○津村
委員 おはようございます。民主党の津村啓介と申します。きょうはよろしくお願いいたします。
本日は、
日本の北極政策について、各府省にるる
質問をしていきたいと思っております。
冒頭、端的に申し上げますと、私はある危機感を持っております。それは、地球温暖化によりまして、近年、海氷が北極海において急速に減少しているわけでございますけれども、商業船の運航や、エネルギー資源、水産資源などの開発、あるいは海上兵力を含む
日本の安全保障環境が大変大きく変化をしている中で、我が
日本政府が、各府省の縦割りによって、北極圏域の沿岸国、主なところで五カ国あります、アメリカ、ロシア、カナダ、ノルウェー、デンマーク、こういった沿岸諸国は
もとより、
我が国の近隣諸国であります
中国や韓国、場合によってはインド等にもおくれをとりかねない、分野によっては既におくれをとっている、そういう危機意識でございます。
大臣、お読みになったことがあるかどうかわかりません、大変大部なものでございますけれども、平成二十四年度の外務省の補助金を受けた
調査研究・提言
事業ということで、
日本国際問題研究所がまとめた「北極のガバナンスと
日本の
外交戦略」というレポートがございます。
大変さまざまな分野にわたって深い議論がされているんですが、一番
最初のサマリーのところの結論は、
中国や韓国を含む近隣諸国に比べて、
日本の北極への取り組みはおくれているという問題提起で終わっております。
これができたのが平成二十四年度の
事業でありまして、平成二十四年度は二十四年四月から二十五年三月、これは二十五年の三月に出されておりますけれども、その二カ月後の昨年五月には、北極評議会、ACと呼ばれていますけれども、この北極評議会に
日本はオブザーバー参加を正式に認められておりますし、外務省も、ちょうどその時期に、昨年の春に北極担当大使を新設されて、今二代目だと思いますが、北極政策について一定のコミットメントをされていると認識をしております。
ただ、残念ながら、各府省から九人の政務に来ていただいておりますけれども、この後、るる
確認をさせていただきますように、各府省の取り組みは、それぞれ大変熱心にされているんですけれども、横の連携がなかなかとられていない。外務省ないしは
内閣官房海洋本部の司令塔機能ということがこれからさらに必要になってくるのではないか、そういう問題意識で
質問させていただきたいと思っております。
結論を少し先取りして申し上げると、現
時点で私は
日本の北極政策に六つの課題があると思っております。
一つ目は、北極観測の縦割りという課題であります。
二つ目は、砕氷船、耐氷船の建造が世界各国に比べて非常におくれているという課題であります。
また、三つ目は、経産省におけるエネルギー資源戦略、
農林水産省における水産資源の戦略、そして環境省における生物多様性あるいは気候変動問題に対する
対応、それぞれ、重要な
事業官庁が大変重要な取り組みをされているんですけれども、こうした各府省の取り組みが、海洋本部や、最近CSTIと呼ばれていますけれども、科学技術・イノベーション戦略本部、こうした司令塔機能を果たすべきチームと必ずしも連携ができていないという課題。
そして、四つ目は、これは安全保障上の問題ですけれども、北極海は、冷戦期においては、原子力潜水艦の展開等、それはそれで戦略的に非常に重要な地域であったわけですが、海氷が大変後退している現在においては、いわゆる海上兵力、護衛艦等も、ロシアやアメリカ、カナダ、こういったところは既に共同訓練であるとか、ロシアにおいては以前使っていた軍事基地を再開する等の、そうした安全保障上の変化もあります。
しかし、残念ながら、
日本の防衛省は、新大綱あるいは中期防で、北極海については特段触れておりません。わずかに、国家安全保障戦略において、傍論の形で、非軍事的な側面で北極海に若干触れていますけれども、安全保障上の位置づけが
我が国においてなされていないという点、これが四つ目。
そして、五つ目の課題としては、重なるところでありますけれども、残念ながら、外務省さんは、科学技術担当大使もいらっしゃる、北極担当大使もいらっしゃる、科学技術という
日本の武器を
外交上で使っていこう、あるいは北極にコミットしようという姿勢はかいま見られるんですけれども、なかなかそれが
一つの大きな絵となって各府省に
共有されていない。
そして最後に、六つ目ですけれども、こうした各部署での、例えば防衛省さんであれば新大綱、科学技術の分野であれば科学技術の基本計画、それぞれ文書になったビジョンがあるわけですけれども、こういった中に北極政策の位置づけが明確になされていないために、私の記憶では、安倍総理が、例えば所信表明であるとか、そのほか対外的な発信において、
日本における北極政策の位置づけということを明言されたことはなかったと思います。
プーチン大統領あるいはオバマ大統領は、近年、この北極の位置づけを盛んにPRされているんですけれども、
日本の取り組みがおくれているのではないか、こういう問題意識の
もと、以下、るる御
質問させていただきたいと思います。
最初に外務省に伺いますが、二〇〇八年、北極海沿岸諸国、アメリカ、ロシア、カナダ、デンマーク、ノルウェー、こういった国々がイルリサット宣言と呼ばれる宣言を発しております。
これは、海における法の支配という
観点からは
我が国の
立場と重なる面はございますけれども、既に、その沿岸の諸国が、新たに南極
条約のような法的な枠組みをつくらない、UNCLOSであるとかこういう既存の海洋法
条約にのっとって北極圏にかかわる新しい課題については向き合っていく、そういう宣言だと思います。
北極海の、オバマさんに言わせると、地球上最後のフロンティアと言われる非常にポテンシャルの高い地域において、非常に消極的な姿勢だと考えますし、この五カ国に入っていない
我が国からすると、ある
意味では潜在的なチャンスを逃すことになるのではないかと考えるわけですが、
日本の外務省としてこのイルリサット宣言をどう評価しているのか、伺いたいと思います。