性からいえばプラスの面があるので、小売業の方には負担を強いることになるけれども、そういう展開自体はそれほど問題ではないと私は考えます。
  179. 丸山穂高

    ○丸山委員 三者いろいろな御意見をいただきました。  お伺いしていると、政府の側で、実は大臣も御答弁されていまして、これによって多くの事業者が恐らく潰れてしまう憂き目にはなるだろうというのはおっしゃっていまして、一方で、とはいえ、側面の一つとして、先ほどお話のあった、そもそも、課税事業者であるべきなのに免税事業者になっている現状があってという立場の御意見もあるということで、逆に財務省なんかは、恐らく本音ベースではそちらの意見に近くて、しかしなかなか、免税事業者も現にいらっしゃる中で、それにどうこうと言いづらいんじゃないかなというのを、今、逆に、財務省は言えないけれども根本の部分にそういうことを思っているんじゃないかなというのを、少し、先生方の御意見を聞いて思ったところです。  いずれにしても、政府側の議論を聞いていますと、どっちかというと起こってからウオッチして、見るみたいなのが多くて、例えば今回の所得税法に三世代同居の税額控除が入っているんですけれども、一方で、ではちゃんと三世代同居しているか見ますかと言うと、ちょっとそこまでは見切れないと。結局、構造上三世代に適しているという建物を建てればそうとみなしますという答えをします。  もちろん、それは効率性は上がるのでよいと思うんですが、しかし、今、一方で、それによって民泊に使ったり、若い人だとルームシェアみたいな、結局、政策目的の三世代同居は達成できない可能性もあるんですけれども、ではそれをウオッチしますかというと、国会でつつかれて、そうしたら調査しますみたいなのが出てくるような状況です。  そういった意味で、お話を聞いていて、今回のインボイスにしても、所得税の改正というのは、ウオッチの仕方、きちんと政府の方が見て、問題があるのなら速やかに修正していくという作業が非常に重要だなときょうの参考人皆さんの御意見を聞いて思ったところです。  これで終わらせていただきます。本当に貴重な御意見、ありがとうございました。
  180. 宮下一郎

    宮下委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、明三月一日火曜日午後零時四十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四分散会