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参考人(原強君) コンシューマーズ京都の原でございます。
本日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。
私
どもは、NPO法人格を持った
消費者団体でございます。ということで、
消費者団体の立場から今度の二法についての
意見を述べたいと思います。
お手元に
意見の
概要、それから私
どもが配布しておりますパンフレット、チラシなどお配りいただいておると思います。また、参議院の
環境委員会の
調査室の方の作られました討議
資料といいましょうか
資料集にも、
事前の
法案の
資料集、それから今日の
資料集にも関連
資料をいろいろ集めていただいております。大変有り難いことだと思います。御参照いただければと思います。
私
どもの会は、一九七二年に京都
消費者団体連絡協議会という会として発足をいたしまして、二〇〇三年にNPO法人になりました。NPO法人になるに当たっては、
消費者保護と
環境保全という二つの領域で、当時の所轄庁は京都府でありましたが、京都府から認証を受けております。
私
どもの
環境領域の活動、御案内のように京都議定書の町でもありますのでCO2の問題も関わりますけれ
ども、今回の
法案との
関係では、NPO法人になってから、家庭から出る厄介なごみというテーマを取り上げましていろいろなことをやりました。その中で、蛍光管の適正
処理というテーマが浮かび上がってまいりました。ほぼ十年以上これでやってきたわけですけれ
ども、その間にちょうど
水銀条約というものが話題になり始めまして、どんな
水銀条約ができるんだろうか、採択した後は、どんな
条約ができたんだろうか、
条約ができた以上
国内対策が要るよね、それどういうふうにしたらいいんだろうねと、こういう情報提供とか啓発のセミナーとかシンポジウムを業界団体の方と御一緒にやってきたという経緯がございます。お手元の
資料もそういう際に役立ててきたものであります。
一番最近の
取組は、今日お配りしたこの
水銀体温計・
血圧計の
回収実験、こういうようなことを
消費者団体の立場でやっております。ですから、家庭で眠っている
体温計とか
血圧計をこの際一気に大掃除しましょうという
取組をこの法も求めていると思うのですけれ
ども、
消費者団体、NPOの側でこういうことができないかということでやってみたものであります。
今回は、京都市の北区の市民のイベントの会場に京都市のエコまちステーションの
資源物回収コーナーがつくられましたが、その脇に私
どものブースも置かせてもらって、そこに持ってきてくださいということをやりました。当日、四十六本の
水銀体温計が集まりました。この数字を大きいと見るか小さいと見るか、現場の感覚でいくと、これはとんでもない多くの数字が集まったと、こんなふうに評価していただけるんじゃないかなと思っています。
そういうようなことをやっておりまして、今回の
法律につきまして、もちろん私
どもは大歓迎ということであります。私
どもが頑張っていく上で根拠になる
法律が欲しかったわけですから、できるのはとてもうれしいというふうに思っています。とするならば、
水俣病の経験を持っている国として、国際的にリーダーシップが発揮できるような実質的な実効性のある
対策を
法律で作っていただきたいと、こんなふうに思っているわけでございます。
私
どもから見て、こういう点を考えてもらうと実効性が担保できるのではないかというようなことを、あと幾つか申し上げてみたいと思います。
一点目は、
市町村の
責務と国の
責務という、これは
法律では、十六条、十七条に関わることでございます。
我が国では、家庭から出るごみは
一般廃棄物として
市町村によって
回収、
処理されております。したがって、この
法律の下でも、家庭から出る
水銀廃棄物は
市町村の手で
回収されていくということになるわけでありますけれ
ども、
市町村の置かれている
実態から見ますと、努力をしてできることと、努力してもできないことがあるという現実があるんだと思います。
先ほど、
佐々木さんの方からは、
全国の七割の
市町村で取り組んでいるというお話がありましたけれ
ども、それは、何らかの
取組メニューを持っているという
自治体が七割あるということであって、全部の七割が集まっているわけじゃありませんよね。ですから、手付かずの三割の
自治体はどうなっているんだろう、やっている
自治体でもどのくらい集まっているんだろうかと、これは
回収量から逆算をしていく必要があります。京都市も、頑張っているとはいえ、まだ五十トン級の
回収量であります。
ですから、
全国的に、どういう根拠でこの
回収率を計算するかというのも難しいんですけれ
ども、三割レベルの
回収だと、こういうふうによく言われておりますが、そういう
実態だと思います。ですから、七割の分を逆に集めなきゃいけないというときに、
市町村が頑張れる条件をどうつくっていただけるかということが問題になると思います。
昨年、京都では、京都府や京都市から
水銀条約の早期発効と
国内対策の確立を求める
意見書が出されております。全部で十の
意見書が出ております。この
意見書が議論される過程を私
どもも見ておりましたけれ
ども、
自治体にできることは限られるので国の
対策を求めると、こういうのが基調になっていたと思います。
例えば、京都市からの
意見書を見ますと、多くの
自治体が
水銀を含有する家庭ごみの全てを
回収することは困難であり、
水銀の適正な
処理を確保するためには、
製造・販売
事業者も協力して
回収する仕組みが不可欠である。よって、国におかれては、
水銀含有廃棄物の適正
処理を確保するための実効性の高い枠組みを早期に確立することを強く求めると。こういうふうな
意見書になっています。これが各地の
市町村の声だと思います。
ですから、私が今回も申し上げたいのは、今回の
法案の下で、国として
市町村の要望をよく聞いて、その
取組に対して、法文上は技術的な助言ということが出てまいりますけれ
ども、その枠を超えた具体的な財政的支援を伴うようなバックアップをどのように行っていただくのかと。あるいは、国が関与して、
水銀廃棄物の
回収、適正
処理システムをどうつくっていくのかと、こういう点に踏み込んでいただくことを期待したいなと思っております。
二つ目の論点は、
事業者の
責務に関してであります。これは
法律では第十八条に関わることであります。
事業者の
責務ということで一般的に考えられますのは、メーカー、
製造者としての
責務ということと、一方で、
廃棄物を
排出する
排出事業者としての
責務といったことが出てくると思います。メーカーとしての責任といった場合、これから
水銀条約の下で
製品が次々開発されて出回っていくということは余り考えられないと思います。ですから、既に出回っている
製品、あるいは既にもう出回って
廃棄物になってくるという
製品、こういうものに対して、じゃ、メーカーがどういう責任が持てるのかというところが問われると思います。
ごみの世界では拡大生産者責任という考え方がよく出てくるわけですけれ
ども、
我が国においてはこの考え方がなかなか定着しておりません。この考え方を
水銀廃棄物にどう適用していただけるのかという点は、
皆様の審議を注目したいと思っております。実際にはもうなくなってしまっているメーカーとかそういったものがあって、過去に遡って責任を追いかけるということはなかなか難しそうな気がいたしますが、やはり考えていただきたいなというふうに思っている点でございます。
それから、今回、
法律の中で、
水銀製品に関して情報提供あるいは表示と、こういうことが書かれております。これは大変有り難いことでありまして、
消費者としては歓迎したいというふうに思っています。
実態としまして、
消費者市民の中で蛍光管に
水銀が入っているということを正しく認識している方、非常に限られるわけですよね。大学で非常勤講師で授業もやりますけど、学生たちでも、
水銀の話をして、えっ、そうなんですかというのが
実態です。ですから、蛍光管の商品のパッケージに
水銀が入っているよ、これは注意して使って、ごみに出すときも注意してねと、こういう表示をきちんとしてもらいたいという声は当然出てくるわけで、去年の四月の二十二日の衆議院の
消費者問題
委員会で、これ民主党の泉健太さんが話題にされて、そうだねという議論がされたのを覚えております。ですから、今回こういう
法律が準備されることは大変有り難いわけです。
ところが、そういうパッケージが付けられたとしても、マークが付けられたとして、それを正しく読む力が
消費者になければ意味がないという点があります。ですから、
消費者の中で
水銀についての啓発あるいは
消費者教育、こういうものをどういうふうに進めるかというのがとても大事な
課題だと思っています。ですから、私
ども消費者団体としてもここは頑張るにしても、メーカーの方がこれは
水銀が入った
製品なんだよということをきちんと
消費者に向けて啓発、教育をしてもらうと、こういう
役割を是非担ってほしいなというふうに思うんです。
同時に、そういう表示や情報提供があっても、精いっぱい書けるのは、これをごみに出すときは地域のごみのルールに従って出してくださいとしか書けないと思うんです。おととい薬局に行って、
水銀体温計、まだ売っているのを確認しました。その
体温計の
説明書を見ると、そういうふうに書いてあります。とすると、その地域のルールがあってこそ
説明は意味があるんです。その地域において
水銀体温計の
回収システムがないときに、その
説明は逆に混乱を招くだけで意味がないと思いますね。ですから、表示制度というのは社会システムの象徴的なものだと思うんです。ですからとても大事なものなんですが、社会経済システムを整備しながらその表示の仕組みを考えてもらわないと駄目なんじゃないかなと思います。
そして、この表示の仕組みをどういうふうにつくっていただけるのか、
消費者の参加の道はあるんでしょうかと、こういったことを申し上げておきたいなというふうに思いました。メーカーもそういう際に応分の
役割を果たしていただく必要があるのではないかと。
市町村どうぞと言うのではなくて、我々も頑張るよと、こういうふうに言ってほしいなと思っています。
それから、
排出者の問題でありますけれ
ども、大手の事業所では、これまでから、蛍光灯にしましても適正な
処理がされていると思うんですが、中小零細
事業者の場合どうなるのかということであります。魚屋さんや八百屋さんが蛍光灯一本ごみに出す、これ法的に言った場合、微妙ですけど、厳密に言えば
産業廃棄物ですよね。そうすると、適正
処理をされる
事業者と
処理委託契約を交わしてマニフェスト
管理やってくださいというふうになるんですけれ
ども、実際にはそんなことはほとんどされていないという
状況があると思うんです。ですから、こういう部分について、家庭から出るごみに準じた零細な事業所から出るごみの
回収を、
事業者と行政が組みになって何らかの仕組みを考えてもらうという必要があるんじゃないか、あるいはオフィス町内会的な自主的な
回収をする仕組みをつくってもらうと、こんなこともあってよいのではないかなというふうに思っています。
それから、別格な議論が要るのが医療機関だと思うんです。医療機関が自らお出しになる事業所からの医療系の
廃棄物の中で
水銀廃棄物をどう扱われるかという点ではやはり格別の努力が必要でありますし、それをみんなあなたたちがやれよというだけではうまくいかないというのを、医師会からの御要望としても、何らかの国からの援助がいただけないかと、こういうふうに表れているんじゃないかなというふうに思います。ここは是非お考えいただきたいし、医療機関の
皆様とよく協議をいただきたいなと思います。
三番目、
保管の問題であります。これは第七章で条文がありますけれど、これは衆議院の
委員会で野村興産の社長さんが
意見を述べておられます。これに尽きるんだろうと思いますが、私の立場からも、現場を見ていて、
保管をする場合、その技術は何とか開発されると思うんです。それのコストを誰がどういうふうに負担するのかと。言わば、
保管ビジネスが成立しなければこれは長続きしないと思うんです。その仕組みが、これからマーケットがなくなって、
排出されるのもこれが
最後ですよ、ずっと野村興産、
保管しなきゃいけないといったときに、そのお金はどこから出るんでしょうねとなりますよね。そういう点が気になるところでございます。ですから、国としてもここは踏み込んでいただいて、検討いただきたいなと思います。
四番目が、
排出基準。これは大防法の一部改正の案件でありますけれど、申し上げたいのは、どこから
水銀が
排出されているのか、そのどこから、どの事業所からというのを具体的な
水銀大気排出のインベントリーとしてまとめていかれるときに、やはり限りなく具体的にデータを示していただきたいというふうに思うんです。
私は、ごみの問題に関わっていましたので、ごみのところ、かなりレベルが良くなっていると思っていましたけれ
ども、今出ているのは、
環境省の
資料でも二四%ぐらい出ているということになっていますね。他方で、セメントが二九%とか鉄鋼が二五%とか、あるいはこれから増えていく石炭火力、
現状五%、これがもっと増えていくんだろうと。こういう部分について、どの企業のどの事業所から出ているのか、ここを押さえないと、公害
対策の経験、これは発生源
対策であるということだと思うんですね。この点で、やはりデータからみんなで議論ができるようにしていただきたいと思います。
もう時間ですので終わりますけれど、これから
計画作りや
政省令が作られていくと思いますけれど、この議論をする場合に、私
ども消費者団体の
意見も十分に聞いていただきますようにお願いをして、おしまいにしたいと思います。
どうもありがとうございました。