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参考人(
太田義郎君) 私、
太田義郎と申します。私は名古屋市内の中村区で米屋を五十年やっております。言わば、町の米屋のおやじであります。食管法の時代から今日までずっとやっております。今回、
自営業者の代表として
意見表明の機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。
私は、
全国商工団体連合会の副
会長をしております。私
どもの
団体について、一言紹介をさせていただきたいと思います。
私
どもは、米屋だとか酒屋、肉屋、八百屋はもとより、町の飲食店から建設業者、そして物づくりに携わる町工場など異業種で構成をされており、
全国に約二十万人の
会員を
組織しております。何よりの特徴は、五人以下の
小規模事業者と個人
事業者を中心に
組織していることにあります。そのような
小規模事業者と個人
事業者の営業と生活、諸権利を守って、
社会的、
経済的地位向上を図ることを目的に六十四年間ずっと
活動してまいりました。本
委員会で
議論をしていただいている
小規模企業の
実態や要望を最も良く
理解しているのではないかと自負しているところです。
これまでの
中小企業政策は、どちらかといいますと
中小企業の中でも上の部分、やる気と能力のある
中小企業の
支援が中心になっておりましたので、私
どものような
小規模事業者にはなかなか光が当てられておりませんでした。その点から、今
国会で五人以下の
小規模事業者と個人
事業者への
支援に光を当てた
小規模企業振興基本法案の
制定に御尽力をいただいていることにまず感謝とお礼を申し上げたいと思います。
さて、
小規模事業者の
実態でありますが、御
承知のように大変厳しい状態にあります。私の住む名古屋でも、自動車関連の下請の町工場がたくさんありますけれ
ども、単価、工賃ですね、毎年下がってきております。その上、親
企業の海外移転で
仕事量は
減少し、
廃業が続いております。かつては韓国並み賃金と言われましたが、今やアジア賃金と言われて、
政策支援から置き去りにされてまいりました。町工場が消えていくのではないかと危惧をしているところです。
町も大きく変化をしてきております。商店街は空き店舗が増えて、何年もシャッターが下りたままの店舗が増えております。私の住んでおります中村区のすぐ家の近くのマンションには、一階部分が店舗なんですけれ
ども、喫茶店、小間物屋、食料品、衣料品店が次々店を閉じて、今結局残っているのは美容院だけです。町の活力が失われて、町が日に日に寂れて死んでいくような寂しさを日常的に感じております。
どうしてこのようなことになってきたのか、本日はこの原因についてあれこれ
議論する場ではありませんので、今直面している問題に絞って申し上げたいというふうに思います。
私
どもは、年に二回、
中小商工業研究所という附属の機関で、私
どもの全商連の附属機関ですけれ
ども、千四百三十社で営業動向
調査というのを毎年年に二回やっております。この間、アベノミクスで一部の大
企業では
景気回復が伝えられておりますけれ
ども、私
たちのようなところではその実感はなく、むしろ原材料の高騰が収益を悪化させて、
消費税増税が
経営悪化の引き金になっております。
小規模事業者の
経営を困難にしている原因のベストファイブは、第一は
仕事やお客さん、顧客の
減少、第二は
消費税の負担が重いこと、第三は競争の激化、第四は低い下請単価、第五は経費の増大だと。これが千四百三十社で行っていた最近の一番直近のアンケートの結果です。
政府は
消費税についての転嫁対策を講じているとおっしゃいますけれ
ども、
消費税が転嫁できるかどうかは市場における力関係なんです。厳密にいいますと、それは相対取引で付加できるのかできないのかが現実にはもう決まってくる。親
企業や顧客からは価格の引下げを求められる、ちょっと安うしていけよと、こういう話です。同業者と価格競争ということもあって、うちだけ上げると客が減るのでないかという勝手な思い込みと、こちらの不安もあって、結局は同業者との価格競争という値引き合戦にさらされているのが
現状なんです。
消費税は結局、力の弱い者に負担が押し付けられる税金なのです。そういうこともあり、
消費税の滞納が増え続けて
廃業の引き金にもなっております。
政府は、
地域の中で取引が集中しているコネクターハブ
企業への
支援を救世主として切り札にしようということは言っておりますけれ
ども、実は
小規模事業者のコネクターハブの
事業体というのは、〇・一%にも満たない三千六百社にすぎない
企業への
重点的な
支援が
地域の底上げになるのか大変疑問に思います。
私
どもは、このような
小規模事業者をどうすれば元気にすることができるか、引き続き
地域で
役割を果たしていくことができるのかという点から、
日本版・小
企業憲章というものを提案させていただきました。お手元に行っていると思います。その中で、小
企業、家族
経営の
役割の
重要性や必要な
政策方向を提起しております。
資料としてお配りしておりますので、是非、後で御一読いただければ幸いかと思います。私は、この中から三点に絞って
小規模企業振興基本法に基づく
政策の
具体化を
お願いをしたいというふうに思います。
第一は、
仕事の
確保についてです。
金は天下の回りものという言葉があります。若い人はこんな言葉は聞いたことないとおっしゃられるかも分かりませんけれ
ども、多少年配な方はみんな、金は天下の回りもの、この言葉が通用すると思います。
しかし、この二十年、金も物も人も実は
地域で循環しなくなってきております。大
企業の海外移転や、少子化、
高齢化で人口も少しずつ
減少を始める、非正規
雇用が広がってきている、どんどんと働く人の賃金も減り続けているなど、
地域は疲弊をしております。価格だけで物を判断する新自由主義的な風潮が広がり、
地域資源を生かし、
地域の暮らしや生活に必要なものを供給することをなりわいにしている
小規模事業者の出番もなくなってきております。金、物、人の循環は断ち切られて、
地域の持続可能が失われてきております。
今必要なことは、小
企業、
自営業者が自立できる
環境をどうつくっていくのかにあります。その柱が
地域での
仕事おこしによる
地域経済の
振興策だというふうに思います。
こうした中で、
地域循環をつくる
経済振興として注目されているのが住宅リフォーム助成制度です。秋田県や山形県、静岡、広島、佐賀の五つの県を含む
全国で六百二十八の
自治体、二〇一四年度ですけれ
ども、これが
実施されております。各
自治体の試算では
経済効果は実に二十三から二十九倍の効果があるということが、これは科学的に実証されております。私が大学で勉強した
経済効果の
経済法則からいうと、天文学的な数字なほど
経済効果があります。住民に喜ばれ、業者の
仕事も起こし、
自治体の財政力も増やす、三方よしで大変歓迎されております。最近では、省エネルギー、バリアフリーの促進の上からも、少子
高齢化社会への対応としても必要とされているもので、
地域を元気にします。こうした
地域循環の
政策を全ての
自治体が
推進できるように、国が財政
支援を含めて応援していただきたいと思います。
第二は、
消費税中心の税財政の構造から、憲法の
理念を踏まえた応能負担原則の確立で
小規模事業者の税負担の軽減を図ることだと思います。
私
どもの
調査では、
消費税を転嫁できない業者は、最も最近の
調査で四九・四%になっております。
事業規模が小さくなるほどその
比率は高くなっております。
消費税は
事業者税となっているのです。
外形標準課税な
どもってのほかだというふうに思っております。
これは
中小企業白書でも紹介されていることですが、個人の
起業を促すために、起こす業ですね、フランスでは個人
事業者制度を二〇〇九年に
制定していますが、
地方税が三年間免除されるほか、付加価値税の、
日本でいえば
消費税ですけれ
ども、付加価値税の徴収も免除され、売上げがない間は所得税も
社会保険料も免除されるとのことです。この制度の導入では
起業は倍増したというふうに報告されております。このように、個人
事業者に対する思い切った措置を
お願いをしたいと思います。
第三は、
社会保険料の負担軽減と
中小企業金融の円滑化についてです。
社会保険料の負担軽減の必要性については、衆議院の附帯決議でも付されているところです。負担の軽減を図る効果的な
支援策を是非実現していただきたいものです。
そして、
中小企業憲章では
中小企業向けの
金融を円滑化することが行動指針に入れられておりますが、円滑化
法案終了後、信用保証制度の見直しなど憂慮すべき
動きが強まっているように感じております。例えば、返済猶予を受けていた業者が、今年に入ってから元本含めて一括返済を迫られるというような
動きも出てきております。
小規模事業者にとっては
金融は命綱です。町の
中小業者は、物づくりの技術を生かした
仕事を始め、
地域の町内会、
コミュニティーの中心的
役割を担うなど、
地域になくてはならない存在です。文字どおり、
地域で営業していることで
社会貢献しております。
廃業をできるだけ少なくしていく
金融対策が必要です。
地域再
投資法など、
中小企業金融の円滑化の実現も
お願いしたいと思います。
さて、お手元に
日本版・小
企業憲章をお渡ししてあります。この四ページから五ページに向けてこういう文言が書かれております。
小
企業・家族
経営は、強い独立心を持っています。そして、苦労をいとわず、
経営努力を積み重ね、磨いてきた技術や技能、味やサービスを次代に受け継ぐという使命感や進取の精神を発揮しながら
日本経済に活力を与えてきました。小
企業・家族
経営の存在が戦後の
我が国の復興と驚異的な
経済成長を支え、度々発生する大災害から
地域を再生させるなど、大きな
役割を果たしてきたのも事実です。
地域の隅々に多様な小
企業・家族
経営が存在することが庶民の暮らしを豊かにします。そして、小
企業・家族
経営は多様で貴重な
経済的、
社会的
役割を発揮しています。この
役割を正当に
評価し、
事業の
継承、
発展を保障することこそ行政の責務だと私
どもは考えております。
小規模企業振興の
基本法に基づき、私
どものような小
企業・家族
経営を守り
支援する
政策を
具体化、
推進していただきますように
お願いをしたいと思います。
どうもありがとうございました。