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吉良委員 今おっしゃったことはそのとおりだと思います。いわゆる
日本のバブルが崩壊したというか、し始めた年、それが九一年。これは
日本史的な極めて重要な出来事だと思うんです。
世界史的には、御承知のとおり、ソ連の崩壊です。八九年のベルリンの壁、そして九一年のソ連の崩壊です。
一九九一年のソ連の崩壊、それをどう見るかというのはいろいろな見方があります。東西冷戦、西側が勝利した、資本主義国が勝利した、自由が勝った、こういう見方が一般的にはされています。それは間違いないんだろうと思います。けれども、私は一方どういう見方をしているかというと、官僚統制
経済の敗北だと思っております。
これも前に言ったことがありますけれども、アブラハム・マズローという米国の心理学者が、人間の欲求五段階説ということで、生理的欲求があって、安全の欲求があって、人と交わりたい、人と交流したいという社会的欲求があって、そこまである程度衣食住足りて人との
関係ができてくると、自分を認められたいという第四の欲求が出てくる。そして最後は、自己実現の欲求が出てくる。これが人間の欲求の五段階だと。
私はよくそれを国の発展段階にも例えます。もう一段階、二段階は言いませんけれども、三段階、今言った衣食住足りるというところまでが第三段階だと思っているんですね。第三段階までは、実は、とにかく腹いっぱい食いたい、安全でいたい、雨露しのぐ家に住みたい、こういう要求というのはほとんど人類共通でありますから、これは別に、自由主義だとか資本主義じゃなくても、社会主義だって共産主義だってそこまでは持っていけるんです。だから、ある時期まで共産主義国もソ連も、第三段階までは何とかいったんです。
目を転じて、アジアで見てみれば、民主主義という形はとっていますけれども、ある時期、ネシアにしろフィリピンにしろ、マレーシアも含めていいかもしれません、民主主義という形でリーダーは選ばれているけれども、実際は、ある
意味では独裁体制をしいて、そして開発独裁をやっていく。いろいろな意見を認めませんから、非常に効率よく、ある段階まで
経済社会を持っていける。
けれども、そこでつまずくのは何かといえば、よく言われる中進国のわな、中所得国のわな。それ以上発展しようとすれば、さっきのマズローでいえば、衣食住足りて、第四段階、第五段階、自己実現を目指したそういう社会になってくる。そうすると、やはりどうしても自由でなければ、多様性を認めなければという段階に入ってくる。そういう中で、私は、ソ連も崩壊をしたと。それは、官僚が五カ年計画だ何だをつくって、今言った、官僚が中心となる統制
経済がそれ以降は
機能しない、こういうことだと思うんです。
我が国はどうか。これは、私はいつも言いますけれども、あの焼け野原の
我が国を見事に戦後復興させ、そして戦後復興から
経済成長という
政策をとる中で、
世界の一流国、
世界第二位、今、第三位の
経済大国にした最大の功労者は、頑張り抜いた
国民ですけれども、それを引っ張った自民党ですね。そして、
岸田外務大臣の宏池会、それが物すごく重要な役割を果たしてきたというふうに思っています。
けれども、それはある
意味、自民党一党、または自民党と官僚の連合
政府による開発
経済、開発独裁だったと言っても過言ではないと思うんです。だから、そのときは第二段階、第三段階までは非常に
機能した、
世界のモデルケースになっている、成功体験だった、このように思っているんです。
ちょっとお配りした
資料、これは余りにも当たり前の
資料ですけれども、三枚の
資料を見ていただきたいと思います。
さっき申し上げました一九九一年、
平成三年でありますけれども、これはまさにバブル崩壊の年。けれども、そこからいわゆる建設国債それから赤字国債が急激に膨らみ、税収はふえず落ち込む、
予算需要は高まっていく、ワニの口が出てくる。
そして、二ページ目にある、この国債の発行の積み重ねがここまで膨大な国債残高となり、今や、地方も合わせれば一千兆円を超えている。
三ページ目ですけれども、その間、公共
事業、
平成三年ぐらいから非常にふえています。もちろん、バブル崩壊の景気減速を何とか補おうとしたことは間違いないと思いますけれども。そして、私自身は公共工事全部を否定するつもりはもちろんありませんが。でも、結果的に見れば、これは前回も申し上げましたように、幾ら財政的にお金をつぎ込んでも、失われた十年、失われた二十年というものは
解決できなかった、これが現実です。
私は、あえて共産主義の話、そして開発独裁の話をした。
我が国も、さっき言いました、
国民とそれを引っ張った自民党の大貢献によって、第三段階までは見事に卒業しているんですね。もう四段階の半ば、五段階に近づこうとしている社会において、このような財政出動による開発独裁的な手法が通じるわけがないんです。それを
世界経済の再活性化の重要な手段にしようと持ち出すこと自体が間違っている。
そのことがよくわかっているから、メルケル首相は、えんきょくにお断りし、先進国
日本、もう先進国でしょう、先進国の
経済を活性化するのは
民間でしょう、
民間投資でしょうと。キャメロン首相も、今言った、礼儀として完全否定はしないけれども、金融
政策、財政出動をあえてわざわざ出して、だけれども一番大事なのは構造改革でしょうということを言ったんじゃないでしょうか。
そういう中で、このG7の会合において、私は再度、くどいほど言います、財政出動による
世界経済の再活性化、こういうものを持ち出すべきではない。そして、自民党も、もういいかげんに、かつての成功体験を忘れていただきたい。
繰り返しますけれども、かつては大貢献しています。けれども、それは今この時代には通用しないんです。それを持ち出したいのはなぜか。それは、今、
日本じゅうにあるほとんどの産業が自民党が生みの親、育ての親なんです。そして、それが自民党の応援団なんです。本来なら、育てて一人前になった、二十になった大人についてはもう自立しろというのが人間の当たり前の姿です、家庭の当たり前の姿ですけれども、まだ困っているから何とかしてくれというときに、おお、おまえ、大変だなというのでまた財政出動で何とかしましょうとやり続けているのが今の
我が国の姿なんです。
これを、私は、さっき言いましたように、批判的な思いも込めながら、自民党、もう一回目を覚まして頑張ってくれとエールを送りたいし、
世界経済の再活性化について財政出動は持ち出さないでいただきたい。
もう時間が来ましたので、手短に
大臣の所見をお願いします。