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保岡座長 それでは、これより
議事に入ります。
まず、簡単にこれまでの本審査会の活動経過の概要を申し上げます。
本審査会は、
衆議院における
憲法論議を担う機関として設置されたものであり、
会長である私以下五十名の
委員から構成されております。
平成二十三年十月から本格的に活動を開始し、
平成十二年から約五年間にわたり設置されていた
憲法調査会における議論などのおさらいをした後、具体的な
調査に入りました。
本審査会は、
平成二十四年五月から約一年かけて、
日本国憲法の第一章から第十一章について各条章ごとに議論を行い、前文、さらには緊急事態と
憲法をめぐる諸問題など、
憲法の条文にないものの、特に重要と考えられたテーマについても精力的に
意見交換を行ってまいりました。
続いて、
憲法改正国民投票法制定当時に残された課題の解決にも取り組み、その改正法は昨年六月十三日に成立し、同月二十日に
施行されたところであります。
また、昨年十一月には盛岡市において第一回目の
地方公聴会を
開催し、国民の
皆様からの御
意見を聴取したほか、今後の
憲法審査会で議論すべきテーマについての議論を重ねております。
本日は、これらの経緯を踏まえて、「
改正国民投票法等の
施行を受けて、これからの
憲法審査会に望むこと」というテーマのもと、幅広い観点から、
意見陳述者の
皆様の忌憚のない御
意見を伺い、今後の活動の参考とさせていただきたいと考えております。
次に、
憲法改正手続の面に関して、国民の
皆様に
憲法改正手続のことを少しでも知っていただければという趣旨から、その概要、基本的な流れについて御説明したいと思います。
その際、
憲法審査会の活動の報告という意味で、昨年、
憲法審査会で審査の上、同年六月に成立、
施行された
憲法改正国民投票法の改正法の概要についても御説明させていただきたいと思います。
それでは、お手元にありますパンフレットの六ページと七ページにある
憲法改正国民投票法における手続の概要の図をごらんください。
憲法改正の手続全体を概観すると、左側の「ア
憲法改正の発議までの流れ」、すなわち、国
会議員または
憲法審査会が
憲法改正原案を提出し、国会での議論を経て国民に提案するまでの段階と、右側の「イ
憲法改正国民投票の流れ」、すなわち、国会の発議を受けて国民投票に至る段階という二つの段階に分かれます。
まず、前者の概要について御説明いたします。左側の六ページをごらんください。
国
会議員が
憲法改正原案を提出するには、提出者のほか、
衆議院では百人以上、参議院では五十人以上の賛成者が必要とされます。
他方、
憲法改正原案については、国民に開かれた形で、特に慎重かつ十分な審議が要請されます。この趣旨に鑑みれば、
日本国憲法の
調査を所管事項の筆頭に掲げている
憲法審査会において、事前に、改正の必要性があるかないか、あるとした場合には、その具体的な内容及び論点に関する
調査がなされ、衆参両院の意思の疎通を図りつつ、これらを踏まえて
憲法改正原案が立案され、
憲法審査会から提出されるというのが典型的な手続との認識が示されてきました。
憲法改正原案は、内容において関連する事項ごとに区分して発議するものとされています。これが個別発議の原則です。
憲法改正は、基本的に国家の基本ルールの変更ですから、これに当たっては民意を正確に反映させることが必要で、
平成十八年十一月三十日の
日本国憲法に関する
調査特別
委員会では、例えば、「第九条の改正と環境権の創設という全く別個の事項について、それを一括して国民投票に付するということは明らかに好ましくない」と答弁されています。このようにして、内容が異なる
憲法改正案は、それぞれ別個に国民投票にかけられることになります。
次に、このように提出された
憲法改正原案は、提出された議院の
憲法審査会で審査されます。
憲法審査会では、一般の法律案よりも慎重な手続で議論することが想定されており、その一つのあらわれが、国民の
意見を聞くための公聴会の
開催の義務づけです。また、一般の法律と違い、会期をまたいで議論する場合でも、特別の手続は必要ありません。これは、提出された
憲法改正原案が、その同じ国会の会期中に議決されることは想定されておらず、複数の会期にわたって継続して議論することが想定されているためです。
憲法審査会で可決されれば、
憲法改正原案は本
会議へ移され、そこで総議員の三分の二以上の賛成があれば、もう一方の議院、すなわち、仮に
衆議院が先に審査した場合は参議院に送られます。
もう一方の議院でも同様の審査が行われ、
憲法審査会の議論を経て、本
会議での総議員の三分の二以上の賛成を得て可決されれば、その可決をもって
憲法改正の国民への発議となります。
国会が
憲法改正案を発議し、国民に提案されると、その後は、
憲法改正国民投票の段階に移ります。資料の右側の七ページに、その概要が掲載されています。
まず、
憲法改正国民投票の期日を定めなければなりません。その期日は、
憲法改正の発議後速やかに国会の議決で定めるのですが、発議をした日から起算して六十日以後百八十日以内とされています。
投票権者については、より多くの国民が国民投票に参加できるようにという観点から、日本国民で満十八歳以上の者とされています。ただし、経過措置として、
平成三十年六月二十日までは二十歳以上の者となります。
憲法改正案が発議され、投票日が決まれば、その投票日までに、
憲法改正の内容について国民に十分に知ってもらうことが必要ですが、国民に対する広報、周知は、客観的かつ中立に行わなければなりません。
そのために、国会に、衆参両院の議員おのおの十名、合計二十名で構成する国民投票広報協議会が設置されます。この広報協議会は、
憲法改正案の内容について周知を行う国民投票公報の作成などを行う機関です。
国民投票公報は、
憲法改正案やその趣旨等について客観的、中立的に記載した部分と、賛成
意見、
反対意見の両方を公正かつ平等に記載した部分から成るものです。
また、同じ情報は、インターネット上にホームページを開設して周知、広報に努めるほか、テレビや新聞などでも
憲法改正案に関する広告を行うこととされています。
憲法改正案に対し、他人に賛成、
反対の投票を勧誘する行為を、国民投票運動といいます。
憲法改正という最重要事項について判断することから、全ての国民の
意見表明や国民投票運動は、原則として自由となっています。
ただし、公務員や教育者の地位の利用及び大規模な買収行為を禁止するといった制限が設けられています。さらに、新聞等の活字メディアと異なり、テレビ等については一定の規制があり、国民投票が行われる日の二週間前に限って、スポットCMの放送を禁止しています。
国民投票の具体的な進め方や投票方法などは、基本的には一般の国政選挙と似たようなものになりますが、幾つかの重要な相違点があります。
お配りしたパンフレットは、裏表紙から、
日本国憲法を初めとした関係法律が掲載されております。こちらから始まる漢数字の十八ページをごらんください。上段に投票用紙のイメージが掲載してあります。
国民投票の投票方式は、投票人の意思を酌み取ることを重視し、また無効票をできるだけ少なくするよう、わかりやすい方式がとられています。投票は、あらかじめ投票用紙に印刷された賛成、
反対のいずれかを丸で囲んで行うものとされています。白票や他事記載、例えば自分の名前を記載したりした票は無効とせざるを得ませんが、賛成または
反対の文字をバツの記号、二重線等で消した投票も有効とすることとされています。
先ほど述べた個別発議の原則ですが、これに対応して、賛否の投票も、提案されている
憲法改正案ごとに投票を行うこととなっています。これは個別投票の原則といいます。
先ほどの例を用いれば、
憲法九条を改正する
憲法改正案と、環境権の創設を目的とする
憲法改正案との二つの
憲法改正案が発議された場合には、それぞれの
憲法改正案ごとに投票用紙を受け取って記入、投票をすることになります。すなわち、まず、九条改正案について投票用紙をもらい、賛否いずれかに丸をつけて、これを投票箱に投じ、その後、環境権創設の改正案の投票用紙をもらって、賛否いずれかに丸をつけて、これを別の投票箱に投ずるといったぐあいです。
また、
憲法改正案に対する賛成の投票数が投票総数の二分の一を超えた場合は、国民の承認があったものとなります。なお、この場合における投票総数とは、賛成投票数と
反対投票数の合計数、すなわち有効投票の総数のことをいい、無効票や棄権は入りません。
以上が、
憲法改正の手続の概要です。
これらの手続を定めるため、
平成十九年に
憲法改正国民投票法が制定されました。しかし、制定当時には解決に至らなかった課題が残されており、これらに対処するために、
憲法審査会での審査を経て、昨年六月に改正法が制定されました。
ここからは、昨年六月の改正内容について御説明いたします。
お手元に配付いたしましたパンフレットの八ページを御参照ください。
まず、選挙権年齢の十八歳への引き下げについてですが、この改正法
施行後四年を経過するまでの間、つまり
平成三十年六月二十日までの間は、
憲法改正国民投票の投票権年齢は二十歳以上とし、それ以降は自動的に十八歳に引き下げることとしました。国民投票の投票権年齢が十八歳となるため、同じ参政権グループに属する選挙権年齢も十八歳に合わせていく必要があります。
このため、選挙権年齢の引き下げについては、改正法の
施行後速やかに、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案し、必要な法制上の措置を講ずる旨の検討条項を改正法附則に規定しました。
この規定を受けて、選挙権年齢を十八歳に引き下げるための公職選挙法改正案が、本年三月五日に国会に提出されました。同法案は、去る六月四日に
衆議院本
会議で可決され、今まさに参議院で審議中です。早ければ、来年の参議院選から選挙権年齢が十八歳に引き下げられることになります。
第二に、公務員の政治的行為に係る法整備です。
公務員であっても、国民としての立場で
憲法改正に対する賛否の勧誘、
意見表明を行うことは広く認められるべきであるという政策判断のもと、純粋な国民投票運動については、公務員もこれを行うことができることとしました。
他方で、公務の中立や公正の確保の観点から、当該勧誘行為が公務員に係る他の法令により禁止されている他の政治的行為を伴う場合は、この限りでないとしました。
また、組織により行われる勧誘運動、署名運動及び示威運動の企画、主宰及び指導並びにこれらに類する行為に対する規制のあり方について、改正法
施行後速やかに、検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする旨の検討条項を改正法附則に規定しました。
さらに、在職中、国民投票運動を行うことができない公務員として、新たに、裁判官、検察官、警察官などを加えました。
最後に、国民投票の対象拡大についてですが、今回の改正では、
憲法改正問題についての国民投票制度に関し、間接民主制との整合性の確保などに留意することから、改めて、その意義及び必要性について、さらに検討を加え、必要な措置を講ずる旨の検討条項を改正法附則に規定しました。
また、
衆議院憲法審査会における法案の採決に際しては附帯決議が付されており、それはパンフレットの漢数字二十三ページに掲載されています。そこでは、改正法の
施行後二年以内をめどに、選挙権年齢を十八歳に引き下げるため、必要な法制上の措置を講じることとされていますが、選挙権年齢の引き下げ法案が国会で審議中であることは既に述べたとおりです。
選挙権年齢の引き下げに伴い、今後、特に、高校などの教育機関における
憲法教育、政治教育や、それらの前提となる歴史教育をしっかりと行う必要があります。
以上、
憲法改正の手続に関する基本的な流れと、
憲法改正国民投票法の改正法の概要について御説明させていただきました。
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