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参考人(
矢島洋子君)
三菱UFJリサーチ&
コンサルティングの
矢島と申します。よろしくお願いいたします。
私も、実は、たまたま
松浦様と同じく、一九八九年、
平成元年から
社会人として
仕事をしております。若い頃は
高齢化対策、介護問題に取り組んでおりまして、その後、
少子化対策、
保育関連の問題ですとか、そしてその後、
女性活躍や
ワーク・
ライフ・
バランスに関する
調査研究ですとか、それから、近年では
民間企業の
皆様の御相談を受けて
コンサルティングのお
仕事もさせていただいております。
私は、実は
一般職で当社入りまして、
一般職として働く中で、その後
総合職に転換したり、また、
家族都合で一度
離職してまた同じ
会社に再就職をしたりといったことをしながらこういった
仕事を続けさせていただくことになりました。
ですので、私
たちの年代ですと、やはり同級生の中には
仕事を辞めてしまった
女性、非常に多くいます。優秀な
女性たちがたくさん辞めてしまっている。その中でこうやって
仕事を続けさせていただいて
キャリアをつくってこれたというのは、やはり
会社が柔軟な働き方を認めてくれたということも非常に大きいですし、また、
クライアントである、私の場合
中央官庁の
皆様が
クライアントであったわけですけれども、そういった
クライアントの
皆さんも御理解して、認めて、受け入れてくださったということが非常に大きいと思っております。ですので、
社会全体でそうした柔軟な働き方、また
ライフステージに応じた様々なニーズに応えるという体制がつくられることを切に願っております。
では、私の
お話ですけれども、
皆様にお配りさせていただきました本日のテーマというところの中に、まず
最初に
日本企業における
女性活躍推進の歩みというのを書かせていただきましたが、こちらは、今、
松浦様から非常にすばらしい御発表ありまして、私としても認識としてほとんど同じように考えておりますので、私としては、近年の
課題のところから
お話をスタートさせていただければと思っております。
五ページに、
女性活躍推進における
課題として
まとめさせていただいております。
課題として大きく分けて三つ設定しております。まず
一つ目が、
両立から
活躍へ。
両立支援制度を利用している
人たち、今、
松浦様の
お話にもありました短時間
勤務制度等を利用する
人たちの
能力発揮や
キャリア形成の問題。それから、採用、配置、
登用など様々な局面で
人材育成のパイプラインが本当にできているんだろうかという問題。そして
最後に、
女性たちの夫や上司に当たる
男性たちの
ワーク・
ライフ・
バランスの問題。この
辺りについて
お話しさせていただきます。
私どもが行いました近年の
調査の
データを用いて少し御案内させていただきたいんですが、七ページ御覧いただきますと、こちら
平成二十三年度の
状況と書いてあります。今から約三年ほど前の
調査結果でございます。この
調査は
厚生労働省の委託を受けて当社で実施したものですが、
結婚、
出産を機に
離職する
正社員女性の人数について
企業に尋ねました。
そうすると、五年前に比べてかなり減った、やや減ったと回答する
企業が、大
企業、千一人以上の
企業では五割を超えているような
状況です。
中小企業では変わらないという回答が多くて、そうすると、
中小企業は遅れているのかというイメージを持たれるかもしれませんが、実は元々平均的には
中小企業の方が就業継続する
女性、
正社員の
女性割合高いんですね。ですので、こういった
結婚、
出産時の
女性の
離職の問題というのはどちらかというと大
企業で深刻で、そういった
状況が近年急速に変わってきているということを示しております。
その次の八ページに参りまして、では、こうした
離職防止に何が役に立ったんだろうかということを申し上げますと、大
企業で一番多いのがやはり短時間
勤務制度を利用できるようになったこと、次いで、
育児休業が取りやすくなったことです。
中小企業の場合はそれが逆になっております。いずれにしろ、この
育児休業とそして短時間
勤務を使って就業継続するという形が大分出てきた、広がってきたということがあります。
九ページ目を見ていただきますと、そういった
制度利用で就業継続可能になったのはいいんですけれども、では、そういう
制度をフルに利用した場合、法定の子が一歳まで、あるいは短時間
勤務は子が三歳までを使った場合に中長期的な
キャリアへの影響はどうなるんだろうかということを
企業に聞きますと、約
半数ぐらいは影響するであるとか、あるいはどちらとも言えない、分からないというような形で、就業継続進めてきたのはいいんだけれども、それを利用した
女性たちの
キャリア形成についてははっきり
取組が行われていなかったり、まだ考えていない
企業がかなりあるということが分かります。
こういう
状況の中、これは三年前の
データなんですけれども、やはり短時間
勤務で働く
女性たち、どんどん
職場の中で増えてまいりました。そうした中、
職場の中では、どのように
制度利用者に
仕事を与えたらいいのか、
評価したらいいのか、
管理職の
皆さん戸惑っているような
状況もあります。
実際の
制度利用者の方は、
出産前と全く同じ
仕事を与えられ、お給料は下がっているわけですけれども限られた時間の中で
自分の努力で一生懸命それを回している方、それと、一方で、今まで
営業職だったんだけれども、
営業職から外れて事務職とか
営業のサポートに回る、それが
本人の希望、
本人の意思とは
関係なく行われる場合もあるというようなところで、最近
話題になっておりますマタハラという問題も、妊娠時の問題だけではなくて、こういった
出産後の時間
制約がある人の
仕事についてもかなりいろいろな問題が出てきているというようなことであります。
ですので、そういう中で、先ほどの
松浦様の
お話にもありましたように、
企業の
人事担当や
経営者の中でも、こういった時間
制約があって
制度を利用する
人たちについてどうしたらいいんだろうかということはかなり問題視されるようになる。その中で、嫌な言葉ですけれども、ぶら下がりであるとか、
制度に甘えているんじゃないだろうかというような声も聞こえてくるようになったわけです。
一番最近の
状況で、また現在どういう状態になっているかというのをお知らせしますと、十ページに
平成二十七年度の
状況という
データを御紹介しております。こちらは今年の四月から六月、つい最近ですね、実施した
調査です。
これで見ますと、
結婚、
出産で
離職する
女性はほとんどいないと回答する
企業が全体で四七・六%、約
半数に上っております。やはり百人以下の
中小企業の方が多いんですけれども、
中小企業の場合はばらつきが多くて、ほとんど辞めないという一方で、ほとんど
離職するやどちらとも言えないという
企業も若干大
企業よりも多いような
状況です。大
企業でも、三百一人以上でも、四三・八%はほとんど
離職する人はいないというような
状況になっているということが言えます。
その次の十一ページを御覧いただきますと、中でも三百一人以上の大
企業では、
育児休業を取得した
正社員女性のうち、ほとんどが短時間
勤務を利用すると答えた
企業が五割弱に上ります。ですので、
育児休業を取ったらほとんどが短時間
勤務を利用して働いているという
状況なわけです。
ですので、そういう中で、この短時間
勤務の
人たちがいかにうまく
活躍できるかということは深刻な問題なんですけれども、その次の十二ページにありますように、短時間
勤務制度利用者に対する目標設定や
評価、こういったものの方針を示していないという
企業が全体で五〇・三%に上ります。大
企業の場合はさすがに四割ぐらいの
企業が
勤務時間短縮分に応じた目標設定といった
取組をしているんですが、実態、様々な
企業の
皆さんから御相談を受けますと、一応方針は作ったけれども現場に周知徹底されていない、
管理職がまだ理解できていないというような
状況が多く、こちらの問題が深刻になっています。
そういった中で、十三ページにありますように、じゃ、そういった
管理職の
皆さんの
職場の運営を
企業が
支援できているんだろうかというと、実は、このピンクで囲っておりますような
職場運営の
支援というのはまだほとんどなされていません。
管理職に対するマネジメント研修などは六・五%しか実施されていない
状況です。ですので、こういった
取組が今後ますます必要になってくる中で、
取組の必要性すらまだ感じていない
企業も多いので、
取組を進めていただくよう後押ししていただくことが重要かと思います。
これらの
背景に、なぜ進まないのかという
背景に、十四ページにありますように、育休から復帰した
正社員の能力開発や
キャリア形成支援を重視しているという
企業が二八・一%しかいないといったような
状況があります。
次のテーマ、採用、配置、
登用で
人材育成のパイプラインができているかということなんですが、十六ページにお示ししたのは先ほどと同じ四月から六月に行った
調査で、
女性管理職割合というのを見ているんですが、全体として低いのは
皆さん御承知だと思うんですが、実は百人以下では全く
女性の
管理職がいない、〇%という
企業が五五・七%に上ります。大
企業、三百一人以上の
企業でも二四・三%はまだ全く
女性の
管理職がいないという
状況です。そして、いずれの規模でも三割未満という
企業が八割超ということになっております。ですので、二〇二〇年までに三割という目標はありますけれども、かなり遠い
状況ということです。
では、十七ページ見ていただきますと、こういった
管理職が少ない
状況というのがあって、
企業の
皆さんからの御相談では
管理職を短期的に増やしたいということがあるんですが、もちろん、いきなり
管理職だけ増やすことはできないわけなんですね。こちらの図に書かれております
女性活躍推進の構造図の中で、採用、
管理職女性比率、平均勤続年数、労働時間などは今示されている今回の法案の
企業の
状況把握の必須四項目というふうに設定されています。これらの四項目、非常に重要な項目だと思います。それに加えて、こういった項目の
背景にある幾つか大事な要素というのもあるかと思います。
例えば、採用というのも、もちろん三割しっかり採れているのか、あるいはコース別に見たらどうなのか、技術職は採れているのかという問題もありますし、その後、新任配置で
男性と同じように
女性が
企業の中で様々な分野にきちんと配置されているんだろうかという問題もあります。それから、研修についても、階層別の研修というのは一通り全員に行われているけれども、選抜型研修のようなものをやると実質的には
女性が推薦されてこないというような
状況がある。あるいは、
異動、転勤というのも、少しずつ様々な配慮がされた結果、
女性が実際は
異動を
男性に比べるとかなりしていないというような
状況がある。それから、
評価についても、平均的に見れば男女でそれほど変わらないんですけれども、一番高いランクのところで見るとほとんど
女性がいないというような
企業さんもございます。こうしたものは、
評価における差別の問題なのか、あるいは高い
評価を得られるような
仕事のチャンスが
女性に与えられていないのかというような両方の問題が含まれていると思います。
そういったものは、横に書いてあります
職場のマネジメントという問題で、上司が適切に
仕事を
男性、
女性関わりなく与えて育てているのかといった
辺りと
関係してくるわけです。
こういったものがきちんとできて、そして、
定着の方で見ましても、三年目の
定着等も
課題でして、この
辺りは、近年、
出産時の就業継続が世の中ではかなり可能になったらしいという
状況を女子学生の
皆さんなども把握しておりますし、新人の
皆さんも把握している中で、当社では、もう就業継続難しいんではないかと思うと早い段階で見切りを付けてしまうというようなことも起こってきています。あるいは、女子学生の中では、
一般職では就業継続できるけれども
総合職では無理らしいと思うと、じゃ
一般職を選ぼうかというような動きも出てきています。
ですので、早い段階でのこうした
定着や採用の問題も、実は
出産時の
定着であるとかその後の
活躍というところと非常に結び付いた中で問題が起こってきています。ですので、これらは非常に全体に関連をしておりまして、一部だけの見直しでどうにかなるというものではないということをお伝えしたいと思います。
最後の
課題として、
男性の
ワーク・
ライフ・
バランスの問題ですが、これも
皆さん最近はいろいろなところで耳にされて御承知かと思いますけれども、例えば家庭内の
役割分担で見て、保育園の送り迎えの分担という
データを十九ページに示しておりますけれども、
正社員男性、
女性で見たときに、送り迎えとも
女性のみがしている
割合というのが非常に高くなっております。また、
正社員の
男性で送り迎えとも配偶者がしている
男性というのは、やはり労働時間が五十時間以上で増えるといったような傾向も見られます。
そして、二十ページにありますように、父親の労働時間や家事、
育児時間というのは相互に関連しておりまして、やはり当然のことながら、家事時間、
育児時間は労働時間が長くなれば短い方が非常に多くなってくるという
状況がございますので、こういった
状況の中で
男性の働き方にきちんと見直しを掛けていただくということがとても重要です。
二十一ページ御覧いただきますと、二十一ページにございますように、こちらはちょっと複雑なグラフで恐縮ですが、横軸に
ライフステージを取ったときに、
ライフステージに応じて働き方を変化させたいと考えている人がどれぐらいいるかということを見ております。
男性も
女性も
ライフステージに応じてある程度働き方を変えたいというふうに考えているんですね。これが今は
女性ではある程度実現してきたんですが、
男性ではできない
状況がある。この
辺りの問題をどうするかということが
課題です。
その次の二十二ページには、夫という立場から今度は上司に目を向けていただいたときに、
女性が
管理職を目指さない理由として、
管理職は一般の社員よりもプライベートとの
両立が困難とのイメージがありまして、
女性が
両立が難しいので
管理職を目指さないといったような
状況があります。ですので、
男性が中心となっている
管理職の働き方を見直すことが非常に重要です。
最後に、済みません、お時間になってしまっていますが、二十三ページに
女性活躍推進法に対する期待と懸念ということを書かさせていただきました。
期待といたしましては、今あります
両立支援、
両立が進んできた
状況から
企業の
取組を
活躍支援というところに進化させていただく、後押ししていただくという
意味で非常な期待が持たれます。
それから、計画を策定するにおいて、個々の
企業における
女性活躍の
状況把握をしていただくということになっております。このことがとても重要ではないかと考えております。これまでの
取組の検証をしていただいて、どの段階に
課題があるのか、そして、
女性管理職が増えないのは
女性の意識の問題ではなく組織の構造的な問題であるということをきちんと認識して取り組んでいただくことが大事かと思います。
また、公表においては、
企業戦略と
女性の就労選択のマッチングということで、今までは施策の実施
状況や導入
状況が注目されていたんですが、結果として実際に
活躍できているのか、どのような形で、例えば、一部の部門だけで
女性が
活躍する
企業なのか、
男性と同じように様々な部門で
活躍できているのか、こういったことが見えることが非常に重要かと考えております。
懸念といたしましては、二十五ページですが、短期的にやはり
管理職を増やすことだけが目標とされないということが非常に重要かと思います。
企業によって現在の
取組課題、ステージが異なります。まだ就業継続に
課題を持っていらっしゃる
企業もたくさんあります。それから、働き方改革や子育てしながら
活躍できる
職場づくりがまだ不十分な中で
管理職を短期的に増やそうとしますと、従来型の
男性型
キャリアに
女性を無理やり当てはめるというようなことが起こりまして、そうなりますと、せっかく進めてきたダイバーシティー経営の方針が見失われますし、せっかく多様な人材を活用しようとしているところが従来型の
男性と同じような思考、考え方、働き方をする
女性の
管理職を増やすことになってしまいます。こういったことの見直し、多様な人材と多様な働き方、多様な
キャリア形成が重要になってきます。
また、
企業の
取組のターゲットが
女性のみとされないということで、
女性活躍支援がテーマなんですけれども、その担い手は
経営者、
管理職、そして
男性であるわけです。そういった
方々をターゲットとした
取組が重要であるということです。
済みません、
最後に二十七ページをお開きいただきまして、あと二点ですけれども。
今後、認定基準等議論されるかと思います。法案では設定されないかもしれませんが、今後認定基準が設定されていく中で、その基準が余り低くなり過ぎないようにということをお願いしたいと思っております。ほとんどの
日本企業に
女性活躍課題は今あり、
活躍できない構造的
要因があります。低い基準で認定されてしまうことでこういった構造的
要因の見直しに手が着かないおそれがあります。こちらを是非お願いしたいということがあります。
そして、周知についてですが、施行までの期間が非常に短い
状況になっております。そのため、先ほど
松浦様からも
お話ありましたが、形式的な
対応を選択する
企業が増えるおそれがありますので、
法律の意義、目的をしっかりと浸透していただくためにも、周知に力を入れていただくことを期待しております。
以上です。ありがとうございました。