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参考人(静正樹君) ありがとうございます。
東京証券取引所の静でございます。
本日は、このような場にお招きをいただきまして、
意見を申し述べる機会を頂戴しましたこと、大変光栄に存じております。
それでは、本日、私の方からお話し申し上げたいことはお手元の横書きのペーパーにまとめてまいりましたので、一枚お開けいただきたいというふうに思います。本日、当
委員会で申し上げたいポイントは大きく三点ございます。
一点目でございますけれども、市場秩序の維持のために重要な
改正ということでございます。今回の
法案では、いわゆる
コーポレートガバナンスに関する
改正というところに大変注目が集まりがちでございます。けれども、それ以外にも、私ども取引所でございますので、市場開設者という立場から見て、市場秩序を維持していく上で大変重要な
改正項目というのが含まれておりますということでございまして、この項目につきましては、内外の
投資家に安心して
投資をしていただくために大変欠かせない重要な
改正となっておりますので、是非とも実現をしていただくようお願いを申し上げたいというふうに思います。
二点目でございますけれども、これは、先ほど申し上げました
コーポレートガバナンスに関する項目でございます。政府提出
法案では、
社外取締役の
選任につきまして、
会社法では
義務付けを見送るけれども、一方で、上場
ルールの方で努力
義務を課すという形に今回なっております。
上場会社の皆さんの間では急速に
社外取締役の普及が今進みつつあるというところでございますけれども、今回この
法案が成立をいたしますと、その
流れが更に強く強力に後押しされることになるというふうに思っておりますので、これも是非実現をしていただくようお願いを申し上げたいというふうに思います。
そして最後に、三点目でございます。今回の
法案の基となりました
法制審議会の
改正要綱が確定してから既に二年近くが経過しているということでございます。できるだけ早く、早期の
法案成立をお願いできればということを最後にお願いを申し上げたいと思います。
以上三項目につきまして、順に
説明をさせていただきたいと思います。
一ページお開けいただきまして、二ページと右下に書いてあるところにお進みください。
ポイントの一点目と申し上げましたのは、市場秩序維持のために重要な
改正ということでございますけれども、この中身は大きく二つあります。まず、第三者割当ての規制ということについてお話をしたいと思います。
会社法では、一番上のところに書いてありますように、第三者割当て増資をするときには
取締役会の
決議が必要だということになっております。しかしながら、上の方に四つ枠組みがありますけれども、一番左の方にございますように、
現行法の
仕組みでは、
株主総会の承認までは要らないということになっております。そして、左から二つ目、隣の枠ですけれども、このことを濫用する事例というのが実際
上場会社の間で起こっております。
上場会社の中には、
取締役会だけでできるというこの第三者割当て増資というのを悪用いたしまして、①のところに書いてございますように、既存
株主の持分を大幅に希薄化することで
投資家を苦しめるとか、あるいは②のところにありますように、
会社が勝手に支配
株主をすげ替えることで
投資判断の前提を覆してしまうといったような
会社が現実に現れたというわけでございます。
私どもでは、左から三つ目の枠になりますけれども、
上場規則による規制ということを新たに設けざるを得なくなりました。①のように大幅な希薄化を伴う第三者割当て、あるいは②のように支配
株主の
異動を伴う第三者割当て、このときには、
取締役会の
決議だけじゃなくて、
株主総会の承認あるいはそれに類するような一定の手続を取ることを
上場会社に求めてきたというわけでございます。
今のところ、おかげさまで再発はないということで防止できておるわけでございますけれども、仮に、今後この
上場規則を守らない
会社がまた出てきたということになりますと、何が起こるか。それは、私どもは、単純に申し上げますと上場廃止で応じるかどうかということを考えざるを得なくなるということでございます。しかしながら、仮にそうなった場合には、上場
ルール違反の第三者割当て増資で苦しめられた
投資家が、今度は、引き続いて取引所に上場廃止で苦しめられるということになりかねないということでございます。そこで、
会社法にも同様の規制を入れていただくことで、そうした事態が元から起こらないようにしていただきたいということをお願いしてきたというわけでございます。
最終的には、一番右の枠でございますけれども、今回の
会社法改正案には、そうしたことを踏まえまして、全部とはいかなかったんですけれども、この②の支配
株主の
異動を伴う第三者割当てにつきましては、一定の条件は付いておりますが、
株主総会の承認を得なければならないという新しい規制を盛り込んでいただいたということでございます。これが一点目でございます。
一ページお開けいただきまして、三ページと書いてあるところに進ませていただきます。市場秩序維持のために重要な
改正の二点目についてお話を申し上げます。
会社法では、一番上のところに書いてございますように、原則的な
考え方として、
会社が発行可能な株式数は実際に発行している株式数の四倍までという決まりがございます。しかしながら、一番左上の枠組みを御覧いただきますと、
現行法の
仕組みでは、株式併合で発行している株式が減少した場合には、発行可能な株式数はそれに応じて減るわけではなくてそのままで変わらないという、現在そういう
仕組みになっております。その結果、
会社は株式併合することで、発行している株式の四倍を大きく超えるような株式数を発行することが可能になっております。
そして、左から二つ目の枠組みでございますけれども、これを濫用する事例というのが実際にやはり起こっております。ある
上場会社ですけれども、十株を一株に併合するということを使いまして、発行している株の本来四倍までしか発行できないんですが、四十倍近い株式を発行しようとして、その結果、既存
株主の持分を極端に希薄化させるというようなことが起こってきたわけでございます。
先ほどと同様、私どもでは、その隣でございます
上場規則による規制というのを新たに設けたわけでございますが、
上場会社が発行している株式の四倍を超えるような第三者割当てを行うことは取引所の
ルールで禁止をするということをしてあるわけでございます。こちらについても、今のところ再発は防止できておるという次第でございます。しかしながら、先ほどと同じように、今後、仮にこの規則を守らないという
会社が出た場合に、上場廃止で応じるかどうかということを考えざるを得なくなるという事情は先ほどと同じでございます。そこで、
会社法に同様の規制を入れていただくことで、そうした事態が元から起こらないようにしてほしいというふうにお願いをし続けてきたわけでございます。
その結果、一番右の枠になりますけれども、今回の
会社法改正案では、そうしたことを踏まえまして、株式併合で発行する株式数が減少したときにも、その四倍までしか発行できないこととするというような規制を盛り込んでいただいております。
以上、二点、内外の
投資家が安心して
投資をしていただくためには大変重要な
改正だと思っておりますので、いずれにつきましても是非実現のほどをお願いしたいというふうに思っておる次第でございます。
一枚お開けいただきます。ポイントの二つ目でございますけれども、
コーポレートガバナンスに関する
改正でございます。こちらにつきましても大きく二つ項目がございます。
一つ目は、御覧いただいているスライドの上の方、一、社外性
要件の
強化と書いてあるところでございます。それで、こちらについてお話を申し上げたいと思います。
会社法では、
社外取締役あるいは
社外監査役になれるかどうかという基準として、社外性の
要件というのが決められております。けれども、私どもの
上場規則では更に厳格なグローバルスタンダードに準拠した
要件を定めておりまして、これを
独立性の
要件というふうに呼んでおります。
上場会社に対しまして、私どもでは、少なくとも一人はこの
独立性の
要件を満たす人を社外役員として選んでいただいて、私どもへ届け出ていただくと。
独立役員という
制度ですけれども、そういう
仕組みをつくっておりますけれども、その
独立役員になれるかどうかという基準がこの
独立性の
要件でございます。
独立性の
要件は、ざっくり申し上げますと、その左に並んでおります五つぐらいに分類することができます。その右にバツが五つくっついているのがこれが
上場規則でございますが、この五つの
独立性の
要件のどれか
一つにでも抵触すると、私どもの上場
ルール上の
独立役員にはなれないという、こういうことになっております。一方、その右隣に
現行会社法と書いてあるところがございますけれども、これは下の三つが丸というふうになっております。この三つにつきましては、どれに抵触しても社外役員には
会社法上なれるということでございます。
私どもでは、この下の三つの丸につきましても今回
会社法でバツにすること、つまり社外性の
要件として御採用いただくということをお願いしてまいったわけでございます。その結果、今回の
会社法改正案では、一番右にございますけれども、全部とはいかなかったんですが、そのうち二つを御採用いただけるということになっております。
一方で、一番下の主要な取引先の
関係者という項目は、今回は採用が見送られております。しかしながら、皆様よく御存じの三年前のオリンパスの
事件というのを受けまして、私どもの
ルールでは、
会社と社外役員の間に取引
関係がある場合には、あるかないかということ、そしてどんな取引があるのかというその概要を過去十年分にわたって発表していただくということにいたしましたので、当面はその開示を通じて
株主による監視が行われるということに期待したいというふうに思っておる次第でございます。
二つ目の項目は、スライドの下半分でございますけれども、
社外取締役の確保についてということでございます。これについてお話をしたいと思います。
世界中にいろいろな国があります。主要な先進国では、しかしながら、
経営のモニタリングというのは
社外取締役が行うんだというスタイルがもはや常識になっております。
我が国はこの点で極めて遅れておるということでございまして、内外の
投資家の評価というのは大変厳しいものがあるというふうに言わざるを得ません。そこで、私どもでは、
社外取締役の普及を
促進しようということで、これまで
会社法による
義務付けということをお願いをしてまいったわけでございますけれども、残念ながら今回の政府提出法には採用されておりません。
しかしながら、一方で、国によって、よくよく見てみますと、
社外取締役を普及させるための手法というのはかなり違いがあるということが分かります。下の図の一番上のアメリカの例でございますけれども、これは
選任を
義務付けるということをやっております。その下のイギリスですけれども、こちらはコードという名前の規範を作りまして、
義務付けはしないんですけれども、
社外取締役を採用しないとか、一定の人数置かないとかいった形でコードを破る、守らない
会社にはどうしてそういうことをするのか
説明義務を課す、そういう国もございます。
一番下が我が
日本でございますけれども、これまでと書いてあるところにございますように、これまでは私どもの
独立役員制度で、
独立性の高い社外役員、これは
取締役でも
監査役でもいいんですけれども、それを最低一名確保するということを
上場会社の
義務だということで
義務を課してきたという、これは言わばアメリカ方式でございます。
今後はどうなるのか。一番下でございますけれども、これに加えまして、
上場規則では
独立性の高い
社外取締役の
選任努力
義務を課すということにいたしまして、しかしながら、これは努力
義務ですので罰則はありませんので、どちらかというとイギリスのコードと同じような
位置付けになるというふうに思います。一方、
会社法令では、現在の予定されている
法案のところでは、
社外取締役を置かない
会社に対してそれを置くことが相当でない
理由の
説明義務を設けるということでございます。この二つの組合せは、どちらかといえばイギリス方式ということになると思います。
そのように分析しますと、今後、
我が国では、
独立役員についてのアメリカ方式と
社外取締役についてのイギリス方式を併用して、ハイブリッドで普及を促していくということになるというふうに理解をしております。この組合せがうまく功を奏しまして、ほとんどの
上場会社で
社外取締役が
選任されることになればもうそれでいいということでしょうし、そうでない場合には、政府提出法の方で申し上げますと、
施行の二年後にどうするかという、再
検討するということになるんだというふうに理解をしておる次第でございます。
最後のスライドを御覧いただきます。三点目のポイントについてお話を申し上げます。
法案の早期成立についてでございます。これに関しましては、現在確実に実態の改善が進んでおりますので、それに触れながらお話をさせていただきたいというふうに思います。
私ども
東京証券取引所ではもう十五年ぐらい前の二〇〇〇年頃から
社外取締役の普及に努めてまいりましたけれども、その当時、十五年前ぐらいになりますけれども、その当時の
上場会社の普及率というのは、
社外取締役のいる
会社の率というのは一九・九%程度ということで二割弱ということでございました。一番下の二〇一三年、去年を御覧いただきますと六二・三%、この十四年間で四二%の上昇ということでございますので、一年間に平均して三%ぐらいずつ普及率が上がっているということになります。特に、昨年は普及率が一年間で七%という記録的な上昇を記録しております。つまり、加速度的に改善が進みつつあるということがお分かりをいただけるんじゃないかというふうに思います。
右の方、目を移していただきまして、主な出来事欄を御覧いただきますと、この間、政府の各種の
審議会でいろんな議論が行われました。あるいは、
上場会社の方で国際的な
企業不祥事だとかが起こったというようなこともございます。そのたびに私どもの上場
ルールが
強化をされまして、それと足並みをそろえるように普及率が高まるという
傾向があるようにも見えます。
私どもでは、今回御
審議をいただいているこの
法案の
審議に先行いたしまして、今年の二月には、先ほど御紹介をいたしました
独立性の高い
社外取締役の
選任努力
義務を
上場会社に課すという
制度改正をいたしております。しかしながら、私どものこの
ルール改正につきましては、今回の
法案とセットで
機能するということが元々予定されてきたものでございます。今後も、
社外取締役の普及がより確実かつ強力に進み、内外の
投資家の私どもの市場に対する
信頼が一層高まりますよう、できるだけ早期の
法案成立を最後にお願いをいたしまして、私の
説明にさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。