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公述人(結城康博君) よろしくお願いいたします。
資料を作ってまいりましたので、それに準じて説明していきます。
では、二
ページ目を開いていただいて、社会保障の長期の在り方ということでお話しさせていただきます。
昨年八月に国民
会議の方で報告書が出まして、それに基づいて今国会、法律が次々と
議論されていると思いますが、長期的な展望に立って社会保障を考えた場合、まだ不十分な
議論があると思われます。その
意味で、私は論点を絞ってこれから私の考えを述べていきたいと思います。
三
ページ目でございます。
まず、社会保障を、これから枠組みをつくっていくにおいては、まず現物給付にシフトすべきなのか現金給付にシフトすべきなのか、この辺の哲学をしっかりとこれから
日本の超高齢化社会を迎えるに当たって考えていくべきかと思います。
私の考えは、むしろ現金給付型にシフトすべきよりも現物給付型にシフトしていく、そういう制度を構築すべきと思います。なぜならば、例えばお年寄りはなぜ貯蓄に回ってしまうかというと、自分が寝たきりになったときのことを考えてしまうということです。ですから、医療や介護、そういう面が充実することによって私は安心した暮らしができると思います。これは保育も同じことです。ですから、現金給付的な流動的なお金を増やすというよりも現物給付がふさわしいかと思います。
ただし、共済年金や厚生年金で多額のお金をもらっている方は、ある
程度国庫
負担分に相当する分をカットするなどの、これからある
意味厳しいことも考えないといけないのかなと思います。
四
ページ目が、ざっと厚労省のホーム
ページから見たんですが、年金が一番給付では多いんですけれども、この辺の考え方も是非これから御
議論いただければと思います。
次に、論点二といたしまして、社会保障を支える現役世代の
雇用形態、これが私は非常にポイントだと思っております。
正直申し上げると、六
ページも御覧いただくと分かるんですが、非正規
雇用者がかなり増えております。私は基本的には、社会保障を支えるに当たっては、再度終身
雇用制度を見直して、終身
雇用制度のメリットをきちっと
雇用形態に入れていくということであります。
結局は、終身
雇用制度できちっとした
雇用がしっかりしないと、保険料や税金を納める人がいません、少なくなってくると思います。また、子育てや結婚も、きちっとした就職がないとなかなか結婚や子育てに踏み切れない。その
意味では、
雇用形態を
正社員を増やしていくということが、やはり社会保障をこれから長期的に持続可能にしていく上では必須の条件かと思っております。
次の論点三を御覧いただきたいと思います。
先ほど終身
雇用制度で正規職員化について言いましたが、特に少子高齢化の少子化対策といたしまして出産、子育てに対する公的役割は非常に重要かと思います。
八
ページを見ていただくと、
日本はまだ福祉
予算、まだまだ子育てのお金、保育サービスとか産科、周産期、努力はなさっているとは思いますが、まだまだ他国と比べて少ないと思います。その
意味では、子育て、出産に対する公的支出を増やしていくというのは、これは必要なことだと思います。
なお、ただし、子育て支援、出産の問題は、これは公的支出だけ、サービスだけではなくて、
企業側の役割も非常に大事ではないかと思います。例えば、子供が熱を出したときにすぐに会社を退社したりとか、そういう職場
環境がきちっとできないと、幾ら保育サービスをつくっても子育て支援策にはならない。ここはやはり
企業の役割というのも非常に大事かと私は思っています。
ただし、ここでちょっと間違ってはいけないのは、社会保障費の全体の給付の割合が高齢者部門に多いから、その分を少し引き下げて、その代替として子供の
部分にやるというやり方は、私はそれはおかしいと思います。やはり、高齢者部門のお金も増やしながら、そして子育て支援もやるというようにやっていくべきと思います。
どうもここ数年見ると、高齢者と子育て支援世代という二分法的なロジックが見受けられると、私は印象を持っています。基本的に子育ては大学卒業までです。今、五〇%が高校三年生で四年制大学に進学しております。その
意味では、ちょうど五十五歳ぐらいが孫の代の子育て時期になりますので、親の介護と重なる世代が五十五歳であります。その
意味では、介護離職を防止して、労働
政策の観点から、それから孫の世代の観点からも、高齢者と子育てという二分法的なロジックは余り好ましくないと私は考えております。
次の論点は、四番目、これは社会保障制度をよく支える仕組みですが、現在の社会保障は、基本的には自助と互助、共助それから公助という枠組みで、このような順番で枠組みが論じられがちです。確かに自助や互助という
部分も大事だとは私は思いますが、実際の高齢者現場に行きますと、独居高齢者の急増、それから家族機能の希薄化、地域の希薄化や限界集落などによって、果たして互助機能がどこまで再構築できるかというのは、全国各地を回ってみるとなかなか難しいのではないかと私は思っています。
確かに一部の地域では再構築をしているところもあります。それは非常に、私も、これは続けていくべきですし、互助機能の再構築は必要不可欠だと思っていますが、やはり長期的展望を見ていくと、この互助機能というのは低下していくのはやむを得ないのではないかというように思います。まして、自助においても、独り暮らしがこれだけ多く、結婚しない世代が非常に多くなっている
意味では、むしろ共助や公助といったところを厚くしていかないとなかなか難しいと私は思っています。もちろん、ここは地域によって差がありますから地域の分析が必要ですけれども、単純に自助、互助、共助、公助という順番ではなくて、共助、公助の重要性というものを私は訴えたいと思います。
しかし、この枠組みにもう
一つ、
企業の役割というのも私は
一つ加えていくべきではないか。従来の高度
経済成長期の
日本の社会保障を考えると、
企業の役割というのが間接的に社会保障の役割を担っていたと私は考えております。先ほど言った子育ての世代の労働
環境づくりなども、これは
企業の役割ですし、終身
雇用制度を、きちっと
雇用形態をしっかりすることによって社会保険の枠の中に入る人たちを増やしていく、こういうことも
企業の役割かと思います。
その
意味では、もう
一つは、このように
企業の役割できちっとした
雇用形態をすることによって、社会保障的に見ると内需や個人消費、ある
意味で労働者がしっかりとした
経済的な基盤を持つことで
経済効果も間接的にはあるのではないかと思います。その
意味では、
企業の役割というのも社会保障制度にきちっと私は入れていくべきではないかというふうに思います。
論点五といたしましては、今の社会保障制度は、家族単位に想定されているシステムと個人単位で想定されているシステム、これが非常に混在しています。例えば、医療保険やその辺は家族とか、生活保護も家族、世帯でありますが、介護保険や後期高齢者医療制度は個人単位になっています。ある
意味、税体系もそうかもしれませんが、この辺のちぐはぐさが社会保障の矛盾点を来しているところがありますので、長期的社会保障を考えるに当たっては、個人単位で考えていくのか、家族単位、世帯単位で考えていくのかを、ある
程度の統一性を考えていかないと、これからの枠組みは矛盾した制度をそのまま存続していくことになるのではないかというふうに私は考えております。
論点六といたしましては、地方分権と競争原理、
規制緩和の行き過ぎ、これは私は、福祉現場において非常に関心を持って研究しています。昨今、特に福祉行政や介護保険制度においては地方分権化の流れが加速していると思います。私も、個人的には地方分権化を否定する立場ではございません。しかし、共助や公助、特にこういう公的部門のサービスというのは、地方分権が進めば進むほど地域格差が出るというふうに私は考えています。こういう公的サービスというのは、ある
程度全国均一的なサービスを持つことが大事であると思います。その
意味では、地方分権化というのは慎重に福祉行政においてはやっていくべきだと思います。ただし、雪国とかそういう地域によっては融通の使い方、その辺は地方分権の考え方が入るべきだと私は思っています。
なぜ、もう
一つ、地方分権化が進むかというと、社会的弱者の声が通りにくくなるということです。どうしても社会的弱者はマイノリティーですので、地方分権化していきますと、
政策決定過程において社会的弱者はその地域では本当に声が小さくなります。しかし、全国的な制度にしていくと、ある
程度社会的弱者は
一つの団体として制度に訴えることができる。その
意味では、この辺の問題点をきちっと
議論すべきと思います。
また、
規制緩和や競争原理において、例えば混合診療の全面解禁や混合介護、これは社会保険との絡みですけれども、保険給付と保険外給付の組合せの促進
議論が一部で、いろんなところで
議論されます。しかし、私は、過度な
規制緩和によって保険給付を完全市場と組み合わせてやっていくには非常に余計な給付費を生み出すのではないか、そういう危機が少しあると私は思っています。
経済学にいうと、供給が過度な需要を生むという結果を招くおそれがありますので、社会保険である保険給付と保険外給付の組合せは慎重にやっていくべきではないかというのが私の考えでございます。
論点七といたしましては、再
分配システムの強化、これは私が「エコノミスト」で書いたので後で御覧いただければと思いますが、再
分配を考える上ではジニ係数というものが
経済学では一応出ております。実際、ここ数年、当初所得のジニ係数はかなり格差が見られています。しかし、社会保障制度が効いているということで、再
分配後の施策によって格差は是正されているというのが
政府の一般的な見解だと私は理解していますが、実際、先ほど申し上げたように、福祉現場を歩いてまいりますと、認知症高齢者やサービスにつながらない、あるいは虐待とか、子供の中でなかなか潜在的な福祉ニーズを拾い切れていない人たちが非常に多くなっていると。
その
意味では、社会保障やこういうサービスにつながらない人たち、こういう人たちは、非常にこの当初所得というか格差が拡大していることによって、潜在的福祉サービスのニードが増えている分、再
分配所得も本当にこれで大丈夫なのかという
議論がありますので、この辺の、再
分配システムの強化ということをきちっと社会保障を考える上では
議論すべきではないかと思います。
論点の八点目、十四
ページですけれども、基本的にはこれからの
日本社会においては、
公共事業の
予算額を更に減らしていき、社会保障で内需や
経済を回していく、そういうような
経済状態にしていかないと、
日本の社会は非常に難しいのではないか。例えば、医療や介護の福祉の充実をすることによって
雇用を創出し、ここから福祉に関連した労働者たちが個人消費につながっていくという、こういう福祉型社会を本格的に目指さないとなかなか
日本社会は回っていかないと思っております。
十五
ページに
公共事業費の
関係費を書いておりますが、確かに減ってはきていますが、更なる
公共事業は福祉型転換にしていくべきと思います。ただし、
公共事業でも必要なものはあります。例えばメンテナンスの
公共事業とか、その辺の古い公共施設を直していく事業はやはり必要かと私は思っています。
続いての論点九でございますが、社会保険制度の限界、ここもきちっと私は
議論していくべきと思います。
日本の社会保障制度は、基本的には社会保険制度が主軸であります。しかし、保険料が非常に増えていく、これは被保険者、現役世代も含めてですが、事業主にとっても死活問題であります。特に高齢者は、高額な年金受給者は余り
影響ありませんが、介護保険料や医療保険料が定期的に上がることによって可処分所得が減っていきます。
その
意味で、私は、社会保険制度というものが今の現状を維持して保険料を上げていくと生活や事業主にも非常に打撃があるということで、ある
意味、例えば介護保険や国民健康保険や後期高齢者医療制度には更なる公費
負担割合を高めて、保険料の
緩和、
上昇の
緩和をやっていく。ある
意味、社会保険と福祉の融合的な制度設計を考えていくべきだと私は思っています。
なお、自己
負担においても、基本的には自己
負担も社会保険においては必要かと思いますが、例えば今国会で介護保険法の改正で出されている自己
負担二割のところ、二割
負担については私は賛成でございますが、このカットラインは現在二百八十万か二百九十万辺りが
議論されていますが、介護保険においては、一度、後期高齢者医療制度の現役並み所得三百八十三万円から入れて、そして様子を見ながら入れていくということも必要かと思います。
十七
ページ、十八
ページは、今後の保険料の推移を表したものです。
十番目は、これは人員問題で、介護現場が非常に厳しくなっています。
私は介護保険を専門と勉強していますが、
財政の問題よりも人手
不足によって介護が崩壊してしまうという危機感を持っていますので、これは
予算と報酬との兼ね合いもありますが、是非、介護保険の資格とか
外国人介護士のことも
議論すべきと思います。なお、今回、介護福祉士の資格要件で一年延長になったことは現場を踏まえた
議論で、私は
評価をしております。
二十
ページは、今後必要となる介護
人材を示したものです。
最後に、やはりどうしてもこういう社会保障費を拡充していくには
負担ですね、財源が非常に大事となります。その
意味で、
負担と給付の
関係ですが、私は資産を加味した再
分配システムの
議論は避けられないと思っています。その
意味では、預貯金を中心に持っている人はかなりの
負担をしていく。ある
意味、銀行口座やマイナンバーを絡めた問題をやっていくべきと思います。
なお、
消費税の
議論におきましては、
消費税を引き上げることはこの先非常に大事かと思いますが、
消費税の財源はできるだけサービスの拡充や保険料の
上昇の
緩和に使う、国民に直に、直接目に見える形で使うべきと思います。国債の借金返済においては、ほかの財源やそういう面でやっていくべきではないでしょうか。
なお、
消費税五%アップのときには軽
減税率を入れる、これは私は社会的弱者の
一つの間接的な社会保障だと思っています。
最後に、現在二〇二五年へ向けて在り方が考えられていると今国会でも思いますが、行く行くは二〇四五年辺りの高齢者がピークとなる時期も考えて是非社会保障の在り方を考えていただければと思います。
以上でございます。