○大門実紀史君 安倍
内閣の経済政策と
税制の基本的な
考え方について
質問いたします。
いわゆる
アベノミクスが始まって一年少しがたちました。本当に
国民の暮らしや実体経済は良くなったでしょうか。
日本銀行の異
次元緩和という異常政策によって海外の投機マネーを呼び込み、急激な円安と株高をつくり出しました。おかげで一部の輸出大
企業は巨額の利益を上げ、大株主であるお金持ちは更にお金持ちになりました。一方、庶民の暮らしや中小
企業の経営は、収入が増えないのに円安による輸入物価の値上がりで苦しくなるばかりです。
大
企業の利益はリーマン・ショック前の水準を一気に回復しましたが、中小
企業の利益は横ばいのままです。大金持ちが株高で資産を増やす一方、貯蓄ゼロの世帯は過去最多になっています。
アベノミクスは、金融バブルをつくり出し、事実として、大
企業と中小
企業、大金持ちと庶民の経済格差を広げる役割を果たしてまいりました。
麻生大臣は、
アベノミクスが経済格差を広げてきたという認識をお持ちでしょうか。
この上、逆進性のある
消費税増税を強行すれば、経済格差は更に
拡大をいたします。また、安倍
内閣の
成長戦略の目玉である雇用
改革も、結局、低
賃金の非正規労働者を固定化、
拡大し、
賃金を抑制する政策です。ある労働シンクタンクによれば、今
議論されている雇用
改革を全て実行すれば、労働者の
賃金は年間約四十二兆円も減少すると試算をしております。
異
次元緩和で格差を広げた挙げ句、更に
消費税増税と
成長戦略で格差を広げる。これでは、
アベノミクスは格差
拡大の二極化政策と言われても仕方がないのではありませんか。
経済の土台を冷え込ませて
日本経済が良くなるわけがありません。昨年十—十二月期のGDPは、民間予測を大きく下回り、実質で前期比僅か〇・三%増にとどまりました。冷静に各
経済指標を見れば、円安による輸出額の増大と
消費税増税前の駆け込み需要が数字を押し上げてきただけで、実体経済の自律的な好転とは程遠い状態であります。
何より、経済の約六割を占める
個人消費が低迷をしています。住宅を除く
消費支出は、昨年十月から十二月の三か月連続で前年同月を下回りました。
個人消費が伸びないのは、
国民の実質
所得が増えていないからです。昨年十二月の勤労者世帯の実収入は四か月連続の減少、実質可
処分所得も五か月連続で減少しています。
賃金はもう十年以上伸びておりません。
麻生大臣は、この原因がどこにあるとお
考えでしょうか。
安倍
内閣は、
企業の利益がいずれ
国民の
賃金に回るだろうと言い続けてきました。いわゆるトリクルダウン論です。しかし、この理屈は構造的にも実態的にも既に破綻をしております。九〇年代半ばから始まった非正規雇用の急速な
拡大は、正社員の
賃金も押し下げ、
賃金抑制装置の役割を果たしてきました。
賃金が上がらなくなったのは、単に
デフレで
企業のマインドが冷え込んでいたからではなく、非正規雇用の
拡大という構造的要因にあったのです。
二〇〇一年、経済政策の担当
大臣に就任した竹中平蔵氏は、私の
質問に対し、
企業がもうかれば
賃金に回ると、今と同じことを言っておりました。私は、回るわけがない、非正規雇用の
拡大でその回路が断たれていると
指摘をしましたが、彼には
理解ができませんでした。事実、二〇〇四年から二〇〇七年にかけて大
企業中心の
景気回復期がありましたが、
賃金に回るどころか、
賃金は減少を続け、
企業利益は内部留保として積み上がっただけでした。
麻生大臣は、竹中さんと違い、
企業に
減税しても内部留保として積み上がるだけではないかと賢明な疑問を投げかけられました。
麻生大臣は、トリクルダウン論など実際には機能していないと認識されているのではないでしょうか。
答弁を求めます。
本気で好循環を実現するというなら、まず
政府主導で
企業利益が
賃金へ回る回路を回復することです。
麻生大臣も参加された昨年のG20の首脳声明でも、非正規雇用の減少が目標に掲げられました。
日本も本気になって非正規雇用から正規雇用への転換を図るときが来ているのではありませんか。
さらに、資本主義国アメリカでも取り組んでいるように、
政府主導で大規模な
賃金引上げ政策に踏み出すことです。中小
企業支援とセットで、均等待遇の実現、最低
賃金の大幅
引上げを内需
拡大策として大胆に打ち出すべきです。
今こそこういう本格的な
賃金引上げ政策に踏み出すべきときだと思いますが、
麻生大臣の
見解を伺います。
経済格差が広がり、
国民の可
処分所得が減少している今こそ、
税制本来の役割である
所得再分配機能を発揮することが大切ではないでしょうか。この点で、
消費税増税は全く逆さまの政策です。四月一日を目前に、この間続いた駆け込み需要は早くも
反動減に切り替わる兆しを見せております。このまま
景気の底割れに向かう
危険性も
指摘をされています。
麻生大臣、まだ間に合います。
消費税増税を中止する緊急宣言を出すことこそ賢明な政策
判断というものではありませんか。
今なすべきことは、庶民
増税ではなく、大もうけをしている大金持ちへの課税強化です。もうかっている大
企業の
負担を軽くすることより、苦しい中小
企業や庶民の暮らしを直接支援することです。
安倍総理は、先日の
予算委員会でも、大
企業に
減税した分、
個人の
所得に回ることを
期待していると
答弁されました。だったら、最初から
個人に
減税すればいいのではありませんか。そもそも、これ以上の
法人税減税が必要なのでしょうか。数々の優遇措置によって、既に大
企業の実質
負担率は二〇%台に下がっています。
また、世界の流れを見れば、そろそろ
法人税の
引下げ競争をやめようではないかという動きが始まっています。際限のない
法人税の
引下げ競争は、各国共通に、税収の減少、
国民生活の
予算削減という事態をもたらしています。
お互いの首を絞め合うような競争はもうやめよう、EUの首脳
会議ではフランスとドイツが税の
引下げ競争に歯止めを掛けるルール作りを提案、OECDの租税
委員会でもそういう認識が出てきております。こういうときに
復興法人特別税を
廃止し
法人税実効
税率の更なる
引下げを目指すなど、世界の流れに逆行するものではありませんか。
今大事なことは、これ以上
法人税引下げ競争に突っ走るのではなく、各国が協調して
引下げ競争の愚を改めようと、むしろ
日本から世界に発信することではありませんか。
改めて
麻生大臣の
見解をお聞きして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣麻生太郎君
登壇、
拍手〕