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中山参考人 おはようございます。奈良女子
大学の
中山です。
御承知のように、二〇一一年に奈良県の南部で紀伊半島大水害がありまして、そういったこともありまして、
大学は奈良市内なんですけれども、奈良県南部の
再生等々にもかかわっていますので、そういったことを念頭に置きながら
意見を述べさせていただきたいと思います。
皆様御承知のように、
地方創生を考えていく場合の大前提があると思います。その大前提は、私がとやかく言うまでもありませんけれども、
日本全体で大幅に
人口が減っていくということです。
人口が二十世紀のようにふえている時代の中で
地方をどうしていくのかという話ではなくて、二十世紀は先進国の中で
日本の
人口増加率は一番だったんですけれども、二十一世紀は、このままいきますと、先進国の中で減少率が一位になるかもしれない。そういう時代の中で
日本の
地方をどう
創生していくのか、それが今課せられた大きな課題ではないかなと思います。
また、これから国際競争が進んでいくと思いますけれども、国際競争というのは、
東京とか
大阪だけで進めているものでは決してないと思います。
日本の国際競争力が豊かなその根底には、
日本の各
地域の豊かな自然とか文化とか歴史、そういったものが積み重なって
日本のこの強い国際競争力を持ってきているわけで、そういった
地方をどう維持発展させていくのかということが、二十一世紀、
日本が国際競争の中で生き残っていく大きなやはり原動力になっていくのではないかなと思います。
そういったことを踏まえますと、
人口が大幅に減少していく中で
日本の各
地域をどう維持し発展させていくのか、それが
日本の
地方創生にとっては非常に重要な
ポイントではないかなと思います。
その上で、私、
専門が
都市計画なんですけれども、
都市計画とか
地方計画をやっている者から見て、
日本の
地方創生で何が重要かということなんですが、まず
一つは、ここでも
議論されていますように、
地方における雇用であると思います。特に、
地方の雇用で重要なのは、第一次
産業と社会保障ではないかなと思います。
第一次
産業で重要というふうにいいますと、よく一般的に出てくるのは、第一次
産業でどうブランド力を高めていくのか、もしくは高額な商品をどう開発していくのか、また、農産物で国際競争にどう勝っていくのか。そういったことの重要性というのは当然ですし、それを無視する気は全くありません。むしろ、
日本のそういうブランド力をどう高めていくのか、これは大切なことだと思います。
でも、多くの農産物というのは、ブランド力があるものとか高付加価値の農産物ばかりではなくて、私ども大
都市部に住んでいる者でも、毎日毎日ブランド力のある野菜を食べているわけでは決してなくて、普通の野菜とか米とか魚とか肉を食べているわけですね。
ところが、今の
日本の農林漁業の中で困ったことは、普通に野菜をつくる、普通に肉をつくる、普通に鳥を飼っている、そういった普通の農業をしていて、子供を安心して育てることがなかなか難しい。普通に農業をしている中で、子供を
大学にやって就職させていくことが難しい。そういった、普通の農業がなかなか成立しにくい、そういう状況が残念ながら広く発生してしまっているのではないかなと思います。
ヨーロッパに行きますと、先進国といえども、自給率は
日本よりも格段に高いです。でも、ヨーロッパの農業がすごい高付加価値でブランド力があって国際競争力があるかというと、必ずしもそうではなくて、普通に農業をされている方が普通に家族を養って、普通に子供を育てていける。
そういう農業の成立ということが
地方経済を支えていく上では決定的に重要なことで、もちろん、農産物のブランド力を高めていく、付加価値を強めていくということ自身は非常に重要なんですけれども、多くの農業を考える場合は、普通の農業で普通の暮らしができるような、そういう社会をどう築いていくのか、そこが非常に大きな
ポイントではないかなと思います。
もちろん、
地方創生という枠内では必ずしもありませんけれども、一方ではTPPの
議論も進んでいるかと思います。TPPとかが進んでいく中で、もちろんブランド力をつけていくというのは重要なんですけれども、多くの普通の農家がなかなか生産ができない、そういう状況と、ここで
議論されている
地方創生というのがきちっと両立し合えるかどうかというところは、今後もう少し慎重に考えるべきではないかな、そのように考えています。
また、私の
専門は
都市計画とか
地方計画ですけれども、
日本でも、一九六〇年代以降、国土
計画がずっと行われてきました。
政府・自民党がずっとされてきた国土
計画というのは、一九六〇年代の旧全総、新全総、三全総、四全総とずっと続いてきています。今も国土のグランドデザインということが進められています。
かつての
政府・自民党がされてきた国土
計画というのは、その当時の国土の持っている大きな問題点、それを国土
計画でどう改善していくのか、それが当時の
政府が進めてきた国土
計画であったんですね。この基本的な考え方というのは、国土の抱えている問題、もしくは今後、国土で深刻になるだろうという問題、具体的には過疎過密の問題なんですけれども、この過疎過密の問題を国土
計画でどう改善していくかというのが、かつて
政府・自民党が進めてこられた国土
計画であったと思います。
ところが、この間、国土
計画で検討されていること、また、きょうの法案にも出ていますけれども、この間、
連携中枢
都市圏そして定住自立圏、きょう出されてきているのは小さな拠点ですけれども、そういった小さな拠点というのも非常に考え方としては重要だと思います。
ただ、かつて
政府が進められてきた国土
計画と今進められている国土
計画の大きな違いがどこにあるかといいますと、かつては、先ほど言いましたように、国土で生じている問題をどう国土
計画で解決していくのか、それが非常に大きな考え方だったわけですね。ところが、今の国土
計画というのは、どちらかというと、全体で
人口が減っていく、全体で
人口が減っていく中で、
東京、
首都圏への一極
集中がある
程度今後も進むだろう、
人口が全体で減る中で、
首都圏全体の
人口も減るけれども、
人口の
集中度合いはむしろ三
大都市圏を
中心に高まっていくのではないか。
国土のグランドデザインの中で書かれているのは、全体で二四%の
人口が減っていく中で、
首都圏の
人口減少率が大体一八%、
地方圏に行きますと三〇%以上の
人口減少というのが見込まれています。そのもとで、
人口が大幅に減っていく
地方圏の中で人々の暮らしをどう成立させていくのか、それが今の国土
計画の大きな柱になっているのではないかなと思います。
かつての国土
計画というのは、国土のひずみというのを国土
計画でどう改善していくかというような、そういう
計画論になっていたんですけれども、この間の国土
計画というのは、むしろ、全体として
人口が減っていく中で
首都圏の
人口は集積度合いを高めていく、その中で
地方は大幅な
人口減少が避けられないけれども、そこで人々が暮らしていくためにはどうすればいいのか、そういう
計画になってしまっているのではないかなと思います。
むしろ、我々
計画をやっている者から見ますと、国土のこういう大きなひずみ、それを解決していく
一つの展望を示すのが国土
計画であるわけで、残念ながら、そういう国土
計画ではなく、どちらかというと
人口の偏在を前提にした国土
計画を立ててしまいますと、そういう国土
計画とここで
皆さん方が
議論されている
地方創生が両立し得るのかどうかというところはもうちょっと慎重に考える余地があるのではないかな、そんなように思います。
最後ですけれども、
地方創生というのは、もちろん、
地方が
中心になってやっていくものだと思います。でも、先ほどから申しますように、安定した農業ができるとか
地方全体の
人口減少をある
程度食いとめていく、そういった大きな基盤の中で
地方が各地の主体性を生かして
創意工夫を生かせるような、そういう
取り組みを進めていくのであれば、僕は
地方創生は非常にすぐれたものになっていくと思います。
ところが、一方で、なかなか普通の農業が成り立ちにくい、むしろ三
大都市圏、
首都圏の集積度合いが高まりそうである、そういうもとで
地方が自己責任でやりなさいというような
地方創生であれば、それは
地方にとってはかなり厳しい
地方創生になってしまうのではないかなと思います。
むしろ、基盤を
政府がきっちりつくる、その基盤のもとで
地方が
自主性を生かした
創意工夫ができるように、そういった
地方創生というものをぜひ今後御検討いただけたらと思います。
以上です。(
拍手)