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小笠原基也君 弁護士の立場から、
改正国民投票法の
施行を受けて、これからの
憲法審査会に望むことについて
意見を述べたいと思います。
まず、今回
改正された
国民投票法ですけれども、これは、
制定時に約束されていたはずの
選挙権年齢の
引き下げというものが期間内に行われなかったというだけではなく、
最低投票率であるとか、
発議方法であるとか、あるいは
国民議論のための期間が六十日から百八十日は短過ぎるのではないかとか、いろいろな問題があるということで、附帯決議がたくさんつけられて、さらに、世論からも批判がなされていた、そういった問題について何らの
議論もされていないことは非常に残念である。もともと、この
国民投票法が、審議の
段階できちんとした
議論をせず、強行採決ということでなされたという
制定経緯なども考え合わせると、この
憲法審査会においてもう一度徹底した
議論を行う、そのためには一度この
改正投票法は廃止すべきではないかというのが私の
意見であります。
手続についてはこういったところでございますけれども、今後の
憲法審査会の
活動についてであります。
この
憲法審査会というのは、
国会法という
法律に定められていると聞いております。
日本国憲法及び
日本国憲法に密接に関連する
基本法制について
調査等の権限を与えられていると定められておりますけれども、この
国会法が
憲法の下位法、当然です、
法律ですので
憲法より下にあるということからすれば、
憲法審査会であるとか
憲法審査会を構成する
委員というものには、当然、
国会議員としての
憲法尊重擁護義務、
憲法九十九条でありますけれども、これが依然として課されているものであります。
そうであるとすると、この
憲法審査会が今後
活動していく、その権限を
行使し職責を全うするに当たっては、常に
日本国憲法を尊重し擁護していかなければならない。そして、もし
日本国憲法の
基本理念を壊すような
憲法改正案や
発議がなされようとするのであれば、例えば、選挙でもって争点となって、ある党が勝ったということで、それによって民主主義が、勝ったんだからいいということではなく、それがいかに民主主義の過程を経たとしても、
憲法を尊重擁護する立場から、
憲法理念を害する、壊すということであれば、そのような
憲法改正は阻止しなければならないということが期待されると考えております。
このことは、
国民主権や基本的人権の尊重を人類普遍の原理とし、これに反するものは、一切、
法律や詔勅のみならず、
憲法を排除するという、この
日本国憲法に書いていることからも明らかであると思います。これが、立憲民主制、民主主義であっても
憲法の縛りの下に権力を
行使しなければならないという立憲主義のあらわれであると考えております。
そして、
日本国憲法の
基本理念とは何かといいますと、今述べた
国民主権、基本的人権の尊重、それと戦力不保持による徹底した恒久平和主義、この三本柱に支えられている個人の尊重、個人は尊重されなければならない、これが
憲法の肝であり
基本理念であると考えますので、この
憲法理念が壊されないようにしなければならないというふうに考えます。
もともと、
憲法九十六条が、
国会議員の三分の二以上の多数をもってしなければ
発議できないとした背景には、先ほど言ったように、民主主義、
国民投票の過半数のみで変えられないものはきちんとあるんだ、
憲法尊重擁護義務のある
国会議員は、きちんとそれを
審査して、出てきた
憲法改正案というのは、
国民の方から出てきたものであったとしても、それが
国民主権を害するものではないか、基本的人権の尊重を害するものではないか、あるいは戦力不保持による恒久平和主義というものを害するものではないか、そういったことをきちんと見て、最終的には、これが個人として尊重される世の中というものをつくれるかどうか、
改正によってそういうことができなくなるのではないかということを常に緊張感を持って
審査するために、このような三分の二以上という規定が置かれたのではないかと私は思っております。
そうだとすると、今後の
活動として、私は二点期待したいというふうに思います。
まず一点は、本当に
憲法改正の必要があるのかどうかということを、今までも一年以上にわたって
審査してきたということですけれども、さらに今後も
調査していく
必要性があると思います。
これは、単に、今の世の中と
憲法にどういった点でそごがあるかとか、あるいは、新しい人権としてこういったものが必要ではないかというような表面的な
議論ではなく、実際問題そういうものがないと、あるいは
改正がないと、先ほど述べた三本柱、
国民主権であるとか基本的人権の尊重、あるいは戦力不保持による平和主義、こういったものからの個人の尊重が全うできないんだという、そういった
必要性があるのかどうかをきちんと点検しなければならないと思いますし、その前提として、そもそも、今の日本という国のあり方がきちんと
憲法どおりになっているのかどうかということを見ていただきたいなというふうに思います。
先ほど冒頭の御
挨拶で、
東日本大震災のお話がありました。
被災地を見ていただければ明らかであると思いますけれども、震災からの復興という言葉は先行しておりますけれども、確かに少しずつは進んでいるかもしれませんが、実際問題として、そこに暮らす人たちが暮らしていけているかというと、いまだ仕事もない、家を建てる場所もない、あるいは家を建てるお金もないということで、人口の流出が著しいものであります。これが
日本国憲法が実際適用されている地域なのかというふうに本当に思ってしまいます。
憲法は、生存権を初めとして、人間が人間らしく生きていくということを、きちんとそういうふうに定められている。しかしながら、仕事もない、家も、仮設住宅は確かにあって、雨露はしのげるというものではありますけれども、日本には建築基準法というきちんとした
法律があって、そういうものに住めないでいる、劣悪な環境にある、そして、
生活できないので、この地域には住めないで離れていくという現状があるということは、先ほど言った
憲法の
調査において、きちんと達成できているかどうかといったときに、そうではないというふうに私は考えております。
そういった、地に足のついた
国民の
生活、そして個人が尊重される世の中というものがどうしてできないのか、それは
憲法が悪いのか、それとも
憲法の下位にある
法律が悪いのかということをきちんと見ていただきたいなというふうに、私は、
被災地において
弁護士をして相談
活動をしながら常に思っていることであります。
二点目であります。
憲法審査会というものについては、
日本国憲法に密接に関連する
基本法制について
調査等の権限を与えられているわけでありますから、これに関連する
法律については、当然きちんと
意見を述べていただきたいというふうに思います。
この点から見ますと、二点あるかと思います。
一つは、
集団的自衛権の問題です。
これは、
憲法が禁止している、戦力の不保持というものがありますけれども、これをないがしろにし、恒久平和主義というものを破壊するのではないかというふうに考えている。この
集団的自衛権行使を、解釈
変更という名のもとに、
憲法の
変更ですらない、解釈の
変更ということでやる、内閣がそういった解釈の
変更を行うという、まさに、先ほど述べた、権力は
憲法の下にあるべきという立憲主義、これすらも破壊する暴挙が行われたと考えております。
今後、
集団的自衛権行使を容認するための
法制度を
国会で審議されることになりますが、今述べたように、
憲法に違反するのではないかという疑義が非常に強いものでありますので、これを
十分調査した上で、阻止していただくことを望みます。
二点目は、特定秘密保護法であります。
これは既に
成立した
法律でありますが、
憲法改正も含め、
国民の
議論の前提として、
憲法を
改正するかどうかの
必要性を判断する世界情勢であるとか社会情勢であるとか、そういった改憲を基礎づける事実を知らなければならない。
ところが、秘密の名のもとに、防衛関係であるとか、あるいは、我が国の安全という名のもとに、そういったものが
国民に明らかにされないとすると、
憲法改正がいかに
国民の
議論だといっても、絵そらごとになってしまうというふうに思います。また、
発議をする議会についても、秘密ということもありますので、この点についても、
十分調査の上、検討していただければと思います。
以上です。