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加藤敏幸君 人件費が高いというワンパターンをやっぱり乗り越えていくということで、スイスははるかに日本より高いですから、その代わり
物価も高いと。これは
賃金と
物価の関係はいろいろなモデルがあるわけで。
それから、今
大臣、日本の
労働力の質ということを言われましたけれ
ども、これもやはり
賃金にはある種
労働力に対する投資という
側面があります。
賃金水準が低い非
正規の
皆さん方はなかなか、ある種自分の能力をいわゆる高めるというところにお金を使うということにはならないわけでありまして、昔はインハウスという形で
企業内での教育訓練に相当お金を掛けて、早い話、学校では大して勉強しなくてもいいんだと、入社さえしていただいたらいっぱしのエンジニアに育成しますという
企業もたくさんあったんです。
しかし、今は随分それは薄れてきて、即戦力を期待をするというのは、教育に対しても、やっぱり相当実戦力を求める
企業は、つまり
企業内でのインハウスでの教育訓練投資というのはここ二十年ずうっと落ちてきているということでございまして、私はやっぱり、国家百年の計とは言いませんけれ
ども、ある程度
賃金水準が高いということが
労働の質を支えていくという根幹なので、ここ二十年間、ある種
賃金デフレということで安いことを求めたという時代であって、それは隣に中国というある種大変巨大な、デフレのブラックホールと言った人がおられますけれ
ども、結構相当にきつい、そういう固まりがある中で、日本としてなかなか
賃金ということが下方にずうっとずり落ちるような
傾向があったわけですけれ
ども、これからやっぱり
労働力が減っていくという中にあって、女性の就労率も上げていただくとかいろいろ策はありますけれ
ども、一人当たりのやっぱり
労働の質を高めていくということに集約するような
政策を是非お願いをしたいというふうに
思います。
さて最後に、この
賃金問題いつまでもやってもこれまた叱られますので、最後に、やっぱり労使交渉に
政府がここまで応援をするということはある種めったにないことであるし、いつまでもやるということでも私はないというふうに
思います。
それで、労使交渉というのは、これはマーケットを背景にやっぱり自立的な交渉をやるということが建前でありまして、なぜこのことを申し上げるかというと、恐らく、生産
労働人口がやっぱり減少していくというこの流れの中で復興事業を開始すると、ある種、熟練工が払底をして労賃が上がっていくとかそういうふうなことが局地的に起こったりということも含めて、
労働力をどう
確保するかというフェーズにやっぱり何年か後入ってくると。
政府の
政策がよろしきを得れば、
経済は比較的緩やかに
回復をしていくということになれば、当然のことながら人手の問題とかいう、人材
確保というところに大きな焦点が移ってくると、これはやっぱり人件費の高騰要因になる。
政府が旗を振らなくてもどんどん
賃上げということについて強い
動きが出てくるということになると、今度はやはりコストプッシュ型のインフレというリスクもいずれどこかで遭遇する可能性がある。
我が国が一番
賃上げしたのは、いつでしたか、一九七四年、三三%だったんですね。これは、列島改造ブームから第四次中東戦争、それから石油が来なくなってという一連の流れの中で三三%の
賃上げ。これはもう大変なことだということで、その前の年は二〇%でしたから。それで、当時は福田総理、赳夫さんの時代だったか、そうじゃないですか、そのときの狂乱
物価というのが福田赳夫さんが名前を付けられたという、こういうようなことでございまして。
実は、このときに、こういう
物価上昇、そしてそれが後追い
賃金交渉、
賃上げ、それがまた
物価上昇の原因になるという、こういうふうなことでは国民生活は駄目ではないかということで、
労働界は金属労協を中心にいわゆる
経済整合性論ということで、これは
経済成長に見合った
賃上げにしようではないかと。このスパイラルなコストプッシュ型のインフレをどこかで断ち切らないかぬ。そのことは誰が、じゃ、
最初に切るんだといったときに、
労働界が切ろうということで、実は、これはもう世界の
労働組合の歴史の中でも唯一です、
労働組合が
賃上げを抑制をしたと。日経連が当然それに合わせて
賃上げガイドラインということで、一九七五年が一五%以下、七六年以降は一桁台と。見事にこれは、まあ労使が合意していますから、それに収れんをしていくということで、ハイパーインフレだとかいうその事態は日本は回避することができたということがあるわけです。
このときは
政府は、
賃上げ勘弁してくれと、
賃上げ抑制と。普通は
賃上げ抑制の方に
政府は働きかけをするわけですね。
そうすると、一々交渉事に
政府がああだこうだと、手取り足取りということを私はいつまでもやるということは決して健全な労使関係でもないし
政労使関係でもないというふうに思うわけであります。
最初のこの慣性をつくるために、大きな石を動かすために、みんなでこぞって力を出してやろうというこのステージはステージで結構ですけれ
ども、やはり
経済産業省の
立場としては、私は、ここら辺りに一定の、ある種の見識を持って、距離感を持って対応すべきところはすべきということも必要ではないかというふうに思うんですけれ
ども、どうでしょうか。