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柿沢委員 ありがとうございました。
この待機児童という定義なんですが、今回、我が党所属の地方議員である田中朝子東京都議
会議員と小田理恵子川崎市議
会議員、そして嘉悦大学の和泉徹彦准教授が、「待機児童解消に向けた施策
要望とその背景」という
調査報告書及び提言書をつくりました。
全国の政令指定都市や東京二十三区における保育園の入所申請の状況を
一つ一つ丹念に調べて、それぞれの待機児童の実情を正確に把握して、その上で、潜在的ニーズを含めた保育需要を満たすための地方自治体の施策に対する国の支援の拡充を求める、こういう内容になっております。
待機児童といいますと、これは普通に聞くと、入所申込数があって、実際に入所できた
子供の数があって、それを引き算すれば待機児童、こういう計算だと誰もが思いますが、実はそうなっていないわけです。
親が職探し中で実際には就職をしていないという場合、あるいは入園できなくても親が育児休業を延長して
対応できる場合、こういうのは待機児童から今の定義では除外をされているわけですね。それと、一園のみに希望を出しているというのも、これは一園のみでほかはいいですということだから、えり好みしているというか、
自分の勝手でしょうということなんでしょうか、これも待機児童としてはカウントをされないということになっています。ただ、これらも、保育園の入所申請を出して入れていないわけですから、れっきとした待機児童に間違いないのではないかと思うんです。自治体から、入れていませんと言われて、宙に浮いちゃっている状況でありますので。
これを簡単な図にしたのが、一枚目の資料であります。ごらんをいただければと思います。
申請者がいて、入所決定すればいいわけですが、入所保留になって、今度、自治体の独自施策、横浜の保育室みたいなものですね、東京でいえば認証保育所というのがありますが、こういうのに
対応して入所できた人、サービスを利用できるようになった人は待機児童から外れる。そこにも入れなかった方が待機児童となるわけです。
この下の「求職中、育児休業延長、一園のみ希望等」、これが待機児童の中から除外をされて、数に入っていないわけですね。これをいわば隠れ待機児童、こういうふうに定義をすると、この隠れ待機児童というのが一体どのぐらいいるのか、これが、先ほど申し上げた、嘉悦大学の和泉准教授、そして田中都議
会議員、小田市議
会議員が調べたテーマなわけです。
問題意識を持った自治体議員の
調査として、私、よい仕事をしたなというふうに思っています。
調べてみると、二枚目の資料なんですけれ
ども、非常に興味深いデータが出てきました。
平成二十六年四月の時点での
全国の政令指定都市の待機児童数、公称数字で見ますと、左側の数字のようになっています。最も多いのは仙台市五百七十人、次いで広島市四百四十七人、札幌市三百二十三人、こんなことになっています。
一方、千葉、新潟、名古屋、京都、岡山、北九州、福岡、この七市が待機児童ゼロと言っていて、横浜市は、ゼロから少し待機児童がことしは出たんですけれ
ども、しかし、人数を見ると二十人、大変少ない人数になっています。先ほど
塩崎大臣が政令指定都市の七市で待機児童がゼロになったというのは、この数字を引用されてのことであると思います。
ところが、先ほどの一枚目を見ていただくと、入所申込数から、認可園や、あるいは横浜保育室みたいな独自施策、こういうのを含めて入所できた人数を引いた人数と、公称されているこの待機児童数というのは違うんですよね。
これを比べてみると、何と、右のような隠れ待機児童数が発見をされてくるわけです。
その数を見ますと、右側の方ですけれ
ども、大阪市が最も多くて千三百九十四人になります。そして、何と、第二位が横浜市で千二百二十四人。次に川崎市千八人ということで、千人以上の数がここに出てくる。さらに、待機児童ゼロと称している京都市で八百二十六人、名古屋で七百三十三人、福岡で六百六十人、岡山で六百二人、北九州四百七十九人、千葉二百十五人、新潟二十四人、こういうことになっています。
注目すべきはこの矢印でして、要するに、公称データでは待機児童がゼロまたは少ないと表向き言っている都市ほど、隠れ待機児童数ではワーストランキングの上位に上がってくるんですね。これは何を
意味しているのかと思います。
もともと、この隠れ待機児童というのを生み出すような待機児童の定義というのは、小泉
内閣で待機児童ゼロ作戦というものが始まった後の二〇〇三年に、
厚生労働省から示されたものです。それまでは、単純に入所申請数から入所できた数というのを引き算して出てきた人数を待機児童と
一般に称していた。二〇〇三年以降、こういう形で、一部を除外した、いわば加工されたデータが待機児童として公表されるようになったんです。
要するに、待機児童ゼロというのが政治的な目標として大々的に掲げられていったので、にもかかわらずどんどんふえていますというわけにはちょっと、これは格好つかない、こういうことで、ある種、作為的なデータを出し始めたんじゃないかと私は疑いたくなります。
さらに、これは問題があって、隠れ待機児童数、つまり、入所申請数から認可園や自治体施策で何らかの保育サービスを受けられた児童数を引いた単純な待機児童数と、自治体の公表する数字、これがどれだけ乖離しているかというのをデータでそもそも出していない、出してくれないという自治体もあるんです。これは、調べた当事者は大変苦労したところのようで、知り合いの
地元議員に頼んだりもしたようですけれ
ども、時間の
関係もあって、全ての資料を完成させることができなかったと聞いています。
これは、政令指定都市といいつつ、これを見ていただければわかりますが、さいたま市や浜松市のデータはないんですね。こういうのが表からないのはそういう事情があるからなんです。ちなみに、私の
地元の江東区もどうやら
調査に対してきちんとデータを出さなかったようであります。
これでは、結局のところ、待機児童数の発表数というのは、このように、自治体のさじかげんでどうにでもなってしまいかねない、住民から見ても私たちから見ても本当の実情がわからない、こういうものになってしまっているのではないかと思うんです。
横浜市は、待機児童ゼロと大々的に報道された結果、あそこなら預かってもらえるんじゃないかというので、子育て世帯のファミリーの流入が増加したとも聞いています。そのつもりで引っ越したら、だめですと言われてしまったら、そのファミリーの人生設計も狂ってしまうと思うんですよ。
厚労省は、子
ども・子育て新
制度のスタートに当たって、四月から待機児童の統一された基準を定めました。待機児童とカウントするのかしないのかが自治体の裁量次第でばらばらだったのが、それに比べれば今回前進したと思います。
ただ、前進したんですけれ
ども、しかし、育休が延長できる場合とか、預けた上でこれから職探しをというような場合とか、こういうものは待機児童数からやはり除外ができる、こういうことになっているんですね。
私は、申し上げたいと思うんですけれ
ども、自治体のデータが整わない、しかも、それぞれの裁量によって、何か、どれが実態だかわからないような公表の仕方になっている、こういうことがないように、先ほど申し上げたように、保育施設、サービスの利用保留者のうち、産休・育休中とか、または職探し中とか、一園のみ希望しているとか、こういうものを除外しない隠れ待機児童数、こういうものをやはり同時に公表していった方がいいんじゃないかと思うんです。
これは単純な引き算で出てくるはずの数字ですから、公表することは何も難しいことではないと思います。ぜひ、この件について御答弁をいただければと思います。