○本田雅俊君 ありがとうございます。金城大学の本田でございます。
本日は、大変貴重なお時間をいただきまして、まずもって厚く御礼申し上げます。また、
大島委員長を初め
委員の先生方におかれましては、遠路はるばるこの北陸の地にお越しいただきまして、心から感謝申し上げます。
限られた時間でございますので、早速、
平成二十七年度予算、とりわけ地方創生の分野に関しまして、しばらく前に地方にUターンをしてまいった者として、また大学にかかわる者として、そして研究者の端くれとして、思うところを五点に絞って申し上げさせていただきたいと
思います。舌足らずな点、失礼な点がありましたら、どうか御容赦いただきたいと
思います。
お手元の簡単なレジュメに沿って申し上げさせていただきたいと
思います。
まず、第一点でございますけれども、現在、地方創生、先ほど知事からもお話がございましたけれども、地方創生が非常に大きな関心といいますか、課題になっております。
私ごとで恐縮ですけれども、以前、アジアの若い官僚たちに教えていたことがありました。彼ら、彼女たちが
日本に来て何を一番学びたいかといいましたら、それは、どうやってこれだけ経済発展しながら均衡ある国土をつくり上げたのか、そこが彼らの一番の関心事であったわけです。
しかし、平均的な地方都市を見ますと、残念ながら、今、それが大きく崩壊するんじゃないか、そういう兆しが見えてなりません。来年度予算案を拝見しますと、地方創生関連、まち・ひと・しごと創生事業、補正も合わせまして一兆円超充当されております。厳しい財政ではありますけれども、果たしてこの一兆円で足りるのかどうか、もう少し効果的な使われ方を検討されてはどうか。失礼な言い方ですけれども、今回は何か急ごしらえの地方創生関連予算だったような気もしますので、次年度以降、よくよく検証しながら、真に効果的なものに
思い切って使っていっていただきたいなと
思います。
また、これも大変失礼なことではございますけれども、今回の地方創生、非常にうがった見方かもしれませんけれども、どうも、アベノミクスの地方への浸透、こういう経済政策の側面が非常に強くあるような気がしてなりません。
これはもちろんこれで非常に大事なことですけれども、本当の意味での地方創生あるいは地域創生、均衡ある国土の発展、そのためにはやはり、理念、哲学、そういうものが必要だと
思いますが、残念ながら、この今回の地方創生、そういうものが読み取れないような気がいたします。
かつて
大平総理は、御案内のように、田園都市構想という立派な構想、非常に奥の深い構想をつくり上げられました。もう既に三十年ぐらい前のお話ですけれども、まだまだあそこから学ぶことがたくさんあるような気がいたします。その中身についてはここでは申し上げませんが、そうした何か哲学、そういうものが必要なんだろうと
思います。
ただ、理念や哲学が必要とはいいましても、やはり時間がありません。当面は地方から都市への人口流出を早期に食いとめなければいけませんし、そのためには、中核的な都市の充実、増田レポートにもあります、いわゆる人口ダム機能を強化する、そういうことが必要なんだろうと
思います。
この金沢市、隣の福井市、あるいは富山市、それぞれの市長さんは一生懸命頑張ってこうした機能を発揮しようとしておりますので、どうか特段の御
支援をお願い申し上げたいと
思います。
第二点目は、地方分権の推進についてであります。
先ほどもいろいろお話がございましたけれども、地方分権推進法が制定されましてことしでちょうど二十年目に当たります。もちろんこれまで進展はございましたけれども、当初、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革と言われました。ただ、それほど大きな改革になっていないような気がいたします。
さらに、残念ながら、現在、地方分権ですとかあるいは分権改革に関します議論がどうも滞っているような気がいたしますので、いま一度、国と都道府県、さらには市町村の明確な役割分担、できるだけ、市町村中心の原則に基づきまして、事務権限の
思い切った移譲、そういうものを図っていただきたいなと
思います。
とりわけ、中核市の事務権限強化と、さらには、これは谷本知事にお叱りを受けるかもしれませんが、若干席が離れておりますので
思い切って申し上げますけれども、都道府県機能の純化と強化、非常に、余計なこともたくさんされている場合があると
思いますので、純化と強化、そういうものが必要なのではないかと
思います。
さらには、これは短期的には難しいかもしれませんが、中期的には、道州と基礎的自治体、さらには地域コミュニティー、こういう三層制が本来の
日本の国のあり方としていいのではないか。こうした三層制、そういう環境整備も図っていただきたいと
思います。
第三点目は、地域間格差についてであります。
確かに、東京を中心とします大都市と地方との格差、この問題はありますけれども、私は、地域間の格差の方が今日大きいのではないかと思っております。
本日、
委員の先生方、ここ金沢にお越しくださいましたけれども、この北陸にいる者としまして、金沢は、この場ではなかなか申し上げにくいんですが、決して平均的な地方都市ではありません。多様な産業がありますし、年間八百万人以上の観光客、さらには、先ほど谷本知事さんがおっしゃいましたように、来週には新幹線も着きます。学生も非常に多い町です。そういう意味では、この金沢市、あるいは隣接します野々市市、白山市、そういうところは人口がふえていっております。
逆に、先ほどこれも知事さんからお話がありましたけれども、こうした中核的な都市から遠い、例えばここでしたら能登半島の輪島市、ここから百キロぐらいですが車で二時間ぐらい、そういうところに行きますと、どんどんどんどん人口が減っていっています。輪島市は、今人口三万人ぐらいですけれども、毎年二%、五年間で一割の割合で人口が減っていっております。
今回、地方創生事業の一環としまして、本社機能の地方移転を促す税制、こういうものも導入されようとしておりますけれども、私、こういうことはぜひもっともっと推し進めていっていただきたいと
思います。
隣県の富山県のことで恐縮ですけれども、富山県の黒部市、もともと発祥ということもありまして、そこにYKK、世界のファスナーで、御存じない方がいらっしゃらないと
思いますが、YKKがこの地方移転の第一号で名乗りを上げました。そういうビッグネームといいますか知名度の高い会社が、地方、そしてそれも余り大きくない都市に本社機能を移転してくれる、そういうことは大きな勇気にもなります。
ただ、願わくば、これは欲かもしれませんけれども、地方にただ単に移転するのではなくて、できるだけ小規模の自治体への移転にインセンティブが働くように、そういうところだったらもう少し法人税を減免するとか、そういう工夫もあったらいいなと思っております。
また、先ほど申し上げました、中核的な都市の人口ダム機能を強化しなければいけないわけなんですが、間髪入れずに第二弾としまして、例えば近隣自治体と一生懸命広域的な取り組みをしている小規模自治体、そういうところへの特段の御配慮もお願いを申し上げたいと
思います。
そういうところでは、例えば農林水産業ですとか製造業、あるいは伝統芸能、そういうところで一生懸命汗をかいて、歯を食いしばって頑張っている、いわば
日本の足腰でございますので、例えば、自然の番人ですとか里山の番人、ふるさとの番人として、誇りですとかそういう御
支援を与えていただきたいなというふうに思っております。
第四点目は、これまで申し上げましたこととも関連しますけれども、若者の機会格差、若者にとっての機会格差あるいは希望格差について申し上げさせていただきたいと
思います。もちろん、少子化、いわゆる自然減の問題は確かにありますけれども、地方にとりましては社会減、こちらの方が大きな問題になっております。
先ほど申し上げましたように、この金沢市を中心とします石川県、これはもちろん谷本知事さんの政策が大成功してきたからであるんですけれども、非常に多くの学生がいます。石川県の人口は約百十五万ぐらいですけれども、ここに大学や短大、高等教育機関が二十もあります。人口十万人当たりの学校数は京都に次いで二番目に多くなっておりますし、人口千人当たりの学生の数は京都、東京に次いで全国三位、大阪や愛知よりも多くなっております。さらに、その六割の学生が富山県ですとか福井県、そういう県外出身者になっております。
もちろん、卒業してから石川県から出ていく方もいらっしゃいますけれども、そういう意味では、石川県、今までの御
努力もあるんでしょうけれども、非常に恵まれた地域になっております。今回の予算、新たな奨学金制度、つまり、奨学金を活用した大学生などの地方定着の促進、そういうものを図るという奨学金、私はこれは非常にありがたいことだと
思いますし、よりこうした奨学金を充実させていっていただきたいと
思います。
ただ、先ほど、企業の本社機能の移転、それに対する優遇ということを申し上げましたけれども、できれば、例えば、大学などの高等教育研究機関の地方移転、あるいは附属機関の地方設立、そういうものにも優遇措置を講じていただきたいと
思います。
これもまた隣の県の話で申しわけないんですけれども、富山県に近畿大学水産研究所の実験場があります。そこが地域の漁協と
協力しまして、クロマグロ、あるいはトラフグ、アナゴの開発、そういうものに一生懸命取り組んでおりまして、今日では銀座の方にいろいろそういう魚を出しているということもあります。
そうした研究所、大学の地方移転によって、いろいろな新しいビジネスチャンス、あるいは若者にとっての起業のチャンスが芽生えますので、ぜひそうした御
支援もお願い申し上げたいと
思います。
最後に、五点目としまして、これは大変生意気な言い方ですけれども、地方に住んでおりますと、もちろん行政に携わっていらっしゃる方々はよくおわかりなんですけれども、希薄な危機感、あるいは、これはよく防災のときに使われる言葉ですが、正常化の偏見、大丈夫だろうとか大丈夫であってほしいというのが当たり前の見方になってしまう、そうしたある種の感覚の麻痺というものが、人口減少に関しましても財政に関しましても非常に強く感じられます。
もちろん、きのうときょう、きょうとあしたで何が変わるのかといいましても何も変わりませんけれども、しかし、こうした感覚が、なかなか危機感を持っていないということは非常に大きな問題なんだろうと
思います。
その最大の理由の一つ、先ほどから交付税の充実の話、いろいろな方がおっしゃいましたけれども、私は逆に、この交付税によって負担と受益の関係が非常に不明瞭になっているんだろうと
思います。もちろん、私なりにこの交付税の財政調整機能の
重要性についてはよく理解しているつもりですけれども、中期的、近い将来、できればこの地方交付税を抜本的に見直して、消費税を全額地方の税財源にする、そういうことが必要になるんだろうと
思います。自分たちのお金を自分たちで決めるという発想になりましたら、これは行革にも大いに資することになるんだろうと
思います。
また、これも申し上げるまでもありませんけれども、国と地方を通じまして一千兆円を超す借金がございます。今後、社会保障費などなどでもっともっと支出が必要になるわけです。これも、全てではないでしょうけれども、私の周りでは、何とかなるだろうとか大丈夫だろうとか、そういう妙な楽観主義というものがあります、まさに正常化の偏見であるわけなんですが。国も地方も心底大変なんだ、子や孫たちのために切り詰めなければいけない、そういう
思いをもっともっと先生方には国民に伝えていただきたいなと
思います。
この場で申し上げるのがふさわしいかどうかわかりませんけれども、そういう意味でも、議員定数の削減ですとか議員歳費の
思い切った削減、そういう身を切る改革に取り組んでいただきたいと
思います。
いささか早口になり、また相矛盾することも申し上げたかもしれませんが、いただいたお時間が参りましたので、一旦これで
意見陳述を終わらせていただきたいと
思います。
ありがとうございました。