○
政府参考人(
齋木尚子君)
外務省経済局長齋木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
お
手元に、
我が国経済外交の
現状と
課題という、この横紙の
資料をお配りしてございます。この
資料に沿いまして御
説明申し上げます。
ただいま
世界経済の
動向については
内閣府から御
説明がありましたが、このような
世界経済情勢の中、
日本経済の
再生とその先の発展に資する戦略的な
経済外交を
推進することが極めて重要であると
認識をしております。
基本方針を三
ページに書いてございます。
日本経済の
再生に資する力強い
経済外交を
推進し、
成長戦略の実施に貢献をしてまいります。
TPPを始めとする
経済連携交渉を加速するとともに、
インフラシステム輸出や
日本産品の
輸出促進を含む
日本企業の
海外展開の
推進、
エネルギー、
鉱物資源、食料の
安定供給確保のための
資源外交を
強化をしてまいります。
経済面での法の支配を
推進するとともに、
日本にとって有利な
国際経済環境の整備に努めてまいります。
この
基本方針の下で、三本の更なる柱を立ててございます。具体的には、
日本経済再生に資する
取組、安心して住める魅力ある
国づくり、国際的な
ルール作りへの参画の
三つの柱でございます。この
三本柱を
基本とし、さらに、このコラムにございますように、それぞれの柱の中に
三つずつ
重点項目を挙げ、
具体的取組を進めているところでございます。
なお、申すまでもございませんけれども、今申し上げた
三本柱、またその下の
三つの
重点事項といいますのは、整理の観点から言わば便宜上設けたものでございまして、それぞれの
取組は互いに関連し、有機的に
連携を図ることで、
日本にとって有利な
国際経済環境をつくり上げていこうとしているものである点に御理解をいただければと存じます。
四
ページ、次の
ページを御覧ください。
日本経済再生に資する
取組の最初の
重点は、高いレベルの
経済連携の
推進でございます。
日本経済再生のために、
自由貿易の
推進は
我が国の
対外通商政策の柱であります。
我が国は、
WTO、
世界貿易機関を
中心とする
多角的貿易体制の
維持強化とともに、この
WTOを補完するものとして
経済連携を
推進してきております。
WTOのドーハ・
ラウンド交渉が
長期化するのに併せ、
世界的に
自由貿易協定、
FTAが
拡大してきております。
我が国が
TPP、
環太平洋パートナーシップ協定交渉参加に際しまして
安倍総理が述べられたとおり、
世界の
国々が
海外の
成長を糧に自国の
経済成長を図るべく
開放経済へとかじを切っている中、
我が国も
対外経済関係を
強化し、
我が国の
貿易、
投資環境を整備し、
成長著しい
新興国を始めとする
国際市場の活力を
我が国の
成長に取り込むよう、
経済連携交渉を
推進してきております。
我が国が
経済連携協定、
EPA交渉に取り組み始めた当初は、東アジアを
中心に主に二国間の
交渉を進めてまいりました。ここにございますように、これまでに十五か国・地域との
経済連携協定が
発効済み、
署名済みでございます。
次の
ページに、
世界の
状況についての記述を用意いたしました。
メガFTA時代の到来ということが指摘できると思います。
世界の
FTAの数は、二〇一四年十一月
時点で二百六十六件、二〇〇〇年以降は二〇〇一年を除きまして毎年十件以上の
自由貿易協定が
発効をしております。現在十二か国が
参加中の
環太平洋パートナーシップ(
TPP)
協定、
日中韓FTA、日・
EU・
EPA、そして米国・
EUの
FTA、TTIPとも称されますけれども、こうした五つのメガ
FTAが
交渉をされております。大変大きな規模の
FTAが
交渉されているということが今日の特徴として挙げることができると思います。
メガ
FTA、また大変大きな規模の
FTAと申し上げましたが、すなわち、これらの
FTAは対
世界GDPシェアが極めて大きいということでございます。具体的にここにございますように、
アメリカと
EUの
FTAは
世界のGDPの四六・二%、また
TPP、RCEP、これは東アジア地域包括的
経済連携協定でございますが、このRCEP、日・
EU、各々
世界のGDPの三割から四割を占めるという
状況でございます。
日本はこの中で
TPPとRCEP、日・
EU、そして日中韓、この四つに
参加をしておるわけでありますけれども、この四つのメガ
FTAを合計しますと
世界のGDPシェアの七九・八%、約八割ということになります。
次の
ページでございますが、六
ページ、
資料の一の二、
我が国の
経済連携の
取組について取りまとめたものであります。
先ほど、十五の国・地域との
EPAが
発効済み、
署名済みと申し上げました。このオレンジの国がその該当するものでございます。
発効順で申し上げますと、まず最初に二〇〇二年、
日本とシンガポールの
経済連携協定が
発効いたしました。シンガポールに続きまして、メキシコ、マレーシア、チリ、
タイ、
インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、そして今年、
オーストラリアとの
EPAが
発効したところでございます。また、モンゴルとの間では既に
EPAの署名が終了をしております。
こうした十五の国・地域の
FTAにつきまして、こうした国との
貿易が
日本の
貿易総額に占める割合は、二行目でございますが、二二・六%というのが
現状であります。
主要国に目を転じますと、主要国も急速に、今申し上げた
EPA相手国との
貿易がそれぞれの国の
貿易総額に占める割合、
FTA比率と申しますが、この
FTA比率を高めておりまして、米国については約四〇%、韓国が三九%、
EUが三〇%ということになっております。
恐縮でございますが、本文の四
ページにお戻りいただけますでしょうか。
今申し上げましたように、
日本の
FTA比率は現在二二・六%でございますが、最初のダイヤモンドの一番最後の行に括弧書きで書いてございますが、
政府といたしましてはこれを二〇一八年までに七〇%に高めることを目指しております。この二〇一八年までの
FTA比率七〇%という
目標の達成に向けて、主要
貿易相手国との
EPA交渉を国益にかなう高いレベルで同時並行的に戦略的かつスピード感を持って
推進をしていくことが必要であると考えております。
現在は、
TPP、日・
EU・
EPA、
日中韓FTA、RCEP、そしてASEANと
日本の包括的
経済連携協定の物品の部分は終わってございますので、サービス、
投資についての
協定が
交渉中、さらには二国間の
EPAとしては、カナダ、コロンビア、トルコ、合わせまして八本の
交渉を
推進をしてきているところでございます。
次に、
TPPについて申し上げます。七
ページに
資料一の三というのを付けてございます。御覧ください。
TPPは、
成長著しいアジア太平洋地域に一つの
経済圏をつくるという歴史上初めての野心的な試みであります。物だけでなく、サービス、
投資、知的財産、国有
企業、環境など、幅広い分野にわたってアジア太平洋に二十一世紀型の新しいルールを作るという大きな挑戦と申し上げてよろしいかと思います。
日本にとっても
成長戦略の主要な柱の一つでございます。
昨年十一月、北京で開かれましたAPECの首脳会合の際に開催をされました
TPP首脳会合において
交渉の終局が明確になりつつあることが確認をされまして、
交渉にモメンタムが生じているというふうに
認識をしております。
安倍総理も述べられているとおり、
日本としては引き続き守るべきは守り、攻めるべきは攻め、国益にかなう最善の道を追求するとの方針で
TPP早期妥結に向けて取り組んでいるところであります。
政府といたしましては、
TPPを含む
EPA交渉全体の
取組が相互に刺激し合い、全てが活発化するというダイナミズムが働くことを期待をしており、
日本再興戦略の
目標実現に向けて引き続き官民で
連携し、また
政府一丸となって
経済連携交渉に当たっていく考えでございます。
あわせて、今後とも、
EPAの
発効後につきまして、
貿易動向などの
調査分析もしっかりといたしまして、それぞれの
EPAが現実にどのような
効果を上げているかをフォローアップするとともに、関係省庁緊密に
連携しつつ、ビジネスを含む関係者の様々なニーズを把握することに努めてまいります。そうした声に十分耳を傾けながら、守りと攻めの双方の観点から
日本経済の
再生に資する
経済連携の
実現を引き続き戦略的に進めていく考えでございます。
誠に申し訳ございません、もう一度四
ページにお戻りいただけますでしょうか。四
ページ、本文でございます。
日本経済再生に資する
取組の二番目の
重点は、
日本企業の
海外展開推進でございます。
中小
企業を含む
日本企業の
海外展開の
推進は、諸外国の
成長を
日本の
成長に取り込んでいく上で極めて重要でございます。
拡大する
国際市場において
日本企業が存分に活躍できるよう、外務大臣を本部長とする
日本企業支援
推進本部の下、中小
企業を含む
日本企業の
海外展開をこれまで以上に
推進していく考えでございます。また、特にその際には、最近の国際情勢にも鑑み、官民一体となって
日本企業、邦人の安全対策に万全を期していきたいと考えております。
総理大臣や関係大臣等によるいわゆるトップセールスによる
インフラシステム輸出を始め、官民
連携によるオールジャパンの
経済外交を
推進し、
成長戦略の実施に貢献をしていきたいと考えております。このため、在外公館においては、大使また総領事が先頭に立ちまして、
日本企業への情報提供や外国
政府等への働きかけを行ってきているところでございます。こうした
取組の結果、昨年度の在外公館での
企業支援実績は合計いたしますと約三万六千件と、過去五年間で三倍増の数値になっております。今年度上半期の実績も前年度同期比で一四%増と、
増加傾向にあります。引き続きしっかりと取り組んでまいります。
また、
企業を含む
日本の方々が
世界で活躍をされるためには、関連条約などを整備することにより、この環境をより改善していくことが重要であります。
投資協定や租税条約の戦略的拡充を通じビジネス環境の整備を進めてきておりますが、一層の努力を続けてまいります。
三番目の
重点は、風評被害対策を含む
日本産品の
輸出促進です。
福島第一原発事故に起因する諸外国・地域の
日本産品に対する
輸入規制の緩和、撤廃に向けて、関係省庁と緊密に
連携し、安全管理や出荷制限等の
日本の措置につきまして
各国に正確かつ迅速に情報伝達を行い、諸外国・地域が科学的根拠に基づく措置を講ずるよう粘り強く働きかけているところです。その結果、これまでに計十三か国が規制を完全に撤廃いたしました。また、幾つかの国で規制が緩和されるなど、
各国で規制見直しの
動きも見られているところであります。来週には震災後四年を迎えることになりますが、引き続き、科学的根拠に基づかない規制の緩和、撤廃に向けて粘り強く働きかけてまいります。
また同時に、被災地を含む地方創生の観点からも、在外公館施設の積極的活用やPRイベントなどを通じ、農林水産物の
輸出促進、
日本食を始めとする
日本の魅力や地方の強みの発信を
強化してまいります。
次に、二番目の柱である安心して住める魅力ある
国づくりについて御
説明をいたします。八
ページを御覧ください。
この柱の最初の
重点は、
エネルギー、
鉱物資源の安定的かつ安価な供給の確保でございます。
日本経済の存立基盤としての
エネルギー、
鉱物資源の確保のため、要人往来の
効果的な活用や国際的な枠組みなどを通じて
資源供給国との関係
強化に努めるとともに、供給源の多角化を図る
資源外交の展開が重要でございます。
次に、
資料を用意してございます。次の
ページ、九
ページを御覧いただけますでしょうか。
左上の
資料の①に一次
エネルギー自給率の
推移を挙げておりますが、天然
資源に乏しく、
エネルギー自給率が六%というOECD加盟国の中で二番目に
エネルギー自給率が低い
我が国にとりまして、
経済の基盤である
エネルギー資源の安定確保は極めて重要でございます。
②が発電の電源構成比でございまして、この中の赤い折れ線グラフが化石燃料依存度を示しておりますが、この折れ線グラフから明らかなとおり、東
日本大震災後、化石燃料への依存度は飛躍的に上昇しております。
石油、
天然ガスを始めとする化石燃料の
安定供給確保は大変重要な
課題でございます。そのために、産出国との二国間関係の
強化、供給源の多角化に向けた
外交努力が重要と
認識をしており、これまでも総理や外務大臣等の外国訪問の機会を
効果的に活用するとともに、在外公館をも通じました
資源外交を
推進しております。
最近の例を御紹介申し上げますと、先ほど、本年一月に
日本と
オーストラリアの
EPAが
発効したと申し上げましたが、この日豪
EPAの中では、
資源エネルギーの
安定供給確保の独立の章を設ける等、関係国との
連携を強めてきているところでございます。
さらに、産出国との輸送ルートの安定確保も重要な
課題です。
同じ
ページの右上の
資料③を御覧ください。石油の中東依存度が載ってございますが、ここにありますように、
日本は石油の
輸入の八割以上を中東に依存しております。こうした石油の安定確保の観点からも、ISILへの対応を含めた中東情勢の安定化に向けた
外交努力を行ってきております。ホルムズ海峡やマラッカ海峡といったシーレーン上の国との関係
強化、さらには地域の安定に向けた
取組も行っています。
こうした
取組を進めるに当たっては、最近の
原油価格の大幅な
変動や
中国やインドなどにおける
エネルギー需要の
拡大、北米地域におけるいわゆる
シェール革命の
動向、産出国における
資源ナショナリズムの
動向など、
エネルギー分野における国際
動向についても、国際
エネルギー機関、IEAの枠組みなどをも活用しつつ、情報収集に努めてきております。
今申し上げましたいろいろな点は、次の
ページ、
資料二の二、十
ページに付けてございますので、御参照をいただければと思います。
二番目の
重点として申し上げたいのが、食料安全保障の確保でございます。
資料の二の三として十一
ページを御用意してございます。御覧いただけますでしょうか。
食料安全保障のためには、まずは国内の農業基盤をしっかり守り国内の農業
生産の増大を図ることが重要でございます。その上で、カロリーベースで食料の約六割を
海外からの
輸入に依存している
我が国としては、
輸入による食料の安定供給を確保していくことも不可欠であり、安定供給の確保に資するべく
外交活動を展開しております。
左の上のパネルにございますように、国連によると、
世界の人口は二〇五〇年には二〇〇五年の一・四倍の九十三億人となる
見通しで、そのうちの途上国人口は八十億人、約八六%の
見通しであります。
先進国は二〇〇五年から二〇五〇年で一億人の
増加にとどまりますが、途上国は二十七億人の
増加を見込んでいます。
また、今後は、人口増に加えて
新興国等の食生活の
変化などにより肉類の消費が
増加をする
見通しで、食用に加え家畜用飼料としての穀物消費も
増加をするということを隣の右上のパネルで示しているところでございます。
左下のパネルにございますが、
世界の穀物
生産量は
増加はしておりますが、それを上回る消費量となるため期末の在庫率は
低下をする
見通しであり、更なる食料
生産の促進が重要な
課題となっています。
食料需給が逼迫していく中、食料の安定確保のために主要穀物の
生産国との二国間関係の
強化を強めております。
例えば、先ほども御紹介をいただきました、最も最近
発効いたしました日豪
EPAにおきましては、
我が国の
EPAとしては初めて食料供給章を立てまして、食料の
安定供給確保の規定を設けたところであります。また、
世界全体の食料
生産の促進等を通じたグローバルな食料安全保障の
強化のため、二国間の開発援助や国連食糧農業機関などの
国際機関等との協力も通じて、途上国における食料
生産の促進を支援するとともに、農業
投資促進のための国際的な枠組みづくりを進めてきております。
済みません、時間が過ぎてしまったということで、簡単にまとめさせていただきます。
この
右下の食料価格でありますけれども、穀
物価格の乱高下が発生する中、今後十年間は高止まりを予測しておりまして、いろいろな緊急時対応のための地域的な
取組も
推進をしてきているところであります。
そして、
日本市場の国際化が三番目の
重点でありますけれども、二〇二〇年における対内直接
投資残高を三十五兆円へ倍増することを目指す
日本再興戦略を目的といたしまして、その
実現に向けて
政府一丸となって、
雇用確保の観点からもこの対日
投資誘致を積極的に
推進してまいる所存でございます。
最後が国際的な
ルール作りへの参画で、十二
ページにございますけれども、グローバルな
課題等への対応、
多角的貿易体制の
維持強化、そして分野横断的な
政策協調と
ルール作り、この
三つの
具体的取組を進めてきているところです。
G7は、御案内のとおり、
基本的な価値観を共有する
先進国の集まりでありまして、国際社会が直面する新たな
課題を特定し、これに率先して取り組んできております。G20は、
新興国を取り込む形で
世界経済、国際金融について
政策協調を行う場として重要性を増しております。G7、G20とも、
日本としてしっかりと議論に参画をし、
日本にとって有利な
ルール作りを進めてまいります。また、APECは、一九八九年の発足以来、各エコノミーの努力に加えまして、APEC全体で
貿易、
投資を通じた地域
経済統合に向けた
取組や
経済・技術協力、またビジネス界との緊密な
連携も進めてきております。
こうした中、先ほどメガ
FTAと申し上げましたけれども、APECにおきましてアジア太平洋
自由貿易圏、
FTAAPをつくるという構想がございまして、
日本が二〇一〇年、横浜でAPEC首脳会議を開催いたしましたが、その際、
FTAAPへの道筋という文書も取りまとめ、その文書に沿って、アジア太平洋
自由貿易圏の構想に向けまして
日本として引き続きしっかりとリーダーシップを発揮していく考えでございます。
WTOは、申すまでもございませんが、
多角的貿易体制は
世界貿易の基礎、礎であります。現在ドーハ・ラウンドが進んでおりますけれども、その一つとしてバリ合意が二〇一三年末妥結をしたということは、新しい、そして明るい材料でございました。このバリ合意を着実に実施し、ドーハ・
ラウンド交渉の妥結に向けて積極的な貢献を行っていきます。
また、分野横断的な
政策協調と
ルール作りとして、一例でOECD挙げてございますけれども、こういったOECDをも活用し、例えば
世界の
成長センターである東南アジアをどうやって
日本に取り込むか、また、OECDと東南アジアをどのように有機的に関連付けるかという問題意識から、昨年、
日本はOECD議長国を務めましたけれども、その閣僚理事会で東南アジア地域プログラムを立ち上げたところです。この東南アジア地域プログラムをもてこに、
世界の
成長エンジンの東南アジアへのアウトリーチを
日本としてしっかりと
推進をしてまいりたいと考えているところでございます。
引き続き、
先生方の御指導を仰ぎながら、
日本経済の
再生に資する力強い
経済外交を戦略的に進めてまいりたいと考えております。
どうもありがとうございます。