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参考人(
大島堅一君)
皆様、おはようございます。
立命館大学の
大島と申します。
今日は
意見を述べる機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私の
専門は
技術的なことではありませんで、
環境経済学や
環境・
エネルギー政策論でありますので、その観点からお話をさせていただきたいと思います。私
自身は二〇一一年に
政府の
コスト等検証委員会の
委員や
総合資源エネルギー調査会の
基本問題委員会の
委員などをさせていただいております。
まず、今日お話しする
二枚目の
スライドに移っていただきまして、三点お話ししたいというふうに考えております。
一つは、
費用と
費用負担についてということであります。
二つ目は、今回の
対象となっておりますJESCOについてお話しさせていただきたいというふうに思います。
三つ目は、
中間貯蔵施設をめぐって様々な論点がございますので、法案を審議するに当たって御考慮いただきたい点についてお話しさせていただきたいというふうに思います。
三枚目の
スライドに移っていただきまして、まず
費用負担についてでございます。
私の
費用負担論からいいますと、一体誰が
負担するのかということによって
事業者への
影響というのは大きく変わるわけです。
環境問題に対して様々な
費用負担がされていますけれども、
基本となる
原則というのは
汚染者負担原則です。
今回、
中間貯蔵施設の
建設・
運転費用に関しては一体誰が実質的に
負担するのかというところが非常に大事なことではないかというふうに考えています。
汚染者負担原則にのっとれば、
東京電力が当然ながら支払うべきことであり、これは
環境基本法第三十七条にも同じようなことが明記されています。ただ、今回の
政府の
スキームによりますと、
原子力損害賠償支援機構法六十八条、これは
国費を投入するという、
国費を
支援機構に対して入れる、資金援助するという条項に基づきまして、
政府は
機構に対して
資金交付をその分することになっています。すなわち、この分、
事業者に代わって国が
費用を負うことになります。そういう意味では、ここでは
国民負担になっているわけです。
そもそも、
支援機構法自体が
汚染者負担原則に反するような内容になっていると私
自身は考えておりますが、その上、今回
国費を投入するとなれば、ますますおかしな話になるのではないかというふうに考えています。
説明によると、
電促税の
使途変更によって追加的な
国民負担はないというふうに書かれていますが、これは
汚染者負担原則からすれば筋が通らない話なので、付け替えればいいという話ではないというふうに考えています。もし
汚染者負担原則から逸脱するということであれば、その理由は一体何なのかということが非常に大事なことでありまして、財政出動する以上、そこが非常に大事なことになるのではないかと思っています。
あと、
最終処分地の、これから三十年以内に
県外移設するということですが、
最終処分地の
建設、
運転ないしは、もう
一つは
事故炉から出てくる
放射性廃棄物、これはもっと
放射性が高い、
放射能がたくさん出てきますけれども、そこの
最終処分地の
建設・
運転費用の
負担に当たっての前例になるのではないかというふうに私
自身は懸念しておりますので、
最初の
放射性廃棄物の
処分場である、
処分場というか
中間貯蔵施設であるこの今回の案については慎重な御議論をしていただければというふうに考えています。
次、めくっていただきまして、
汚染者負担原則に関して考えてみると、
損害賠償、
事故炉の収束、あるいは
除染、
除染廃棄物の
処理処分に関して国が関与する、
責任を持って対処するというのは当然な話であります。ただ、国が強く関与することと国が
費用負担を行うということは別の問題であります。当然ながら、繰り返し申しますが、
汚染者、
加害者である
東京電力に
費用負担責任があるのでありまして、もし仮に国が
費用負担を行うのであれば、これは
福島原発事故を
発生させた国の
責任を認めるということになりますので、ここを明確にして、それを認めた上で
費用負担を行うことを
国民に対して分かりやすく提示すべきではないかというふうに考えています。
現実には、国の
事故発生責任が明確にはならないまま、
国民、電力消費者への
費用転嫁が実は進んでおりまして、次、めくっていただきまして、五ページに行っていただきますと、これは
政府や
東京電力の出している
資料を積み上げたものでありまして、私が恣意的に積み上げたものではございません。積み上げてみますと、大体十一兆を超える、
福島原発事故に関連して十一兆を超える
費用が、出費が出ているということになっています。
では、これは一体誰が
負担しているのかというのが非常に問題でありまして、六ページ目に行っていただきますと、個別のことは今日は時間がないので差し控えさせていただきますが、おおむね電力会社が
支援機構に対して払う
負担金、一般
負担金を通じて電力消費者
負担になっているか、電力料金への総括原価の中に入れていくという形によって電力消費者
負担になっているか、あるいは今回のような
国民負担になっているかというようなことが非常に行われています。もちろん
東京電力も自ら払う
部分はあるわけですが、それは十一兆円のうちの一部にすぎません。多くの
部分は、
国民、電力消費者への
負担になっておりますので、そこは非常に大きく懸念しておるわけです。
というのは、十一兆円と今申し上げましたが、これはまだまだこれから膨らんでいくものです。今現時点での金額ですので、例えばこれまでの
環境問題の出費からいきますと、水俣病は非常に大きな公害事件で非常に悲惨な被害も生み出したわけですけれども、出費でいいますと二千五百億円規模だったわけですね。今回の
福島原発事故は十一兆円ですので、もう桁違いに大きいわけですけれども、これがまだ現時点で十一兆円ですので、恐らくもっと上がってくるだろうと。既に要賠償額は私が見た時点よりも既に上がっております。
六ページの方の
中間貯蔵施設ですが、先ほど申し上げましたとおり、ここも
国民負担になるということはやはり少なくとも
国民に非常に分かりやすく
説明する必要があるのではないかというふうに考えております。
次に、七ページに行きまして、
費用そのものですけれども、これは一・一兆円というふうに見込んでいますが、本当にこれで足りるのかということであります。
衆議院の方の
環境委員会の酒井
参考人の発言を私は見ておりましたが、大体一
立米当たり十万円ぐらい掛かるということですので、一・一兆円というのはかなり楽観的な話なのではないかというふうに私は考えておりますし、私は
技術的には分かりませんので、その発言を見てそのような印象を持ったということでございますけれども、ただ、これは更にその
費用が増える可能性があるということだけは事実だと思いますので、そのときにまたどういう
費用負担をするのかということが問題になるわけです。この
部分についても
汚染者負担原則を逸脱する可能性があるのではないかというふうに考えておりまして、非常に懸念しているところです。
二点目のJESCOの話に移らせていただきます。
JESCOである必然性は本当にあるのかというのを私は考えました。JESCOは今回の
中間貯蔵施設に持ち込む
廃棄物を扱う
専門組織としてふさわしいのかということですね。
当然ながら、JESCOに関して言うと、
放射性廃棄物の処分実績はありません。それは、これから、似ているところもあるんだということで
技術的に積み上げるんだということだとは思いますけれども。
では、そのJESCOが担当する
施設の
運転ですね、運営
管理、
輸送に関してどういったことをこれまでやってきたのかということを今回の
参考人の陳述に当たって若干調べてみましたが、ホームページを見る限り、事業の業務委託をしているわけですね、民間に対しても業務委託をしていると。国がJESCOに委託し、JESCOが民間
事業者に対して委託するのであれば、何かその委託するための組織のように私には見えまして、果たしてこれでJESCOを通して国が
責任を負うというふうに言い切れるのかというのが私疑問に思いました。これに関しては御審議の中で御議論いただければというふうに思っております。
ちょっと一枚飛ばしまして九ページ目に行っていただきまして、あと、JESCOがPCB
廃棄物処分
施設で様々なこれはトラブルが起こっております。複数の事業所で起きています。
今回の
意見陳述に当たって簡単に調査した限りにおいては、五つの事業所がありますけれども、少なくとも四つは
幾つものトラブルが起こっておりまして、例えば北海道の件では、北海道新聞の報道によると、一件に関しては、道や室蘭市に報告義務があるにもかかわらず報告しなかったというような報道がされているところです。私は事実関係は確認しておりませんので報道によっておりますが、そのような報道もされているところです。
そういう意味では、やはりどういった
施設を運用するに当たっても様々な
事故、トラブルというのは起こり得るし、実際、JESCOというのは起こした経験もあるわけです。そのときに国の
責任は一体どういうふうに負うことになるのかということはあらかじめ整理しておく必要があるのではないかと。
中間貯蔵施設の
建設に当たっては、やはり住民の
皆様の懸念というのが非常に大きいところでありますので、搬入路も含めて、どういったトラブルが起こり得るのか、起こった場合にどう
責任を取るのかということについて整理し、必要であれば新たな制度をつくる必要があるのではないかと。
様々
資料を読ませていただきましたが、やはりトラブルの内容なども、ポジティブな面とネガティブな面、全面的にいろんなものを精査した上で、本当にJESCOがふさわしいのかどうかということも検討する必要があるのではないかというふうに考えておりまして、ちょっと一枚戻っていただきまして、八の二というふうに書いておりますけれども。
やはり、
福島原発事故というのは、先ほど申し上げましたとおり、出費の面に限って言っても、非常に巨大な被害といいますか
費用を
発生させておりますし、様々な対策が必要なわけです。その意味では、今回の法案、JESCO法の改正ということだけでは十分に対応できないんではないかと。むしろ、継ぎはぎ継ぎはぎではなくて、福島第一原発
事故に対する抜本的な法律、法整備というのが必要なんではないかと私
自身は常々思っているところであります。もちろん復興庁もありますけれども、例えば、これは単なる例ですけれども、
福島原発事故賠償・復興機関というようなものを、
環境省や経産省あるいは復興庁に分散している
福島原発事故に関連する様々な機能をそういった統一した機関に集中させて
損害賠償や復興に当たると。今回の
中間貯蔵施設の
建設においても、賠償問題と絡む
部分がやっぱり多いわけですね。ですので、賠償と復興を統一的に行うような機関をやはり整備していただく必要があるんじゃないかと。これは新しい法律が制定されなければならないので、やはり国会で御議論いただければというふうに強く願っているところです。
これは、ここの例で出させていただいたのは、私が座長代理を務めます原子力市民
委員会というところで「原発ゼロ社会への道」というものを書いておりまして、これは原発ゼロ社会を目指すというものですが、この中に、とはいえ、
福島原発事故にどのような対策をしなければならないのかというのを
専門家、弁護士や
技術者も含めて
専門家が取りまとめたものでありますので、ここの案を申し述べさせていただきました。
三点目です、
中間貯蔵施設をめぐる論点について
幾つか申し述べさせていただきます。
そのうち、まず一点目は、地域社会の関与です。
JESCOのPCB
処理施設が立地している自治体を調べましたところ、短期間でしたので全部見られなかったんですけれども、複数の自治体でここに書かれておりますような
委員会を設置して定期的に議論を行っているようであります。ということは、ここの、今回の
中間貯蔵施設の
建設に当たって重要なことは住民参加をいかに確保するかと、そういうことによって住民の不安や潜在的な危険を回避できるんではないかというふうに考えております。やはり
中間貯蔵施設の
建設、運用に関して、意思決定プロセスを透明化、住民参加をする必要があるんではないかと。これは株式会社ですので、なかなか住民参加というのが制度的に保障されないものですので、ここについては何とか住民参加ができるような仕組みというのを入れ込むべきではないかというふうに考えているところであります。
二つ目は、
中間貯蔵施設の予定地についてでありますが、土地の所有権の扱いをどうするかということが今非常に大変問題になっています。
売りたい人、売りたくない人いますが、特に売りたくない人というのは、とりわけその土地に愛着を持っている人であります。この人たちの気持ちというのは非常に重視しなければいけないわけですね。そういう意味では、売ってしまうということは、本当の意味でふるさとを喪失するということでもあるわけです。ですので、売るということに関して、ただ処分地を確保するということではなくて、ふるさとを喪失するための賠償なんだという位置付けをやっぱり与えるべきなんじゃないかというふうに考えているところであります。そういう意味では、丁寧な取組が必要だというふうに考えています。
今、土地の買収や交渉に当たっては個別で交渉しているというようなケースが
説明されていますけれども、やはり、地権者と町の間で例えば契約を結んだりして町と国が交渉するとか、様々な
スキームもあり得るので、単に個別で説得するということではなくて、より地域全体としてどうするのかという丁寧な
説明が必要なのではないかというふうに考えています。
あと、三十年後の土地の扱いですね。これは、原状回復措置をどうしていくのかということも展望に置きながら考えないといけない問題だと思います。これは
費用と
費用負担とも関わるところです。
十二ページの方に行っていただいて、もう短いですので飛ばさせていただきますが、
中間貯蔵施設の予定地についてですが、今、国は、土地は無価値であると、全損評価したので無価値であると、賠償したので無価値であるというふうに
説明していますが、ただ、これは買上げではないので、この
説明はやはりおかしいというふうに考えています。つまり、所有権は残っているので、東電が全損賠償したところで無価値になったとは言えないわけです。
一方、これから
県外最終処分をするのであれば、土地の価値というのは回復していく、
長期的には回復していくのではないかと。なので、無価値なものに対して代価を払っているという感覚ではなくて、これから価値が戻っていくものなんだということで、もう一度考え直す必要があるのではないかと。今回、詳しく述べませんし、述べられませんが、農地の扱いなどもこれから検討すべき
課題ではないかというふうに思っています。
十三ページ目ですが、
県外最終処分です。これは、
中間貯蔵施設建設に当たって非常に重要な点だと思いますけれども、これを一体どのように担保するのかということと、その
県外搬出後に跡地をどうするのかということですね。搬出後返すということであれば、地権者はその後を考えるのは当然でありまして、契約の内容に関わるわけですね。そういう意味では、どういうふうに返してもらえるのか、その跡地はどうするのかということも丁寧に議論すべきことだというふうに思っています。
十四ページ目ですが、最後になりますけれども、
環境影響については、地権者への
説明だけではなくて、搬入路周辺の住民の人たちにもとりわけ
影響が及ぶ可能性がありますので、
説明し、また
環境影響も評価するべきではないかというふうに考えております。
まとめは省略させていただきますが、今申し述べさせていただいたとおりです。十五ページを御覧いただければと思います。
以上、簡単でございましたが、
意見とさせていただきます。どうもありがとうございます。