○鷲尾英一郎君
民主党の鷲尾英一郎です。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
政府提出、
所得税法等の一部を改正する
法律案に
反対、
民主党提出、
格差是正及び
経済成長のために講ずべき税制上の
措置等に関する
法律案に
賛成の
立場から
討論を行います。(
拍手)
我が国は、少子
高齢化、巨額の
財政赤字という超難問を抱えています。この難問を解決するには、与野党の垣根を越え、国家
国民のために知恵を結集しなければならない、何としても持続可能な
社会保障制度の確立とそれを支える
財源を確保する
社会保障と税の一体
改革をなし遂げなければならないという共通の認識があり、その共通の認識こそが、過去行われた三党協議を支えてきたのだと理解しています。
しかし、このような共通の認識、思いは、安倍
総理により踏みにじられました。
消費増税に先立ち議員定数の
削減を行うという公党間の約束をほごにし、
消費税率引き上げの延期について三党協議の場に
報告することもなく、衆議院を解散、総
選挙を実施いたしました。
そもそも、
消費税率引き上げの延期は、
国民にとってみたら甘い言葉に映るでありましょう。それ以上に、
政治の側には、
選挙を前にして、
増税先送りが強い誘惑となるのは当然であります。だからこそ、国家の重大な利害も顧みずに、ただ人気取りと
選挙の上首尾だけを願う行動は、歴史の前に深く非難すべきものと見なければならないのであります。
国民は、かつてないほど、
国民負担の増大に理解を示しております。少子
高齢化と国家
財政の問題は人口に膾炙し、常識的に考えれば、
国民の理解を全く得られないような
状況ではありません。
しかし、先行きの期待感ばかりで景気の
実感が伴わず、悪い物価
上昇により
実質賃金は低下し、名前を変えた旧来型の
財政政策が繰り返される一方、海外の情勢頼みの為替安、株高だけが突出する
状況は、
国民にとって困惑と期待のないまぜでしかありません。
事実、
アベノミクスがもたらした昨年のGDPは
実質年率でマイナスとなったことを考えれば、
増税先送りもやむなしという空気になります。加えて、
財政の必要以上の膨張は、
増税分が
社会保障目的で使われているかどうかという根本的な問題に
国民の疑念が及んでいます。
国民の抱く先行きの不安は、株高という一時的な現象のみで決して打ち消すことはできません。総
選挙で圧勝した多数の与党の上にあぐらをかき、みずからの失政に見て見ぬふりをする、あるいは不都合な真実に目をつぶろうとする安倍
総理の態度は、至極残念であります。
以下、本
法律案に
反対する
理由を具体的に述べます。
第一に、
消費税引き上げの際の景気判断条項を削除することです。
安倍
総理は、
消費税率引き上げを確実に実施するための
経済状況をつくり出す
決意だと答弁されましたが、
政権発足後、既に二年がたっております。日銀の事実上の
財政ファイナンスと大
規模な
財政出動によってでも
経済状況の好転が弱々しいことを踏まえれば、景気判断条項は必須であります。
あるいは、みずからがそうであったように、景気判断条項のみでは
選挙を考える
政治の側が
増税を先送りする誘惑に負けてしまうがゆえに、あえて法律に規定する意味なのかもしれません。しかし、それと
経済は生き物であるという
現実とは全く
関係ありません。
第二に、
成長戦略に反する法人実効税率引き下げであります。
国際競争力、
財政健全化などの
観点から、適切な代替
財源を確保できるのであれば、法人実効税率は引き下げるべきと考えます。
しかし、今回の改正には、不適切な代替
財源が含まれています。研究開発税制の圧縮や受取配当の益金不算入割合の縮小は、国内産業の
成長に悪
影響を与えます。
最もマイナスなのは、
外形標準課税の付加価値割に対する税率
引き上げであります。付加価値割の大半は賃金であり、付加価値割の税率を重くするということは、すなわち、
雇用を抱えた
企業への
増税を意味します。
企業の収益増を賃金
上昇につなげる
経済の好循環という、
政権の掲げる目標と矛盾いたします。
第三に、逆進性対策の問題です。
所得の少ない
家計ほど
消費税負担率が高くなるという逆進性について、今回の法案でも方向性すら示されておりません。
複数税率では、高額
所得者の負担
軽減額が大きくなるばかりか、食料品を対象とするだけでも、三兆円もの
財源が必要となります。対象品目の選定は利権化し、
事業者の事務負担が大幅にふえるといった問題もあります。
必要な世帯にだけ
消費税の負担を払い戻す給付つき税額控除の方が逆進性対策としてすぐれているということは、多くの専門家が指摘するところであります。
我が党は、抜本
改革法七条の規定に基づき、給付つき税額控除について
政府の検討資料を請求いたしました。出てきた資料は、昨年六月の
政府税制
調査会の議事録だけであります。そこにおいて、給付つき税額控除は逆進性対策として有効との指摘があります。法律にのっとり、給付つき税額控除についてもより深く検討を行うことが
政府の責任です。
第四に、自動車
関係諸税の問題です。
自動車は、特に
地方において生活の足です。しかし、自動車取得税は、
消費税導入時には整理されず、二重課税が放置されてきました。同様に、自動車重量税の当分の間税率も、道路特定
財源の廃止に伴い、本来整理されるべきものでした。
我が党は、自動車取得税の廃止、自動車重量税の当分の間の特例税率の廃止など、車体課税の抜本見直しを求めてきましたが、今回の改正案は、抜本見直しを先送りし、軽自動車については、二十六年度税制改正の際に講じた措置のまま
増税するというものになっております。
第五に、
格差是正に対する視点が欠けていることであります。
機会の平等を損ねるほど大きな
格差は、不利な
状況に置かれている個人の
教育機会を奪い、技能開発を妨げるため、労働生産性の足を引っ張り、中長期的な
成長に悪
影響を及ぼすとOECDも指摘しています。
格差是正と
経済成長は、二律背反ではありません。そうした
観点からの検討が欠けています。
第六に、医療、介護等の控除対象外
消費税の問題についても、
国民に良質な医療を提供する
観点などから、早急に解決策の提示を求めてきましたが、いまだ案が示されていません。
以上のように、今回の法案は、大いなる矛盾と検討不足、問題先送りに満ちているため、
賛同しかねます。
そこで、我が党は、
消費税の
社会保障目的税化をより明確化し、景気判断条項を維持、議員定数
削減・行政
改革条項を追加する、
成長戦略に反する形での法人実効税率引き下げを中止する、
格差是正等のために逆進性対策を導入する、軽自動車税
増税を中止し、自動車取得税、自動車重量税の特例税率を廃止するといった内容の対案を
提出いたしました。
賢明な皆様におかれましては、ぜひ
民主党案に
賛同いただくようお願い申し上げて、私の
討論を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)