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参考人(
柏木孝夫君) 東京工業大学に勤務しております
柏木でございます。専門は
エネルギーシステム並びに技術開発と、
エネルギー一般の技術開発を専門としております。特に
電力の
システム改革あるいは
ガスの
システム改革、両方に絡んでおりまして、そういう
意味でニュートラルな
立場から
発言を申し上げたいと、こう思います。
先生方はもう御存じだと思いますけれ
ども、
エネルギーには一次
エネルギーと二次
エネルギーがあると。一次
エネルギーというのは、石炭、石油、天然
ガス、原子力、太陽光、風力なんかは太陽光に属するわけですけれ
ども、こういう一次
エネルギー源と。それから、それを変換して何らかの形で使いやすい形にしていく二次
エネルギー、これはやっぱり
電力が一番二次
エネルギーの筆頭になるでしょうね、使いやすいですから。それから、水素なんかもそうですよ。水素というのは、これは単体では存在しないわけですから、酸化した水という形で広く地球に、民に公平に与えられているわけですから、これからの水素社会というのはそういう
意味では非常に重要になるということになります。ですから、どうやって水素を持ってくるかと、こういう話になりますね。
熱というのがあるわけですよ。今の
エネルギーミックスやっているときに、あれよく御覧になりますと分かりますけれ
ども、
電気は二六%、
電力量でね、七五%は熱なんです。今のこの
法律というのはどちらかというと全部をトータルしていますから、そういう
意味では極めて重要な
法案と。
こういう一次
エネルギー、二次
エネルギー、熱用に最終
エネルギーという、こういう分け方をした上で
法律体系をぐっと俯瞰的に眺めてみますと、明らかにこれをパラレルに捉えていた今までのこの法体系。例えば、
電気事業法、一次
エネルギーの
ガス事業法、最終
エネルギーの熱供給
事業法。これパラレルに捉えているというのは、何らかどこかでやっぱりゆがみができてくる。
ですから、特にアメリカなんかは
ガス・アンド・ワイヤーと言いますよね、あるいは
ガス・アンド・パワー。
ガス会社と
電力会社が一体化して、合理的な需給構造を構築していくということになりますと、どうしてもこれパラレルからシリアル、シリーズというかシリアルというか、一次
エネルギー、二次
エネルギー、最終
エネルギー、こういうものを一体化して捉える
法律体系に変えていくということは私は非常に重要だと思っておりまして、そう
考えますと、一体化してこの
法案を出してきたということは極めて意義深いと、こういうふうに思うわけです。
そうなりますと、どうしてもインフラというのが重要になってきて、インフラは、今まで
ガスは
ガスで、
電力は
送配電でやってきたわけですよね。ところが、これからやっぱり一体型になる可能性がありますね、
ガス・アンド・ワイヤー・アンド・ファイバーと。それに今、さらに、技術開発を
考え合わせれば、あくまでもファイバーまで、もうこれだけインターネットが発達しているわけですから、パイプラインのところにワイヤーが引けて、そこにファイバーも引けると。これスマートグリッドそのものですよね。
こういう統合型インフラになったときに、このインフラの扱い方をどう
考えていくのかというのが今度のこの
法律の要の一つだと私は思っているわけですよ。ですから、そう
考えますと、こういうインフラの
中立性をどう担保するのか、どう担保すれば
我が国の国益が増大し、かついろんな業種がそこに
参入しやすくなって、そして日本全体が発展するかと、極めて重要な
課題を抱えているわけです。
じゃ、どういう
課題があるのかと。今までそういうことを
考えてきたわけですけれ
ども、私は、ネットワークの
中立性ということに関して、この
意見書にも、
意見書というか、今まで
発言した内容が書いてありますから、それを覆すわけにいきません、自分の主義は主義ですのでね。慎重にやはりやるべきだということを言っています。
それは、
中立性の担保のためには、例えば会計
分離があると。会計
分離をしっかりやって、それでも駄目なら今度は
法的分離だと、分社化すると。分社化すればいろんな経費はそこに入ってきませんから、比較的託送料も透明化するし、ある
意味では
公平性担保の一つの有力な手段であることは間違いないと。もう少し強烈になれば、御存じのように所有権
分離と。ただ、所有権
分離の場合には、大体国営のものを民営化する、プライバティゼーションですね、民営化するときに自由化するわけですから、そういうときにはやはり所有権
分離はあり得ますと。
電力なんて、一九五一年に、日本が発展するためにまず一体化してやれとアメリカからの指令が掛かり、で、所有権を与えて、民間がしっかりやるんだということでやってきたわけですから。それで五十年たって、さあその所有権を
分離しろなんてこれはおかしな話で、ですから、そういう
意味では、まあいっても、やはり分社化して、
法的分離をすることがニュートラル性を担保するには一つの有力な手段であることは間違いないということです。今度の
法案はそれが出ているというふうに理解しているわけですね。
私、個人的には、
電力の場合には、これはBツーBからBツーCまでありますよね。ですから、
全面自由化の
法律が去年通り、そして家庭
部門に例えばエネファームだとか太陽光、太陽光は今固定価格買取りで買っていますけれ
ども、こういうものが入ってくれば、それはディマンドリスポンスを掛けて需要を減らせば、で、
発電システムを
最大限に持ってくれば
電力がたくさん出てくるわけですから、家庭からも
電力は売ることができる。キャッシュの流れがディマンドサイドにできてくるということは、これ極めて日本の合理的な
エネルギーシステムを構築する上では重要なことだと私は思っていまして、自由化というのはだからそのぐらい大きなインパクトがあることなんだと、こう私は思うわけです。
そうなりますと、
電力は、BツーBそれからBツーC、
新規参入者がたくさん出てきますので、ある
意味では、今、
八木会長がおっしゃったように、法的な
分離をするのであれば、きちっと検証した上で、
新規参入者が自由にちゃんとアクセスできるように、そして日本の発展につながっているということをきちっと検証した上でこういう方向の
法律を作っていくということに関しては、私もおおむね賛成をしているわけですよ。
一方、
ガスに関しては、
ガスはどちらかというと
ガスパイプラインを、家庭から
ガスが出るかというと、そう簡単には出ないだろうと私は思っていまして、出せるとすればバイオ
ガスで発酵させて、フェルメンテーションといいますね、発酵させた
ガスをメタン
ガスに、自分の中に入れてやるといったって、それは大変なことですから。まあ普通は、
ガスパイプラインを分社化するということになりますと、
電力は
ガスたくさん使っていますから、
電力がそのパイプラインを借りて
ガスを売りに出る、あるいは石油会社が
ガスを輸入して売りに出ていくと。あるいは、商社が
電力会社の基地を借りて、そして
ガス会社のパイプラインを、託送料を払って、そしてそれを借りて出していく。
だから、非常にBツーBが多いわけで、そういう
意味では、決して分社化することが
新規参入者を増やし、日本の合理的なシステムを、保安の問題とかいろんなことを
考えたときには、まず会計
分離をしっかりして
透明性を保って、きちっと検証した上で、それでも駄目なら
法的分離をやるべきだということを一貫して言ってきたわけですよ。ですから、そういう
意味では一応慎重論にはなるわけです。
そうなりますと、やはりそういうことをずっと踏まえて今度の
政府がきちっとこういう形で、
電力、
ガスも一体化して、同じような形でパイプラインのニュートラル性をこの
法的分離という形で年数を限って、これまでによく検証した上で、いろんな可能性を排除しない形でこの
法律をお出しになったということに関しては、私は異論はないですよ。異論はないです。ただ、慎重にやはり
考えていく必要があるんだろうと、こう言っているわけですね。
ですから、もしこの
法律が通るということになりますと、私としては、今までの経緯からして幾つかのやはり注文があるということになります。注文と言ったら大変失礼な言い方かもしれない、自分の私見があると。
今、ちょっと七つ、今日、朝起きて一生懸命
考えてきました。七つほど書いてありまして、一つ目が、
ガスシフトということが今度の
エネルギー基本計画に書いてありますから、その
ガスシフトがちゃんと行われるように、すなわち、
ガスシフトが行われるということは、広い地域でいろんな
ガスの
需要家が、例えば
電気に変換するとか、あるいはほかの、水素を取り出すとか、こういうふうなことができるように、やはり
ガスシフトが、
法的分離をしたときに、きちっと
ガスの新規導管が伸びて、きちっとできるようなインセンティブを与えるようなことも併せてポリシーミックスでやっていかないとうまくいかないんじゃないかと、私はそう思うわけですね。
今、
ガスパイプラインが日本の国内でカバーしている面積は五%ですから。
電力は大体オールジャパン、全部網羅されている。たった五%しかカバーされていないわけですから。それを例えば、先週まで私、ドイツへ視察行ってまいりまして、ドイツで今、パワー・ツー・
ガスというのが導入を、ドイツの場合には原子力をやめた後、
再生可能エネルギーだと言っているわけですね。
再生可能エネルギーは北部に多いですから、北部に風力はがんがん回っていますよ。それで、電線は細いですから、それで全部それを南の旧西ドイツの中に運ぼうということになると、これまた電線一本引き、二本引きというと、
国民負担が、それじゃなくたって固定価格買取りのサーチャージでかなりの額を支払っているにもかかわらず、また更に系統
強化かということになりますと、そう簡単じゃありませんから、それじゃ、今までの既存の系統の連系線ですね、
送配電システム、送電線ですよ、送電線を使えるだけ使って、ふらふらしている風力の残りは、水を
電気分解使って水素と酸素に分けると。酸素はどこかに、病院に売るもよし、いろんな売り方があります。水素は、パイプラインは充実していますから、EUの中でパイプラインは網羅されていますから、そういう
意味では、そのパイプラインの中に水素を混入して南の方に運んできてタービンを回すと。そうすると、水素の分だけはパワーアップして、かつCO2が出ない。よって、低炭素型の
エネルギーシステムがこのパワー・ツー・
ガスという手法を使うことによって成立してくる。
これ一つの、
再生可能エネルギーを進めるということであれば、そういうことまで
考えた上でやっていかないと、ただ
再生可能エネルギー何でもいいからやれと言ったって、全く間違い。こんな非常に不
安定性があるものがばんばん入ってきたら、太陽光だって昼間はあるけど夜はないわけですから。そういう
意味では、そこら辺のことを全て頭に入れた上で、全体を見渡した中で最適な
法律はどうあるかということをやっぱり
考えていただくことが非常に重要だと、こう思っています。それが
ガスシフトを進めるためのインセンティブ付与。
それから二番目が、
電力自由化というのはもう既に通っていますから、
電力の自由化をすると大体
電源不足になりますね。今までは総括原価方式でちゃんと建てて、その代わり
電力会社は大変な
努力をして
安定供給をして、それで日本はここまで発展してきたわけですよね。ですから、それは私は全く否めない事実だと思っていますが、これ、自由化ということになると市場原理でいきますから。例えば東京
電力管内で一年間八千七百六十時間の八十八時間しか動かない
電源が全体の七・五%あるんですよ、全体の。八十八時間って一%しか。だから、盆暮れの三、四日しか走らない車が百台のうち七、八台持っている運送業だったら潰れますね、普通は。
電力の今まではもう需要ありきでやってきましたから、これに対してはもう文句はないんです、私は。だけど、これからはその延長線上に
エネルギーシステムがあるという保証は全くありません。いかにコンパクト・アンド・ネットワークを図っていくかということがこれからの
エネルギービジョンを実現する、先進的に世界をリードしていくためには工業国家としては必要不可欠なんじゃないでしょうか。
そういうふうに
考えますと、今言ったように、
電力自由化になりますと市場原理で
電源を建てるわけですから、そう簡単には
電源はありません。
電力不足になります。そうなると、分散型
電源のコジェネレーション、熱電併給ですね。ですから、熱需要のあるところに
電源立地をしてくる。こういうコジェネが、ある効率の悪い大規模集中型の代わりに分散型がディマンドサイドに下りてくるわけですよ。ディマンドサイドでインターネットと一体化してスマートグリッドのような形になってきめ細かな制御が行われると、そこにコジェネと
再生可能エネルギーがうまく
機能して、
最大限国民負担を少なく、
再生可能エネルギーを
最大限取り込むことも可能になると、こういうふうに私は思っているんです。
そういう
意味では、そのコジェネレーションに対するインセンティブ。今度の基本計画の中では、コジェネは、画期的だと思いますね、コジェネレーションに関してきちっとした記述がなされました。さんざん手を挙げて言いましたからね、あの
審議会の中で。千百九十億キロワットアワー、今パイは大体一兆ちょっとですから、一兆キロワットアワーちょっと多いですから、そのちょっとです、それが、その中の一二%弱がコジェネからの
電力、熱を使い切るコジェネからの
電力で、二〇三〇年度にそれを目標達成したいということまで書かれたということは画期的なことだと。私は一五%は行くと思っていますけれ
ども、BCPの
観点が今入っていませんから、そういう
意味ではそう。そういうコジェネレーションなんかも、まず天然
ガス主導、
ガス主導で動くことになります。だから、
電力会社もこれからはコジェネをやるようになると私は思っております。そういう分散型に対するインセンティブ、これがきちっと与えられるということが重要。
それから、そうなりますと、この
三つ目の熱供給
事業法、これ、この中で、許可から登録制という格好になりましたよね。これ、私は非常に、もっと気楽に熱供給、熱だけではそれほど爆発するとかということはありませんから、熱供給に関しては気楽に熱供給ができるような形で
規制緩和を行うと。ですから、熱の部分が七割も占めているわけですから、そういう
意味ではこの熱供給
事業法も今のコジェネと一体化した形で
規制改革を行っていただく、その
制度設計をきちっと行っていただくということが重要になる。
四つ目が、そうなりますと、熱導管を誰が引くかと。なかなか熱導管高いですから、熱導管を私は、一つの箱物行政というか公益性のある
事業から、
エネルギー関連の公益性のある
事業、これの中に、熱導管そして自営線とファイバー、ですから、熱導管アンド・ワイヤー・アンド・ファイバーという形で一体型の
エネルギーインフラ、こういうものをやはり新しい形の公共
事業として捉えるということも私は必要になってくるんじゃないかと、こう思うわけです。