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阿部委員 子供の死というものを、単に
虐待に遭った
子供さんの死を検証するだけじゃなくて、
子供の死全体を見て、その要因、原因、そして予防というふうに
社会全体の取り組みとした上で、その中で、
虐待問題も実はもっと発見されてくると思いますし、もっと防げると思いますので、モデルケースでやってみられるということですので、ぜひ前向きにお願いしたいと思います。
引き続いて、お手元の資料の二枚目をあけていただきますと、「死因究明に係る
法制度は複雑多岐」という、一枚の、これは実は自民党の
橋本岳先生がおつくりになった資料で、私が拝借をしてここに示させていただきました、大変よくまとまっておりますので。
子供の死を検証いたしますときに、いわゆる死因究明のための解剖というものも避けて通れません。突然に寝ているときに亡くなって、これが
虐待なのか、御病気なのか、はてさて何なのかというのは、
状況を聞くことからもわかることもありますが、解剖を伴ってみると、例えば硬膜の後ろに、頭蓋内に血腫があったりして、揺さぶられた跡ではないかとか、いろいろわかってくる場合がございます。そうした意味で、
子供の死を
社会的に検証しようとするときに欠くことのできない解剖という事態が、我が国において、これは大人も含めてですが、どういう
制度になり、また、どこまで実行されているかということを念頭に置くためのものでございます。
犯罪性のあるものは司法解剖、一番上です。それから、犯罪性が明らかではないが死因とか身元確認をするために行われる解剖以下、こちらは全部行政解剖と呼ばれるもので、その中には、いわゆる監察医務院
制度をお持ちの東京都や兵庫県でやっている監察医解剖、御
家族に承諾を得て解剖を行う承諾解剖、あるいは病気の場合の病理解剖など、多々ございますが、こう見ただけでも大変に、ややこしいというか分岐をしております。
しかし、我が国は、解剖率というものを見ると、司法解剖が、全体、例えば二〇一五年で扱われた死体十六万二千八百八十一のうち八千四百二十四で、五・二%。真ん中にあるところの死因・身元確認法に基づく解剖、これは新法解剖、新しい
法律の解剖と言いますが、行政解剖の方、新法解剖と監察医解剖、承諾解剖全部合わせても七・二%で、すなわち御遺体のうち十数%しか解剖をされておらないという実態がございます。
ちなみに、臓器移植などでも、
虐待児を排除してドナーにならないようにということで考えておりますが、実は十八歳未満の臓器移植例は十五例ございましたけれども、そのほかに
虐待かもしれないといって見送ったのも五十九例あって、そのうち特に
虐待を否定できないのが七例あったということなど、実は臓器移植を行う場合は解剖はできません。これは、解剖してしまうと移植できないからです。
子供の死をめぐっては、死を検証する仕組みの中で特に解剖がなかなか
日本の
社会のルールの中に根づいていない、そして、重要な臓器移植などにおいても必ずしも排除されないなどの問題があり、改めて
子供の死ということを考えて、先ほどのいわゆるチャイルド・デス・レビュー
制度を実効性のあるものにしていくためにも、メディカルエグザミナー
制度というのがございまして、これは、法医学者とか病理学者を中心に、
子供の全ての死を検証しながら、原因解明をしていく、予防に結びつけるという
制度でございます。
幾つかの
質問を時間の関係ではしょりましたが、ぜひ、
大臣がなさろうとするモデル事業の中に、このメディカルエグザミナー
制度、これもアメリカ等々から由来のものでありますが、それを参考にされまして、そして各
都道府県に、今のように
虐待だけでなく、
子供の死検証
委員会あるいは死因究明
委員会等々を設置してやっていくような方向を考えていただきたいですが、いかがでしょう。