○紙智子君 私は、
日本共産党を代表して、
政府提出の
農政改革二
法案について
質問いたします。
まず、
TPPについて
伺います。
四月二十四日、
オバマ大統領と安倍首相の首脳会談が行われ、一日遅れて発表された
共同声明では、両国は
TPPに関する二国間の重要な
課題について前進する道筋を特定したと述べました。
米国では、ルー財務長官が下院公聴会で、
日本市場開放の道筋が付いたと証言しました。甘利大臣は、方程式は
合意したと発言しています。この道筋、方程式とは何なのか、明快に
お答えください。
結局、重要五品目の市場開放の道筋を認めたのではありませんか。
また、澁谷内閣審議官は記者会見で、
TPPの着地点について、
関税率だけでなくセーフガード、輸入枠などの組合せが重要な要素になると言っています。
日豪EPAでは、
牛肉については
関税率三八・五%から一九・二五%へ半減させ、輸入急増に対するセーフガードを組み合わせました。チーズの
関税割当て数量も五倍に増えます。
日米交渉では、
牛肉の
関税を九%台に引き下げ、
豚肉関税は十五年掛けて一キロ四百八十二円から五十円に引き下げるなど、
日豪EPAをはるかに上回る譲歩案を示したとの報道もあります。つまり、
関税率を引き下げてもセーフガードなどを組み合わせればいいということなんですか。
安い輸入品が増えれば価格の下落は避けられません。これでは、重要
農産物を除外又は再
協議の
対象とすることを求めた衆参の
国会決議を守ったことにはなりません。
日本農業と
国民生活を壊し、
国民への裏切り以外の何物でもありません。
総理にそういう認識はあるのですか。
安倍総理は、聖域なき
関税撤廃が前提でないことが確認されたから
TPP交渉に参加すると言い、
交渉力を持っているといって
交渉を続けてきました。本気になって
農業を立て直すつもりなら、重要五品目など聖域の確保を最優先し、確保できないと判断した場合は脱退も辞さないという
国会決議の立場を堅持し、それができないなら脱退しかないではありませんか。
答弁を求めます。
次に、
農政改革について
質問します。
総理、あなたは、
日本再興戦略で、今後十年間で全
農地面積の八割が
担い手によって利用され、
生産コストを現状の
全国平均比で四割削減、法人
経営体数を五万法人にすると言いました。これでどういう
農業を目指すのでしょうか。
それを端的に表したのが、
安倍総理、あなたのスイス・ダボス
会議での発言です。
四十年以上続いてきた米の減反を廃止します。民間企業が障壁なく
農業に参入し、作りたい
作物を
需給の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってきます。
日本では不可能だと言われていたことですと言い、いかなる既得権益も私のドリルから無傷でいられないと言いました。ここに
日本再興戦略が目指す
農政の姿が示されています。
総理には、
農政があっても、農民の姿、食料は国産でという
国民の願いが見えないのではありませんか。
農業の
成長産業化を口実に大企業のビジネスチャンスにするものではありませんか。
食料自給率は、食料・
農業・
農村基本計画で、二〇二〇年にカロリーベースで五〇%、
生産額ベースで七〇%に、
飼料自給率で三八%に引き上げるとしています。
日本が
食料自給率を向上させることは、
国民生活にとって死活的に重要であるだけでなく、飢餓で苦しむ途上国の
国民への貢献でもあります。しかし、
安倍政権が
成長戦略に位置付け閣議
決定した
日本再興戦略には、
食料自給率引上げについては一言も触れていません。なぜ明記しなかったのですか。
総理の見解を求めます。
米については五年後に
生産調整が廃止されます。今後、米の
需要と供給、価格の安定に誰が
責任を持つのですか。今でさえ下落を続けている
生産者米価の更なる大暴落を招くのではありませんか。
総理並びに農水大臣に見解を求めます。
経営安定
政策についてお聞きします。
米の直接
支払交付金、十アール当たり一万五千円は、今年度から七千五百円に半減され、二〇一八年産で打ち切られます。この
交付金の打切りで
販売農家の手取りが減少しますが、とりわけ大規模
経営ほど深刻です。農水省の
調査で、二十ヘクタール以上を
経営している
農家の総
所得に占める
所得補償の割合は五六%と、依存度が高いことが明らかです。
〔副
議長退席、
議長着席〕
八十ヘクタールを
経営している方は、
交付金の半減で五百七十五万円の減収になると言われました。この現実を
総理並びに農水大臣はどう思いますか。最悪の
所得削減策、
農家潰しではありませんか。
麦、
大豆など諸外国との
生産条件の格差を是正するために
支払われていた
生産条件不利補正交付金、いわゆるゲタ
対策、米、麦、
大豆などを
対象に
豊作時や凶作時の
変動などによる収入減少を緩和する収入減少
影響緩和
交付金、いわゆるナラシ
対策は、これまで全ての
販売農家に
支払われていました。本
法律の
改正で、
認定農業者、
集落営農、
認定新規就農者に絞り込むことにしています。これによって、
対象農家数は八万三千八百四十八戸から三万八千五十三戸と半減します。多くの
販売農家を切り捨てるつもりですか。
総理、農水大臣の
答弁を求めます。
次に、
農地中間管理機構についてお聞きします。
自民党の参議院選挙公約、そして
政府の攻めの
農林水産業では、
担い手への
農地集積、耕作放棄地の発生防止・解消するために中間的な受皿を設置するとしました。ところが、設置した
農地中間管理機構は、その
目的から耕作放棄地の解消を消しました。なぜ消したのですか。
総理の明確な回答を求めます。
機構
法案を
議論した
政府の
産業競争力
会議で、財界の代表は、
農地は集落のものという
考え方を乗り越え、企業が入れる
制度にすべきだと主張し、
法律が成立したら、次にステップは何といっても企業の参入をいかに
促進するかだと述べました。企業の参入を
促進するため、借り手は公募を原則とし、
地域外の農外企業も公平に扱うということにしたのではありませんか。
全国どこを回っても、自分の
農地がどうなるのか、
集落営農で管理している
農地がどうなるのか、不安でいっぱいです。
農地を荒らさないために懸命に努力している
現場の期待に応えるなら、借り手は
地域で頑張っている
農業者を最優先すべきであり、耕作放棄地や借り手のない
農地を機構で受け入れて
農地として活用すべきです。
今求められているのは、家族
農業を
支援することです。
安倍総理はしばしば、息をのむほど美しい棚田の風景を守ると言いますが、景観の美しさには触れても、そこに住む人の営みがあることが伝わってきません。
日本の
農村の景観が美しいのは、何世代にもわたって
農業を引き継ぎ守ってきた家族
農業があったからこそです。今年は国連家族
農業年です。世界の大勢は家族
経営で支えられています。全
農家に占める家族
経営の割合は、アメリカで八割、イギリスもドイツも九割、フランス七割、
日本九割です。
総理は、家族
農業重視は
自民党の
政策だと
答弁されました。そう言われるなら、なぜ予算を付けないのですか。
総理、家族
経営を
支援する予算を具体的に示してください。
日本共産党は、
日本農業を基幹
産業として位置付け振興を図ること、
食料自給率向上への目標を明確にし、家族
農業、
地域農業を守り充実すること、価格・
所得補償こそが求められていると
考えています。
本来、どこの国でも
農業保護の
考え方は当たり前のことです。
TPPを前提に、
農業の自立に名を借りて、一層の市場原理に追い込み、
日本農業を崩壊に導く
安倍政権の
農政改革に断固反対することを表明し、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕