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参考人(
大橋正明君) ありがとうございます。
皆さんのお手元に私のパワーポイントが届いているかと思います。
私は、今日、今までの打合せの中で、防災の主流化ということで、主に
日本の
ODAの
在り方について御
意見を申し上げたいというふうに思っております。私の立場は、
日本で一番大きな
国際協力NGOのネットワークのJANICの
代表ということと、私
どもがつくり上げました2015
防災世界会議日本CSOネットワークの
代表という立場で御
意見を申し述べさせていただきます。
いずれにせよ、立法府がこういう形で
ODAのことに積極的に関与してくださることを私
どもは大変心からうれしいと思っておりますし、こういうふうに呼んでくださったことも感謝を申し上げます。
御存じのとおり、
NGOあるいは市民
社会組織CSOというのは、どういう政権下であろうと理想主義を掲げ、比較的クリティカルな物の見方で、長期的なあるいは中期的な人道主義、あるいは
日本の国益というのはそれに沿ったものだと私は当然思っておりますけれ
ども、そういうことの立場から
意見を申し上げていきますので、よろしくお願いいたします。
まず、二〇一五年の国連
防災世界
会議ですが、これは、御存じのとおり、先生方が恐らく、今まで二回とも
日本が開催地をしてくださっております。国連の
一つの
会議ですけれ
ども、この三回目を二〇一五年の三月の十四日から十八日に仙台で開いてくださる。これは私
どもも大変うれしいことだというふうに思っております。
特に、この来年の三月の仙台の
会議というのは、その前の第二回
会議、兵庫神戸で行われた
会議なんですけれ
ども、さっきから前の
参考人の方もおっしゃっていますけれ
ども、MDG、
ミレニアム開発目標みたいな、そういう貧困をなくしていこうというのと同じように災害についての行動目標というのが決まって、これが兵庫行動枠組、HFAというふうに呼んでおります。これの次のもの、HFA2というふうに今仮称になっておりますけれ
ども、これを決定することになっております。
御存じのとおり、国際的なこういう取決めというのは、今まさにこの内容を下書きしている最中でありまして、いろんなところでいろんなレベルで話合いが行われております。最終的には今年の六月に
日本の方が参加できるのはアジア防災閣僚級
会議というのがバンコクで行われますので、それまでにいろんな
意見を述べておかないともう本体には反映されないという形になっておりまして、私
どもは今これに向かって動いております。
日本政府は、この防災の主流化、ポストMDGとかSDGの中にこれを入れたいということを盛んに言ってくださっておりまして、私
どもも全くそう思っているんですが、
世界的に見ますと、スイス
政府が少しそれを後押ししていますが、あとは
日本政府が言っているだけというような状態になっていますので、もっとこれは先生方も含めて働きかけないといけないんではないか、十分な働きかけをしていかないといけないんではないかというふうに思っております。
私
どもの方は、そういう思いを
NGOのレベルでも共有して、私
どもJANICほかの団体が呼びかけてこの2015
防災世界会議日本CSOネットワークというのをつくりました。ですから、防災の主流化とかいうことを是非やっていこうと思っておりますが、具体的には、来年の三月に七千人か八千人ぐらいの方が仙台にお見えになりますので、私
たち、三・一一の
経験交流ということ、これは特に民間レベルでも草の根レベルでもいろんなことが行われましたので、そういうものをお互いに学び合っていくようなこと。それから、やっぱり福島の教訓というものをなるべく生かして、これを防災的な立場で取り上げていかないと、私
たち、やっぱり正直言ってチェルノブイリのことをよく分かっていなかったために、福島の事故が起きた後、右往左往してしまって、不必要に怖がったり、また危険なこともやってしまったというふうに思っておりますので、これも是非共有をしていきたいというふうに思っている。そういうような枠組みです。
これまでが非常に早くしゃべってまいりましたが入口のところで、申し上げたいことは、今から
五つの点をお願い申し上げたいと思います。
まず最初に、そのパワーポイントのレジュメを見ていただきますとお分かりになりますように、同じような災害でも、やっぱり被害というものは、インパクトというものは
開発とか貧困のレベルで大きく違ってくるということです。これは
世界銀行の方や
佐藤先生の前で申し上げるまでもないんですが、ここに挙げさせていただいたように、いろんな地震がある、これは地震だけを取り上げてみただけのことですけれ
ども、三・一一が九・〇でも二万人弱で済んだというのは、例えばスマトラ・アンダマンの場合は二十二万人だし、ハイチはマグニチュードでは七・〇なのに三十一万六千人が亡くなっているという。これは、ですから防災と貧困は表裏一体の
関係にあるということを強調したいと思います。
去年十一月のフィリピンのハイエン台風では、ずば抜けて規模が、被害がひどかった。もちろん台風も大きかったわけですが、やっぱりインフラがちゃんとできていない、住宅がすごく壊れやすい、
人々がそういうことの理解をしていなかったり、もちろん予報が正確でなかったり、それからちゃんと逃げること、防災対策が個人レベルでも取れていなかった、いろんなことがあって被害を大きくしている。
そのために、私
たちが考える防災の中で、減災の中で大事なのは、まず貧困をどうにかしていくということが一番大事だと思っております。例えば、貧しい人が農地をちゃんと確保できる、仕事ができるようにする、失業対策がある、
生活保護があるというようなこと、こういうことをやっぱり
ODAがちゃんと後押ししていかないといけないんだろうと思うんです。
ところが、その
ODAというのは、先生方の前にあれですが、GNIの〇・一八%がたしか二〇一〇年か一一年の記録で、これは
世界の最も低いレベルで、〇・七%というMDGsの約束には到底追い付かない。この次の表がまさに一般会計予算の中の減り具合。ここ数年ちょっと減り方が減ってきましたのは先生方のおかげですけれ
ども、これを反転させていかなくちゃいけないんじゃないかというふうに思っております。これがまず
一つ目のお願い。
二つ目のお願いは、どちらかというと防災対策はやっぱり大きなものに目が行きやすい。要するに、強度が高い大規模な災害に対して防災対策が取られがちなんですが、貧しい
人々にとっては日々の災害ということが一番問題であるというふうに強調をしています。
例えば、スラムに住んでいる
人たちにとっては、その住んでいるところで崖崩れが起きたり、道が寸断されたり、洪水が起きたり、下水道がなくなって病気が蔓延したりというような、日常
生活での災害の方が実は日常的に頻度は全くそちらの方が大きいわけですので、ただマスコミにほとんど報道されることがない、それがゆえになかなか手当てが行かないということがあります。
病気も大きな病気になる前に予防する方が大事だというのと同じように、災害も日常
生活の中に起きているような低強度の、低度の中小の災害にも適切に
援助を配分していっていただきたいというふうに思っております。これが二番目。
三番目のお願いは、ここに書いてありますが、東
日本大震災のときでも、やはり高齢者の
方々、それから障害を持っている
方々の犠牲が残念ながら非常に多うございました。やはり、これは三番目のお願いなんですが、災害は
貧困層だけじゃなく災害弱者にも大きな犠牲を強いるということを訴えたいと思います。
ですから、防災、減災では、やっぱり災害弱者と言われる
方々、これをどこまで含めるかというのは難しいかと思いますが、障害を持っている
方々、高齢の
方々、妊娠している方、もちろん乳幼児を持っている方、傷病者の方、少数民族あるいは少数者の
方々、外国人等を重視することがやはり被害を圧倒的に少なくすることにつながっていくというふうに私
どもは考えております。
次の
四つ目のお願いは、ちょっと写真を入れておいたんですけれ
ども、これは私が所属しておりますシャプラニールというのがネパールのタライ平原でやっている防災対策の
活動ですが、やはり今回の東
日本の一番の重要な教訓というのは、
人々が
自分たちでお互いに助け合った、自助、共助というのは、これは私
たちだけじゃなくて
政府も皆さんおっしゃっていることですが、これが非常に大きな
役割を果たしたんだろうと思います。私もバングラデシュに約六年ほど赤十字等で駐在しておりますので、災害が起きますと、やはり最初の四十八時間ぐらいは
自分たちだけで、あるいはコミュニティー同士が助け合うというのが非常に重要なことだというふうに思っています。
また、
途上国の多くは地方
政府がまだまだ発達しておりません。
日本の場合は見事なまでに地方
政府が発達しておりますので、防災対策、災害後の対策本部も地方自治体がイニシアチブを取っておりますが、そこのところが欠けている場合が少なくありません。こういうところでは、やはり住民
組織、そしてそれを
支援する
NGO、市民
社会組織が大きな
役割を果たすことになっているというふうに思っております。
そういうことで、自助する能力を高めるということをCSOや
NGOを通じて、コミュニティー、地元の自助、共助を強化する
活動を後押ししていただきたいというふうに思っております。具体的には、余り詳しく申し上げることはありませんが、小中
学校や母親教室での防災教室、あるいは識字教育での防災教室、
学校区や避難シェルターや集落単位での防災対策とか避難訓練、あるいはハザードマップなどを作っておくといったような、そういったことが必要なんではないかと思っております。これが
四つ目のお願いでございます。
五つ目のお願いは、今から申し上げる、これは次のパワーポイントは地震の
リスクをやっております。これをお示ししたのは、この次のページ、原発の建設予定地との関連を見ていただきたいからであります。
三・一一で福島の事故が起きたことは大変悲しいことでありますが、その現実としっかり向き合っていく必要があるだろうと思っております。今後、欧米や
日本では、あるいは韓国での建設というのは比較的ブレーキが掛かって、
途上国での建設が広がっていくんだろうというふうに思います。原発に対する態度はいろいろあるにせよ、原発が
途上国に広がっていくということは、福島のような原発災害を、起きてほしくはないが起きる可能性はより
途上国に高まっているというふうに断ぜざるを得ません。私
たちは幅広い防災の
先進国という立場にあるというふうに思っておりますので、三・一一東
日本大震災での教訓を十分に発信し、活用するようにしていただきたい、これを
ODAの中にも取り入れていただきたいと思っております。
防災
先進国である
日本は、複合災害と言われておりますこの三・一一の福島の災害というのは、地震が起き、津波が起き、そして原発事故につながっていたわけでありまして、そのプロセスもいろんな原因がありますけれ
ども、こういう複合的災害が今後もっと大きくなってくる、あるいは産業災害的なものもどんどん多くなってくるだろうと思います。
世界の産業の生産センターというのは
途上国へどんどん移っていくわけであります。そういうところに地震や洪水が起きていく、そういうところで私
たちはリーダー国として果たす
役割が大きくあるんではないか、あるいはその責任があるんではないかと強く思っております。
三・一一東
日本大震災の最大の教訓というのは、起こるわけがないというふうに考えていたところが起きてしまったというところにあるんじゃないかと私
どもは思っております。これは福島のこともそうですし、一部の堤防に頼っていたところでもそういった
傾向はあったというふうに言われています。大丈夫だと思ってしまったがゆえに、起こるはずがないと思ったがゆえに避難行動や対応行動が遅れてしまった。だから、安全神話ではなくて、ちゃんと
リスクを理解し、基本的な対応を決めておくことが極めて重要なのだというふうに考えております。
ですから、
日本で起きた複合災害がアジア諸国で起きる
リスクというのを減らしていかなくちゃいけない。そうすることで、
途上国からの信頼を一層厚くしていく必要があるのではないかと思っております。私、そんなにヨーロッパのことをよく分かっておりませんが、フランス
政府は、見ておりますと、原発が起きたときの
リスクを十分住民に周知をしています。
日本は今までそれを行ってこなかったというところが非常に問題なのではないかと私は思っております。
原発災害や産業災害を含めた複合災害の防災に
日本が積極的なリーダーシップを発揮して、
世界に輝かしいリーダーになっていただきたいと思っております。特に
ODAに関しては、原発を推進するためだけに使うんではなくて、どういう
リスクがあるのか、どういう災害が起きたときにどういうことが必要なのかという
知識や
経験も伝え、やっぱり
途上国の
人々が、本当に原発を選ぶのか、選んだときにはどういう
リスクがあって、どうすればいいのかということが分かってくるような、そういう使い方、
ODAの使い方もしていただきたいと思っております。
以上でございます。