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参考人(
石崎英治君)
特定非
営利活動法人伝統肉協会の
石崎と申します。本日はよろしくお願いします。
まず、この
伝統肉という
言葉なんですけれども、いわゆる牛とか豚ですね、そういったものが
一般的に食べられるようになったのは明治以降というふうに言われています。それよりも前の
時代というのは、いわゆる仏教が非常に盛んだった、殺生を禁止されていたというふうに言われているんですけれども、実際のところ、例えば
イノシシは
ボタン鍋と称されて、ないしは薬食いというふうに言われて
一般にも食べられていたというような
時代がございました。そういったところから、そういった伝統的なお肉というのを現代によみがえらす、復活させることによって
野生鳥獣の問題というのを解決しようということで私
たちの団体で
活動を進めております。
本日は、そういった
捕獲と肉の
有効活用、
利活用というのはセットで捉えられることが非常に多くありまして、そういった
利活用の視点から考えたときの、今回の
法案に対する、
法改正に関する
意見という形で述べさせていただきたいと思っております。
まず、お手持ちの
資料の一ページ目の
食肉流通の違いというところから御説明いたします。
まず、
一般のお肉、いわゆる牛、豚のお肉というのは、
御存じのとおり、いわゆる
屠殺場というところで
処理をされてお肉に変わるわけですけれども、その
屠殺場に持っていくためには
生体で、つまり生きたまま運ばれるわけですね。例えば東京の芝浦の
食肉センター、
食肉処理センターでは
北海道、遠くは
北海道から生きたまま船で運ばれてきて、お肉に変わって都民のおなかに入っていくということをしております。
生体で搬送できるので非常に
効率的です。一日に約五千頭の牛、豚が
処理されるというような
処理場が
日本にもございます。
また、
屠場、いわゆる
屠殺場というのは
市場の
機能を果たしているというのも
特徴になります。いわゆる
競りですね、
競りが行われて全てのお肉というのが
流通業者ないしはレス
トランの方に流れていくというのが
特徴です。ですので、
屠場とか
市場ではもちろん
在庫の
リスクが全くないわけですね。
一方で
野生鳥獣肉、
イノシシや鹿ですね、そういった
野生鳥獣肉は、
生産者がまず
ハンターですので、野外で
鉄砲ないしは
わな等で
捕獲をして
処理場に持っていくという形になります。ですので、その時点でまず死んでしまっているわけですね。死んでしまってから持ってくるということなので、死んでしまったらもちろん生き物は腐っていきますので、時間の壁というのがどうしてもございます。中
山間地において道路がまだ整備されていないような
部分ですと、なかなか捕った肉というのを、捕った死体というのを
処理場に持っていくことが非常に困難になります。集約がもちろんできないので、やっぱり小規模な
処理場がたくさん増えていくというようなことに至っております。
また、その
処理場の
経営が
一般の
民間の方がやられることが多い。市町村、
自治体がやる場合もございますが。ところが、そこが
市場の
機能は有しておらず、
在庫肉を抱えることになります。お肉の中にも例えば
ロース肉とかもも肉とかいうような使いやすいお肉の
部位もあるんですけれども、すねとかばらとか、そういった
部分というのはなかなか利用されない、低
利用部位というふうに言われるんですけれども、そういったところがあるので売れ残ってしまうわけですね。そこがやはり
経営を圧迫してしまうというようなことがあります。
そういった
リスク、
経営上の
リスクがある
処理場なんですけれども、この
処理場を、今
かなり全国的に増えてはいるんですけれども、成立するための
条件として以下の三点を挙げさせてください。
年間の
捕獲頭数が、これ
金額に換算して二千万円以上ぐらいの
売上げは必要なんではないかと思っています。この
捕獲頭数というのも、
北海道の多いところは二千頭近く
年間に
処理をしています。ところが、本州の小さな
処理場ですと、
年間に三十頭ぐらいしか
処理をしていない。ないしは、とある
処理場とかは
年間の
処理量がゼロ頭、一回も
電源が入っていない、冷蔵庫に
電源が入っていない。ちょっと余談になりますけれども、そこは
日本一衛生的な
処理場と言われていて、肉が入ってこないので雑菌がゼロなんですね。というような皮肉な結果な
処理場というのも世の中にはございます。
エゾシカの場合ですと、
捕獲頭数が二百頭の
処理場を想定した場合に、これで
販売金額二千万を達成するとすると、一頭当たり十万円の
値付けをしなければいけない。
値付け十万円だと、
エゾシカの精肉は平均三十キロですので、大体三千五百円ぐらいで販売しなければいけないと。この三千五百円という卸の
価格というのが高いのか安いのかというところなんですけれども、これは牛肉に比べても非常に高い
金額になってしまっています。
この解決のためには、例えば、先ほどちょっと申しましたゼロ頭とか三十頭というような
処理場、これ
経営的に成立しているのかというと、全く実はしておらず、こういったところに公の
お金、町の
お金、
自治体の
お金というのが投下されていることがあります。そもそも、
自治体がそもそもの
処理場を
経営している場合もございます。こういった
部分と
民間の
処理場というのが今
競争状態に入っているわけなんですけれども、この
競争状態をちょっと緩和してあげないと、なかなか
民間の
処理場というのは
経営を成立させることができないんじゃないかと考えています。
それから二番目が、季節による
売上げの
変動をなくすという
部分を、
雇用の
一定化ですね、それを目指したいなと思っています。
今、
日本のハンティングは
猟期と
猟期外というふうな形の
二つパターンがございます。
猟期外の方は、先ほど
坂田先生の話でもございましたが、
報償金が出たりとか出なかったりするし、
猟期のときも出たり出なかったりするというので、
ハンターのモチベーションというのを
お金でコントロールしようとしているわけですね。
これが、持ち込まれる鹿、
イノシシの季節的な
変動を呼んでしまいます。行政から
お金が出るからたくさん捕ろうというので、捕ったものが
処理場に持ってこられる。そこで捕り過ぎるので、冬場余り捕れなくなって余り持ってこなくなる。できれば、
処理場としては、一日三頭とか四頭とかそういったのをコンスタントリーにずっと持ってくるというのが
経営を成立させるための
条件なんですけれども、急に十頭来ました、一週間ゼロ頭です、ないしは冬場全然肉が入ってきません、夏場だけ入ってきますというような形だと、
経営を成立させることはやっぱり難しいですね。
雇用もなかなか
一定化できません。そういった
部分がまた肉の
価格に跳ね返ってくるので、この辺も
制度として、
猟期とか
猟期外とか
報償金というものが出てくると思いますので、そういった
部分をなるべく
捕獲頭数を
一定化させるような取組というのを進めていただきたいなと思っています。
それから、
中期経営計画を立てるためでの
生息数、
捕獲数の安定さを求めます。
新聞報道でもございましたが、これから何年か掛けて
イノシシ、鹿の
生息頭数というのを半分にしようという施策があるかと思います。これ、半分になるとどういうことになるかというと、恐らく
処理場、
かなりの数が潰れていくと思います。
捕獲しやすい
場所というのは
処理場の近くです。逆に考えると、
処理場というのは
捕獲しやすい
場所に造るわけですね。それは、
処理場の肉としてもそうですし、ただ単純に数を減らすという
意味も含めて、
処理場の近くというのが
イノシシ、鹿が捕りやすい
場所なんですね。
半分に減らしますという
言葉だけが歩いてしまいますと、恐らくは
処理場の近く、
処理場としては大切な
資源ですね、
売上げにつながる
資源を乱獲してしまうということになると。一方で、山の奥、例えば
国立公園の中の貴重な植物がいるような
場所の鹿はほとんど捕られることがなくなると。捕りやすい
場所から順次捕っていくという形になってしまうと、半分になったときには
処理場の
周りには鹿、
イノシシが全くいない、つまり
売上げがゼロになってしまうというふうなことを危惧をしております。
次のページに行っていただきまして、
経営を
効率化させるための施策として四点挙げさせてください。
一つ目が、ミート
ハンターの
認定制度。
ハンターというのは、
日本の
法律上は、趣味、ホビーという位置付けになっています。そのホビーの方が有害
鳥獣駆除ですとか
処理場の肉の
生産者という位置付けになっているんですけれども、
一つ、食品衛生法の中で野外の解体というのを認められていません。鹿肉、
イノシシの場合は野外でハンティングをしてその場で放血をする、血抜きをするわけですね。血抜きをした後にそのまま
処理場に持ってきて
処理場の中で剥皮、皮を剥ぐということと内臓摘出を行って、枝肉、それからブロック肉というふうに流れていくわけなんですけれども、野外で腹抜きをするということは今の食品衛生法では認められていません。屋根が付いているきちんと営業許可を取った
場所じゃないとできませんよという
制度ですね。
もちろん、衛生面からそういった
部分は大切な
部分、大切だと考えていますが、例えば
北海道の厳冬期、マイナス三十度の世界ですね、マイナス三十度の世界で、
処理場とマイナス三十度、どっちの方が衛生的かというと、まあ
北海道のマイナス三十度の方が衛生的ですね、微生物が全く生息できる
環境ではありませんし。そういった
部分を、例えば野外
処理ができるミート
ハンターの
認定制度をつくるとか、そういった
部分というのは今後必要になってくるかなと思います。
野外で腹抜きをすると、それだけで重さが半分になりますね。それから、腐るスピードというのもだんだんだんだん遅くなっていきますので、非常に広範囲から
処理場に肉を持ってくることができると、これは
効率的な方法だと考えています。
それから、有害
鳥獣、有害だ、有害だと言われているところから
資源の考え方を浸透させるというんですけれども、ちょっと乱暴な
意見かもしれませんけれども、
資源利用のためには一定の
鳥獣害による
被害も認めるような地域づくりというのも必要なことではないかというふうに考えています。
処理場が地域おこしないしはビジネス、地域のビジネスを興すために肉の販売を頑張っているんですけれども、その頑張りをちゃんと地域で応援するような仕組みですね。例えば、柵の張り方を考えるとか、ある程度開放した牧草地を用意するとか、そういったような工夫で町を挙げて
資源とするというふうなことを考えていきたいなと思っています。
それから、衛生問題の
リスクですね。これはまあ
効率化という
意味ではないんですけれども、実際に秋口になるといろんなレス
トランでジビエ始めましたというような看板、冷やし中華のような形で出るかと思うんですけれども。いわゆるジビエ、
野生鳥獣肉はジビエと申しますが、フランス料理、イタリア料理というので人気のメニューの
一つなんですけれども、そういったところで出たメニューの中には、どこどこの
ハンターさんから直送します、誰々さんが捕ったものをうちでは出しますよというようなレス
トランさんも
かなり多くあります。よくよく調べてみると、
ハンターさんが野外でブロック肉にしたものをクール宅急便で送るというような事例も
かなりあります。食品衛生法違反ですね。
もちろん、これをきちんと摘発をしていくという
部分ですとか、そういった肉がもしも一度食中毒を起こしてしまうとどういったことになるか、適切に
処理をしている
処理場さんも同じような風評
被害をもらってしまうんじゃないかということを危惧していますので、こういった法令遵守の厳密化というのは進めていきたいなと思っています。
それから四番目が、利用を前提とした
効率的な
捕獲と回収を進める必要もあるかと思っています。
効率的な
捕獲という
言葉で説明されると、シャープシューティングという
言葉が新聞等で出てきています。例えば、車の荷台から閉鎖した道路、それから車の荷台からスナイパーが
鉄砲を撃っていく、一日二百頭捕れますというような話が新聞をにぎわせています。ただ、
処理場としては、一度に二百頭の鹿が来ても
対応し切れないわけですね。そこと、食肉の利用のための
効率化というのと個体数を減らすための
効率化、これはまた別の問題ですので、ここで言うところの
効率的な
捕獲というのは、適切に、毎日二、三頭ないしは四、五頭、その
経営の規模、設備の規模に応じた鹿、
イノシシが入ってくるような仕組みづくりというのを今後考えていく必要があるのではないかというふうに考えています。
最後、
野生鳥獣肉の生産システムというところで、下に述べさせていただきましたが、例えばこういった仕組み、こういった研究を進めていきたいなと、進めてほしいなというふうに考えているところです。
これは、食肉
処理場、
捕獲から回収の
効率化を実現するための肉の生産システムという形で、一番時間が掛かるところが
ハンターが捕った後に
処理場に持ってくるという回収の
部分なんですね。その
部分を
効率化することで
処理場の
経営というのは
かなり安定すると思っています。
これは具体的に、食肉
処理場が真ん中にあって、複数の市町村にまたがるような冷蔵の保管庫、これは移動式の冷蔵車でも構
わないと思うんですけれども、そういったものをサテライト型でたくさん置いていく、そこに
ハンターさんが捕ったものを野外で内臓を出して持ってくる、ある程度たまった段階で
トラックでこれを回収していくような、ミルクの回収システムのような形ですね。こういったものをつくることで食肉
処理場の規模、生産する規模というのが拡大されるはずですし、
ハンターさんも近くのところまで持ってくれば肉が生産できるのではないかなというふうに考えています。
日本人の倫理観として、捕ったものはやっぱり食べるというのが非常に重要な、腹に落ちやすい議論かと思います。そういった
部分を進めるために、今回の
法改正と是非
利活用の
部分というのはセットでディスカッションをしていっていただきたいなというふうに考えています。
以上で発表を終わります。ありがとうございました。