○柴田巧君 維新の党の柴田巧です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました
安倍総理の
施政方針演説に対し、
総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
まず初めに、過激派組織
イスラム国による邦人拘束事件は、残念ながら最悪の結果となりました。お亡くなりになられましたお二人の御冥福をお祈りし、御遺族の
皆様に衷心よりお悔やみを申し上げます。
こうした残虐非道な
テロ行為を断じて許すわけにはいきません。また、絶対に
テロに屈してはなりません。しかし、今後の
テロ対策に生かしていくためにも、なぜ今回人質の救出ができなかったのか、一連の
対応をしっかり検証し、国会に報告されることを
安倍総理には強く求めておきます。
さて、私たち維新の党は、利権圧力団体などとのしがらみがなく、既得権益にまみえないからこそ、
地域主権
改革、規制
改革、公務員
制度改革など、今この国に求められる
改革を真に行える政党です。
実際、大阪では、維新の会が主導して、市長の報酬、退職金カット、府議会の定数や報酬の削減を始め、各種事業をゼロベースで見直す徹底した行革による身を切る
改革を断行しました。その一方で、それらによって捻出された財源で教育や
子育て支援を
充実し、実のある
改革を
実行してきました。
私どもは、国政でもそのような
国民本位の
改革を
実現すべく、官僚統制、中央集権、既得権益を打破し、
地域が主役で
民間が主導する活力ある
日本の創造を目指してまいります。
総理は、
施政方針演説で、戦後以来の大
改革を断行すると勇ましく述べられましたが、大
改革の名に値する中身が本当に伴っているのか甚だ疑問です。維新の党は、建設的な対案を示しながら、徹底論戦を通じてしっかり見極めていきたいと存じます。そして、
地域の底力と
民間の活力を最大限に発揮させる
改革の
実現を厳しく迫っていくつもりです。
このことを申し上げて、以下、具体的な質問に入ります。
まず、予算
制度改革についてお尋ねをします。
二〇一五年度
一般会計予算は、前年度当初予算比〇・五%増の九十六兆三千四百二十億円と、当初予算としては過去最大となりました。
安倍政権になってから、当初予算としては三年連続で最大を更新しています。しかし、新年度も約五十四兆円しか税収が見込めないのに、歳出の切り込みが甘く、税収の倍近い
予算案となっています。こういう具合に歳出の膨張を安易に認めていては、どれだけ増税しても
財政は再建できるわけがありません。
このため、聖域なく歳出削減を断行する必要がありますが、と同時に、予算をめぐる
制度の
改革も必要です。
我が国では、予算を決める
政治の意思決定
システムが官邸や
与党などに散らばっており、
内閣に入らない
与党議員が拒否権を行使し、しばしば
政府の意思決定をゆがめます。
責任を負わない者が実質的に意思決定をすれば、
財政再建などの難しい
課題はどうしても先送りされ、無駄な事業をやめようとする力が働きません。
このため、予算増額を狙う各
省庁や族議員などの抵抗を排除し、予算の大胆な組替えや削減を行うためにも、財務省から主計局を分離し、官邸に予算の査定・決定権限を持つ
内閣予算局を設け、
政治主導による予算編成を可能にすべきです。
総理の御所見をお伺いをします。
また、一九九〇年代以降、
財政再建に成功した国では、
政府が自ら
財政目標を定め、その達成
状況を定期的に検証することを
政府に義務付け、
国民が監視できる
仕組みがあります。
我が国においても、
財政再建が先送りされることのないよう、
財政規律を守らせるための強制力ある
法律の
制定が不可欠です。
自民党は野党時代に、廃案となりましたが、
財政健全化責任法案を国会に提出しています。政権に復帰した今こそ、閣法として
財政規律を確立するために拘束力のある
法案を提出すべきですが、
総理の所見を求めます。
次に、文書通信交通滞在費の公開についてお尋ねします。
我々維新の党は、増税の前に国
会議員自らが身を切る
改革をすべきと訴えています。それゆえ、維新の党は、これまでも国
会議員の定数や報酬削減
法案、文書通信交通滞在費の使途公開
法案などを国会に提出してきました。また、私たちは、自主的に暫定ルールを作成し、文書通信交通滞在費を独自に公開しています。やはり国
会議員が率先して身を削り、税金の使い道をオープンにしなければ、痛みを伴う
改革を公務員に納得させ、新たな負担を
国民にお願いするわけにはいきません。
先日、衆議院の本
会議で、我が党の江田代表が、
総理、閣僚だけでも文書通信交通滞在費の公開をしてはどうかと質問をしましたが、
総理は、公開のルール化については各党会派で
議論を深めていく
課題であるとして、真正面から答えませんでした。
そこで、
総理や閣僚の文書通信交通滞在費の公開をやるのかやらないのか、明確な
答弁を求めます。
次に、行政
改革についてお尋ねをします。
第一次政権と比べると、現政権の行革の
取組は決して十分なものではありません。このままでは、官僚や族議員などの抵抗は激しさを増し、
国民が支払った貴重な税金を貪るタックスイーターの跳梁ばっこを許してしまいます。このタックスイーターは、特別
会計、独立行政法人などに潜み、
国民の税金に群がり、私腹を肥やそうとします。これこそ退治しなければなりません。
したがって、我々維新の党は、税金が無駄遣いされていないか、
資金が有効活用されているか、民業を圧迫していないかなど、徹底行革をまず強く求めます。
最初に、特別
会計ですが、特会は受益と負担の関係や事業ごとの収支を明確にするために設置されています。しかし、予算全体の
仕組みが複雑となり、監視が行き届きにくくなることから、不正の
温床になりやすいとの指摘がされてきました。
しかも、
一般会計より特会の方が予算的にも大きく、新年度も特会は約四百三兆六千億円で、特会間の重複や国債の借換えを除いた歳出額はおよそ百九十五兆一千億円となっており、
一般会計の二倍以上です。それゆえ、特会の中身、そして
在り方を厳しく問わねばなりません。
特に、特会の巨額の積立金は、
財政の効率的な運営に逆行するとともに、不要施設の建設などにつながり、結果として
国民負担を大きくする要因と問題視されてきました。先般発表された二〇一三年度決算では、十五ある特別
会計のうち、十の特会に積立金がありますが、その総額は約百三十四兆円にもなります。そもそも、特会にこれだけの積立金が本当に必要なのでしょうか。
国民のためではなく、役所のためにため込んでいるのではないですか。まずは、積立金の規模と水準を明確にし、その根拠を
国民に示すべきです。
二〇一三年に特会法が改正されましたが、その際、参議院の
財政金融委員会で、特別
会計の積立金・
資金については、その必要性、積立基準や規模・水準等について適切な
情報開示を行うこととの内容を含む附帯
決議が付されました。しかし、新年度特会予算書では、積立金の適正水準について数字で根拠が記載されたものがある一方、積立金
制度を単に説明するにすぎないものもあります。
そこで、
財政金融委員会での附帯
決議を真摯に受け止め、特会予算書においては、積立金を有する全特会について、その具体的な適正水準を明確な数字をもって公表すべきですが、麻生財務大臣の
答弁を求めます。
ところで、特会の中でも
労働保険特会には多額の積立金がため込まれています。二〇一三年度決算によれば、
労働保険特会には約五千六百九十四億円もの剰余金が発生していますが、このような剰余金は翌年度に繰り越され、毎年蓄積されて、積立金は約十四兆四千億円にもなります。この中には労災勘定の将来に備えた
責任準備金約七兆八千億円がありますが、それを除いても
雇用勘定に六兆円強の
資金が積み上がっています。にもかかわらず、
労働保険特会には新年度
予算案でも
一般会計から約一千五百二十六億円が注ぎ込まれます。多額の積立金がある特会に更なる
資金を投入する必要はないのではありませんか。確かに、
雇用保険法の附則において当面国庫負担率の軽減がなされていますが、一層下げることができるはずです。
そこで、
労働保険特会への
一般会計からの繰入れを一段と削減すべきと
考えますが、
総理、いかがでしょうか。また、積立金が六兆円も積み上がっているのなら、
雇用保険料を引き下げて被
雇用者と
雇用者双方の
負担軽減を検討すべきです。
総理の
見解を求めます。
一方、
財政投融資特別
会計の
投資勘定からは、JTやNTTの配当金などを原資として
産業投資へ支出をしていますが、第二次
安倍政権が発足後の二〇一二年度
補正予算以来、
産業投資から官民ファンドへの出資が目立ち、総
資金量は四兆円を超えています。官民ファンドについては、
民間で取ることが難しいリスクを取ることによって
民間投資を活発化させるとしていますが、行政の専門家である官に果たしてそれが可能でしょうか。彼らが革新的なビジネスや成長
分野の経営に適しているとは到底思えません。
一般会計が厳しくなったため、こうした特別
会計で裏の国家予算を増殖させているのではありませんか。
総理の
答弁を求めます。
また、官民ファンドについては、
役割が重複し非効率な
状況も指摘されています。新年度の
財政投融資
計画では、
産業投資から二百億円投じて地上デジタル放送網の
整備など海外案件に共同出資する総務省所管の官民ファンド、海外通信・放送
基盤等事業
推進機構(仮称)を新設することになっています。しかし、既存の国土交通省所管の海外交通・
都市開発事業
支援機構、
経済産業省所管のクールジャパン機構もそれぞれ輸出を
支援しています。基本的な
役割が同じなら統合した方が効率的ですが統合せず、国交省のファンドには三百七十二億円、経産省のファンドには百億円の追加出資が行われます。このように、各
省庁は、
一般会計予算の増額が認められないため、
財政投融資で官民ファンドを増やし、省益の
拡大を図ることに血眼になっています。
そこで、官民ファンドが乱立し、かつファンドの
役割が重複していますが、新年度、総務省のファンドを設定するに当たっていかに厳しく精査したのか、財務大臣にお尋ねをします。
また、リターンが前提の官民ファンドの
拡大は、
民間金融機関との競合による民業圧迫、
投資の損失を生じるなどの懸念もありますし、官僚OBによる天下りの
温床となるおそれもあります。
そこで、どのようにそれらを防ぐ手だてを講じているのか、
総理にお聞きをします。
さらに、独立行政法人の
改革もまだまだです。
独法
制度については、二〇〇一年一月に
創設されて以降、運営費交付金という
国民の税金を主な財源としているにもかかわらず、無駄で非効率な業務運営が行われていることのほか、天下りの
温床となっていること、多額の不要資産の存在など、様々な問題が指摘されてきました。
このため、昨年六月には独法通則法が改正をされ、本年四月から新たな独法
制度がスタートすることとなりました。今般の
改革では、主務大臣が法人の
目標設定から業績
評価までを一貫して行うこととするとともに、監事の権限の明確化など法人内部のガバナンス
強化なども盛り込まれました。しかし、
国民の税金の使途としてふさわしい業務運営が行われているかなどを不断にチェックし、更なる見直しにつなげることが不可欠です。
そこで、まず
政府としては、具体的な方法を含め
改革のフォローアップをどのように行うのか、
総理にお伺いをします。
また、第一次安倍
内閣で策定がスタートした独立行政法人整理合理化
計画では、独法の廃止や民営化など抜本的な
改革案が示されていました。
ところが、今般の
改革では、九十八ある独法を来年春までに八十七に減らす
計画で、確かに法人の統合はありますが、廃止や民営化されるものは僅かで、迫力に欠けます。独法の中には、
民間が十分できる業務を独占的に行うことにより多額の
資金を保有したり、不要な資産を抱える法人がいまだ多いのが現状です。ため込まれた独法埋蔵金を国庫返納させ、真に
国民に必要なところに使えるようにすべきです。
そこで、大胆な廃止や民営化により資産、
資金を国庫納付させるなど、更なる独法
改革が強く求められますが、どのように取り組むのか、
総理にお尋ねをします。
さて、私たち維新の党は、国税庁と
日本年金機構の徴収部門を統合し、歳入庁を設置して、税と
社会保険料を一体徴収すべきと
考えています。このことにより、行政の効率化が進み、行政コストが大幅に削減するとともに、徴収漏れとなっている消えた保険料数兆円規模の増収を図ることができます。
政府は、一昨年二月、歳入庁構想について検討チームを立ち上げましたが、国税庁も納付率の低い
国民の所得
情報をそれほど把握していないとか、徴収職員が保険料と税の両方を覚えるのは大変だとか、できない理由を列挙し、結局設置は見送られました。
しかし、いずれも歳入庁設置を否定する論拠としては十分ではありません。納付率の低い
国民の所得
情報については、少なくとも税と保険料の二つの徴収部門が
一つになった方が集めやすいでしょう。また、納付する
国民は、保険料と税の両方について、面倒な
制度を一生懸命に勉強して納めているのですから、公務員が両方覚えるのは難しいなどというのはいかがでしょうか。
この問題は
国民目線、利用者目線で
考えるべきで、窓口一本化による納付者の利便性
向上というメリットを重視し、歳入庁設置を再度真剣に検討すべきと
考えますが、
総理の所見をお伺いします。
次に、教育・保育バウチャー
制度についてお尋ねします。
教育バウチャー
制度とは、私立学校の学費軽減など、学校教育に使用目的を限定したクーポンを子供や保護者に直接支給することで、学校選択の幅を広げ、学校間の競争により教育の質全体を引き上げようとするものです。これまでの教育
施策においては、児童生徒や保護者よりも教育供給者の方に軸足が置かれてきました。しかし、供給者の競い合いの中でこそ教育の質と学力を
向上させ、需要者、
消費者の満足度を高めることができます。
一方、この教育バウチャーは、低所得層の教育
支援にも役立ちます。
我が国の子供の
貧困率は一六・三%、つまり六人のうち一人が
貧困状態にあり、先進国の中でも極めて高いものがあります。このままでは、
貧困家庭の子が十分に教育を受けることができず、
貧困状態から抜け出せないという
貧困の連鎖が続きます。これに歯止めを掛けるには、親の
経済力で子供の学習機会に
格差を生じさせないよう、低所得者層の子供の教育
支援を
充実させることが重要です。
このため、大阪では、就学援助などを受けている家庭の中
学生を
対象に、学習塾のほかスポーツ教室や習い事などに使用できるクーポン、月額一万円を上限として配付する学校外教育バウチャー
制度、塾代
助成事業を二〇一二年九月から一部の区で試行し、一昨年十二月からは市内全区で実施しています。
教育バウチャー
制度については、教育
改革の一環として第一次
安倍政権でも検討がなされましたが、その後立ち消えとなりました。しかし、子供の
貧困が大問題となっている今、低所得層への教育
支援策としても、学校外を含む教育バウチャー
制度の導入を本格検討すべきでありますが、
総理、いかがでしょうか。
また、子育てサービスを
充実させるためには、保育バウチャーの導入が求められます。保育バウチャーは、子供を持つ家庭に支給される保育や教育施設のみで使えるクーポン券で、アメリカの一部やイギリス、スウェーデンで実施され、高い効果を上げており、OECDなども合理的な
仕組みと推奨しています。教育
分野同様、供給者側に投入している補助金をバウチャーに替えて需要者、
消費者に支給をしていくことで、選択する側に主導権を渡し、サービスの質を高める競争を促すべきです。
そこで、保育バウチャー
制度を導入して、利用者が子育てサービスを選び、競い合いによる量と質のレベルアップを
実現すべきですが、
総理の所見をお伺いをします。
最後に、
総理は、さきの
施政方針演説で、吉田松陰の言葉、知と行は二つにして
一つを取り上げました。
政治は、まさにやるかやらないか。そういう意味でも、三十六回
改革という言葉を連呼することより、
一つでも
実行することが大事です。
今、大阪では、二重行政を解消し、住民自治の
拡充を目指す大阪都構想が正念場を迎えています。そして、この構想の先には、道州制の導入を含む
我が国全体の統治機構
改革があります。
維新の党はこれまでも、この国を前へ前へと進めるために、抜本的な
改革を提唱し、実践してきました。そして、今後も、
日本を維れ新たにする
改革実現に向け、果敢に行動し続けることを申し上げ、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕