○
菊池参考人 御
紹介いただきました
菊池でございます。
本日は、このような機会をいただきましたこと、関係者の
皆様方に心より御礼申し上げたいと思います。
私は、先ほど御
発言された方のように流暢にしゃべることはなかなか苦手なもので、人前に立つのはなかなか好まない
たちでございまして、いろいろとお聞き苦しいところがあるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
私、
法人の
理事長の
立場ではございますけれ
ども、
大阪府
社会福祉協議会経営者部会の
社会貢献
事業の
推進委員会の
委員長の
立場で、きょうは御
発言をさせていただきたいと思っております。
本日は、幾つか申し上げたいことがございますが、まず初めに、先ほどからお話が出ております
地域公益
事業の義務化について、これまでの現実的なことを踏まえて申し上げたいというふうに思っております。
そして、先生方には釈迦に説法のようなお話も中には含まれておるかと思いますし、失礼な部分も一部
発言の中にあるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
このたびの法案において、
地域公益
事業義務化について盛り込まれております。この義務化について、いささかの憤りを感じております。
誤解のないように申し上げますが、やらないということではございません。これまでもやってきたのではないかということであります。
御承知のように、
我が国の
社会福祉は、戦後の歴史の中で、
立場によって捉え方はさまざまであると思いますが、十分ではない部分も多々ございますけれ
ども、
一定、成熟した仕組みを構築されてきたものと思っております。
しかし、
制度が成熟するにつれて、大変窮屈なものになり、そのひずみも多々見られるようになりましたし、実感してまいりました。その
一つが、さまざまな制約、規制でございました。公金で賄われておりますこと、また、公の
制度であるため、規制そのものが悪いと申し上げるつもりはございません。規制の
あり方、
内容の問題であると感じております。
細かいことを申し上げる時間はございませんけれ
ども、私
どもはこれまで国や地方の
制度に基づく
事業を行ってきたわけですが、
制度の枠組みの中だけではどうしても対応し切れないさまざまな問題が起こってまいります。その目の前の課題は全て人の
生活にかかわるものであるわけですから、放置するわけにはまいりません。かといって、それを支える
制度がないからそのような事態が起こるわけです。
誰が手を差し伸べるか、それは我々の使命として受けとめてまいりました。しかし、
行政指導、監査等のもとで
指摘の対象になったのも、これは事実でございます。それは、その担当者が悪い、そういうことではなくて、
制度のルールに反する、ルールそのものにあったというふうに思われます。要するに、どんなすばらしい
制度をつくっても、そのすき間が生まれてしまうということでございます。そのような制約のため、その結果として、さまざまな思いを持ちながら、
取り組みを自重せざるを得なかった我々の仲間がたくさんいらっしゃいます。
このような過去のさまざまな状況を振り返りますと、失礼を承知で申し上げますが、手のひらを返したようにいきなり義務化ということについては、憤りを覚えるものであります。
先ほど
全国経営協の磯
会長の方からのお話がございましたけれ
ども、今回の
改革の
議論のプロセスにおいて、
社会の声としてもマスコミの
報道等においても、
社会福祉法人は
本業以外の
取り組みがいま
一つであるとか消極的であるとか、それから、
社会福祉法人の役割を果たしていない、使命が全うできていないかのような御
意見や
報道も多々ございましたので、その
誤解の一部を解くためにも、あえて申し上げる次第です。
この
地域公益
事業の件に関して、今回の
議論の流れは、ある
意味、私
どもが以前から長年の願いとして国の方にお願いをしていたわけですので、その願いがかなったわけでありまして大変喜ばしいことではありますけれ
ども、残念なことに、近年の
社会福祉法人に対するバッシングとも言える状況への答えとして実現したことについては、大変残念に思う次第です。
しかし、多くの
法人は、このような状況の中でも、それぞれの身の丈に合った、
地域ニーズに合った
活動を、目の前にあるさまざまな問題の解決のために大
なり小なり取り組んでまいりました。しかし、それは当たり前の
認識のもとでやってきたために、
社会的に特別に発信することもなく今日に至っているのが実態であります。その
サービスを利用される
方々も同じ
認識にあったと思われます。
社会に対するアピールが欠落していたことについて、改めて反省するとともに、悔やまれてなりません。
また、個別の
法人の
取り組みとは別に、
地域のネットワークのもとでの展開や、
法人間のネットワークによる展開も行ってまいりました。
本日は、その
一つであります
大阪の
社会貢献
事業について、その状況を報告させていただきたいと思います。
準備しております資料にお目通しをいただきたいと思います。
社会貢献という言葉にはいささかの抵抗がございます。と申しますのは、
社会福祉法人だから当たり前でしょうという思いがあるからであります。しかし、ある
意味、
本業との区別においてわかりやすいことから、この表現に至っております。
大阪では、これまで、老人施設部会の
生活レスキュー事業、
保育部会のスマイルサポーター
事業の
取り組みをしてまいりました。この二十七年度からは、
障害施設や養護施設等全ての
社会福祉施設がかかわって、
社会福祉法人を軸とした
大阪しあわせネットワークの愛称のもと、
生活困窮者自立
支援法の
取り組みも含めて
事業を展開することになりました。
それでは、その
事業の
内容について御
紹介を申し上げたいと思います。
資料をめくっていただいて四ページ目に、「
社会福祉法人の強みを活かしたワンストップの総合
生活相談」というのがございますので、そこをお開きいただきたいと思います。
これはイメージ図でございますけれ
ども、この
事業を始めるきっかけになった、当時の老人施設部会部
会長の三上了道氏の思いを少し申し述べたいと思います。ちょっと読み上げさせていただきます。
戦前、国の
制度が十分整備されていない中、
社会事業家と呼ばれる
人々は、
地域の
福祉課題を解決するため、
社会福祉施設、
社会福祉法人をつくり、先駆的に取り組んできた。
社会福祉法人の
存在感を改めて示すためには、
社会福祉施設
経営、
介護保険
事業経営だけでなく、
社会福祉法人が有する施設機能、専門性やノウハウを生かして
地域の
福祉課題に積極的に
取り組み、他の
経営主体との違いを明確に示す必要がある。今改めて
社会福祉法人制度の創設の理念に立ち返り、
社会福祉法人として
社会の期待に応えるため、
公益性のある
事業をみずから開拓して展開させるところに
社会福祉法人の使命があると言わねばならない。
この
事業を始めるに当たって、このようなコメントを表明しております。
これは実は、きっかけになりましたのは、公的
介護保険の導入の時期でございまして、いろいろな参入主体がかかわってくる中でこのような考えに至ったということでございますし、それまでもそういった思いを持ちながら
事業を展開してきたということでもございます。
この
生活レスキュー事業、少し細かい字で大変恐縮でございますけれ
ども、ごらんいただきたいと思います。
社会福祉法人、府内の千五百施設が、今後のオール
大阪の
取り組みとしては、それだけの施設がかかわる予定でおります。真ん中に
大阪府
社会福祉協議会がございまして、その千五百の施設が、右端にあります
生活困窮家庭、そこに対して
支援を送るというものでございます。これは、各関係施設が
資金を拠出して、その
資金を貢献基金
委員会の方で管理して、必要に応じて給付をしていくというものでございます。
下の枠の中、左の点線のところに書いてありますが、「
生活困窮者に寄り添い、
制度の狭間を埋め、既存の
制度につなぐ」。これは、実績として平成十六年から二十五年度まで。
一つ目、対象者に寄り添う総合
生活相談、既存
制度へのつなぎ、自立
支援、三万件以上。緊急的な経済援助、これが五千二百二十二世帯以上。
地域住民から寄附物品等をいただいてそれを困窮家庭に回していく、これが二千件以上ということでございます。
右の方ですが、幅広い年齢層、十代から八十歳代の失業、DV、精神
障害などさまざまな
生活困窮を
支援、
社会福祉法人の資源、専門性を活用した
支援を展開、孤立防止のための
地域の居場所、よりどころの提供、自立に向けた就労訓練、資格取得
支援など、総合的な
取り組みを行っております。
次のページでございますけれ
ども、ここで少し注目をしていただきたいのは、棒グラフの一番下のところ、これは
行政でございます。ちょっと白黒になっておりますので見えにくいかもわかりませんが、一番下のところは、
行政から
紹介された事例でございます。それが大体五〇%に及んでいる。
それはどういうことかと申しますと、先ほど申し上げましたように、
制度そのものが万能ではない、そのはざまにあるさまざまな課題が山積しておる、非常に多岐多様にわたっておるということでございます。それに対して応えているということでございます。
ちょっと時間のかげんで次に移りたいと思いますが、
保育部会の方では、スマイルサポーター
事業というのに取り組んでまいりました。
これは、きっかけとなりましたのは、一九七〇年代から八〇年代にかけて、ベビーホテルでの
子供の死亡事故等、悲惨な事故がございました。そういったときに、現在、
大阪府
社会福祉協議会経営者部会の高岡
会長が、
保育園はこのままではだめだ、何とかしなきゃということで、一万人の女性の育児に関する意識
調査というのを
実施いたしました。これは戸別配布をして戸別回収をするということで、回収率が八〇・九七%という、非常に高い、まれな回収率でございました。
その結果で得たものをもとに取り組んだのが、最初には育児
相談事業でございました。それが、電話の育児相談から始めて、それぞれ個別の
保育園で
実施することになって、それを平成十九年からスマイルサポーター
事業に転換していった。
要するに、それはなぜかと申し上げますと、育児相談で始めた中で、その資料の中にもあるかと思いますけれ
ども、府内六百五十の会員
保育園等の八〇%以上に配置をしております。千五百六十六人を現在スマイルサポーターで認定しておりますが、その次が問題でございまして、平成二十五年度の相談実績では年間五万四千件の相談。これは年度によって大きく違いがあります。八万件くらいを数えた年度もございました。約一〇%が、
保育、子育て以外、就労とか虐待問題、いろいろ家庭問題、経済問題になってきた。要するに、育児相談で始めたものが総合
生活相談の役割を担うようになってきたということでございます。
そういった
取り組みをしてまいりました。
そして、最初の資料に戻っていただきたいんですが、今年度からは、先ほどから申し上げますように、オール
大阪の
取り組みとしてやっていきましょうということで、このパンフレットに書いてありますように、これを総合的にあわせていってみんなで取り組んでいきましょう、そうすることによって、それぞれの持ち味を生かして、さらに手厚い援助ができるようにしていきましょうというのがオール
大阪の
取り組みでございます。これはまた後ほどごらんいただければというふうに思います。
先ほどから磯
会長の方からお話もございましたけれ
ども、現在、この
取り組みが非常に
全国的に広がってきておりまして、東京都、神奈川県、埼玉県、滋賀県、京都府、兵庫県、香川県、宮崎県、熊本県、大分県等でその
取り組みが始まっております。さらに、それに追随して他府県でも
取り組みが始まろうとしております。
個別の
法人においてそのような
取り組みをしたことと、
社会福祉法人の使命に基づいてこれまでもさまざまな
取り組みを行ってまいりましたが、連携してより大きな規模の
組織にすることで、より幅の広い、きめの細かい対応ができるようになったということでございます。
次に申し上げたいことは、先ほど
全国経営協の磯
会長の
発言がありましたが、私も
社会福祉法人経営者協議会の会員の一人でございます。会員の一人として、
社会福祉法人にかかわる者の一人として、磯
会長の
発言内容の全てにおいて思いは同じでありますことをお伝え申し上げたいと思います。
その中で、改めて特に申し上げたいことがございます。
これも先ほどからお話が出ていることと重なりますが、どのようなすばらしい
制度を構築しても、
制度は万能ではないと私は思っております。その
制度の満たされない部分を柔軟に対応するのが
社会福祉法人の使命であると
認識しております。
慈善
事業、
社会事業、
社会福祉事業と、歴史をひもといてみますと、
社会福祉の先達の
方々が、さまざまな
社会状況の中で
生活に困難を来している
方々に対する人への思い、その問題の感知力とか解決手法を生み出す創造力、そして解決に向けた行動力をもって、
実践し、その成果によってさまざまな新たな
制度が構築されてきたことを
認識しておりますし、また歴史の流れの中で感じ取ること、確認することができます。
今後の
福祉をより効果的なものにするために、
社会福祉法人の自主性、主体性、
自立性が欠けてはなりません。これまで以上にこの点を尊重していただき、これを損なうことのないよう、この件に関して強くお願い申し上げます。
最後になりますが、
福祉の心とは何かとの問いに、人を思いやる気持ちと答えた尊敬する知人がおります。
この年になって青臭いことを申し上げるようで恐縮ですけれ
ども、私
どもは、単に施設
経営を行うことで終始するものではございません。そこには、相手に対する人としての心からの思いがなければなりませんし、その人が幸せを感じる状況に向けた
取り組みがなければ、本当の
意味での
福祉事業とは言えないと思っております。
一〇〇%とは申しませんが、そのような思いを持った
方々が自分の財産を寄附することで
社会福祉法人を設立し、今日に至っております。家族
経営についても批判されているようでありますが、古い話になりますが、過去には、家族全員の犠牲や奉仕、献身的な労働によって
事業を支えてきた時代、実態もあるわけですが、まことに残念なことですが、既にこのような過去の事実、実態は忘れ去られようとしていることが残念でなりません。
今回の
社会福祉法人制度改革については前向きに捉えておりますが、今後の御審議の中で、このような見えざる事実についても御考慮いただければと願っております。
本当に
最後になりますが、仏をつくって魂入れずの言葉がございます。
社会福祉制度は、
制度はいわば仏であり、魂はその運用と
実践であると考えております。これまで、運用をうまくできなかったことによって、その
制度が十分に生かされないことがたくさんございました。したがいまして、
制度の運用は
行政の役割であり、
実践は私
どもの役割であると自覚しております。
制度が生きるか死ぬかは運用と
実践によって決まるものだと信じております。
今後とも、引き続き、人を思いやる気持ちを基本に、今後の
福祉制度に魂を入れる仕事の一翼を担ってまいりますとともに、そのはざまにあるさまざまな
生活課題にこれまで以上に積極的に取り組んでまいりたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)