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田城郁君 次に、近年相次ぐ
鉄道事故に対する
大臣の御所見をお伺いをいたします。
先月二十五日、乗客、乗務員百七名の方々の尊い命を奪ったJR西
日本の福知山線事故から十年の節目を迎え、犠牲者の御冥福を祈る追悼慰霊式が兵庫県尼崎市で行われました。犠牲者の方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、最愛の人を失われた御遺族の皆様に、深い悲しみ、御心痛に思いを致し、御冥福をお祈りをいたします。いまだ事故の後遺症に苦しむ被害者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
このような悲劇を二度と繰り返さないためにもしっかりと
鉄道の安全確保ということで
質問いたしますが、未曽有の大惨事となった福知山線事故を受けて
鉄道事業法の改正が行われるなど、
鉄道事業の安全管理体制の確立を図ってきたところでありますが、しかし、その後も、
平成二十三年より続くJR北海道の一連の事故や、昨年二月のJR川崎駅構内における京浜東北線の工事作業用車両との衝突横転事故、先日の山手線での支柱倒壊事故、さらにはゴールデンウイーク初日には多くの乗客の皆様に
影響を与えた東北新幹線の架線切断事故など、重大な事故が相次いでおります。
私は、
国土交通委員会において、事故の背景には、過度の効率化、外注化という問題があると申し上げてまいりました。私は、必ずしも外注化という手法そのものを否定しているわけではありませんが、外注化を通じたグループ会社化と現場の安全第一の体制づくりのバランスが取れていない、孫請、ひ孫請等の工事会社の多重構造による効率性の追求イコール利益優先に偏り過ぎているのではないかと危惧を抱いております。
グループ
企業化がすぐに
技術力低下に結び付くとは必ずしも言い切れませんが、しかし、グループ全体の安全性確立への価値観の統一による作業手順や、作業前の確認が的確に行われているのでしょうか。工程の管理など多重化された工事体制で正常に機能させることは容易なことではありません。かえって
一つの組織の方が徹底しやすい場合もあります。安全性の確保と効率化を同時に
達成しなければならない
企業の目的に対して、どこまで外注化し、どこまで本体にとどめておくべきかの適切な判断ができていないのではないかと思わざるを得ません。営利優先、つまりコスト
削減のためのグループ会社化に偏り過ぎていないか、問題提起をあえていたします。
このベストミックスが崩れた状態、いつも言いますが、要するに組織の分断が人の分散イコール
技術の分散を生み、結果として継承されない
技術や技能はやがて消滅をしていき、危険な事故を生み出す要因になってはいないかと
指摘をしているのです。
また、JR東
日本の本体、グループ会社双方の現場労働者に
技術の蓄積のでき得る体制が脆弱で、全体を見通せる力のある
人材が育っていないのではないかと思われる現在の教育訓練システムや、
技術の身に付かない期間での転勤の在り方など、人事システムにも問題があるのではないかと思われます。
ここで、国鉄分割・民営化時にJR東
日本の副社長あるいは会長を歴任された、初代JAXAの理事長であった山之内秀一郎さんの二〇〇八年の著作で、JRはなぜ変われたのかという本の中から、一部内容を紹介させていただきます。
JR東
日本は安易に他の
企業の
技術に頼るのではなく、
鉄道にとって大切な先端的で中核的な
技術のノウハウは社内で保持すべきではないか、これこそが、これからの
技術企業としての最大の財産になるはずだ、最近私はこれを
技術のインソーシング化と呼ぶようにしていると記され、
鉄道会社としてのJRは
技術、技能を重んじるべきであると言い残しております。
山之内秀一郎さんは、
技術系職場の3Kをなくすための機械化、外注化こそ肯定しておりますけれ
ども、それとて、下請
企業体質から
専門家集団に成長できるか、あるいは高度なデータを持つJR東
日本と一体となって
仕事ができるかに懸かっていると
指摘をしており、大前提はJR東の専門
分野と保守専門
企業との連携を密にした体制ができるかどうかということを言っております。
しかし、この間の事故の背景を見てみると、親会社と子会社の典型的な主従関係、希薄な連携体制が浮き彫りになっているのではないでしょうか。安全哲学の確立、統一や
技術、技能の継承できない本体と外注会社、マネジメントのできない
鉄道会社を山之内氏は望んでいないはずです。
私は、JR東
日本本体の保守管理の
技術系の職場にこそ、外注化のようなアウトソーシングとは真逆の
意味を持つ一定の
技術のインソーシング化が
鉄道事業の安全確保を図る上で必要不可欠な基礎、基盤になると考えております。
そこで、私は、近年相次ぐ
鉄道事故について、その背景に本体の
技術力、技能力をそいでしまっているのは過度の効率化、外注化があるのではないかと考えますが、
太田大臣の御所見をお伺いいたします。