○有田芳生君 簡単なことから言うと、同い年であります。
もう少し具体的に、大事な問題なので、新しい問題をこの日本
社会は抱えている、
矯正においても新しい
視点で取り組んでいかなければいけないということで、少し具体的にお示しをしたいんですけれども、一九九七年、先ほどの神戸の
少年事件がありました。
この神戸の
少年事件については、
医療少年院に彼が行って精神鑑定がなされましたよね。その精神鑑定を、何時間、何十時間でしょうか、掛けて行った精神科医によりますと、神戸の
少年事件、これは確実にオウム
事件の影響があったというふうに、中井久夫さんという神戸大学の名誉教授、非常に著名な精神分析の大家ですけれども、中井さんが精神鑑定をやった結果、確実にオウム
事件の影響があると言うんです。どういうことかというのは、聞いたら、結論的に言うと、
少年は、あの程度のことならやってもよかっただろうというふうに認識したというんですよね。あの程度のことというのは何かというと、地下鉄サリン
事件であったり、松本サリン
事件であったり、坂本弁護士一家殺害
事件なんですよ。
なぜあの程度のことはいいかというと、詳しく聞いていくとテレビの影響なんですよ。テレビを当時小学校六年生の彼は見ていた。
事件は二月から五月ですけれども、一月には彼が住んでいた阪神では大震災があった。阪神大震災で非常に驚いて、その後オウム
事件が起きる。そのときずっとテレビを見ていたんですよね。テレビを見ていた影響があったというのは、テレビに当時、オウム真理教の幹部たちが出ていましたよ。だけど、世間は地下鉄サリン
事件というのはオウムがやったに違いないと多くの人が思っていた。もちろん、警視庁、警察庁なども、神奈川県警も、山梨県警も、熊本県警も、もう警察組織挙げてオウムに狙いを定めていた。
社会からいうと、オウムがやったに違いないと思って捜査を進めていた。
社会もそう思っていた。
少年も思っていたんだけれども、その
事件を、あれほどのものを起こした組織の幹部が堂々とテレビに出ている。そのことを、ゆがんでいるんだけれども、あの程度のことはやっても
社会は認めてくれるんだなというふうに思ったというんですよ。これは
少年が言っているわけです。
私は、このとき
少年が逮捕をされて、神戸市須磨区の彼の家の二階の彼の引き出しから犯行ノートが出てきた、それを見てびっくりしましたよ。何を書いていたかというと、小学生の女の子をショックハンマーで襲って、一週間後に亡くなりましたけれども、その日にこう書いている。愛するバモイドオキ神様へ。バモイドオキというのは片仮名なんです、神というのは神様ね。愛するバモイドオキ神様へ、今日、人間の壊れやすさについて聖なる実験をしましたと書くんですよ、聖なる実験。で、何日も何日も書いていって、いずれ、愛するバモイドオキ神様、バモイドオキという神様、これは彼が後で精神鑑定の中で語っているんだけれども、自分から良心を引いた心、良い心を引いたものがバモイドオキという神様だと、自分が作り上げた神様だといって誇っていた。バモイドオキ神様、これから聖なる儀式アングリを行おうと思う、それが実現した暁には聖なる名前をいただきたいと、そう犯行ノートに書いているんですよね。そして、その後に土師淳君殺害
事件を起こし、遺体の頭部を自分が通っていた中学校の門の前にさらすというとんでもないことを行ったわけです。
だけど、彼の中では、自分が作り上げたバモイドオキという神様に約束をして、今度の
事件を起こせば聖なる名前をいただきたい。聖なる儀式アングリ。何かなと思ったんですよ。で、犯行ノートの中には仏像が描かれている、太陽と月が描かれている。当時、ずっと朝から夜までオウム報道が続いている中で、麻原彰晃の仏教的ないろんな儀式、それから仏像みたいなものが出てきた。そういうことの影響があったんですよ。そして、決定的だったのは、これから聖なる儀式アングリを行おうと思う。アングリって何かなと思いました。坂本弁護士一家殺害
事件を行った六人の実行犯の一人、岡崎一明、当時の名前ですけれども、彼のホーリーネームっていうのはアングリマーラっていうんです。アングリマーラ、アングリ、
関係あるのかななんて思っていたんですけれども、決定的なのは、聖なる名前、これから
事件を起こしたら聖なる名前をいただきたいと、自分が作った神様からもらいたいと言った。聖なる名前というのは、当時、皆様方も十分御承知のような、ホーリーネームというのは日本語に直すと聖名なんですよ、聖書の聖に名前の名、そういう影響があった。そして、彼は土師淳君殺害
事件を起こしてホーリーネーム、聖なる名前をもらったんです。それが酒鬼薔薇聖斗なんですよね。彼の中ではもう一貫していたんですよ。
だから、そのことが、問題なのはそこで完結せずに、一九九九年から二〇〇〇年にかけての十七歳の
犯罪と言われた、例えば愛知県の豊川で主婦を殺害したその当時の十七歳の青年は、犯行をした後に自分で、その今言ったホーリーネームというのは自分で付けているんですよ。あるいは、大阪で金づちで小学生を殴り付けて逮捕された当時十七歳の
少年なんかは、当時の写真誌に出ていた神戸の
少年Aの顔写真を自分の生徒手帳に貼っていたんですよね。あるいは、もう一つ別の殺人を犯した十七歳の
少年というのは、神戸市須磨区の
少年Aの自宅を何回も何回も見学に行っているということが分かった。
だから、九五年のオウム
事件があり、九七年の神戸
事件があり、九九年から二〇〇〇年にかけての
事件があった。だから、そこら辺やはり共通点があると私は思っているんです、今でも。だから、つまり何が言いたいかというと、やはり心の中の問題というのは本当に、最初に言いましたように、内側から突破していかないと、これ大事な問題がなかなか解決していきにくいと思うんです。
もう結論だけにしますけれども、例えば秋葉原の無差別殺人をやった男性にしても、家族問題、特にお母さんとの問題抱えていた。象徴的なことで言えば、厳しいしつけがあったから、食事をしているときにもお母さんががあんと怒って、新聞紙の上に御飯をばあっとばらまいてそれを
少年に食べさせるというようなことがあった。それが秋葉原の青年につながっていった。パソコンの遠隔操作
事件でこの間真犯人だといって墓穴を掘った彼にしても、真犯人メールなんかを読んでいただければ分かるように、VXガスでやるぞというようなオウム
事件の表現を取っているんですよね。
それがどこまで、どれほどの影響があるのかというのは慎重に十分に分析をしていかなければいけない課題だというふうに思うんですけれども、やはりそういった、新しい課題とさっき
谷垣大臣言ってくださいましたけれども、そういうことも含めた
医官の十分な技量というものを、人数を増やすとともに質の強化というのが大切だというふうに思うんですが、どのようにお感じでしょうか。