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高橋参考人 おはようございます。
都留文科大学の
高橋と申します。
このような
機会を与えていただき、まことにありがとうございます。
お手元にございます
資料に沿って御説明をいたします。
再生可能エネルギー特措法に対してということです。
まず、一
ページ目、
グラフが描いてございます。左側が
風力、右側が
太陽光、
世界の
上位国の
累積設備容量をあらわした
グラフです。
先生方も十分御承知かとは思いますけれ
ども、今
世界で一番伸びている
電源というのは、
再生可能エネルギーである。しかも、特に近年を見ますと、中国とかインドですとか、そういう
発展途上国までどんどんこういう分野に
投資をしている。以前は、
欧州諸国などが、
CO2フリーですとか
エネルギー需給という
観点から、ある
意味お金をかけて入れていくべきものという認識だったわけなんですけれ
ども、ここ五年ぐらいを見ますと、本当に
発展途上国までが
導入している。要するに、
コストが非常に下がっているからだということであります。
したがいまして、
CO2の
制約等を
考えますと、やはり今後二十年、三十年、四十年と、
再生可能エネルギーをどんどん
導入していくということは、
我が国においてももう不可避かつ急務にやるべきだということをまず確認しておきたいと思っています。
次の
ページに行っていただいて、その際の大きな武器となりますのが
FITということで、今回の
法案につながるわけです。
釈迦に説法かもしれませんが、
FITの本質というのは
投資リスクを下げるということにあると思っております。
再生可能エネルギーは、基本的には、
設備初期投資が極めて大きくて、
ランニングコスト、特に
限界費用はほぼゼロであるという
特徴を有しております。ただ、幾つかの
リスクが、
事業者、
投資する者から見ると、あるということです。
一つは、先ほど安くなったと申し上げましたけれ
ども、やはり
世界平均的に見ますと、まだ少々高い。
本当に
費用が
回収できるのかということを
考えたときに、
市場価格プラスアルファ、これが
賦課金になるわけですけれ
ども、そういう高い
価格というものを設定しましょう、かつ、それを固定するということで、では
幾らリターンがあるんですかということが簡単に計算できるということになるわけです。
二点目、では
電気がちゃんと買い取ってもらえるのかということも、一つ問題としてはございます。
これは、
新規参入者が再
エネの
投資をやることが多いということもございます。通常の
電源であれば、当然、みずからの責任で
市場で売れというのが常識なわけでありますけれ
ども、そこも優遇をして、
ドイツであれば
送電事業者、
日本であればこれまで
小売事業者に
買い取りを義務づける。これも、確実に
リターンが計算できるという
特徴なわけです。
例えば
ドイツなんかの場合には、特に
長期目標、二〇三〇年五〇
パー、さらには二〇五〇年八〇
パーというような
長期目標を国が
法律の中に明記して設定している。これも、政策、
制度の
継続性という
意味で、
投資事業者の
リスクの
低減につながっている。
三点目が、
系統運用の話ですね。経済的に確実に
リターンがあるということがわかった場合に、
系統運用上、本当に接続されるんですか、給電されるんですかという
リスクがまだ残っております。
これについては、
欧州の場合は、指令、ディレクティブですね、こちらの方で
優先接続、
優先給電を義務づける。
系統運用者が
競争阻害的に接続しない、給電しないということがないようにしましょうと。もちろん、
最終手段として
出力抑制は、
安定供給の方が重要ですから、やむを得ないわけですけれ
ども、
ドイツなどの場合には、これを有償とすることによって、やはり
リスクをできる限り下げている。
このような
環境を与えることによって、確実にもうかる。これは誤解なさらないでほしいんですけれ
ども、ぼろもうけさせる
制度では決してないということですね。確実に利益は出るんだから安心して
投資をしましょうということを促進するのが
FITだということになります。
今の総論を
ドイツの話に置きかえたのが、次の三
ページ目でございます。
ドイツは二〇〇〇年から
FITを本格的に始めまして、もう十五年ぐらいたつわけです。再
エネの
導入率が三〇%を超えている。水力を除いても三〇%ぐらいまで来ている。
今の三点について見ていきますと、
価格については、
ドイツでも継続的に下げてまいりました。ただ、一年に一回だとやはり改定頻度が少ないということで、四半期に一回にしたりですとか、さらに、
太陽光については毎月自動的に
低減をするといったような措置をとってきている。それでも、
賦課金が非常に上がっているとか、そういう問題はございます。ですので、今般の
ドイツの
改正においては、大規模
案件に、PV、
太陽光と
風力ですけれ
ども、
入札制度を
導入しようということが決まっているわけです。
買い取り義務については、
ドイツは
送電事業者に基本的には義務づけてきたわけです。ただ、先ほど申し上げましたが、普通ならば
発電事業者が売るべきだろうということで、
市場に近づけるために、二〇一二年からは、直接販売の選択制、さっき、フィード・イン・プレミアムという話がございましたけれ
ども、
事業者が直接マーケットに販売する、自己責任で販売するということもできるようになった。今般の
入札制度とあわせて、基本的にこれを義務づける、大規模
案件については
発電した人はみずからの責任で売ってください、プレミアムは差し上げますよという
制度に変わるというふうに進化、変化してきているわけです。
最後の、接続、給電、これが一番技術的には重要なわけですけれ
ども、
優先給電、
優先接続が維持されてきている。その点、先ほ
どもございましたとおり、
変動電源がふえてまいりました。
安定供給の問題も出てきました。したがって、最近、ここ五年ぐらいは、フレキシビリティー、柔軟性をいかに高めるか、
システム全体でいかに
変動性をとっていくのかということに非常に今技術革新が進められているところなわけです。
次の
ページに行っていただきまして、では
日本はどうなのかということですね。この四、五年間の成果と
課題を見てまいりたいと思います。
まず一点目には、大量にふえた、これは私はもっと高く評価されてもいいと思います。これまでは、
日本には再
エネは入らないんだということをずっと言われてきましたので、このわずか三年半ぐらいの間に二十五ギガ
程度ふえたということは、極めて大きなこの
法律の成果であったともっと胸を張って言うべき、非常に高く評価できることだと思っております。
他方で、やはり四年、五年やってまいりますと、いろいろと弊害、問題点も見えてまいりました。先ほど
八木会長の方からも御説明ございましたけれ
ども、例えば非住宅用のPVに偏っているという話ですね。九割以上の
案件がこちらの方になっている。逆に言えば、
風力とか地熱、これは
環境アセス等の問題もあるわけなんですが、ほとんどふえていないという問題がございます。
それから滞留
案件ですね。去年の暮れで見ますと、五十三・五ギガワットが
認定されているんだけれ
どもまだ未運開だと。もちろんこれから運開するものもあるわけなんですけれ
ども、一般には四十ギガぐらいがいわゆる不良
案件、滞留
案件ではないかというふうに言われている。これも、年に一回しか
価格改定をしないですとか、
認定時期の問題ですとか、そういう問題が原因でこういうことが起きているということですね。
PVに思った以上に偏ってしまったということは、PVは
賦課金が高くなりますので、結果的に想定以上に
賦課金が上がってしまっている。今は
家庭用
電気料金の八、九%ぐらいまで来ているので、これももう少し速度を下げていきたいな、抑えていきたいなというのもごもっともだと思います。
したがって、この三点は比較的運用上の対策が求められるところだと思っています。
次に、
買い取りルールの変更、これがかなり私は本質的な問題だというふうに思っています。去年の一月に、こういうルール、省令だったと思いますけれ
ども、これが変更になったわけなんですけれ
ども、急速にPVが入り過ぎたということで、接続可能量というものを設定して、接続問題というよりも給電問題だと思うんですけれ
ども、給電順位というものを明確にした。要するに、
風力、
太陽光というのは劣後するんだということになって、接続可能量以上のものについては無制限、無補償の
出力抑制もあり得ることを御了解くださいという
制度になってしまったわけです。
もう一つが、去年の夏に非常に議論をしていただいて、
電源ミックスを決めたわけなんですけれ
ども、全体で見ると二二から二四
パー、PVで七
パー、
風力で一・七
パーということですので、
欧州の、例えば
ドイツとかスペインであればもう達成しているような、比較的低い水準の
長期目標が出たということになっているわけです。
今の話を整理しましたのが五
ページ目ということなわけなんですけれ
ども、
日本の
状況ということで、
買い取り価格については、もちろんこれまで、毎年四円ずつぐらいですか、PVは下げてきたわけなんですけれ
ども、私はまだやはり高いとは思っています。ですので、これをさらに
コスト削減等をしていくということは当然必要だろうとは思っています。今回の法
制度は、それに対して
入札制度というのも選択肢になるんじゃないかということが書かれているわけです。
買い取り義務については、今回大きな変更がございます。
小売事業者であったものを
送電事業者、
送配電事業者に変更しようと。これは
電力システム改革との関係もあるわけなんですけれ
ども、これが一つの内容になっている。
最後、赤く書いてありますけれ
ども、接続の問題が、私はかなり本質的な、深刻な問題だと思っているわけなんです。
優先接続というのが本来法令で明記されていたわけですが、私は、実態は非優先的な接続だったと思っています。それを今回、その規定を廃止する、電事法の方で改めて書き直すからという理由のようなんですけれ
ども、そういうふうになってしまった。
さらに、給電の方については、もともと法令上は明記されていなかったわけなんですけれ
ども、非優先の給電という状態が今後も続くということになっているわけです。
次が、
最後、以上の件をまとめて、私の
意見を整理して申し上げます。
まず、一点目の、PVに偏り過ぎているじゃないかということについては、運用上の問題でございます。これはぜひ徹底してやっていただければと思います。私も大賛成でございます。不適格な
案件の排除です。
価格改定についても、もっと頻度を多くするですとか、適正化すべきことは山ほどあると思いますので、大賛成でございます。
買い取り義務者の変更についても賛成です。ニュートラルな
送電事業者が
買い取り業務をやってマーケットに流すという方が、
制度の安定性が高まる。ただ、スポット
市場は規模が小さいですので、やはり当初は、
変動電源がこれだけ大量に入ってくるということに対しては注視をする必要があるとは思っています。
次の三点目、四点目がかなり本質的な問題だと思っています。
まず、
長期目標、これは非常に重要なわけなんですけれ
ども、
現行は非常に低い。ややもすると上限のような捉え方をされることがございます。ですので、これはやはり、本当にこの
数字で大丈夫なのかということは、引き続き
エネ基というのは議論をされると思いますので、
見直していただきたいと思っております。さらに、三〇年以降どうなるのかということも事業上極めて重要なポイントになりますので、四〇年、五〇年の
目標というものも必要ではないかと思っています。
接続、給電のルールにつきましては、やはり
優先給電というのが基本だろうと思っています。これは、再
エネを特別扱いしろということではなくて、
限界費用がほぼゼロなんだから当然優先して給電されるべきであろうという合理的な理由で
優先給電をすべきであろうということを申し上げたいと思います。
最後に、
入札制につきましては、将来的には私は必要だとは思っておりますけれ
ども、何分、先進国の
ドイツですらようやく一七年から本格的にやっていこうという段階です。中小
事業者が排除される危険性がありますので、こういう先行事例をよくよく見てから、例えば二〇二〇年とか、それ以降に
導入しても遅くはないのではないかというふうに思っております。
以上、御清聴ありがとうございました。(
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