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武見敬三君 ケニアのケースなどは
日本の新たな大きなチャレンジでもあります。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジという一つの大きな制度をつくろうとするときに、技術
協力であるとか必要な財政支援というものを多角的に行う戦略的な取組をこのケニアで
我が国は円借款を使ってやるようになりました。以前は、この円借款というのは、インフラ整備といったようなところには使いましたけれども、
保健医療分野というのにはこうした円借款というのは使っていなかったわけであります。
それを改めて活用して、技術
協力や無償資金
協力と組み合わせて多角的にこうした支援の
体制を整えて、それぞれの国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現するための支援を行うということが今、
日本の大きな得意技にもなってきている。是非これをお進めいただければというふうに思います。
ただ、この
保健医療の
分野で今一番関心になっている
課題というのは実は何かというと、エボラ出血熱とか、それから韓国に入り込んできたMERSとか、ああいう危険な感染症を
国際社会が一体どうやって
協力をしながら発生した
地域でより早くそれを抑え込むことができるかというテーマになってきました。
それも、エボラ出血熱、昨年発見されてから、WHOがこれが危険なPHEICと呼ばれる、ある種蔓延してきた状態だというふうに認定したのにえらく時間が掛かっちゃった。そのために、多くの
関係者から、WHOは一体何やっておるんだ、もっとしっかりとこうした監視
体制を
強化をして、そしてすぐに対応できるような仕組みをつくらなきゃ駄目じゃないかと。
それから、実際にWHOだけでは火消しはできませんでした。例えば、実際に現地でいろいろとそういう患者さんというのを隔離をして治療をしたりする、そういう
能力は現地の政府にはありませんでしたから、それはWHOや、あるいはアメリカや、そしてフランスやイギリスや
中国などが自分たちの軍隊を派遣して、そしてこれらの火消し活動に一緒になって
協力をしてその問題の
解決に大きく
貢献をいたしました。
これは、西アフリカというとんでもない遠いところで起きたこういった危険な感染症であったとしても、航空路線がもう世界中に蔓延しておりますから、いつ何どきそれがニューヨーク、ロンドンに飛び火するか分からない。そして、東京にもいつ何どき入ってくるかどうか分からない。それで、我々も、七、八人ですか、陰性で良かったけれども、ちょっと疑わしき患者も
日本に来られて、それを水際作戦で何とか捉えようということで実際にその仕組みを
強化したりいたしましたけれども。
実際に、どうやったらこれからこうしたWHOの役割、機能というものもきちんと確実に
強化をして、そして、特にWHOというのはインターナショナル・ヘルス・レギュレーションという、これは、そういう危険な感染症などが発生したときには、すぐに、一体何人どこで発生したかというのをWHO本部に報告をする仕組みがあるんです。それは、それぞれ加盟国に全部義務付けられている。だけど、六六%の国しか実行していないんですよ。
途上国で余り所得の高くないような国は、そんな報告をむやみやたらにしちゃうと、あの国はどうも行くと感染しちゃうらしい、
経済活動などもしに行くのは遠慮しよう、あるいは
社会的な活動も、スポーツなど含めて大会があったとしても、ちょっとあそこでやるんだったら出るのやめようと、こんなふうに思いかねないものですから、そういうことを警戒してなかなか正直に報告義務に応じないというようなことも特に所得の低い国にはあります。
こういった
事態を、じゃどうやって自分たちも率先してそういう病気が起きたらちゃんと報告をするようにするかとか、それから、もし仮に残念ながら蔓延し始めちゃったときには、それぞれのそういう途上国の実態というのはお医者さんも看護師さんも薬剤師さんもそんないるわけじゃありませんから、しっかりとその点に関しては
国際社会が支援してあげなきゃいけない。
しかも、WHOが中心としてその役割をより強固に果たすためにも、今度はロジスティックスではWFPという、世界食糧計画というところが実際ヘリコプターとか飛行機たくさん持っていて、そういうところが実際に必要な専門人材を送り込むときのロジのお手伝いしたり、子供の健康や母親の健康というようなことになってきますと、ユニセフとかUNFPAといったような国連機関が今度は
協力をしたりということになります。
したがって、いろんな国連機関が
協力するための国連の中の調整機能をつくらなきゃなりません。その調整機能というものをつくるときに、今回はUNMEERという、潘基文事務総長の下に一時期だけそうした調整機能をつかさどるそういった機能をつくって、そしてそのUNMEERでこの参加国に対するオペレーションを戦略的に運営したという経緯がありました。しかし、このUNMEERだってうまくいったと実はみんな思っていないんですよ。
しかも、そういうときにファイナンス、お金をきちっとそれぞれの国にも上手に流さなきゃならない。しかし、上手に資金を流すというのは極めて難しい話で、WHOもそういうことをうまくやったことは過去に一度もない。そしてまた同時に、世界銀行のようなところがもう見ていられなくて、じゃ、うちが、そういう危険な
状況が発生したときには
経済活動に支障がないようにする支援とか、あるいはそういう治療や予防のための支援にお金を流すような、そういう新しい基金を実際につくりましょうというようなことも言い始めた。
さきのG7のサミットで、ドイツにおいてメルケル首相もこの点非常に強く主張をされたと伺っております。したがって、その中で、改めてこのWHOの中核的な役割というものをきちんと確認をし
強化しようということもコミュニケの中でうたわれましたし、また同時に、こうした世界銀行がファイナンスをする機能というものもきちんと育てていこうということも確認されました。しかし、まだそこまでなんですよ。
実は、来年のG7のサミットのホスト国は
日本です。この
日本がそのホスト国としての立場から、ドイツが取りあえずそこまで
共通確認してくれたものを踏まえて、今度はより具体的にこうしたWHOの機能
強化、WHOの改革であるとか、あるいは国連機関の相互の調整機関の確立であるとか、あるいはそうした緊急時にファイナンスする仕組みづくりというものについて、具体的にどのように組み立てていけば上手に効果的に緊急時においても
国際社会が対応できるようにするという仕組みづくり、今これのことをグローバルガバナンスと呼んでおります。このヘルス、
保健医療に関わるグローバルガバナンスということが今まさに大きな
課題として浮かび上がってきました。
こういった点について、来年、G7のホスト国でもある
日本の立場から、しっかりと
日本が取り組むことが
未来志向の平和的な積極主義というものの一つの見事な具体的に展開することになると思いますけれども、
総理の御
所見を伺わせてください。