○中島
委員 かかりつけ医、総合診療医、家庭医と、何か同じようなニュアンスにとられる方が多いのかなというふうにも思うんですが、実際は全然違うわけです。
私が言っている家庭医は、代表的なのは英国のGPということになると思いますが、ヨーロッパ諸外国は、若干制度の段差はあるにしても家庭医制度で、今
大臣おっしゃったかかりつけ医、そして今後専門医制度となります総合診療医というのは、かかりつけ医は、ゲートキーパーとしての役割を果たすとはちょっと言いがたいというふうに思います。
総合診療医の場合は、これはあくまでも、大きな病院の中で、例えばおなかが痛い、頭が痛いといったときに何科にかかればいいんだというときに、総合診療科的な、トータル、入り口の部分という意味での総合診療の専門医ということだというふうな中で、英国のGPというのは、まさにその入り口の部分です。プライマリーを重視して、しかも、その大きなメリットというか、
社会保障費の効率化という観点からいきますと、やはり定額報酬制、そして登録制ということですね。
これは、要するに入り口の部分の
医療費の適正化を図っていくため、そして、後ほどもちょっと触れますが、
在宅医療という、
地域包括ケアシステムの中で今後それを構築していくという意味からいきますと、やはりそのゲートキーパー機能をしっかり果たしていくという意味でいきますと、
日本のかかりつけ医、これはそういう確立的なものではない。ヨーロッパの、これは米国にもございますが、家庭医というのは、そのために六年なり長ければ八年ぐらい
研修を受けて、精神科から
産婦人科、皮膚科、それぞれのプライマリーをしっかりと診ていく、そういった
医師を
養成するということになります。
ですから、私は、今政府が考えられている、
厚生労働省が考えている総合診療医が、果たして本当にその家庭医に近いものになるのかなというと大変疑問があって、そういった意味では、やはり家庭医というもの、これは英国のGPがいいと言っているよりは、そこにも課題はございますが、
日本版GPというか、そういったものをしっかりと確立して、
一つの大きなメリットは、登録包括報酬制というものに一次
医療を担っていく医者を確立していくということが必要なんじゃないかなというふうに思っております。
二枚目の資料ですが、「
医療の非効率性の指標」というふうにタイトルにあります。これは釈迦に説法かもしれませんが、
医師数は、人口千人比で
日本は二・一五人、OECD各国の中では少ないんだというふうな指標でございます。それに対しまして、
病床数、在院日数は諸外国に比して圧倒的に高い、これももうよく言われている内容ではございます。
御承知のとおり、
日本の平均寿命は世界
トップクラス、さらに健康寿命も世界
トップクラスなわけですね。諸外国に比較して本来健康である、欧米諸外国に比べれば、肥満率等々、
生活習慣病等も
日本人は比較的少ないわけです。本来健康であるはずの
日本人、
日本において、なぜ
病床数が極端に多くて、平均在院日数が極端に伸びてしまうのか。
極めて健康なはずの
日本人がこれだけ病院を利用して
医療費がかかってしまうのは、何らかの無駄が多く存在しているからだ、その構造自体、やはり問題意識を持って取り組まなければいけないんじゃないか。この無駄が発生する要因が、やはり家庭医の比率の低さにあらわれているんじゃないか。もちろん、
日本においては診療報酬上の家庭医というものは確立されておりませんので、報告することはできないにしても、諸外国の例でいきますと、お隣の韓国でも約四割が家庭医、欧州
中心に大体三割から五割ぐらいが家庭医になっている。
先ほども言ったように、この家庭医の確立が、無駄を示しているというのは、きょうは連続して
医師の議員がやっておりますが、私も
医師でございます。そして私の場合は、
在宅医療をやったり、それこそど田舎の地元で今も土曜日に外来を続けておりますが、例えばですが、初期診療をするに当たって、足をぶつけましたと来た患者さんに対して、当然、今普通の一般の
診療所でもレントゲンなんて当たり前にあるわけですね。それで、骨折が疑わしいとなったときに次のステップに行きます。そこでももう一回レントゲンを撮るわけです、ほぼ間違いなく。
そういっただぶつきが、本来、一次
医療を担う医者がそこでレントゲンを撮る必要があるのかどうか、何のために聴診器を持ったり手技を身につけているんだと。そういう観点から、やはりその家庭医というのは、先日ヨーロッパに行って、実際の現場を見ることはできなかったわけですが、恐らく多くの家庭医は、例えばマンションの一室で、設備投資は全くしない、そして話を聞いて、必要であれば次のステップへ送る。そういったものをしっかりと確立していく。そういったものを私はイメージして、こういう、今後の
日本の
医療にとって大事なのではないかという御提言でございます。
これはちょっと頭の
体操になるかもしれませんが、一次
医療を担う
医師ということになりますと、今、
日本全国で
開業医の数、開業されている
診療所の数は約九万件というふうに言われております。これは、イタリアへ行ったときに、一人の家庭医の診る患者さん、登録人数はどのくらいですかと聞いたら約二千人とおっしゃっていたんですね。そうなってきますと、先ほどOECDの
日本の千人当たりの
医師数ということをお示ししましたけれども、そもそも、
日本の一次
医療を担う
医師の適正数というのはどのくらいなんでしょうかということも、この家庭医の登録制にしていけば、これは単純計算ですけれども、例えば、イタリアのように一人の家庭医が二千人の登録患者さんを診るとすると、
日本においては、約五万人の家庭医がいれば、ほぼ
皆さん登録ができる。
そうやっていって、仮に、イタリアの場合はその設定が千二百万ぐらいだと言っておりましたが、今、
日本の
開業医の平均収入は二千五百万だと言われています。これを、そこまで落とさないまでも、五百万円、定額落としたとしたら、それだけで年間約七千億円削減できるわけですね。
そういった観点も、これは頭の
体操みたいになってしまいますが、そういったメリットがありながら、先ほども言ったように、さきの国会では、
地域医療介護確保法案で、
病床規制とかDPC等々、
医療の効率化を図りながら、
現実にはその効率化を図れないまま、これから少子
高齢化のピークを迎えてしまう。
そういった中で、改めて家庭医制度の導入、御検討だけでも。先ほど言った、かかりつけ医、総合診療医とは全く別物の家庭医の創設、確立、いかがでしょうか。