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2015-06-04 第189回国会 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第4号
公式Web版
会議録情報
0
平成二十七年六月四日(木曜日) 午前九時三十分
開議
出席委員
委員長
坂本祐之輔君
理事
井上 貴博君
理事
小松 裕君
理事
冨岡 勉君
理事
馳 浩君
理事
山本 幸三君
理事
津村 啓介君
理事
伊東 信久君
理事
伊藤 渉君 青山 周平君 井林
辰憲
君 尾身 朝子君 大隈 和英君 神谷 昇君 神田 憲次君
熊田
裕通
君 古賀 篤君
田所
嘉徳
君
渡海紀三朗
君
豊田真由子
君 中川 俊直君 中山
展宏
君
藤井比早
之君 古田 圭一君
松島みどり
君
宮崎
謙介
君 八木 哲也君 小川 淳也君 大串 博志君 長島 昭久君 平野 博文君 丸山 穂高君 輿水 恵一君
中野
洋昌
君 島津 幸広君 真島 省三君 …………………………………
参考人
(
国立研究開発法人理化学研究所理事長
)
松本
紘君
衆議院調査局科学技術
・
イノベーション推進特別調査室長
行平 克也君
—————————————
委員
の異動 六月四日
辞任
補欠選任
宮崎
謙介
君
熊田
裕通
君
伊佐
進一
君
中野
洋昌
君 同日
辞任
補欠選任
熊田
裕通
君
宮崎
謙介
君
中野
洋昌
君
伊佐
進一
君
—————————————
本日の
会議
に付した案件
参考人出頭要求
に関する件
科学技術
、
イノベーション推進
の総合的な
対策
に関する件(
理化学研究所
の
改革
について) ————◇—————
坂本祐之輔
1
○
坂本委員長
これより
会議
を開きます。
科学技術
、
イノベーション推進
の総合的な
対策
に関する件、特に
理化学研究所
の
改革
について
調査
を進めます。 この際、
参考人出頭要求
に関する件についてお諮りいたします。
本件調査
のため、本日、
参考人
として
国立研究開発法人理化学研究所理事長松本紘
君の
出席
を求め、
意見
を聴取いたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
坂本祐之輔
2
○
坂本委員長
御
異議
なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
坂本祐之輔
3
○
坂本委員長
この際、
松本参考人
に
委員会
を代表して
一言
御挨拶を申し上げます。 本日は、御多用のところ当
委員会
に御
出席
いただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御
意見
をお述べいただきたいと存じます。 次に、議事の順序について申し上げます。 まず、
松本参考人
から十五分程度で御
意見
をお述べいただき、その後、
委員
からの
質疑
に簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度
委員長
の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、
衆議院規則
により、
参考人
は
委員
に対して
質疑
をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。 それでは、
松本参考人
にお願いいたします。
松本紘
4
○
松本参考人
皆様、おはようございます。
国立研究開発法人理化学研究所理事長
を拝命してございます
松本紘
でございます。 本日は、このような
機会
を与えていただきまして、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
理化学研究所
は、この四月一日から、
研究開発成果
の
最大化
ということを
ミッション
とする
国立研究開発法人
に衣がえをいたしてございます。 時を同じくして、私も四月一日に
理化学研究所
、
理研
と言わせていただきますが、
理研
の
理事長
に着任をいたしました。 この
ミッション
を実現するに当たりましてどうすればいいかということで、私も
理研
にいたわけではございませんので、まず、
理研
の
内部
を知る必要がある、
問題点
があればそれをちゃんと処理する必要がある、そういうつもりで、着任してからおよそ四十日間、一カ月と少し、連休が入りましたので四十日ぐらいになりましたが、その間、
理研
にあるほぼ全ての
事業所
、十七の
センター
を訪問して、
議論
を重ねてまいりました。 それぞれの
事業所
で、
センター長
を初めとする
研究管理責任者
や
若手
など、約百五十名の
方々
と
議論
を重ねてまいりました。そして、面談をする中で、それぞれが抱えておられる問題、あるいは
システム
の問題と感じているような問題というものを提起していただきまして、そこで出された
意見
を
参考
にして、
研究開発成果
の
最大化
に向けて、きょうこれから御
説明
をさせていただきます、お手元に一枚物の資料があると思いますが、
理研科学力展開プラン
を取りまとめたところでございます。
理研科学力展開プラン
は、
理研
が
総合研究所
として
研究開発
のポテンシャルを高め、
至高
の、つまり最高の
科学力
をもって国の
科学技術戦略
の担い手となるための
方針
を示そうとするものです。
理研自身
の
発展
と同時に、
我が国
の
発展
のために
理研
がなすべきことという観点を考慮してまとめさせていただいてございます。
我が国
は
世界
第三位の
経済大国
と言われておりますが、
日本
が
世界トップクラス
の
経済力
を維持し、
人類文明
の
発展
のために、また
自然環境
との共生のためにも、
科学技術
の強い力による
イノベーション
が必要だと思っております。そのために、
理事長
として、
理研
がなすべきことを明確に示して、
理研
をどう導いていくか、私の
考え
を
五つ
の柱にまとめさせていただいております。
一つ目
は、
研究開発成果
を
最大化
する
研究運営システム
を開拓及び
モデル
化するということです。
理研
は
国立研究所
でありまして、
研究成果
を生み出すことが第一の
ミッション
です。
研究者
は、
研究
を通じて
社会
貢献するために日夜
努力
をしております。その
努力
を
最大限成果
として世に出していくためにも、
研究所
の
マネジメント
、ガバナンスがとても重要と
考え
ております。そのためには、不祥事を二度と起こさないこと、新たな
システム
を構築し、若い
研究者
の元気を取り戻すことが必要です。
理研
は、優秀な
研究者
を集めるために、
研究機関
としては、一九八六年という比較的早い時期から
任期制
の
人事制度
を導入してまいりました。そして、
任期制
と従来からございました
定年制
の
二つ
の異なる
人事制度
を混在させて
運営
をしてきておりました。しかしながら、今日に至り、
任期制研究者
の
キャリアパス
が見えにくいなどの問題が生じてきています。このことから、さらに
研究
に集中できる
環境
を整えるためにも、
人事制度
を一元化し、運用していくことが必要だと
考え
ました。 また、
理研
が全体として力を発揮するためには、
本部
が全体の
目標管理
、
評価
、
資源配分
を行うなどの
機能
を果たさなければなりません。
センターごと
、
個別事業
を
最適
にするというのではなくて、
理研
全体の強力な
マネジメント
のもとで、全体
最適
となるように
努力
をしていきたいと思います。そのためには、基盤的な
研究資金
である
運営費交付金
の
中長期目標期間
における
安定化
が不可欠だと
考え
ております。 これらの
課題
は、多くの
大学
にとってもまだ解決していないことであり、
大学
や
企業
の
研究所
からも、
理研
のこの
モデル
はいい
モデル
だというふうに言ってもらえるものをつくり出したいと
考え
ております。
二つ目
は、
至高
の
科学力
で
世界
に先んじて新たな
研究開発成果
を
創出
するということです。 この趣旨としては、もちろん
理研単独
でもすぐれた
研究成果
の
創出
に
取り組み
ますが、さらに、全国の
大学
や
研究機関
と一体となって、国の
科学力
を総体として向上させ、
国力
としての
研究開発成果
の
最大化
を図りたいと思っております。
人類社会
の
課題解決
という問題は取り上げられて久しいですが、それを目指すためには、さまざまな
ミッション
に対応できるよう、
総合研究所
として広範な
分野
の
研究開発
を進めていきます。また、
基礎研究
をしっかりと推進し、深化させたいと思います。このことにより、
世界
に先んじた
研究成果
の
創出
に取り組んでまいりたいと思っています。 もちろん、次の
社会
をにらんだ
ビジョン
を策定し、それに向けて
科学技術
がいかに貢献できるかということを明らかにし、着実に実行してまいりたいと思います。
理研
は、野球でいいますと
キャッチャー
として国が投じるボールを受けますが、
キャッチャー
がサインを出しますように、
理研
からも国にいろいろ申し出、提案をしていきたいと思ってございます。
三つ目
は、
イノベーション
を生み出す
科学技術ハブ
の形成をするということでございます。 先ほど、
国力
としての
科学力
ということを申し上げました。
理研
はオール・ジャパンで
イノベーション
に取り組むのですが、アンダー・ワン・ルーフで、
大学
や
研究機関
、あるいは
企業
をつなぐ中核としての
機能
、これを果たしたいと思っております。それを私
たち
は
科学技術ハブ
と称しています。 大規模で、
理研
でしかできない
研究
はもちろんございます。しかし、
理研
だけではできない
研究
も多くございます。優秀な
研究者
を
理研
に集める、そして大きな
成果
を生み出す、そのためには、例えば、
クロスアポイントメント
の
制度
を
大学
の
研究者
に適用することによって、
大学
に籍を置きながら
理研
の
研究
にも参画できる、そういうふうにしたいと
考え
ております。この
取り組み
を通して、
理研
の
研究
や
制度
を
大学
の
方々
ともシェアをしながら広めてまいればよろしいのではないかと
考え
ております。
四つ目
は、
国際頭脳循環
の一極を担うということです。
理研
の
運営
を国際的な
スタンダード
に近づける、現在でもたくさんの
国際研究者
が来ておりますが、
スタンダード
に近づけることによって、
海外
からの
研究者
がより参画しやすい
環境
を整えたいと思っております。 例えば、
研究支援スタッフ
。
海外
の
研究機関
では、
論文
を書くためのサポート、
実験機器
のエキスパート、あるいは
ソフトエンジニア等
の
技術者
が
研究者
の周辺にたくさんいます。
海外
から著名な
研究者
を呼ぶと、その
研究室
には
世界
から優秀な
研究者
がやってまいりますし、
世界
のさまざまな
研究文化
、あるいはその国の
文化
が
一緒
にやってまいります。
海外
からの
研究者
が定着するかどうかは、こうした
環境
をいかに国際的な
標準
にするかということがポイントになろうかと思っております。
英語
の
公用語化
につきましては、
新聞報道
でも見出しになっておりました。
英語
で
議論
するということは、将来、国際的な
リーダー
となる
若手研究者
にとってはとても重要なことです。
国際学会等
で活躍するための必須のスキルと言えるでしょう。セミナーやシンポジウムの
公用語
は
英語
ですから、
理研内部
でも
英語
で
議論
することによって、お互いにこなれたフレーズを身につけていただいて、みずからの
考え
をきちんと発信できるようになることを期待してございます。
最後
の
五つ目
でございますが、
世界的研究リーダー
を育成するということです。
資源
の乏しい
我が国
は、これまでも
科学技術
により国を興すという
戦略
で臨んでまいりました。また、御
案内
のように、火山や地震の多発する国土においては、科学的な防災、
減災対策
ということも大変重要だろうと思っております。
科学力
は、それを担う
科学者
そして
技術者
の強い意思と、それが多くの
人たち
、つまり、国民によって支えられることが重要となります。
世界
的に活躍する新しい
研究リーダー
を育成する、出てくるということは、多くの
人たち
が
科学技術
に夢を持つということにつながります。 「終身の計は人を樹うるに如くはなし」という言葉がございますが、人を育てることが最も重要だろうというふうに
考え
ております。
若手研究者
を長期的に安定的に雇用する道を開く、そして
海外
へ留学させるなど、夢を持って
研究
に取り組めるよう
環境
を整えてまいりたいと思っております。
キャリアパス
としては、若いときに
研究
をやってずっと
研究者
という方もおられますが、それ以外に進まれる方もあるわけで、そういう意味では、
研究者
以外への道も開拓することによって、各人の能力を最大限活用するということが
我が国
にとって重要ではないかと思っております。
最後
になりますが、
理研
の各
センター
を私は訪問させていただきました。私の印象は、
理研
には随分すばらしい
研究者
がいるな、もちろん
大学
にもすばらしい
研究者
はおりますが、
理研
は特に固まってすばらしい
研究者
がいるなというふうに感じました。 また、
大学
では実現できないような超
大型
の
研究施設
、
スーパーコンピューター
「京」、あるいは
大型放射光施設SPring
8、
エックス線自由電子レーザー
のSACLAなどが整備されており、多くの
方々
に利用されております。これは、学界、学者だけではなくて
産業界
の方にも利用されております。 それぞれの
研究室
にも、こういう
大型設備
以外の最先端の
設備
が入っておりまして、この
分野
では私
たち
は
世界
一ですと胸を張って言ってくれる人がたくさんおられました。大変うれしく思いました。日々新しい
成果
を生み出して、
世界
の
科学技術
を牽引しているというプライドを感じることができました。
明治時代
には、非常に意気盛んな
若者
、優秀な
若者
が
海外
に出て、新しい知見を
西洋
から持ち帰って、また同時に、
日本
は優秀である、
日本
人とはこんな魂の持ち主だということをその
時代
にアピールしてこられました。 今後も、
我が国
の優秀な
研究者
が
海外
で活躍し、また、
海外
の
研究者
が
理研
で活躍されるということを
考え
、
理研
の、そして
我が国
の
科学技術
や
文化
に対する
評価
を高めていかねばならない、こんなふうに思っているところでございます。 以上、簡単に御
説明
いたしましたが、
理研科学力展開プラン
を
理研
の
経営方針
として、今後、この
五つ
の柱に沿った
戦略
を具体化してまいりたいと思ってございます。
委員長
、
委員
の
先生方
の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。 ありがとうございました。(拍手)
坂本祐之輔
5
○
坂本委員長
ありがとうございました。 以上で
松本参考人
の
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
坂本祐之輔
6
○
坂本委員長
これより
参考人
に対する
質疑
に入ります。
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。
田所嘉徳
君。
田所嘉徳
7
○
田所委員
自由民主党の
田所嘉徳
でございます。 貴重な
質問
の
機会
をいただきまして、心より感謝を申し上げたいと思います。 また、ただいまは
松本理事長
より、
理研
の充実、そして
我が国
の
発展
にかける大きな意気込みを聞かせていただきまして、大変頼もしく思ったわけでございます。 そこで、もうほとんどの
事業所
を訪問して多くの
研究者
とも
議論
をしてきたということでございます。まさに、
現場
から得るものは大変重要なことがあるだろうと思います。 私は、
理研
のこれまでの経緯を見てみますと、急激に
研究所
がふえてきたということがあろうと思います。そういう中で、大変特別なのは、九割も
任期制
の
研究員
がそれを担っているということでございます。それがどのような
効果
、あるいは障害を招来しているのか、それをちょっと聞きたいというふうに思っております。 そして、
STAP細胞
問題がありましたが、そういったものとの関係、あるいは
理研
の
信頼回復
の処方箋というものをどう
考え
ておられるのか、お聞きしたいと思います。
松本紘
8
○
松本参考人
お答えいたします。
任期制
の
研究員
が多いという
お尋ね
でございましたが、九割ぐらいが
任期制
の
研究者
でございます。先ほど申し上げましたが、一九八六年、割合早い時期に
任期制
の導入を図ってございます。 今世紀に入りましてからいろいろな
戦略センター
を設置してまいりましたが、
センターそのもの
も
有期
でございますので、そこで働く
研究者
も
有期
、基本的には、毎年更新でございますが、五年までとしてございます。優秀な人はさらに五年までいけるというような
制度
になってございます。 これの
長所
、
短所
でございますが、
長所
は、非常に多くのフレッシュな
研究者
が常に
理研
に入ってきて、
理研
から
大学
なりほかの
研究機関
に流れていくという、
頭脳循環
には大きな貢献をしてきたと思います。 一方、
短所
の方は、
期間
が五年といいましても、最初の年は、
理研
に来て、その
研究テーマ
に取り組むための
準備期間
としてほぼ費やされます。その次の年から本格的な
研究
に入って、
研究成果
を出して
論文
にまとめるというプロセスが入るんですが、
最後
の一年間は、恐らく次の職探しということで、大変忙しい。そういうことで、五年と言われても実質三年、こういう
不平不満
が
若手
の中にはございました。 それをどうしようかということでございますが、全員を
定年制
ということはもちろんできません。フィルターをかけて、いい人を残していって、そして、長期的な
研究
に
取り組み
たいという
ビジョン
をしっかりと持っている方に関しては、
テニュアトラック
という
制度
を新たに設けまして、そこに乗せていろいろな資質を見ていく。そうすることによって、将来の
理研
のコアとなる人物が定着するということもありますし、優秀な方はここから出ていって、
大学等
で活躍される、そんなふうに
考え
てございます。
田所嘉徳
9
○
田所委員
テニュアトラック制度
というんでしょうか、そういった
移行制度
というものも
研究者
の
意識高揚
ということにもなるだろうと思いますし、しっかりと取り組んでいく必要があるんだろうと思います。 先ほどの話の中でも、
研究成果
の
最大化
ということが言われておりました。これを聞きますと、どういうことをもってその
効果
を
評価
するのかということでありますが、被
引用論文
であるとか
国際共著論文等
において
評価
するんだというようなことが言われておりますけれども、私は、もっと直接的に、
産業活動
にどのくらい
寄与
をしているのか、あるいは、国際的に先端を行って
特許等
でどういう価値を得られているのか、金銭的な
評価
があるかもしれません、いろいろな面を含めて、そういったものをしっかりと
評価
するということが重要であろうと思いますが、その点についてどう
考え
ているのか、お聞きしたいと思います。
松本紘
10
○
松本参考人
ありがとうございます。 国際的なことも視野に入れて
研究者
をどう
評価
していくか、これは大変難しい問題であります。 現在、御
案内
のように、
ランキング
というのが
世界
じゅうで大変横行しておりまして、
西洋
の目から見た、
西洋文化
の中から見た
ランキング
というのが出ております。
研究者
は、国内はもちろん、いろいろな
研究機関
を渡り歩く方もおられますし、一カ所でずっとやられる方もおられますが、いずれにしても、その
標準
がそろっていないといい
研究
ができないわけで、
引用論文数
とか
国際共著論文数
というのは彼らの
視点
からいっても重要ですし、我々の
視点
からいっても重要だと思います。 ちなみに、
理研
は、発表する
論文
のおよそ半分が
国際共著論文
になってございます。これは非常に多いと思います。それから、引用される
論文
も、
トップテン
とか
トップ
一%に、よく引用される
論文
の比率が
理研
は非常に高うございます。
大学
、
研究機関
を含めて、
日本
で一番質の高い
研究論文
が出ている。
お尋ね
の
評価
ですが、そういう
研究者
として当然の
引用論文数
とか内容もありますが、ほかの、
研究者
がどういう
研究成果
を生み出すか、つまり、アウトプットじゃなくて
アウトカム
、
論文
を生産するだけじゃなくて、どういうふうに
社会
に貢献するかという点も
評価
してまいりたいと思ってございます。
田所嘉徳
11
○
田所委員
今
説明
を受けましたが、もうちょっと現実的な、
産業寄与
とか
特許等
の現実的なものも考慮してもらいたいなというふうな思いを私は持つわけでございます。 また、全体の中で
本部機能
を
強化
するということがございました。私は、
二つ
の面があるというふうに思っております。 それは、
STAP細胞
の問題などが起きたようなことがないように、さすがに
理研
は
研究者
の集団であって、そういう中にあって、そういうことが発生しないような、しっかりとした
内部統制
の
システム
といいますか、そういった
機能
がまず重要だろうというふうに思っています。 もう
一つ
でありますけれども、私は、どんな
成果
を求めて
課題
をつくっていくのか、全体をリードしていくのかということが
本部機能
に求められる大きな力だろうというふうに思っております。
日本
の成長の、
産業
の米となるような
研究開発
というものを推進していく、そういう
選択
というものが非常に重要だろうというふうに思っております。 例えば、今、がんなども、
免疫療法
が重要であるとか、一方では重
粒子線等
を使ったものが必要なんだとか、いろいろなことがありますが、限られた
資源
の中でどう
選択
をして進めていくのか。
白眉プロジェクト
というようなものも
考え
られていたようでございますが、こういったものをしっかりとリードしていく、そのことが重要だろうと思います。それをどのように進めようとしているのか、その点を聞きたいと思います。
松本紘
12
○
松本参考人
お答えいたします。 お答えする前に、
一言
だけ。先ほどの
質問
で、
産業
とのつなぎをどうするんだ、どう
評価
するんだという
お話
がございました。それは大変重要と思っていまして、例えば、パテント一件は
論文
何件に相当する等々、
分野
によってしっかり見きわめて、
評価点
に加えたいと思ってございます。 今の
お尋ね
の件でございますが、
本部機能
をどう
強化
するのかという
お尋ね
でございますが、これは、今まで
理研
は各
センター
の主体性を尊重して、それぞれの
センター
が
成果
を追求するというスタイルで
研究
を進めてまいりました。それなりに成功してきたと思います。 しかしながら、先ほど申し上げましたように、
理研
は本年四月に
国立研究開発法人
となり、
研究開発成果
の
最大化
が
ミッション
になりました。言いかえると、ダイナミックな
最適資源配分
を行わなければ全体
最適
ができないということでございますので、
社会
の要請に応える
新規事業
の
立ち上げ
などが行えるように、
本部機能
の
強化
、
調整機能強化
をしてまいりたいと思ってございます。 具体的な
取り組み
といたしましては、
役員
については、
研究現場経験
や
研究管理経験
の豊かな
研究者
を複数採用いたしました。 また、
理事長室
というものを設けまして
役員
を強力にサポートするという体制を設け、今
委員
おっしゃいました全体の
社会
の流れというものを把握して、大きな
ビジョン
を常に描くということにしてまいりたいと思います。 先ほど言いましたように、そういう
トップ機能
は重要なんですが、下からの声も重要で、ボトムアップと
トップ
ダウンをいかに調和させていくかということがこの
研究所
の大変重要な
ミッション
と
考え
てございます。 また、
イノベーション
におきましても、先ほども申しました
科学技術ハブ
というものを設けて、
大学
や
産業界
と
一緒
になって、
イノベーション
が進むような重要な
課題
に取り組んでまいりたいと思ってございます。
田所嘉徳
13
○
田所委員
今
お話
が出ました
科学技術ハブ
、あるいは
国際標準
による
外国人研究者
の
招聘等
についても大きな要点として挙げられておりますけれども、私は、
大学
や
研究機関
、
産業界
と連携するとただ言っても、自動的に進むわけではないんだろうというふうに思っております。これを具体的にどのように進めていくのか、大変難しく、重要だろうと思っております。 また、
国際標準
の
環境
をつくって、そして優秀な
研究者
を呼ぶということでありますが、
英語
ができるというだけでは、そんなに強いとも私は思いません。 先ほど
SPring
8とか
スーパーコンピューター
の話も出ました。大
強度陽子加速器
なども私の茨城にはありますが、そういった
施設等
を目指して、それが
外国人研究者
のインセンティブになるのかもしれません。 そういうものを含めて、
外国人
の
研究者
あるいは
科学技術ハブ
というものをどう実現するのか、少し具体的に
説明
してもらいたいというふうに思います。
松本紘
14
○
松本参考人
どういうふうに組み上げていくかということは大変難しい、いつの
時代
も難しい問題でございますが、私は、例えば、
科学技術ハブ
と申し上げましたが、
産業界
とどうするのか。 実は、
理研
は、産学連携にももちろん力を注いでまいりましたが、産学連携
本部
というものが一番上に見えるようになってございません。ですから、早速四月から、産学連携
本部
というものを明確に見えるように設置いたしました。 そこには、共同
研究
をする
企業
の
方々
もたくさん来られています。それを
強化
するということはもちろんでございますが、先ほどハブと申し上げましたのは、例えば
産業界
を眺めておりますと、同業者同士の連携というものは割合多いんですが、異業者同士が出会う
機会
が余りないという声も聞いてございます。そういう意味で、
理研
は、いろいろな業種の
方々
を集める、そして
議論
するということにも注力してまいりたいと思います。 国際的なことは、
委員
御指摘のとおり、大変立派な施設もございますし、それを使うために来られる方もございますし、
研究者
が優秀なために集まってくるという方もございます。 そういうものをフルに活用して国際的なフィージビリティーを上げるということが
一つ
でございますし、今後は、各拠点を
海外
に展開するということも大変重要だろうと思ってございます。
田所嘉徳
15
○
田所委員
研究所
はまさに属人的な要素が非常に大きい。そういう中で、やはり、
研究者
が本当に熱意を持って、しっかりと
研究
に打ち込む姿勢を持つようにする必要があるんだろうと思います。 それをどこに求めるのか。帰属意識は
定年制
の職員ならもっと強いのかということもあるだろう。あるいは、発明の対価などが大きな訴訟にもなりましたが、そういう中にあって、どういうふうな位置づけにするのか。特許などもそうであります。あるいは、招聘の中では魅力的な年俸みたいなものを外国の人などには示していくとか、いろいろなこともあるんだろうと思います。
研究者
が力を発揮できるようなリードの仕方を、ベンサムやミルを持ち出すまでもなく、人間、功利的なこともあります、そういう中にあって、積極的にその属人的な
研究所
において力が発揮できるように、どうしていくのか。
最後
に、特定
国立研究開発法人
というものが、
理研
を対象として検討もされてきたわけでございます。これは、非常に大きな主務大臣の権限とか、あるいは
研究開発
等の特殊性というものも配慮すべきだという、非常に強い方向性も打ち出されているわけであります。これらをどのように
考え
ているのか、その点をあわせて聞きたいと思います。
松本紘
16
○
松本参考人
お答えいたします。 まず、
若手
をどういうふうに元気づけるか、あるいは
研究者
全般をどういうふうに元気づけるかという大変重要な問題がございます。私は、これが現在の
理研
においては最も重要だろうと思っています。 いろいろ回りまして、話をいたしまして、
研究者
の声が直接
理事長
に届くという
システム
も必要だということで、早速やりました。いろいろな
意見
が出ましたが、去年と比べて
理研
は明るくなった、
研究
に自信が持てるようになったという声がたくさん寄せられました。こういうムードをつくり上げることも
本部
の仕事の
一つ
かと思ってございます。
研究者
が
研究
にプライドを持つ、
日本
人としてのプライドを持ち続けるということが一番のモチベーションではないかと思ってございます。属人的ないわゆるサラリー等の
評価
につきましても、きちっとやってまいりたいと思います。 それから、
お尋ね
の、特定
国立研究開発法人
の指定の件でございますが、これは、私どもの理解としては、政府、国会においてお決めになるものと承知してございます。もし指定されれば、その役割を果たせるように全力を挙げて
取り組み
たいと
考え
てございます。
田所嘉徳
17
○
田所委員
松本理事長
、ありがとうございました。 明るくなった
理研
において、大きな
成果
を出して、産学連携等も進めて、
我が国
の
発展
に資するような、そういう
研究所
として、しっかりとリードしていただきたいというふうに思います。 ありがとうございました。
坂本祐之輔
18
○
坂本委員長
次に、津村啓介君。
津村啓介
19
○津村
委員
民主党の津村啓介でございます。
松本理事長
、本日は、貴重なお時間をお割きいただきまして国会までお運びいただきまして、ありがとうございます。
理研
は、古く一九一七年の創立ということでございますので、再来年には百周年を迎えるということでございます。最近では、昨年の出来事もありましたので、先ほどから、不祥事の防止であるとか信頼の回復という言葉も出ておりましたけれども、長い
理研
の歴史、そして
日本
の
科学技術
の
世界
における位置づけということを
考え
ましたら、今回の
科学力
展開プランの意味合いというものを、もう少し大きな、地理的あるいは歴史的なスコープで
議論
もさせていただきたいというふうにまずは思うわけです。
松本理事長
は、昨今の
世界
の
科学技術
政策の潮流といいますか、今どういう変化が大きな意味で起きているのか、その中で
日本
の位置づけというのがどう変わってきているのか、その中で今回の
理研
の新しいプランをどう位置づけていらっしゃるのか、大所高所の観点から少し御
説明
いただきたいと思います。
松本紘
20
○
松本参考人
お答えいたします。 大変大きな
質問
を投げかけていただきました。 私は、現代文明が
科学技術
によって支えられているということはかたく信じている人間の一人なんですが、もともと
人類文明
というのは、学術があって、その学術に基づく科学、科学は学術の一部でございますが、そのサイエンスに支えられて技術がある、その技術が実
社会
にインプリメントされて、つまり移っていって、豊かな
社会
に、徐々にではありますけれども、進んできた。 現代
社会
の問題は何かという御指摘でございますが、これは、基本となる学術の進展、あるいは科学の進展の方法にも
一つ
問題があります。もう
一つ
は、市民の方にも問題があります。 市民の方は、まず、豊かな
社会
をみんな望むようになりました。豊か、豊かということをやっていますと、言葉は適切な表現ではないかもしれませんが、豊かぼけをいたします。本来は、いろいろな制限をよく
考え
て、市民一人一人が
考え
て、科学を有効に利用していく、または有効に利用できるように
科学技術
を育てるというマインドが必要だろうと思います。これは、残念ながら、
西洋
の、特に米国の方がそういう意味合いは市民の間に広いんじゃないかという気がいたします。しかし、
日本
もかなりそういう方向に動いてまいりました。 そこで、では、科学はどうかという全体の
ビジョン
ですが、デカルトが要素還元論というのを出しまして、どんどん細かい学問をやりましょうと。その方向で学問は進んでまいりました。
科学技術
もそうです。現在の
社会
を見渡してみますと、細かい技術がいっぱいありまして、それぞれに専門家が張りついております。それぞれの専門家はお互いに競っているわけですから、自分のすごく狭い
分野
だけを見るようになります。これが欠陥でございまして、横串を通して、科学全体あるいは学術全体を見渡して
科学技術
を進める、あるいはそういう
リーダー
になってもらうという人を今後育てていくことが
世界
的にも必要ではないかと思っております。
津村啓介
21
○津村
委員
ありがとうございます。 今、
理事長
の
お話
の中にも、
科学者
、
研究者
の側の
課題
と市民
社会
の側の
課題
、ここの間をつないでいくということが、そういうための
リーダー
といいますか人材を育成していくことが非常に重要という
お話
がありましたけれども、今回の
科学力
展開プランを拝見いたしますと、どちらかといいますと、
理研
のガバナンスといいますか、あるいは
科学者
としてのあり方みたいな方に少しウエートが置かれていて、国民との対話でありますとか市民
社会
に対する働きかけみたいなところがなかなかこの文言の中からはストレートには見えてこないと感じました。 そんなことは当たり前ということで書かれていないのかもしれませんので、改めて少し敷衍していただければと思うんですけれども、市民とのコミュニケーション、科学コミュニケーションという意味ではどういった方策をお
考え
でしょうか。
松本紘
22
○
松本参考人
お答えいたします。 これは大変重要なことを御指摘いただいているんですが、当たり前のことというふうに表現されましたが、当たり前でも大変重要だろうと私どもは認識してございます。 去年の出来事もございましたし、
科学者
の倫理観はどうかというような問題もございましたが、一番重要なことは、
社会
、市民を含む
社会
と科学の関係を一人一人の
科学者
がしっかりと認識するということだろうと思っています。その中には、当然、自分の
研究成果
を
社会
に発信するときに、コミュニケーションができるような表現ということはもちろん必要ですが、同時に、
社会
をどう持っていく
ビジョン
を持っているかという、
研究者
個人個人の思いを外に発信することが重要です。 そのために、今度は広報に哲学者を
理事
として招請いたしました。つまり、科学と
社会
の接点は、まさに
研究者
個人個人、そして市民個人個人の間をつなぐフィロソフィーがなければならない、そういう思いで広報を担当していただきます。そういう
視点
で
運営
してまいりたいと思ってございます。
津村啓介
23
○津村
委員
ありがとうございます。 自然科学は古くは自然哲学と言われていたわけで、だから哲学者ということではないかもしれませんが、これから新しいその
理研
の姿を見ていくことを楽しみにいたしております。 実は、
質問
の
一つ
の柱に、ガバナンスの話を聞かせていただこうと思っております。 先ほど
田所
さんが大変すばらしいといいますか、的を射た御
質問
をされていましたので、少し重なる部分がございますけれども、今回、
五つ
戦略
を出されるに当たって、東洋経済のインタビューを拝見したんですけれども、もともと、
研究
とガバナンスの
二つ
は、これは必ず必要だろう、そして、
日本
人は偶数だと据わりが悪いので、ほかにも大事なことがあるので
五つ
にしましたというようなことが書かれていたわけです。
研究
はある意味では当たり前でありまして、やはり今回、
松本理事長
には、ガバナンス
改革
のところが、周囲からの期待も大変大きい部分だと思います。 その点、三代目の大河内所長以来の主任
研究員
制度
、これは終身雇用、それから最近では、比較的大きな予算を扱って国からの
ミッション
を扱う
戦略センター
ということで、先ほどから終身雇用と
定年制
と
任期制
のポリシーミックスを少し見直していきたいという
お話
ですが、ここは一番皆さんが、あるいは、先ほどからの
世界
全体の
科学技術
政策の潮流として、この新しいテニュア
制度
というものをどう構築していくかというのは、本当にぜひ答えがあるなら見せていただきたいという、他の
研究開発
法人あるいは
大学
の皆さんも大変注目されているところだと思います。 もう少し具体的に、今思っているイメージを御披露いただけると大変助かります。
松本紘
24
○
松本参考人
テニュアトラック
を導入してテニュア制という
制度
に持っていきたいということを申し上げましたが、
研究者
のモチベーションをどういうふうにすくい上げるか。
研究所
ですから、
研究者
が主にいるわけですね。もちろんそれをサポートする事務スタッフもおりますが、そういう
人たち
の意欲をどう持ち上げていくか。これもよく言われることですけれども、
トップ
ダウン方式がいいのか、ボトムアップ方式がいいのか。実は、私は両方必要だろうと思っています。 両方という意味は、ガバナンスを一番責任を持ってやる執行部、
理事
、
理事長
ですね、そういう
人たち
は、全体の
戦略
をしっかり見きわめて、こうするということを申し上げますが、細かい戦術とか
研究
のやり方とかテーマとかいうものは、
研究者
の層から上がってこなければなりません。ただし、勝手に自分の
研究
をやりたいということではだめだということをしっかりと全体が共有してやるというガバナンスが最もふさわしいと思ってございます。 そういった意味で、新しいテニュア
制度
をこれから構築するんですが、
研究者
の中にも、ずっと
理研
にいて
理研
のコア
研究者
となってくださる方と、
理研
にいる
期間
、腕を磨いて、すばらしい
研究
環境
で
研究
をやって、
大学
に行きたいという方もおられますよね。あるいは、長期の
研究
をじっくりやりたいんだという人もいますよね。いずれも、長期とか、ある程度
成果
が出るまでというような
制度
は、今の
任期制
度の中では難しいという声が非常にございました。だから、やはり
人事制度
を
二つ
持つんじゃなくて、両方やる。
センター長
も、非常に優秀な方が
センター
を
運営
しておられます。
研究者
としても立派、人物としても立派な方がおられますが、
研究
センター
の任期が来れば一応そこで雇用関係は終わりという形に現在なっております。そういう人も、しっかりと
理研
の中のコア
研究者
として次の
ミッション
も経験を生かしてやってもらう。フレキシビリティーのある、適応性のある
研究者
として成長してもらいたいという思いもあって、一元化ということを申し上げてございます。
テニュアトラック制度
は、十分によく
考え
て、
モデル
となるようにつくり上げていきたいと思っております。
津村啓介
25
○津村
委員
定年制
がどのぐらいの割合でというところまで、できれば踏み込んでいただきたかったのですが、これから
現場
の
意見
を大切に聞きながら進められていくということなのかなというふうに解釈させていただきました。 それともちょっとかかわるんですけれども、
STAP細胞
の
研究
不正の事後対応等の
議論
がこの間るるあったわけですけれども、
理事長
は、STAPはス
トップ
というふうにおっしゃられて、もっと前向きな話をしていこうじゃないかということで、今回の、背中が丸まってしまっている、背筋を伸ばして頑張れる体制をつくるということをおっしゃっているわけです。 これは、スピード感といいますか、この間、少しスピードが遅かったという批判もあって、今回の新しい
理事長
御就任ということもあるんだと思っているんですが、この
科学力
展開プランは大体どのくらいの時間軸で進めていかれるお
考え
ですか。
松本紘
26
○
松本参考人
科学力
展開プラン、これは就任してから一カ月半ぐらいで取りまとめたものですが、それだけに、大筋の枠が示されておりまして、細かいことはまだこれから詰めるということが多くございます。 スピード感という意味では、私はスピード感が最も大事だと思っています。世の中の変動が非常に激しい中、
日本
の
大学
とか
研究機関
がやや遅いという非難が諸外国からも寄せられております。 したがいまして、私は、
人事制度
が一番難しいので、きょう言ってあしたというわけにはいきませんが、これは一年以内をめどにやっていきたいと思ってございます。 種々の改変が伴いますから、現在進行中の
研究
が大きくスローダウンしないということは絶対条件だと思っております。その中で、できるだけ速やかに私どもの
ビジョン
を実現していくよう
努力
をしたいと思ってございます。
津村啓介
27
○津村
委員
ありがとうございます。 一年という
一つ
の節目も含めて御答弁いただきましたので、大変力強いお言葉だったと思います。
最後
になるかもしれませんが、少し
お尋ね
しにくい
質問
になりますけれども、今回の
松本理事長
の御就任というのは、ちょうど
国立研究開発法人
への衣がえというタイミングと軌を一にしておりまして、また、
大学
改革
でも内外に大変名をはせられた
松本理事長
の御就任ということで、大変期待の集まっているところでございます。そうした中で、早速十七の拠点を回られて、一カ月半でこれだけのプランをまとめられて、私ども、大変期待をしているところでございますし、国会でも、しかるべき時期には、
理研
に関する法案等の審議も含めて、応援できるところを応援していかなければいけないということを思っているんです。
一つ
、どう受けとめていいのかなというふうに思いましたのが、前
理事長
の野依さんの今回のJSTの
センター長
就任という人事でございます。これは
松本理事長
が御判断されたことではありませんけれども、しかし、今回、引責という言葉が適当かどうかは別として、STAP問題に
一つ
の区切り、節目をつけるという意味合いが、この野依さんから
松本
さんへの交代には込められていたと思いますし、そこが
松本理事長
への期待とコインの裏表であるわけです。 その後、JSTの
センター長
に野依さんが、十一年五カ月という長い
理研
理事長
から移られたことというのは、
理研
改革
のイメージと少しそごがあるといいますか、違和感を感じたわけですけれども、新しい
理事長
として、
松本
さんはこの件にどういう御感想を持たれたか。私は、
松本
さんもある意味では当事者のお一人だと思うので、あえて伺うんですけれども、そのことが一点。 一方で、野依さんのことを批判めいた形で御
質問
するのは本意ではありませんので、
松本
さんから見た野依前
理事長
の御功績について、あわせて
お尋ね
したいと思います。
松本紘
28
○
松本参考人
お答えのしにくい
質問
でございましたが、お答えしたいと思います。 御
案内
のとおり、野依前
理事長
が就任されて、独立行政法人としての
理研
というものを
立ち上げ
られました。その時期にはかなりの御苦労があったのではないかと推察してございます。ノーベル賞を受賞された優秀な
研究者
でいらっしゃることは誰も疑いようがない事実でございますけれども、かなり力を発揮されまして、現在の
理研
まで、去年の事案が起こるまで、
SPring
8を利用拡大したり、「京」を
立ち上げ
たり、いろいろ、
日本
の
科学技術
の最先端を引っ張ってこられたというふうに私は思っております。 御苦労は大変多かったと思いますが、残念ながら、昨年の事案で大変つらい思いもされましたし、いろいろ精いっぱいやられたのではないかと思ってございます。
研究者
としてはもちろん私は尊敬しておりますし、いわゆるマネジャーとしても、その時期その時期、最大限の
努力
をされたかなと思います。 ただ、去年の事案は、いろいろな観点からいいますと、非常にフィーバーになりましたので、タイミングよく情報を発するという意味では、少しおくれをとったようなことがあったのかもしれません。しかしルールは、百五十日までに
調査
をやるという、
内部
で文科省主導のルールがありますから、それにのっとって粛々とやっておられたように外からは見えました。 以上、私の感想でございますが、野依先生は非常に優秀で、
日本
国は外国と違って、一般的に、世の中に
定年制
というのがあるんですよね、年齢で、あるところから若い人にバトンを渡すというような風土がございますが、外国に行きますと、そういうことを言うと、シニオリティー・ディスクリミネーションと言われて、年齢じゃない、能力だというふうに言われておりますので、それぞれのポストは、あるいは仕事は、個人個人の能力に応じて
最適
なところに就職するというのがいい
社会
ではないかと思ってございます。
津村啓介
29
○津村
委員
御丁寧な答弁、ありがとうございました。 時間が参りましたので、終わります。
坂本祐之輔
30
○
坂本委員長
次に、伊東信久君。
伊東信久
31
○伊東(信)
委員
維新の党の伊東信久でございます。
松本紘
理事長
、本日は、お忙しい中お越しいただきまして、まことにありがとうございます。
理事長
の東洋経済でのコメントで、「光はその辺に散在している状態ではたいした力はありません。しかし、コヒーレントにするとレーザー光のような強いパワーを持ちます。同様に、
理研
に在籍するひとりひとりに共通意識を持ってもらい、皆でその方向に進んでいく。」とコメントされておられました。
松本理事長
の
研究者
としての功績は、今さらこちらで述べるまでもなく偉大なものであり、
理事長
に就任されたといえども、やはり
研究者
の一面もあるかと思います。 私自身、臨床医としまして、椎間板の中に針をぶすっと入れまして、そこに光ファイバーを入れまして、レーザー光で椎間板を焼き切るという治療をやりつつ、阪大の国際医工情報
センター
でレーザーの
研究
というのもやらせていただいております。コヒーレントというのは波長のこともあると思うんですけれども、その波長をそろえるのに、四百五ナノメートルがいいのか、千十五ナノメートルがいいのか、日々四苦八苦しているんです。 私は、招聘准教授という役職を拝命させていただいています。私のボスの教授が工学部の教授でございまして、そのまた
センター長
が医師、外科医の先生なんです。 例えば、野球の
世界
でいうと、プレーイングマネジャーという選手兼監督がまれに存在しておりまして、現在では中日ドラゴンズの谷繁監督、一昔前ではヤクルトの古田監督、もっとさかのぼれば南海ホークスの野村監督、タイガースの村山監督とおられました。 先ほど
理事長
は、
理研
は
キャッチャー
で、サインを出すとおっしゃっておられました。所属する組織の
マネジメント
をしつつ、かつ
研究
の細かな指示もされると思うんですけれども、例えば、CiRAの山中教授は、こちらで
参考人
として来られたときでも、やはり私は
研究者
であって、
研究所
には別にCEOのような立場の人を置いていただきたいという御
意見
もございました。 さて、
松本理事長
は、
理化学研究所
を
運営
するに当たり、
研究者
としてのお立場と経営者としてのお立場があるかと存じますけれども、この双方の立場に対するお
考え
をまずお聞かせください。
松本紘
32
○
松本参考人
私も、
大学
にいて、若いころは
研究
をがんがんやっておりました。恐らく、教授になって半分ぐらいまでは、教育と
研究
だけに打ち込むことができました。しかし、年齢が重なりますと、いろいろな役職が当たります。選挙でそういうふうになっていくわけです。そうしますと、
研究
ガバナンスということを意識するようになります。 私は、そうして結局定年まで行って、実は
企業
に就職して
研究開発
等をやろうと思っていたんですが、副学長という指名を受けまして、それからひょんなことで総長になりまして、九年間、学術ガバナンスということをやらせていただきました。 おまえはガバナンス寄りか
研究者
寄りか、そのマインドを失っていないかという
お話
だと思います。
研究
の具体的なテーマ、私も興味のあることは幾つかあります。私も割合いろいろなことに興味を持つものですから、たくさんの種類の
研究
をやってまいりました。それを一個一個しっかりやるということも、思いを持つことは
研究者
として当然なんですが、一方では、それに集中し過ぎますとバイアスがかかると思っています。別の立場で自分の
研究
とほかの人の
研究
をバランスよく見るというのは、ぜひ必要です。 そういう意味で、
研究
から少し退いて、関心のある
若手
の
人たち
には声はかけますが、細かいことに余り深入りしないという立場でやりたいと思ってございます。というのは、いろいろな
センター
がございますし、いろいろな専門
分野
がございますので、ガバナンスという観点では、
研究
の手法とか
研究
のあり方とか、そういうものについては経験がございますからアドバイスはできますが、中身についてはやはり
研究者
自身が
考え
ないといけない、こういうふうに思って、ガバナンスを発揮していきたいと思ってございます。
伊東信久
33
○伊東(信)
委員
丁寧にお答えいただきまして、ありがとうございます。 本当に、例えば中日ドラゴンズの落合監督などは、名選手であって名監督であったと思うんですね。例えの中に、名選手というのは名監督にあらずというような例えもありますけれども、
松本理事長
は、名選手であり名監督である。かつ、落合監督の批判じゃないですけれども、落合監督は余りちょっと人気はなかったんですよね、だから、人気のある落合監督に
松本理事長
はなられるんじゃないかと期待しております。 落合監督が人気がなかった
一つ
の理由として、いわゆるマスコミの
対策
というか、広報の仕方が余りうまくなかったような気がします。 さて、
STAP細胞
の問題になるんですけれども、私自身は、単にSTAPのペーパーがネイチャーにアクセプトされた、それだけのことなんですね。そこからの
議論
はいろいろ世間を騒がせておりますけれども、
理化学研究所
というのは、やはり思い返せば、
理事長
のコメントにもありますけれども、教育機関ではなく
研究機関
でありまして、特にティーテル、学位を与えるわけでもない。そうなると、先生と生徒といった師弟関係ではないので、マスコミが大々的にあおっていたチェック
機能
といった意味では、教育機関と
理化学研究所
の体制自体を混同したように私は感じたんですよ。 ただ、やはり広報に関しては、まあ過去のことですけれども、いろいろ問題というか、かかわった人間が別々に出てきて、それぞれの言い分をばらばらにアナウンスしていました。ばらばらに会見しても、いたずらに世間の関心を買ってしまうことでありまして、私自身、
世界
レベルの
研究者
の
方々
が肩身の狭い思いをしているというのは非常に心が痛む思いでありましたし、
研究
に関してはやはりオール・ジャパンでサポートしていく必要があって、足の引っ張り合いをしている場合じゃない、国際
社会
を生きるために。 そこで、新たな体制のもとで、そういったところに労力を注ぐのは
理事長
としては本当に不本意かもしれないですけれども、この体制のもとでのこういった問題も踏まえての新しい広報の体制に関してのお
考え
をお示しください。
松本紘
34
○
松本参考人
御指摘のように、
研究者
コミュニティーが
社会
との接点を持つのは広報ということになります。大変重要な問題だと
考え
ております。 昨年のSTAP問題に関する報道のあり方は、少しどうかという批判もございます。 これは、私はこういうふうに
考え
ています。 今後、いろいろな意味で
研究成果
を発表してまいりますが、まず、発表文の中身が非常に難しい専門用語だけになっておって、記者の皆さんもよく理解できない、まして市民にはそれが伝わらないというようなことはやめましょうということを言っています。だから、広報には十文字以内でタイトルをつけてくださいと。 それから、メディアの
方々
にもぜひ勉強していただきたいという思いが非常に強うございます。 そういう意味で、私は、
理研
では
理事長
記者懇談会を月一回開催するとお約束をいたしました。そうすることによって、ふだんから、いろいろな科学リテラシーの話とか内容について記者とシェアするというバックグラウンドを醸成することが何よりも大事と思ってございます。 その上で、いろいろ個別の
研究
発表というものに取り組んでいただきたい、こんなふうに思っております。 そういう意味で、広報担当
理事
には、
社会
面に強い、指導力をお持ちの
理事
、女性でございますが、羽入
理事
に来ていただいて、
一緒
になってそういうことを進めてまいりたいと思ってございます。
伊東信久
35
○伊東(信)
委員
ありがとうございます。 おっしゃるとおり、マスコミの方もせめてペーパーのアブストラクトだけでもちゃんと理解して臨んでほしかったなというのが、そのときの私の感想でございます。 そこで、ちょっと話を、時間もあれなので、どうしてもお聞きしたいことなんですけれども、
国立研究開発法人
になられての
理事長
の就任ということで、そこからの法整備というのはまだできていない状態でお聞きするのもなんなんですけれども、人材に関しまして。 例えば、
海外
から優秀な人材をいわゆる給与の枠を超えて入れるにしても、逆に、
日本
の優秀な人材が
海外
に流出するのを防ぐためにいわゆる報酬とかのことを考慮するにしても、例えば、医学の範囲に関して、再生医療の範囲では、東京
大学
の中内教授などは、
理事長
も行かれていましたけれども、カリフォルニア州のスタンフォード
大学
に
研究室
を構えておられる。だけれども、医学の範囲でもこの例も結構まれでして、野球でいうと、イチローを初めとする
日本
のプロ野球の人材がメジャーリーグに流れることを防ぐというのも大事だったんですけれども、それだけのプレーヤーが果たして
日本
の中でどれだけ育てられて、ただ報酬だけで縛れるものなのかどうかということが
一つ
。 逆に、
海外
からの優秀な
研究者
なんですけれども、例えば、メジャーリーグの四番バッターというのは、
日本
のプロ野球にはやはり来ないと思うんですね。シンガポールを含めアジアに行かれるレベルのアメリカの
研究者
、ヨーロッパの
研究者
であれば、
日本
の中にももっともっと優秀な人材がおられると思うんです。
研究
というのは、医学の範囲でも工学の範囲でもいろいろな、自然科学というのは多岐にわたると思います。だから、優秀な四番バッターを九億円で引っ張ってくるよりも、一億円の年俸を九人にした方が
研究
自体が潤うと思うんですね。それが
若手
のやる気にもつながると思うんです。
研究者
育成に関する予算づけを、毎回私自身は訴えておるんですけれども、いわゆる主任
研究員
、中間管理職の
研究者
、これらが
マネジメント
能力を伸ばすことが必要だと思うんです。こういった、国の施策としての予算づけになってしまうと思うんですけれども、一人のビッグネームというよりも、たくさんの中間の
方々
を手厚くする方が必要ではないかと私自身は
考え
ておるんですけれども、
理事長
の
考え
をお聞かせください。
松本紘
36
○
松本参考人
研究開発成果
の
最大化
というのが
ミッション
になりましたから、今
委員
御指摘のことも
一つ
の要素になろうかと思います。
研究者
全体が
社会
の中でどういう
社会
的地位を持つかということにも関係するんですね。プロ野球選手のような、数億円というような収入を持つ人はいないわけですけれども、やはり、こつこつ真面目にやってきた
人たち
が自分の仕事に誇りを持って、その誇りが維持できる程度の
社会
的
評価
というのが必要だろうと思ってございます。
伊東信久
37
○伊東(信)
委員
ありがとうございます。
理事長
は、コメントの中にも、答弁の中にも、産学連携の話をされております。 例えば、
研究所
のビッグネームの方に大きな年俸を与えることも、これは夢を与える意味でも非常に必要なことではないかと私個人では
考え
てはおるんですけれども、一方で、本当に職人の方というか
研究者
の方というのは、そんなことよりも
研究
費と思われる方も多い。 それでも、やはりいわゆる報酬というのが
評価
につながりますので、自分自身の
評価
というのであれば、そこで産学連携、つまりは、
研究所
に行くよりは民間の、医学であれば、製薬会社で
研究
した方がより年俸がいいのであれば、例えば、私は招聘准教授という立場なので、いろいろな兼職ができるわけですね。そのあたりの
研究所
と民間との流動性、これはマインドの問題なのか、
システム
の問題なのかというのは、今後、我々もちょっと
考え
ていかなければいけないんです。 そういった産学の流動性を、もっともっと自由化するような
システム
というのを、私自身も
考え
ておるんですけれども、
理事長
のお
考え
をお聞かせください。
松本紘
38
○
松本参考人
人材の流動性ということを御指摘いただきましたが、これは大変重要なことです。 産学というふうに今おっしゃいましたが、
研究者
と
産業界
の
方々
が協力する、これは当然、
イノベーション
を起こしていく上では不可欠だろうと思っています。 ただ、そのやり方は、例えば
産業界
の方が
理研
に来られて
研究者
と
一緒
に
研究
する、これは必要なフェーズです。そこから先が難しいと思っておりまして、これは先ほど御
質問
も出ましたが、
研究者
の
評価
をどうするかということとも関係がございます。 つまり、共同
研究
をして、
イノベーション
につながるようなシーズをつくるんですが、そこから実際に製品にしようと思うと、その先が長いんですね。そこは、
論文
に余りならないような細かいチューニングが必要です。そこのところの
評価
が、今
研究者
の
評価
に上積みされておりません。したがって、そこまではやるけれども、そこから先は、もう別の
研究
に行っちゃって、
企業
の人は勝手にやってください、そういう事態が実は起こっておるかと思います。 そこで、先ほどちょっとお答えいたしましたが、
研究者
の
評価
の中に、例えば、製品化するのにすごい
努力
をした部分については
論文
何編に相当するというような基準を新たに設けない限り、しかも、それが
日本
の
大学
と共有されない限り、なかなかそこまで進まないと思っておりますので、ぜひ
理研
としては
モデル
ケースを
考え
てみたいと思ってございます。
伊東信久
39
○伊東(信)
委員
ありがとうございます。 ペーパーであれば、インパクトファクターとかがあると思いますけれども、そういった、パテントに関しての点数化というか、数字化というのも非常に大事なことだと思います。
松本理事長
の
リーダー
シップにより、
理研
職員の力がコヒーレントされ、強い光になることを期待いたしまして、
理研
の新たなる第二章も期待いたしまして、私の
質疑
を終了させていただきたいと思います。 ありがとうございました。
坂本祐之輔
40
○
坂本委員長
次に、伊藤渉君。
伊藤渉
41
○伊藤(渉)
委員
公明党の伊藤渉でございます。 きょうは、
松本理事長
、大変お忙しい中当
委員会
の
参考人
質疑
に御
出席
をいただきまして、心から御礼を申し上げます。 現在は、御存じのとおり、来年から始まる第五次
科学技術
基本計画の策定の時期でもございます。また、現政権において、経済政策として、アベノミクスと呼ばれる経済政策を実行中でございますが、文字どおり、三本目の矢である成長
戦略
の中核を担うのが
科学技術
・
イノベーション
という
世界
であることは、これは論をまたないことだろうと思います。 そうした観点から、私どもも、昨年の常会で、議員提案によりまして
研究開発
力
強化
法を改正し、先ほど来出ておりますが、
有期
雇用の状態にある方の、次善の策ではあると思いますけれども、これまで五年が限度だったものを、法律上、十年まで可能にさせていただきまして、いよいよ、先ほど来ございますとおり、特定
国立研究開発法人
という
制度
をつくって、
世界
のさまざまな
研究機関
に伍する活動ができるような体制をまさに立法府として整備していこうというところでSTAPの問題が残念ながら発生をして、その法律の成立の時期が少しずれ込んでいるというのが現状だろうと思います。 これまでも御
質問
がありましたけれども、まず、
研究
活動における不正ということについて、改めてまとめて御答弁をいただきたいと思います。 二十六年度中だけでも、文部科学省の資料によりますと、全国の
研究機関
の
調査
委員会
において、十一件の
研究
不正が認定をされている。そして、昨年の八月に、新たなガイドラインが作成をされました。衆議院の
調査
室がまとめていただいた資料の中に、
松本理事長
の就任当初の報道のコメントも掲載された記事がございまして、その中で、「
研究
倫理に基づく自己管理も必要だが、それだけでは防げない。共同
研究者
同士による
意見
交換や、外部からの客観的
評価
など何重もの防止策が必要だ」というふうにも述べていらっしゃいます。 改めて、ガイドラインはできました、あとはこれをどう実効ならしめていくかということが、大多数の
研究者
の方が本当に真剣に取り組んでいただいているにもかかわらず、
一つ
のこうした、またSTAPの問題が特に世間にもクローズアップをされておりましたので、大きなブレーキになってしまったことは、本当に残念きわまりないことだと思います。 やはりこういったことを未然に防ぐために、我々も力を合わせていかなければならないと思いますので、再発防止の
取り組み
について、まず冒頭お伺いをしたいと思います。
松本紘
42
○
松本参考人
お答えいたしたいと思います。
研究
不正というのは、残念ながら、いつの
時代
にも起こってきた。過去形、そうですね、完全にゼロになることを理想といたしますが、起こらないように常に
研究所
としても取り組むということが大変大事だと思ってございます。 昨年の事案も十分に考慮いたしまして、
理研
では、アクションプランというのをつくって、これは、今
委員
御指摘の事柄を我々は着々とやるというプランを立ててございます。 具体的に申し上げますと、例えば、不正でもいろいろございますが、
研究
を共著
論文
で
一緒
にやったときにお互いがチェックしていなかったという事案が昨年ございましたが、
研究
倫理のきちっとしたトレーニングということも必要と思いまして、全所にEラーニング等を通じて受講するように言いました。昨年の段階で、一〇〇%受講させております。もちろん、新しい人がまだ入ってきていますので、その一〇〇%は少し落ちているかもしれませんが、落ちないようにきっちりと指導してまいりたいというのが一点。 もう
一つ
は、各
事業所
ごとに
研究
倫理教育責任者というのを置きました。そういう
人たち
に、
研究
倫理の教育を日常からちゃんとやってもらうということが
一つ
ですね。 それから、共著
論文
等を出される場合に、著者はいろいろ作業を共同でやるわけですけれども、
論文
になるときに、どういうデータが使われたか、そのデータは本当に
現場
で見たものかということをお互いにチェックし合うという
システム
、これは常識なんですが、その常識を外れる場合があるということを想定して、あなた方はちゃんとチェックしましたかというチェックリストを全部つくりまして、共著者全員に見てもらって、サインをしてもらうという方向に検討してまいりたいと思います。 ただ、御
案内
のように、多分御存じと思いますが、百人とか二百人の著者の、でっかいCERNの
研究
なんというのは、百人にそこにサインしてもらうだけで半年かかりますので、そういうことは例外だと
考え
たいと思いますけれども、普通の数人でやられる
研究者
の
論文
については、きっちりしたことをできるような枠組みをつくって指導してまいりたいと思ってございます。
伊藤渉
43
○伊藤(渉)
委員
改めて確認をさせてもらいました。ありがとうございます。 一方で、当然、
研究機関
ですので、
研究者
の皆さんの自由な発想、自由な活動を妨げることがあってはならないとも思いますし、特に、こういう
課題
が発生したときに、いろいろな書類の作成がふえたりして、そのことに随分手間がとられるということもできるだけ避けていかなければならない。一番本質的には、
研究
ということに時間を割いていただくことが当然重要だと思いますので、その辺のかじ取りをぜひともお願いしたいと思います。 冒頭申し上げたとおり、
我が国
は成熟した国家でございますので、これからの経済の持続的な
発展
を
考え
ても、
イノベーション
というものを起こし続けていかなければならないというふうに思います。 そういう意味では、先ほどあるとおり、人の問題、そしてそれを起こす場の問題、またそれが起こされる
環境
、ソフトの問題、さまざまありますけれども、まず、いわゆる
イノベーション
を可能にする場について、少し
理事長
のお
考え
をお聞きしたいと思います。 先ほども津村
委員
の
質問
に対してお答えをされておりましたけれども、私も全く同感で、私もエンジニア出身です。 いわゆる直観的な物言いをしますと、
産業
革命以降、効率を上げるためにいろいろなものが細分化されて、その細分化された中で効率が追求されて、随分
世界
は
発展
を遂げてきたと思います。 これから必要なことは、まさに細分化された結果、その細分化された部分部分のプロフェッショナルはたくさんいるんですけれども、全体を見ながら統合していく力というものを培っていかなければ、これから
イノベーション
を発揮していくことはなかなか難しい。目ききという言葉で表現されることもございますし、そういった人材をしっかり育成していかなければならないというふうに思います。 それを可能にする場というか機関というか、それに、
理研
はもちろんですけれども、国立
大学
も重要な役割を果たしていっていただかなければならないと思います。 最近は、よくオープン
イノベーション
を生み出す場という表現がされますけれども、国立
大学
や
理研
を初めとした
研究機関
がその場たり得るために必要なことは何かということを
理事長
の御見識の中から御披露いただければ幸いでございます。
松本紘
44
○
松本参考人
お答えいたします。 答えといっても、ユニークな、答えがないような、難しい問題だと思います。
委員
御指摘のように、
研究
分野
、技術
分野
が非常に細分化しております。それぞれのプロはいるんですが、その道のことに関しては言うけれども、ちょっと外れますと、私はそれは専門じゃありませんと逃げ腰になるという傾向が見受けられます。 これは、そもそも学問あるいは技術、科学の
世界
からいうと、ひずんだ状態になっていると思います。そういう意味では、異
分野
の
方々
との交流というのは一番重要でございまして、それができ上がった専門家同士を会わせて
議論
するというのも
一つ
の方法ですが、もう少し若い
時代
から異
分野
と接触する
機会
を設けないと、異
分野
と接触するという習慣が身につかないんですね。 京都
大学
では、白眉という
センター
を設けまして、全く
分野
は問わない、いろいろな
分野
の人が集まっていらっしゃいという
一つ
の
研究者
集団をつくりました。こういう
人たち
は若いんですが、異
分野
と交流することだけを
一つ
の条件にしましたので、非常にいい
研究成果
が出ております。科研費の獲得率も断トツに高いですし、いろいろな新しい
研究
の芽が出ております。 こういった異
分野
の
研究者
、つまり、工学とか医学とか、あるいは場合によっては
社会
科学の人も
一緒
にしてやりましょうという動きは大変重要で、
理研
では
社会
知創成事業という事業をやっておりまして、これは野依
理事長
が言い出されたことなんですが、そういう人を集めましょうという機運がございます。 そこにもう少し、
産業界
の人も、いろいろな異業種を呼び集める、そして、異
分野
の
研究者
を集めて例えば談話会を開く、こういうことをふだんからやらないと、いきなり何か
イノベーション
をやるために集まってちょうだいというだけでは
効果
が薄いのではないかと私は認識してございます。
伊藤渉
45
○伊藤(渉)
委員
ありがとうございます。 私も、
日本
全体ではさまざまな
取り組み
が行われているというふうに認識をしておりまして、このゴールデンウイークは、文部科学省の予算で
センター
・オブ・
イノベーション
という予算があって、金沢工業
大学
は、炭素繊維を使った次世代のインフラの
研究
をされておりました。これも、現地に赴いて私も初めて知ったところですが、炭素繊維自体の生産は
日本
が六割持っているのに、それを商品化して世の中に売っている率は極めて少ない。結果として、経済という意味でも大変損失をこうむっているというような
お話
も伺ってきました。 また、
日本
政策投資銀行は、iHubと呼ばれる
取り組み
をしておりまして、少し経費を政策投資銀行が捻出しながら、まさに異
分野
の方が集まっていただいて
議論
していただく場を提供している。 そういった
取り組み
がさまざまなされているんですけれども、これはまさに政府そして我々の
課題
なんですけれども、では、
日本
じゅうで起こっている全体を政府が把握できているのかということも、これはもう我々が改善していかなければいけない
課題
として認識をしております。またこれからも、さまざまな形で御指導いただければと思います。 時間が短いですので、
最後
にお伺いするのは、やはり人の問題です。これも、先ほど来出てまいりました。 今、整備をしようとしている第五次
科学技術
基本計画においても、人の問題については、流動性の世代間格差という表現が実はされております。 これはどういうことかというと、
若手
の
研究者
の人は、先ほど
理事長
も問題意識を持っていただいている任期つきの雇用が大変多く、ある意味、それは逆に流動性が高い。一方で、シニアの
研究者
の方は流動性が低いというふうに、我々は実際に
大学
で仕事をしていないので、
現場
を見て感じているというよりも、いろいろな書かれたものを読んでそういうふうに認識をしているわけですが、それを改善するために、先ほど来出てきている
テニュアトラック制度
の導入あるいは
クロスアポイントメント
の活用などという言葉をよく読んでおります。 最終的には、やはり物を形にしていくのは人の力でございますので、今言われているような
テニュアトラック
や
クロスアポイントメント
制度
の活用を通して、シニアの方も含めて、いわゆる
研究
の
世界
に流動性を高めていかなければならない、今こういう方向で計画は策定をされていっているんですけれども、この方向性自体に対する認識は
理事長
も同じかどうか。また、
研究者
の流動性を高めるということについて、一方で、やはり安定した雇用がないと落ちついて
研究
ができないということも報道などを見ていると出てくるものですから、そのあたりの
理事長
の御見識をお伺いしたいと思います。
松本紘
46
○
松本参考人
お答えいたします。 流動性と安定性というのは相矛盾する言葉なんですね。どちらも必要だという認識は皆さん持っている。 流動性というのは昔はなかった
社会
だったんですが、
若手
の
研究者
の流動性
制度
が導入されてから、
若手
はすごく動くようになりました。もうちょっと言いますと、動かされるようになりました。 シニアの人は流動性が低いという
お話
もございましたが、実は、シニアの人も流動しないといけないというふうに強く思っております。 そのために、
理研
は、
科学技術ハブ
という概念を出しまして、いろいろなところに
理研
の出張所、あるいは
大学
の中に
理研
が出ていく、あるいは
理研
に来ていただくというような
制度
を設けまして、シニアの人がそこのポジションから動く必要はないけれども、実質的な中身、アイデアであるとか、あるいは学生であるとか配下の若い人であるとかが交流できる場というのを設ける
制度
を設けなければいけないということで、
取り組み
たいと思ってございます。 これが
日本
じゅうに広がりますと、ポジションは持っているけれども、ほかに必ず力を発揮できる場所がある、そういうことをやるべきだと思っております。
理研
は、幸い、
大学
にはないような
設備
とか、
大学
にないようなグループを組む仕組みがございますので、ぜひ皆様方に活用いただいて、
理研
が
日本
全体の
科学技術ハブ
となる役割を果たしてまいりたい、こういうふうに思ってございます。
伊藤渉
47
○伊藤(渉)
委員
ありがとうございました。 短い時間でございましたが、大変
参考
になる
お話
をお聞かせいただきました。 我々としては、
理事長
がお持ちの手腕を存分に発揮いただけるように、法整備も含めてしっかり取り組んでまいることをお約束申し上げまして、私の
質問
にさせていただきます。 ありがとうございました。
坂本祐之輔
48
○
坂本委員長
次に、島津幸広君。
島津幸広
49
○島津
委員
日本
共産党の島津幸広です。
松本理事長
におかれましては、忙しい中、本当にきょうはありがとうございました。 私からも、
理研
の問題とともに、
日本
の科学
研究
をどう
発展
させていくかについて
質問
させていただきたいと思います。 STAPはス
トップ
と言われているわけですけれども、やはりこの事件というのは科学
研究
に対する
社会
の信頼を裏切る行為であり、それが
日本
を代表する
研究機関
で起きたという衝撃は非常に大きいものがあります。 今回の事件で、政府が
研究
不正を監視する機関をつくればいい、こういう
意見
もありますけれども、私はそれは正しくないと思うんです。
研究
とは、あくまでも政府などから独立して、自分の関心と好奇心、使命感でやるべきです。政府がそこに介入してきたら、政府批判の
研究
ができなくなってしまいます。不正が発生したときには、自分
たち
で不正を防ぐ体制をつくる必要があります。そうしないと、政府がどんどん口を出してきて、そのうち政府に逆らう
研究
がなくなってしまう、こんな危険があるわけです。
理研
における再発を防止するための対応は、先ほど御
説明
がありました。こうした
取り組み
はもちろん必要だと思うんですけれども、私は同時に、
日本
の科学
研究
の構造問題にも目を向けることが大切だと思うんです。
研究
不正再発防止のための提言書でも、通常の手順を踏まえずに小保方氏を採用したとして、その背景に、iPS細胞を凌駕する画期的な
成果
を獲得したいとの強い動機があった、こうしています。
成果
至上主義があったわけです。そして、その背景に、過度な競争があおられている
研究
環境
があると思うんです。
大学
や
研究機関
の基礎的経費が年々減らされ、一部の革新的
研究
に多額の資金が集中される。
研究者
は、資金とポストの獲得のために、短期で結果を出すことが迫られています。こうした
成果
至上主義と過度な競争が不正を生む温床になっているという指摘があるわけです。 この点についてどう受けとめ、そして、具体的にどう
理研
では対応していくのかということについて、まずお聞きしたいと思うんです。
松本紘
50
○
松本参考人
委員
御指摘の不正は、当然あってはいけないというふうに強く思っているところでございます。 いろいろ
制度
をやっても、それだけじゃだめよねという
お話
もございました。
研究者
は、
研究者
である前に人でなければならないと強く信じているところです。あらゆる人がそれぞれの立場で強い倫理観を持たなければ、
日本
のよき
社会
の伝統を守ることはできないというふうに思ってございます。それは、
研究者
を抱えてございます
理研
としても、何度も発信をこの四月以来しているところでございます。 それから、過度な競争がこういうことを起こすドライビングフォースになったんじゃないかという御指摘、当たらずとも遠からずというところは一部あると思います、一部でございますが。 やはり
研究者
ですから、
研究
の最先端のことをやりたいという気持ちはどの
分野
でも同じだろうと思います。そういう意味では、競争はどうしても入ります。しかし、それが過度なとなりますと、どこで過度かという判断が個人個人によって違うと思います。 やはり、競争は競争でも、フェアな競争ということは
研究者
の場合は十分になければならない、
研究者
である前に人でなければならないというのが強い信念でございまして、それをベースに、いろいろ
理研
の不正防止についても、
研究者
の自由な発想は大事にするけれども、それぞれの胸に手を当てて、これでええかということは常に反省をしながら進んでくださいということを申し上げたいと思います。
島津幸広
51
○島津
委員
ありがとうございます。 どこまでが過度かという話があったわけですけれども、いずれにしても、
科学者
としての倫理規範の確立を促すとともに、やはり、不正の温床となるような業績至上主義、それを助長する過度に競争的な政策を改める、これが今回の事件で求められている政治の責任だと私は思っています。 一部の
研究機関
への競争的資金の集中が今あります。これが健全な
研究者
養成の障害になっているという
意見
もあるんです。 スーパーグローバル
大学
に
研究
費や人件費を集中投資する一方で、各
大学
の基礎的経費が削減されています。
大学
間の格差と競争を一層広げる、こういう事態にもなっているんです。
日本
の民間を含む
研究開発
費に占める
基礎研究
の割合は一五%程度、これは欧米諸国と比べても低い水準になっています。
成果
至上主義、業績を上げる競争が
研究
現場
に押しつけられたことから、直ちに
成果
が上がる
研究
や外部資金がとれる
研究
が偏重されるようになり、
基礎研究
の基盤が崩れ、学問の継承が危ぶまれる
分野
も生まれる事態になっているということも聞いています。 科学あるいは技術の多面的な
発展
を促すための振興策と、
研究者
がじっくりと
研究
に取り組める
環境
づくりがやはり必要だと思うんです。そのためには何が必要だというふうにお
考え
になっているんでしょうか、お聞かせください。
松本紘
52
○
松本参考人
これは大変時間のかかる、人を育てる、人が基本でございますから、その人が健全な
考え
方を持つということがまずベースになければならないと思っております。 例えば、資金の集中化とか
基礎研究
費の低下ということは、統計データを見れば、明らかにそうなってございます。これをス
トップ
させて、いろいろな
研究者
が健全な気持ちで
研究
に取り組める
環境
、これは
理研
で、あるいは
理研
の
研究者
に対してはある程度できます。ある程度できますが、それが全国になりますと、これは国の施策の力もかりなければならないと思ってございます。
理研
では、いわゆる
戦略センター
には、
有期
で採用される、若い元気のある
研究者
がどんどん入ってきております。話を聞いておりますと、やはり、自分は次の職業を探すために、この与えられた五年間、実質は三年間ですが、そこで
成果
を上げたいという気持ちは皆さん強いですね。ただし、一部の方には、今度百五十人ほどの方と話をいたしましたが、じっくりこの
研究
をしたいんだけれども、
理研
の
制度
ではなかなか難しいよね、でも、それができるように何とかしてもらえませんかねという声もありました。 そういったいろいろな
若手
の声も、あるいは
調査
もして、先ほど申し上げました多様な
キャリアパス
が可能なような仕組みというものをつくってまいりたい、こういうふうに
考え
てございます。
島津幸広
53
○島津
委員
ありがとうございます。
研究者
がじっくりと
研究
に取り組める
環境
づくりのためには、私は、国の
科学技術
予算の配分、これを全面的に見直して、今偏重があるわけですけれども、人文だとか
社会
科学の役割をもっと重視する、あるいは
基礎研究
への支援を抜本的に強めることも必要だと思っています。また、
大学
の日常
運営
に必要な経費、基盤的経費の増額も図っていく。そういう中で、じっくりと教育
研究
できる条件整備も進めていく必要があると思っています。
研究
現場
では、先ほどもちょっと
議論
がありましたけれども、ポスドクと呼ばれる、
任期制
の非常に不安定な雇用に置かれている
若者
がふえています。
研究
を支えているこうした
若手研究者
の待遇改善は急務だと思います。 先ほどからも述べられている
テニュアトラック
制を
発展
させ、期限終了後の雇用先の確保をあらかじめ義務づける
制度
をつくることだとか、あるいは、ポスドクの方の賃金の引き上げ、
社会
保険加入の拡大などを進める、そのために必要な経費は国が責任を持つ、我が党は、こうした改善を進めるべきだと
考え
ています。 冒頭、先生の
お話
でも、若い
研究者
の元気、あるいは
定年制
と
任期制
の一体化という
お話
もありました。
若手研究者
の待遇改善についての先生のお
考え
をお聞かせ願いたいと思います。
松本紘
54
○
松本参考人
若手研究者
がどれぐらいの待遇であれば意欲を失わないかということは、大変重要な問題だと思っております。 私は、
研究者
になった昔の自分を振り返ってみました。私は、工学部を出たんですが、
企業
に行こうというふうに強く希望していたんです。ひょんなことで
大学
に残ることになりましたが、明らかに
企業
の方が待遇がいいんですね。 でも、
大学
に残りたいというやつもいるんですよ。それは何かというと、プライドですね、
研究
に対するプライド。だから、
若手
に対しては、プライドが持てる
環境
、これが一番重要だろうと思います。それは、
研究
環境
であったり、
研究
に対する
評価
であったり、よくやっているということが周りから応援してもらえるという
環境
をつくる、これが最も重要だろうと
考え
てございます。
島津幸広
55
○島津
委員
ありがとうございます。
制度
的にもやはりきちんとしていくことが私は大事だと思っています。 次に、産学連携についてお聞きいたします。
産業
と学術が連携して協力し合うことは、お互いの
発展
にとって有益なことです。しかし、大
企業
の利潤追求に
大学
が追随するような連携は、
大学
本来の役割が弱められ、
研究成果
の秘匿や
企業
との癒着などの弊害が生まれます。 産学連携の健全な
発展
のためには、国からの一方的な押しつけでなくて、
大学
の自主性を尊重し、
基礎研究
や教育など、
大学
本来の役割が犠牲にされないようにしなければなりません。また、産学連携を推進する国の事業や共同
研究
への補助は、地域や地場
産業
の振興にも力を入れて、中小
企業
の技術力向上への支援も拡充しなければならないと思っています。 健全な産学連携を進めるために、私は、国がガイドラインをきちんとつくるべきだと思うんです。先生、このガイドラインはどのようなものであるべきかということについて、お
考え
がありましたらお聞かせ願いたいと思うんです。
松本紘
56
○
松本参考人
産学連携につきましては、ほとんどのセクターの
方々
が、これはやるべきだというお
考え
です。 ガイドラインにつきましては、私はにわかには
考え
を持っておりませんが、御
参考
のためにこういう話をしてみたいと思います。
日本
が、戦後、苦しい状態から立ち上がった。戦前も、
日本
はそれなりの
努力
をして、いろいろ
産業界
と学術界が手を結んでいたということは事実でございます。例えば京都
大学
の例を申し上げますと、京都には優秀な
企業
がまだ本社を東京に移さずに頑張っておられますが、そういった創始者は、ほとんど、
大学
と実質上の共同
研究
をやられた、いわゆるアントレプレナーの
方々
でございます。 そういうふうに、何かをやっている
企業
があって、その一部を産学連携するというんじゃなくて、
企業
全体というか
社会
構造全体に貢献できるような
大学
の構造をやるべきだというふうに私は常々思ってございます。それはいろいろな形がありまして、個別テーマもございますでしょうし、新しい
産業
を起こすという意味で異
分野
の人を集める
努力
もそうだろうと思います。 例えば、中小
企業
の
方々
が、最先端の機械がどんどん新しくなるので、とても自分
たち
では買えないから、ついていけないというケースがありますよね。そういうのは、
大学
できちっと最先端の機器を持っているところがその中小
企業
の
方々
に来ていただいて、それである程度、二年とか三年、実習を受けて、
社会
に帰ってきてまたスタートアップする、こういうサービスも京都
大学
でやってございます。 そういった、
大学
でもたくさんやっておりますし、
理研
でも、当然ながら、いろいろな優秀な
設備
を持っているわけですから、いろいろなセクターの
方々
に来ていただいて、レベルアップを図っていただくということも必要かと思ってございます。
島津幸広
57
○島津
委員
ありがとうございます。 時間がありませんので、
最後
に、女性
研究者
の問題です。女性
研究者
の地位向上と
研究
条件の改善について伺いたいと思うんです。
研究者
の中に占める女性の比率が、今一四%程度です。非常に少ない現実があります。
大学
教員で見てみると、女性は二二%。これを国立
大学
に限ると、一五・二%です。これは、
世界
の中でも極めて低い水準となっています。しかも、
大学
では、助教、講師、准教授、教授と階層が上がるにつれて女性の割合が低くなる。一方、専業非常勤講師のような不安定雇用職では、女性の割合が五割を超えている。女性
研究者
は、男性に比べて劣悪な地位に置かれているわけです。 家庭における家事、育児、介護などを女性が担っている、あるいは出産、育児
期間
後の復帰が困難など、女性の不利な条件が多々あるわけですけれども、しかし、女性の才能が埋もれているという現状があるわけです。 男女共同参画を進めていくために
研究機関
が行うべき
対策
、あり方についてのお
考え
をお聞かせ願いたいと思います。
松本紘
58
○
松本参考人
女性の力を
日本
社会
がもっと活用すべきである、これは安倍総理以下政府も力強く取り組んでおられると思いますが、
研究
コミュニティーにおいても、やはりこれは大変重要なことだろうと思っております。 高等教育をパスして
研究者
になる方が多いんですが、高等教育に進まれる女性の数というものが大いに関係するんですね、
研究者
の女性比率というのは。 御存じと思いますが、
日本
の
大学
院で女性学生、院生は、約四分の一ぐらいだと思います。
研究者
の数は、それに比べて少ないですね。これは、
大学
院に進む女性の学生の数が過去には非常に少なかった、そういう
方々
が
研究者
適齢期になられた、数は当然少ないままですよね。だんだん学生がふえてきますと、比率の構造が年齢とともに上がってまいります。 そういうことを見ながら当然やるんですが、加速度をつける必要があるんじゃないかという御
意見
もありますので、各
大学
、各
研究機関
では
努力
をしてございます。
理研
では、女性管理者の比率は、現在、約九%から一〇%です、九・五%。それから、女性の
研究者
比率は一五・五%。これは比較的多い方だと思います。職員の方は女性が非常に目立ちまして、私が来てからも、随分たくさんの方が活躍しておられると思います。 そういった意味で、女性が力を発揮していただく
環境
というものは、
研究
環境
にせよ、かなり
理研
は進んだ
取り組み
をしているというふうに私は理解してございます。託児所とかいろいろな、もろもろの事柄に先進的に取り組んでいると思いますので、こういう意味でも、
理研
が
研究
組織としての
モデル
化という形で
努力
をして、取り組んでまいりたいと思ってございます。
島津幸広
59
○島津
委員
ぜひ
理研
が女性の能力を発揮できるように頑張っていただきたいと思います。
理研
の
研究
不正再発防止のための提言書では、
研究者
倫理の基礎となるのは、
論文
のインパクトファクターでも、獲得
研究
費の額でも、ノーベル賞の獲得数でもなく、自然の謎を解き明かす喜びと
社会
に対する貢献だと強調しています。 科学
研究
の健全な
発展
を支えるために、きょう伺った御
意見
もしっかり受けとめて、頑張っていく決意を述べて、
質問
を終わります。ありがとうございました。
坂本祐之輔
60
○
坂本委員長
これにて
参考人
に対する
質疑
は終わりました。 この際、
松本参考人
に
一言
御礼を申し上げます。
松本参考人
には、貴重な御
意見
をお述べいただき、まことにありがとうございました。
委員会
を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時七分散会