○
公述人(
伊藤正章君) 皆さん、こんにちは。
本日は、発言の機会を頂戴しまして、本当にありがとうございます。
私は、
トヨタ自動車人材開発部の伊藤と申します。よろしくお願いいたします。
私は、弊社内で
就業いただいております
派遣労働者の方の
受入れに当たっての活用方針や管理ルールを策定させていただいております。本日は、
派遣先企業の立場で今回の
派遣法改正に関しまして
意見を述べさせていただきます。
先生方には、常日頃より、私どもを含めまして
日本企業がグローバル規模での競争を通じた成長をしていくための環境整備として様々な労働政策を
議論、
導入いただきまして、本当にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
今後も
日本企業がグローバル規模での熾烈な競争に挑んでいくためには、私は、高品質な商品、サービスを提供していく源泉であり、一人一人の様々な価値観や働き方のニーズもある
労働者の方の力を結集し、スピード感を持って
対応していくことが不可欠であるというふうに考えております。
そのような観点も踏まえまして、今回の
派遣法改正の
内容のうち、
派遣先企業に直接
関係、
影響が出る点を中心に
意見を述べさせていただきます。
まず、弊社の
派遣労働者の方の
就業状況についてお話をさせていただきます。
弊社では、現
派遣法での専門二十六
業務に限定いたしまして、同一
派遣労働者の同一組織での
受入れ上限は三年で受け入れております。
本年六月末時点になりますけれども、弊社内で
就業いただいております
派遣労働者の方は二千百四十二名ということになっております。内訳といたしましては、車両やユニット部品の設計、研究開発等を担当していただいており、弊社内で技術員
派遣として管理させていただいている方が千二百七十名、機器操作や秘書
業務等の弊社内で事務員・
業務職
派遣として管理させていただいている方が五百五名ということになっております。また、弊社の
社員が産休、育休等の休職制度を取得していて、その休職
期間の補充要員として三百六十七名の方に
就業いただいております。なお、生産ラインでの
業務に従事いただくいわゆる製造
派遣の
受入れは実施しておらず、二千百四十二名の皆さんは全てオフィスで
就業いただいております。
弊社では、一九九六年の
派遣法改正以降、経営環境変化に
対応できる体質づくりに向けまして
派遣労働者の方を活用させていただいております。
それでは、ただいまから、今回の
派遣法改正内容につきまして幾つか
意見を申し上げたいというふうに
思います。
まず、今回の
改正で、
派遣先企業にとって制度が分かりやすくなり、かつ
派遣労働者にも良い制度
見直しになるのは、
派遣期間規制の
見直しではないかというふうに考えております。
御承知のとおり、現状の
派遣法は専門二十六
業務と自由化
業務の線引きが非常に分かりにくく、二〇一〇年の専門二十六
業務の適正化以降は、
派遣社員を受け入れている各職場の
派遣先責任者は、
派遣労働者に
業務付与するに当たりまして、付与
業務が専門二十六
業務なのか否かを慎重に
判断し、
判断に迷うケースにおいては、たとえそれが
派遣労働者のスキルアップ、成長につながると思っても
業務付与しない
対応とさせていただいておりました。
しかしながら、そのような
対応が本当に
派遣労働者のためになるのかとの声は各職場の
派遣先責任者より上がっている実態がございました。
具体例で申し上げますと、例えば弊社の技術部門で
就業している技術員
派遣の方の話になりますが、その方は部品設計
業務に従事していただいておりましたが、あるとき、その
派遣労働者の方に担当してもらっている部品の社内での確認
会議が行われることになりました。この
会議は、その部品に
関係する社内外の
関係者が一堂に会しまして、品質の現状、今後の改善箇所を確認する
会議でございました。その場は、通常、設計した部品の試作品を
会議に持参し、
関係者が実物の物を見ながら品質確認を実施し、次なる試作品の改善につなげていく形となっております。
この確認
会議が開かれるとの話が上がった際に、
派遣先責任者は、当該部品の設計に従事した
派遣労働者に
会議に参加してもらおうと考えました。しかしながら、実際に試作品を
会議室に運搬させる
業務や確認
会議への
出席が専門二十六
業務に当たらないのではないかというふうに考えまして、結果として、その
会議には当社の
社員が代理の
出席をすることになりました。
この
派遣先責任者によりますと、確認
会議は、自分が設計した部品に関する
意見を
関係部署から多角的にフィードバックいただき、そのフィードバック
内容は、特に当該
派遣労働者のような比較的若い
エンジニアにとっては、図面上では表れない
課題を知る上での格好の勉強の機会、
エンジニアとしての視野を広げ、スキルアップにつながる良い機会であったにもかかわらず、その成長機会を与えられなかったという
思いを抱いているということでございました。
派遣元会社の方に伺った話になりますが、
派遣労働者にとっても、専門二十六
業務と限られた範囲の中での
業務遂行しかできず、仕事をやり切るとの観点から、付随する
業務を含めやりたいとの
思いがあるにもかかわらず、それが付与されず、結果的に中途半端感を感じている
派遣労働者が複数いるということを聞いております。
また、専門二十六
業務の解釈に関する別の話でありますけれども、
派遣元会社から伺った話を少しさせていただきます。
ある職場で
就業していただいております
派遣労働者の方の職場が主催する大規模な社内
会議が開催されることになりました。その職場では、グループ員みんなで
会議資料の印刷、クリップ留めや、
会議会場の設営、
会議資料を机に事前設置する等の
対応をしておりました。しかしながら、その
会議と直接
関係のない
業務の機器操作で
就業していた
派遣労働者に対しては、
会議に関する準備
業務は専門二十六
業務以外の
業務になるとのことで、
派遣先責任者からその
派遣労働者に対しては
会議準備に関する
業務指示は一切いたしませんでした。しかしながら、その
派遣労働者の方は、その職場で
就業したばかりで、早く職場に貢献したいとの
思いから一緒になって手伝いたいと考えていたにもかかわらず、逆に
疎外感を味わい、職場にも迷惑を掛けている気がして申し訳ないという
思いを抱いたとのことでございました。
このような、現状の
派遣法での専門二十六
業務、自由化
業務の区切りが分かりにくく、
派遣先、
派遣元、
派遣労働者と
関係者が悩みながら
対応していた部分が今回の
改正で解消されるのは、
関係者にとって分かりやすく、良い
改正につながるのではないかというふうに考えております。
派遣先責任者にしてみれば、
派遣労働者への
業務付与の制約がなくなる中、
派遣労働者本人のスキルアップ、
キャリアアップにつながる
業務のやり切り及びそれに伴う達成感を感じさせる
業務付与をためらうことなくできるようになりますし、また、職場での
正社員、
派遣労働者間でお互いが変に遠慮していた部分がなくなることによる職場での
一体感の醸成にもつながるのではないかというふうに考えております。
次に、今回の
派遣法改正に伴いまして全ての
労働者派遣事業を
許可制にする点について触れさせていただきたいというふうに
思います。
トヨタといたしましては、現在複数の
派遣元会社様から
派遣労働者の方を
派遣いただいておりますけれども、おかげさまで大変優良な事業者の
方々から
派遣をいただいておりますので、
派遣元会社に起因したトラブルに
影響を受けたことはございません。今回の
許可制への一本化で
労働者派遣事業進出における条件が強化されることで、
派遣労働者がより安全、安心な環境の下、
派遣先企業での
業務に専念できることにつながることを望んでおります。
次に、今回の
派遣法改正内容の
一つとして、
派遣元会社による
派遣労働者の
キャリアアップに向けた計画的な教育訓練が義務付けられています。
現状、我々が
派遣労働者を受け入れたいと考え、
業務に求めるスキルを提示しても、見合った人材が見付からず、
派遣労働者の
受入れまでに時間を要するケースも散見されます。今後、
派遣元会社での
派遣労働者への計画的な教育が今まで以上に実施されるのであれば、
派遣先企業側の立場で見ますと、求める人材をタイムリーに充足できる
可能性が増すと考えますし、
派遣労働者にとりましても
就業先が速やかに決まることにつながるのではないかというふうに考えますので、両者にとってより良い
改正になるのではないかというふうに考えております。
今回の
派遣法改正におきましては、
派遣元と
派遣先双方に、
派遣労働者と
派遣先の
労働者との
均衡待遇確保のために
措置を強化することについても触れられていると
思います。
弊社といたしましては、これまでも食堂、更衣室等の福利厚生施設は
正社員と同じ施設の利用を提供しておりますし、
業務遂行に伴う当社内での教育訓練機会の提供も実施をしております。
一例になりますが、弊社内で車両開発を行っている技術部門では、車両設計を行うためのシステムを持ち合わせておりますが、この設計システムの教育訓練機会については、
正社員、
派遣労働者に
関係なく提供をしております。
こちらも
派遣元会社の方から伺った話になりますが、トヨタの技術部門で使用している設計システムの教育受講をした方は、弊社での
派遣就業期間終了後の新たな
派遣先確保に当たって、弊社の別の職場あるいは同じシステムを活用している弊社のグループ会社での
就業先が見付かることが多く、トヨタでの
派遣就業経験を生かしながら新たなスキルアップをされる方も多いというふうに伺っております。
当社といたしましては、
業務遂行に関連した教育訓練については、
派遣法改正の
有無にかかわらず今後も継続して実施していきたいというふうに思っております。
以上、
派遣先企業の立場で今回の
派遣法改正内容について述べさせていただきました。
今回の
派遣法につきましては、特に
派遣先企業として、
業務付与における制約が緩和され、それに伴う
派遣労働者の
キャリアアップ及び
派遣労働者と当社
社員との
一体感醸成につながり、これがひいてはグローバル規模での競争に打ち勝つための強い源泉になるというふうに考えております。
先生方皆様には、これらの件も考慮いただいた上で十分御
議論いただき、
法案を
成立していただくことを願っております。
本日はありがとうございました。