○藤巻健史君 維新の党の藤巻健史です。
維新の党を代表して、ただいま
議題になりました
所得税法等の一部を
改正する
法律案について、
反対の
立場から
討論をいたします。
この法案では、税法に関し様々な細かい
改正が行われていますが、
財政に対する危機感が全く感じられません。
政府は、二〇二〇年のプライマリーバランス、基礎的
財政収支の黒字化を目指していると事あるたびにおっしゃいますが、基礎的
財政収支とは、国債元本返済と利息の支払である国債費を含んでおりません。二〇一三年十一月二十五日の参議院決算
委員会で、私の質問に対し甘利大臣は、二〇二〇年度の国債費は四十三兆円程度と答弁されました。ということは、二〇二〇年度にプライマリーバランス黒字化の目標が達成できたとしても、この年度の赤字額は今
審議している
平成二十七年度
予算の三十六兆円よりも大きくなるわけです。
財政再建とは、単年度
予算が黒字化し、累積赤字が減少してこそ初めて言える言葉のはずです。
政府は、プライマリーバランスの黒字化を前面に出すことによって、危機にある
財政状況を
国民の目からはぐらかそうとしている
ように思えてなりません。若しくは、余りにも危機感がなさ過ぎます。
二〇一〇年のトロント・サミットで、
日本以外の先進国は、二〇一三年までに少なくとも単年度赤字を半減させ、二〇一六年までに
政府債務の対GDP比を安定化又は低下することをコミットしました。すなわち、単年度
予算を黒字化又は均衡のコミットをしたわけです。
ところが、それは
日本にとっては到底不可能な達成目標だということで、特別処置としてプライマリーバランスの黒字化を目標としてもらったわけです。五周遅れの目標というわけです。それにもかかわらず、この目標さえ達成が危ぶまれています。今や他の先進国と比べて十周遅れと言ってもいいでしょう。
また、
政府は夏までに中期
財政計画を発表するとおっしゃっていますが、プライマリーバランス黒字化が達成したところで、ここまで借金が大きくなると、
財政赤字が維持可能か極めて疑問になります。
プライマリーバランス黒字化目標は、その後、名目経済成長率が名目金利よりも高ければ
財政赤字が維持可能というドーマーの定理が前提だと思われます。しかしながら、ここまで借金が大きいと、少しでも長期金利が上昇すると、国の倒産リスクが急騰し、実質金利と期待インフレ率と倒産確率の合算である名目金利は名目経済成長率よりも恒常的に高くなることが予想されます。
現在、危機的な
財政状況は日銀の買いオペレーションによって表面化していません。新発債と借換債合計百五十三兆円のうち、百十兆円もの国債を日銀が買う、すなわち日銀が
政府に資金を貸し込んでいるのですから、実質、国債引受けが行われていると言っても過言ではありません。完全なマネタイゼーションです。この
状況がいつまで継続できるかも疑問です。
本
会議質疑のときにも申し上げた
ように、一九八五年から一九八九年までは狂乱経済と言われたバブル経済です。そのときの消費者物価指数、これは全国、生鮮食品を除く総合ですが、二〇一〇年基準では、八六年が前年比の〇・八%増、八七年が〇・三%増、八八年が〇・四%増、八九年が二・四%の増であり、バブル期の大半は黒田日銀総裁が現在目標としている二%以下だったわけです。しかし、経済は狂乱いたしました。
今年三月下旬に発表された一月一日現在の土地の公示価格は、最高額地点が東京銀座の山野楽器前で、一平米三千三百八十万円でした。前年と比べて一四・二%の上昇です。株価もアベノミクスのおかげで力強い上昇をし始めています。株価の水準といい、東京山手線内の土地が二桁の上昇率を記録し始めたことといい、バブル初期と似ている気がしてなりません。
バブルのときの日銀総裁であった澄田元総裁が、二〇〇〇年十二月に発売の「真説バブル」、日経BP社ですけれども、その中で、消費者物価が安定しているのに不動産価格や株価が急騰し、経済が狂乱してしまったことを見抜けなかったのは自分のミスであると
反省されています。時の総裁の談話ですから、その
反省は日銀内にも蓄積されているはずです。
実際、消費者物価指数が黒田日銀総裁が目標とする二%に達していないのに、不動産価格、株価が今後とも続騰した場合、日銀は究極の選択を迫られるはずです。バブル再現による経済狂乱を懸念して量的緩和を中止する、すなわち国債購入を中止すれば、日銀が輪転機で紙幣を刷って国に資金を貸し込むのをやめるわけですから、国はたちまちに資金繰り倒産の危機に直面してしまいます。先ほど述べました
ように、今国債を買い増しているのは、日銀以外ほかにはいないからです。
資金繰り倒産はまずいといって、国が日銀に強制的に今後とも国債を買わせ、量的緩和を続ければ、バブルは更に大きくなり、ハイパーインフレ到来は必至です。その
ような危機感を今の政権からは全く感じられません。九十六兆円もの史上最大の
予算案を組んでいるのです。危機的な
財政状況を勘案すれば、九十六兆円もの史上最大の歳出を予定するならば、本法案でも大増税を盛り込まなくてはならないはずです。逆に、本法案程度の税
改正ならば、
予算の四割を占める社会保障費を中心として歳出を大幅削減しなくてはならないはずです。
その気配がないどころか、その前提となる我が党が主張する
国会議員の定数削減や歳費削減にも全く手を着け
ようとしていないのです。
財政危機に全く関心を払っているとは思えないこの法案に我が党が賛成するわけにはいきません。
また、本法案の
改正では、我が党が強く主張している消費税の
地方税化が全く考慮されていません。
結果平等を追求し、自助努力をないがしろにしたがゆえに
日本経済は低迷したと私は思っています。
地方政治にも競争が必要です。人はより良いサービスを低い負担で提供してくれる
地方に移り住みます。アメリカでは
地方公務員の教員さえ高額で引き抜き合戦をしているのです。良い教育をする
地方に人が移り住み、
地方税収を増やすという好循環が生まれるからです。
経済再生を
安倍政権が標榜するのなら、それこそ消費税の
地方税化が必要だと思います。
また、本
法律案に含まれている出国時の譲渡所得課税の
特例には極めて危険なにおいがいたします。課税逃れ防止のためという趣旨は十分
理解できますが、たった百人からの徴税が目的で、かつ税収もそれほど大きいとは思われない税制の
改正です。その徴税のために実現利益に課税という課税原則の大原則に反していいのかどうか、疑問に思います。
実現利益課税であるならば、資産を売らない限り
税金を払わなくて済むという安心感、安定感が
納税者にはあります。しかし、未実現利益に課税となると、いつ何どき
税金を取られるか分かりません。
政府が取りたくなったときに課税できるのです。
納税者としてはこんな不安はありません。
例えば、一千万円の家を買ったところ、自宅を買ったところ、バブルが来て評価が一億円になったとします。売却もしておらず、住み続けているのにもかかわらず、
政府が税収不足だからということで未実現利益九千万円に課税ができるのです。未実現利益に課税とは、そういう意味で極めて
納税者にとって恐ろしい徴税だと思います。
この法案を未実現利益課税の前例としない
ような配慮があってしかるべきですが、そういう
ような配慮がなされていません。
以上を勘案して、本
法律案には
反対いたします。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)