○加藤
参考人 皆さん、おはようございます。
私は、このたび当
委員会の
参考人として
意見を陳述する
機会を与えられたことに対して、心から感謝を申し上げたいと思います。
私自身は、専ら子供のことを中心にこの年まで生きてきました。
一方では、もちろん、
地域でハンディを背負って生きる方
たちが安心、安全のうちに生きるためには、さまざまな公的な援助、公助というものが必要であるのは言をまたないわけですけれども、さりとて、それで十分かというと、なかなかそれもままならないという中で、自助、共助というような、そういう視点からの
地域での活動を
全国組織化したものとして、私の肩書の後段にあります
一般社団法人
全国知的
障害児者
生活サポート協会という組織を立ち上げて、
全国で今、十二万人ほどの
会員がおられます。
その立場を代表してという発言も可能ですけれども、私の前に四人の方
たちの発言がございました。基本的には、大きなフレーム、そしてまた大人の方
たちの問題といいますか、視点的にはそういう視点からの発言が多いということもありまして、私は、最初にあります肩書の
一般社団法人
全国児童発達
支援協議会という立場で今から発言をさせていただきます。
さきの
児童福祉法の
改正によって
障害の一元化ということが図られました。結果として、従来、それまで
障害種別ごとにあった
地域の資源といいますか、
サービスといいますか、施設が一元化されたということで、身近なところで発達に必要なさまざまな資源を活用できるというような形になりました。
この協議会は、そうした動きを受けまして、その二年前に、それまで第一種
社会福祉事業として存在していました知的
障害児通園施設、肢体不自由児通園施設、それから難聴幼児通園施設という、第一種の児童に関する
障害児施設がありました、それから、第二種の心身
障害児通園事業という市町村の事業としての活動がありました、それらを、そうした
児童福祉法の
改正の動きに呼応して、一本化して今日に至っております。
組織率からいきますとまだまだ十分ではないんですけれども、とりあえず、さきの法
改正から、こうした形で子供
関係者が大同団結して活動をしているという
状況でございます。
我々の思うところ、考えるところについて、あるいはこれまでの流れについては、この私のレジュメ、七ページにわたっていますけれども、最後の三枚は図版です、四枚を使って書いてございますので、追って説明をさせていただくわけですけれども、いずれにしましても、前の
佐藤先生からの御発言にもありましたように、やはり近年の
障害施策については、目覚ましい前進、進歩、拡大、
充実ということが図られて今日に至っているというふうに、私もこの世界で四十年間、実践、現場で生きてきて、実感するところであります。
ただし、とはいえ、それでは、今これで十分かというと、決してそんなことは言えません。まだまだやはり
課題は山積しております。
さりとて、私も
法律の
専門家ではないんですけれども、やはり
制度的にも、完璧な
制度とかいうものは、多分、古今東西、これからもなかなか難しいだろう。つまりは、ベストではなくてベターを常に、よりショートタームに反復、繰り返しながら前進を図るということが、多分、現実的な、最も理想的な進め方だろうというふうに実感します。
そういう意味で、今回の、このたびの総合
支援法並びにそれに伴う
児童福祉法の一部
改正ということに関しましては、これを成文化するに当たっては、さまざまな皆さんの、政党のヒアリングがございました。それから、社会保障
審議会障害者部会でのさまざまな
議論がございました。そしてまた、我々も、民間の
団体として、厚労省のさまざまな
研究事業を分担させていただいて、これまでの
実態と問題点をいろいろ
調査研究させていただいてきました。
そういう中で、最終的に、今回の
内容につきましては、ベストではないけれどもベターであろう、とにかく一歩でも二歩でも前に進んでほしいというふうに強く願うという立場から、ぜひこの
法案を一刻も早く通過させてほしい。通過したとしても、これは三十年ですから、まだ先なんですけれども、とにかく、私
たちとすれば、一刻も早く、少しでもいいと思われることは早く、待ったなしでやってほしいというのが、特に私、子供
関係者の人間として強く思うところです。
我々の、子供
関係のそうした育ち、
暮らし、生きざまを見ていますと、あるいはそばに寄り添って生きる保護者の皆さんの
生活、
暮らしを考えるときに、彼らは、よく言われることですけれども、不幸ではない、しかし、不利で、不自由で、不便な
生活を余儀なくされているということがよく言われます。私もそういうふうに思います。
それはどういうことかというと、結局、さまざまなハンディを背負って生きるということは、生きる上での
選択肢が限りなく貧弱になるということで、選べない、選べる
選択肢がない、そういう中で生きざるを得ないというようなこと。そして、もう一つの大きな特徴は、待たされるということですよ。待ったなしで彼らは日々生きているわけで、あと五年待ってくれとか、あと十年待ってくれというのはナンセンスです。
ですから、そういう意味では、確かにさまざまな
課題を抱えながら
制度は進むわけですけれども、それをショートタームに、早く、多様な
選択肢の中でぜひ確保していただきたいというふうに強く思います。
そういう意味では、今回も、多くの
課題を抱えつつも、私は、積極的にこれをとりあえず進めていただきたいというふうに強く願うものです。
そういう中で、私が用意させていただきましたこの七ページの表をちょっとごらんいただきたいと思います。
先生方の皆さん、いろいろデータとして、知識としてお持ちかと思いますが、これは、文部科学省が平成二十六年五月一日、これが最新のものです。間もなく六月が来ますので、今度新しいもの、二十七年版が出るかもしれませんが、この表を見ていただきたいんです。
これは何を意味しているかというと、現行の義務教育の段階で特別
支援教育体制の中で
生活をしている、学びの場を持っている子供が同世代の三・三三%。これは文科省の数字ですよ、私の数字じゃありません。これは年々ふえています。その意味するところはともかくとして、三・三三%。プラス、その下を見てください、薄い緑のところですが、発達
障害、LD、ADHD、高機能自閉症等の可能性のある子供が、これは通常学級の中に六・五%いるというんですね。これはトータルすると一割近くになるんですよ。
一割近くも、特別な、まさに
合理的配慮を必要として育ち、生き、学んでいるべき子供
たちがいるという前提で考えたときに、この少子化傾向の中で、それらを促進するたくさんの
制度が立ち上がっていますけれども、この一〇%の子供
たちがしっかり視野に入っているかということですね。ある意味ではネグレクトされちゃっているようなところがあるんですね。
子ども・子育て
支援法に基づくいろいろな諸
制度、事業が始まっているわけですけれども、そこで、その同世代の一〇%を占める特別な配慮を必要とする子供
たちの生きざまがどこまで視野に入って
制度化されているかということになりますと、
議論の中で、どこまで進んでいるかは私はちょっとわからないんですけれども、例えば無償化とか義務化とかいうような話があったりします。そのときに、それでは、この一〇%の、あるいは私が今守備範囲としています就学前の子供
たちが視野に入っているか。実は入っていません。保育園とか幼稚園児、あるいは学齢児にはそうした網がかかるんですけれども、実はかかっていないんですね、我々の、育ちが気になる子供
たちという意味では。我々の児童発達
支援事業
関係者の中にはその話が入ってこない。
あるいは、もっと卑近な例でいえば、
地域によっていろいろですけれども、学校にAEDあるいはアレルギー児対応というような話があって、それは行政からの手厚い
支援がさまざまにあるわけですけれども、例えば私
たちのような事業にはそういう話は一切入ってきていません。
だから、そうした調子で、やはり児童憲章、子どもの権利条約、
児童福祉法の頭の文には必ず全ての子供という文言が出てくるわけですけれども、全ての子供というのは一〇〇%であって、九〇%ではないはずですよね。しかし、現実的には、どうも残りの一〇%の子供が非常に希薄な存在として位置づけられてしまってはいないかということを強く感じます。
そういう中で、さりとて、もちろん、ベターなものを目指して、
関係者の御努力のおかげで事は進んでおります。例えば、このところの
制度改正の中で、最終的には、契約ということで、保護者にはインフォームド・コンセントがかなり徹底的に行われます。それから、子供には、先ほど申し上げました、
サービスの
選択肢が、ハードルが下げられたことによって、多様に
地域の中で確保できるようになってきております。それからさらには、我々
事業者、提供者としては、頑張りによってインセンティブが働くようになってきている。
これは明らかに前進です。進歩です。評価したいと思うんですが、しかし、この動きの中で、現実的には、今、今日、さまざまな
課題が浮上してきております。ですから、この
法案が通過後には、時間を置かないでぜひこうした事柄について当
委員会を中心に
議論を進めていただけたらと心から願うものです。
その一つは何かと申し上げますと、皆様のお手元の三ページをお開きください。
これは、我々が現実、現場の中で日々
全国の仲間
たちからいろいろ聞かされる
課題であります。
一つは、事務量の増大。結果として、
支援スタッフがその事務処理に疲弊こんぱいしちゃっている、消耗している、ストレスが増しているという
状態で、本来、彼らは事務職ではない、直接処遇職員であるにもかかわらず、そうした事務的な処理、時間に振り回されてしまっているという事態が起きております。これは
法律のせいなのか運用上の問題なのか、ちょっと私は手法的にはわかりませんが、いずれにしろ、現象として今そういうことが
全国の津々浦々で起きてしまっているんですね。これは、法の趣旨からは違ったところでそうしたさまざまな
課題が起きてしまっているんですね。これを何とか、一刻も早く解消していただきたいというのがまず一点です。
その中身についても、いろいろございますが、とにかく、いい
サービスをするということに関しては、やはりいろいろなスタッフを抱えなければいけない、いろいろな
サービスを組み立てなければいけない。それは確かに、インセンティブが働いて、加算事業としてインカムが多少拡大していって、それはいいことではあるんですけれども、結果として、現実は、そうした非常に厳しい作業現場になってしまっている。結果として、若い人
たちの職員としての参入が非常に難しくなってきているというのが現実であります。
それから、さきの
改正の中で始まった保育所等訪問
支援事業という事業がございます。これは、我々のような児童発達
支援センターが持っているファンクションを、
地域のさまざまな場で育って、生きている子供
たちへデリバリーする、そういう機能です。これは、インクルーシブな社会を志向する今日的な我が国にあってみれば、とても大事な事業だというふうに思います。今後これを一層拡大、
充実させなきゃいけないと思っているんですが、現実的には、なかなかこの事業が思うように伸びません。拡大しません。
それはなぜかというと、この事業の性質上、非常に時間がかかるんですね。ロスがさまざまな形で出てくる。かばんを背負って職員が
地域のさまざまな子供の
生活空間に出向いていくということは、それなりのキャリア、レベルが必要なんですね。そういう職員が例えば半日かけて一人の子供の
支援をしていたのでは、これは採算がとれませんよ。結果として、だから
全国的にふえないんですね。
この趣旨は誰もが納得して進めようと思っているわけですけれども、現実的には全く、遅々とした
状況ですね。この辺についても、大所高所から、もう少しこの事業の展開が進むように、検討をぜひお願いしたいというふうに思います。
それから、四番目の問題としては、これも
先生方よくよく御存じかと思うんですが、さきの
改正のときに放課後等デイ
サービスという機能が加わりました。これはこれで、先ほど冒頭に申し上げました、
選択肢、
地域の中でというようなキーワードを押さえた事業として、私
たち、最初はウエルカムでとても期待をしたんですが、現実、今、御案内のように、物すごい勢いで
地域の中で拡大をしているということですね。それはそれで、それだけのニーズがあるということなんでしょうけれども、問題はその中身ですね。
一つは、親御さんの、保護者のニーズというものが結局それをそうせしめているわけですが、その背景にあるものは、保護者の社会参加といいますか、自己
実現といいますか、あるいは就労というようなことの気持ちが前面にあるのではないかというふうに懸念します。もちろん、そういう方だけではありませんけれども。それと子供の
地域での育ち
支援ということとの、二つの機能が対立してしまっているのではないか。
そういう意味では、子供の最善の利益と言われているときに、本当に子供の最善の利益になっていると言い切れるかどうかですね。ある意味では、子供がいろいろな意味でネグレクトされたという
状況になっている可能性があるということですね。
ですから、これについては、やはり、規模も小さい、五、六人の事業で、非常勤職が約五割、経験も五年未満、資格もないというような
状態で、六歳、小学校一年生から高校生までの、本当に、さまざまな
課題を抱えた、あるいは
障害の多様さの中で、十分な、タイムリーな、まさに合理的な配慮がきちっと担保されるような
支援サービスができるのかということですね。
これはやはり、就労
支援施策という問題と子供の育ち
支援という問題を少し切り離して考えないと、ごっちゃになってお互いが足を引っ張り合っているような
状態で、問題が先送りになっている可能性があるというふうに思います。
それから、もう一つは日額制の問題です。
我々は出来高払いで事業費収入が来ます。台風がある、大変な感染症がはやっている、子供が欠席する、そのことによって事業費収入は減るんですね。安定的に
一定の
サービス、
一定の質を担保するにしては、余りにもその変動が大き過ぎる、ばらつきが過ぎるんですね。だから、まずは、事業費は出来高であったとしても、運営費については、つまり人件費を中心とした運営費については、やはり安定的な確保をぜひしてほしいというのが我々
支援サービス提供者としての心からの願うところであります。
それからあと、済みません、もう時間が来て、だめ出しが出ているんですが、六ページを見ていただきたいんですね。
これは、さきの厚労省の検討会で出された資料です。一昨年出された資料ですので、ぜひどうぞ、お手元に、見ていただきたいんですが、ここで大事なのは、結局、
地域で
本人中心、
家族中心と言っているときに、何もないところで
本人、
家族中心と言うだけでは安心、安全な
暮らしは確保できません。やはりそこに、相談
支援専門員という
信頼と評価とを持った、そうした事業所と人がいることが大事なんですね。ところが、まだそれも不十分です。なかなか広がりません。これも結局は、そうした人材が十分確保できていないということが大きな問題になっていると思います。
これについてもぜひ御検討をいただいて、一刻も早く解消し、
地域で本当にオーダーメードの
暮らしを、育ちをしていくには、そうした方
たちが本当に黒子のように、影のように寄り添っているという社会を構築しない限り、絵に描いた餅だと思うんですね。そんなリスキーな
生活は誰もできません、現実的には。
そういう意味でも、ぜひそうした
充実を検討していただきますようお願い申し上げまして、済みません、少し延長してしまいました。
ありがとうございました。(拍手)