○
参考人(
福島慎吾君)
認定NPO法人難病の
こども支援全国ネットワークの
福島でございます。
本日は、このような貴重な
機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、脊髄性筋萎縮症、これは英語の頭文字を取ってSMAと呼ばれておりますが、そのSMAという神経
難病の子供の父親となったことを契機にいたしまして、今まで全く経験したことのなかった親の会の立ち上げや運営などを体験し、
平成十五年から、
認定NPO法人難病の
こども支援全国ネットワークの事務局におきまして、
難病や慢性
疾患、
障害のある子供とその
家族を支える活動に微力ながら従事しております。
ちなみに、SMAは
特定疾患の五十六には含まれておりますが、
小児慢性特定疾患の
対象疾患としての指定は受けておりません。
難病の
こども支援全国ネットワークには親の会連絡会という相互交流や情報交換を主たる目的とする定例の
会議がございまして、そこには目下のところ五十八の親の会が名を連ねております。そして、対等協力
関係の下、活動を行ってまいりました。今回の
小児慢性特定疾患治療研究事業の
制度改革におきましても、この親の会連絡会の中に有志によるワーキンググループが設置されまして、活発な
議論を行ってきたところであります。
御案内のとおり、小慢事業は
昭和四十九年から始まりまして、
平成十七年には
児童福祉法に基づく
法律補助事業として位置付けられております。
この初回の
法制化の道のりの背景には、当時、補助金に対する毎年一割の予算削減が求められる中、自分
たちが今まで助けられたこの
制度を将来の子供
たちとその
家族のためにも存続させたい、
制度を安定させ公平なものとするためにはある程度の自己
負担の導入もやむを得ないのではないかなどという声が日増しに親の会の
代表たちの大勢となる
状況下、当時の
厚労省の
担当者たちとの度重なる懸命な話合いの中で、
児童福祉法に位置付けた
法制化を行うことによって、この
制度を維持していこうという
方向性が決まったような経緯がございました。
その結果、従来はなかった自己
負担が導入された代わりに、
対象疾患の拡大や、全ての
疾患群において入院、通院の区別なく
医療費助成の
対象となったほか、日常
生活用具の給付やピアカウンセリングなどの
福祉サービスもそのメニューに加わることとなりました。
〔
委員長退席、理事西田昌司君着席〕
前回の
法制化の後も、トランジション、当時はキャリーオーバーというふうに呼ばれておりましたけれども、この二十歳以降の問題であるトランジションや
対象疾患の見直しなどの
課題は残されていたものの、この
法制化によって小慢事業は公平かつ安定的な新しい
制度となったものと私
たちはすっかり安心していたわけでございます。
ところが、数年前、この新しくなった小慢事業は、条文に事業を行うことができるというふうに書かれている裁量的経費に基づくもののために、再び予算削減の
対象となっているということを聞き及びまして、大変驚いたわけでございます。ちょうどその頃、
難病対策の
法制化に向け機が熟しつつある時期でございましたので、この
難病対策の歴史的とも言える
法制化に歩調を合わせる形で、改めて義務的な経費に基づく小慢事業の再
構築を行うことによって、持続が可能な公平かつ安定的な
仕組みとすることを目指した
議論を進めてまいりました。
このような数々の経緯がございまして、今回の
児童福祉法改正案、
難病法案の早期
成立を願う
思いをお伝えするために本日はお伺いしている次第でございます。
私
たちの
議論の中でも、
治療研究の問題、低
所得者に対する自己
負担の問題、長期にわたる入院時における食事
療養費の問題、遠隔地にある
専門医にかかる際に生じる交通費や
家族の宿泊費などの
医療費以外の
負担の問題、
疾患名によるくくりと
制度の谷間の問題、
地域格差の問題など残された
課題に関しても様々な
意見がございました。
今回の
制度改革が全ての人に満足を与え、そしてこの
制度だけで全ての問題が解決されるとは考えておりませんので、今後も
当事者たちの声を丁寧にお聞きいただき、
状況や必要に応じて柔軟かつ能動的に
制度の見直しを行っていただきたく
思います。
ここで、子供の
難病や慢性
疾患の特徴と、それに伴う実情について幾つか挙げてみたいと
思います。
まずは、
患者数が少ないことであります。そのために、
病気の周知や
診断が遅れたり、
治療法が未確立だったり、あるいは薬の開発が遅れてしまうことにつながるわけです。また、同じ
疾患の
患者との出会いが限られてしまうことによって
家族が孤立しがちとなることも否めません。
私
たちは、
難病の子供
たちが
全国に二十万人いるといつもお話をしているのですけれども、小慢事業の受給
対象者はそのうち約十一万人、小慢の十一
疾患群五百十四
疾病全てを合わせても十一万人しかおりません。全ての
疾患が
難病法案の指定
難病の
希少要件を満たしている点を申し添えておきたいというふうに
思います。
〔理事西田昌司君退席、
委員長着席〕
次に、どんな重い
病気や
障害があっても、子供は必ず成長、発達するため、
保育や
学校教育、
病院の選択、思春期の問題などライフステージに応じた柔軟かつきめ細やかな対応が必要となることです。
医療、保健、
教育、
福祉といった
支援をする側が決めた縦割りの枠組みの中だけで自己完結していては、子供の成長、発達に必要な
支援は
確保できません。それゆえに、
総合的かつ横断的な自立
支援や自己決定力
支援が必要となるわけであります。私自身も様々な経験がございますが、特に
学校教育段階における
厚労省と文科省の連携は大変大きな
課題だというふうに考えております。
このほか、親が若いために経済的な
負担が大きいこと、兄弟に対する配慮やケアが必要なことも忘れてはなりません。包括的な
家族支援が必要となるゆえんでございます。
そして、先天性
疾患や遺伝性
疾患など生まれつきの
病気が多く、偏見や誤解によって傷つく子供や
家族も少なくありません。また、確定した
診断名が付くまでに長い時間を要することも珍しくなく、確定した
診断名が付かないと小慢事業や
難病対策の
対象とはみなされないことは言うまでもありません。
地方
自治体が
実施主体の乳幼児、子供
医療費の
助成制度もありますが、国からの補助のないこの
制度は、
実施主体によってその
対象年齢や通院、入院の区別、所得制限の有無とその額などが大きく異なっておりまして、それこそ住んでいる市町村によって受けられる内容に雲泥の差が生じているというのが現状でございます。何らかのセーフティーネットが必要な
領域かと
思います。このほかにも様々な困難がありまして、これらを
一つの
家族だけで乗り越えるのは難しいと言えるのではないでしょうか。
親の会や
患者会、あるいは私どものような
支援団体はインフォーマルな
社会資源の
一つだといつも申し上げておりますけれども、
病気や
障害のある子供とその
家族の
生活を支えるためには、
医療、保健、
教育、
福祉の
専門職と体験的な
知識を持つ親の会や、あるいは
当事者に軸足を置いた
支援団体など、レイ・エキスパートが連携、協働しながら両輪となって
支援を行っていくことの重要性を御提言申し上げたいと
思います。
そのような観点からも、今回の
法律案に含まれる小児慢性
特定疾病児童等自立
支援事業につきましては大変大きな関心と
期待を持っているところでございます。
最後となりますが、お手元に資料を配付させていただきました。今までの話と重複いたしますが、私
たちの
願いを三点に絞って申し上げたいと
思います。
一つは、小慢事業の
医療費助成の
仕組みを義務的な経費に基づくものとする
法案の速やかな
成立であります。二つ目は、
地域で暮らす
難病や慢性
疾患のある子供
たちとその
家族を支える自立
支援事業などの
福祉施策への積極的な
取組です。そして三点目は、子供から大人への切れ目のない
支援の
実現のためのトランジション問題への
取組です。
以上、大変雑駁なお話となってしまいましたけれども、私の陳述は以上のとおりでございます。
御清聴ありがとうございました。