○柿沢未途君 維新の党を
代表して、
労働者派遣法改正案に対し
質問します。(
拍手)
本
法案の審議入りは、当初は二十一日と言われていましたが、ここまでおくれました。複数の
閣僚が
辞任したのが
一つの原因です。それについて、
安倍総理はどう思っておられますか。
みずからの
任命責任についてお認めになられていますが、
責任というのは、何らかの
責任をとるときに口にする言葉です。
女性の活躍の象徴として異例の抜てきをされたのは、
安倍総理御
自身であります。
任命責任をどうとられますか。お伺いします。
そもそも、
閣僚起用前のいわゆる身体検査をどのように行われたんですか。第一次
内閣で痛い目に遭ったのに、調べればすぐにわかるはずの
小渕経産
大臣のずさんな
収支報告書をまんまとスルーしています。
内閣改造に当たって何も調べなかったんでしょうか。昨夜遅くは、
望月環境大臣の
収支報告書の話も出てきました。
今後も、
収支報告書の不適正は出てくるのではないですか。それとも、このような
ケースはもう出てこないと断言されますか。任命権者である
安倍総理の
見解をお聞かせください。
さて、
派遣法改正案です。
派遣は、同じ
職場で働く
正社員に比べて、
最長三年までしか
継続的に働ける見通しがなく、それだけ高いリスクにさらされていると言えます。ならば、
派遣は、同じ
仕事なら、安定している
正社員に比べてリスクに応じた高い給与を支払われるのが当然ですが、現状は全くその逆で、
正社員の方がはるかに好待遇になっています。これでは、
派遣は、安価な使い捨ての
労働力扱いされていると言わざるを得ないではありませんか。なぜ、このようになっているんですか。
安定して好待遇の
正社員がいて、不安定で、なおかつ待遇の低い
派遣や非正規がいる。これでは、一級市民と二級市民のような階層制の身分
社会になってしまいます。この現状を変えるべきという問題意識は、
安倍総理にありますか。
このような階層化した現状があるにもかかわらず、なぜ、
派遣で働くことをみずからの意思で選択する人がいるんでしょうか。
厚労省の
調査でも、
派遣で働き続けたいという人が四三%、
正社員になりたいという人が四三%、ちょうど半々になっています。なぜ、多くの人が、不安定で待遇も低い
派遣をあえて続けたいと
希望するのか。
それは、
正社員は
責任も大きいし残業もしなくてはいけない、ワーク・ライフ・バランスを犠牲にしなくてはいけない、それなら、待遇は低くても、
契約どおりに定時に帰れる
派遣の方がいい、そう思われているからでありませんか。
正社員のサービス残業は、今も横行しています。厚労省及び
総務省の
調査をもとに、
正社員のサービス残業の実態を計算すると、年三百時間以上。肌感覚では、もっと多いようにも感じます。
三六協定なんて誰も知らないでしょうという経営者の言葉が大問題になりましたが、この三六協定すら結ばずに時間外
労働を強いているブラック
企業がそこらじゅうにあり、
労働基準監督署はほとんど有効に取り締まれていない、これが実情ではないでしょうか。
労働基準法百十九条には、懲役刑を含む罰則がありますが、事実上、懲役刑は抜かずの剣となっています。
一方、アメリカでは、
賃金不払いは、
労働者一人につき一万ドルの罰金、そして倍額の
賃金の支払い、それを経営者ではなく直属の上司が支払う決まりになっています。これでは、上司は、うかうかブラック
労働を部下に命じられなくなります。
労働者保護が弱いと言われているアメリカでも、ブラック
企業のような
労働市場への不正参加は許さないのです。
平気でサービス残業を求められるような
正社員の
働き方を是正するために、より
実効性ある規制や罰則の強化が必要であり、いかなる
労働法制の改革も、それが手始めでなければいけないと
考えますが、
安倍総理の
見解を伺います。
残業実態や有休取得実績の開示の
義務づけも必要だと思います。
会社四季報で有名な東洋
経済に、就活生のための会社情報を集めた就職四季報というのがあります。
労働者を大切にする会社かそうでないかを見るにはこの本が一番と言われて、ページをめくってみました。
分厚い冊子には、残業時間と支給額、有休消化年平均、三年後新卒定着率といった回答データが会社別に掲載されています。いずれも、ブラック
企業を見分ける目安とされているデータです。
これらのデータについて無回答としている会社もありますが、みずから把握しているはずの残業時間や有休取得日数といったデータを積極的に開示しない事実そのものが、どのような
働き方を社員にさせているかということを示唆するものともなっています。
これらのデータの罰則つきの開示
義務を課したらどうかと
考えますが、
見解をお伺いいたします。
二〇一三年の
総務省の
労働力調査によると、
正規雇用は三千二百九十四万人と四十六万人減る一方で、パート、アルバイト、
派遣、
契約社員といった非正規は、九十三万人増の一千九百六万人となっています。特に
女性では、
正規雇用が千二十七万人、非正規が一千二百九十六万人と、正規、非正規が逆転しています。もはや、どちらが正規でどちらが非正規という物の言い方自体が成り立たなくなっています。
それよりも重要なのは、
雇用形態にかかわらず、
同一労働同一賃金の
原則を徹底し、そして、正規と非正規の二分法をなくしていくことではないでしょうか。我が党の基本政策でも、
同一労働同一条件の徹底により、正規と非正規の垣根を解消すると掲げております。
そこで、今回の
派遣法改正案を見ると、
派遣先の
正社員と比べた待遇の均衡を図るための配慮規定が置かれているだけで、非
正規雇用を理由とした不合理な待遇の差を禁じている
労働契約法やパート
労働法と比べると、見劣りがするものとなっています。
欧州、ヨーロッパの主要国では、EUの指令に基づいて、
派遣労働者に対しても、直接
雇用された場合と同等の
労働条件を保障する
均等待遇になっています。なぜ今回の
派遣法改正は、
同一労働同一賃金、そして
均等待遇を
実現する
内容になっていないんですか。
私
たちは、
同一労働同一賃金推進
法案を議員立法として近日中に国会に提出する予定です。正規か非正規かといった
雇用形態にかかわらず、職務
内容に応じた待遇を得られ、そして
希望する
雇用形態への就労のチャンスが開かれ、みずからの選択でキャリアプランを形成できることを
内容とするもので、そのために、現状の待遇格差の実態
調査を国に
義務づけ、
派遣労働者の
派遣先の
正社員との
均等待遇については、一年以内の法制上の
措置を求めています。
やっている
仕事は同じなのに、
正社員は一級
労働者、
派遣、非正規は二級
労働者、このようなイコールフッティングを欠いたゆがんだ現状を正し、
同一労働同一賃金を
実現していくために、
安倍総理にも、ぜひこの
同一労働同一賃金推進
法案に御賛同いただきたいと思いますが、
見解をお伺いいたします。
我が国の
雇用労働制度の問題は、新卒で
正社員になれたかなれなかったかで人生が半ば決まってしまうところにあると私は思います。同じ
仕事をしていても、年功
賃金カーブによる昇給のある職能給では、同じ会社に長く勤続するのがメリットになり、逆に、一旦ドロップアウトしてしまうと、なかなかそこに入っていけません。それが
労働移動をためらう障壁ともなっています。
我が国においても、
同一労働同一賃金が
原則として成り立っていれば、
同一の職業能力を持つ人が離職して別の会社に移っても、
原則として
同一の条件で処遇されますから、
労働移動による本人の不利益は生じなくなります。このような形での
労働市場の流動化は、働く人に多様な就業のチャンスを与えるものと言え、私も賛成です。
ただし、それを
実現するには、同じ会社にいれば、職業能力にかかわらず昇給していく年功
賃金の職能給体系を見直す必要があります。
安倍総理もしばしばそれに言及しておられますが、
日本型と言われる
賃金体系のどこをどのように
見直していくべきと
考えているのですか。
安倍総理は、九月二十九日に官邸で開かれたいわゆる政労使
会議において、年功序列の
賃金体系を
見直し、
労働生産性に見合った
賃金体系に移行することが大切だと語っておられます。しかし、それなら、民間会社をあれこれ言う前に、公務員の人事給与体系を見直す必要があるのではないですか。
各省の局長や審議官の入省年次を一覧にしてみれば、いまだに年功序列の人事を行っていることは明らかではありませんか。
一般職の能力・業績評価についても、S評価、A評価、B評価と五段階の上三つで九九・四%を占めていて、やや劣る、劣るのC、Dの評価はたったの〇・六%です。結果、年功序列で仲よく昇進し、給与も上がっていく
仕組みが守られています。
民間会社の年功
賃金を言う前に、自分のところの公務員
制度改革の
仕事から始めたらいかがですか。お伺いいたします。
労働市場の流動化には賛成ですが、
労働市場の流動化と称して、ただ単に解雇規制を緩めるだけの改革を行うのであれば、それは
労働者の立場を弱くするだけで、首切りしやすくなる会社側に都合のいい改革と言わざるを得ません。
労働移動によって
労働者に不利益の生じないような、
労働と
雇用に関する総合的な
制度改革が同時に必要であります。
労働市場の流動化を進めながら、若年層の失業率を劇的に低下させた国に、北欧のデンマークがあります。二〇一三年の失業率で見ると、デンマークは、超好景気のドイツを除き、ヨーロッパで最も失業率の低い国の
一つです。
柔軟性をあらわすフレキシビリティーと、保障をあらわすセキュリティーを合わせた造語であるフレキシキュリティーという名で知られるデンマークの積極的
労働市場政策は、今やEU全体の
雇用労働政策のモデルとなっています。これはどのような政策でしょうか。
デンマークは解雇が容易と言われ、一年間に
労働者の三五%が離職しますが、解雇のような非自発的離職は多く見積もっても一〇%で、二〇%
程度は、転職や職業訓練等による
キャリアアップを目的とした自発的離職です。衰退産業から自発的に離職し、必要なスキルを職業訓練で身につけて、
成長産業への
労働移動を果たすという
労働市場の流動化の理想的な
ケースが
実現しているんです。
解雇、離職は容易、しかし、手厚い失業給付がある、そして、行き届いた職業訓練で再就職も容易、こういう黄金の三角形が成り立つには、安心して離職してスキルアップを目指せるだけの失業給付と職業訓練というセーフティーネットを用意する必要があります。
デンマークは、失業した場合でも、
労働所得の最大で九〇%を二年間にわたり
労働者に保障しております。この間に職業訓練を受け、職探しをするのです。
我が国は、九十日から
最長でも一年未満、そして、給付水準は
原則として
賃金の五割から八割となっており、手厚さにおいて違いがあります。
我が国の
労働保険財政の現状では無理だとの声がここから聞こえてきますけれども、しかし、失業給付を賄う
労働保険特別会計
雇用勘定は、今や六兆円もの積立金が積み上がっていて、失業給付の水準を段階的にかさ上げする余裕は、現状あるはずであります。
今後の
労働法制の
見直しを視野に入れたときに、現状の失業給付の
期間、水準で十分なものと
考えているのか、
安倍総理の
見解を伺います。
デンマークでは、政労使の三者で決められた、今後の
雇用ニーズに合った職業訓練プログラムを
原則無償で受けられます。結果、デンマークは、OECD加盟国で、成人が職業訓練を受ける率が最も高い国となっています。
他方、
我が国では、いわゆる
雇用保険二事業の効果の乏しさが長らく
指摘され、その廃止も議論の俎上に上ってきました。衰退産業に補助金を払って
雇用維持をさせるような
雇用調整助成金の
あり方は、ようやく
労働移動
支援へと大きく転換されつつありますが、これまでも効果が疑問視されてきた公的職業訓練については、
雇用・能力開発機構が看板をかけかえた高齢・障害・求職者
雇用支援機構が性懲りもなく厚労省と癒着して、できレースで事業の委託を受けている実態が明らかになるなど、実施機関や実施手法の
あり方を含め、
成長産業への
労働移動に真に資するものとして、全面的に転換を図っていかなければなりません。
安倍総理の
見解をお伺いいたします。
以上で、私の
質問を終わります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕