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西田分科員 ありがとうございます。
人権というものについては、昨年の法務
委員会でも一度
大臣とお話をさせていただいた記憶がございます。あのときは、ハンナ・アーレントを引き合いに出したかなと私は思うわけでございまして、
大臣からも映画のお話をいただいたことを記憶しているわけでございますけれ
ども。
人権というのは、人権とは何ぞやといったものが非常に曖昧なまま、いろいろな政策がなされているのではなかろうかというふうに私は思います。
人権とは、言うまでもなく、国民の権利であるというふうに私は思います。国民の権利であるからこそ、国家があって、そしてさらには、その国家の中で発展してきた法秩序があって初めて保障されるものが国民の権利であり、それを人権と国内向けには定義しなきゃいけないものだというふうに思います。
混同しやすいのが、いわゆる国際政治における人権でございますけれ
ども、それは、いわゆる国民の権利がいまだ制定されていないか、もしくは何らかの理由で国民の権利が失われたか、あるいは、今、国民の権利がようやく発達しているか。そういった、この
日本のように国民の権利が確立した国とは違って、やや不幸にも、国民の権利がまだ確立していない、そういった国の人々に対して、道徳心とか倫理的な見地から、せめて生存の保障だけはしてあげましょうと内政干渉に近いことを行っていくこと、これが国際政治における人権ではなかろうかと思いまして、よく言われている国際政治における人権、最低限のそういう生存の保障とほとんどイコールに等しい人権と、国内で議論される国民の権利としての人権とは、きちんと峻別をして考えないと混同してしまうというふうに私は思うわけでございます。
国民の権利、これは我が国においては、長年の歴史や伝統の中できっちりと培われてきた正義の中に自由が保障されているわけでございますけれ
ども、そういった前提に立って国民の権利を考えたときに、果たして、
法務省が今行っている人権擁護、つまり国民の権利の擁護のための活動といったものがどこまで妥当なのかということを考えるわけでございます。
いただき物ですが、ここに「
平成二十五
年度版 人権の擁護」という冊子がございます。先ほど局長に御
答弁いただきましたような、さまざまな啓発活動やそういうセミナー等の取り組み、あるいは、みんなの人権一一〇番、子
どもの人権一一〇番、女性の人権ホットライン、インターネット人権相談受付窓口とかいった、こういうコールセンター等の御紹介もされているところでございますし、恐らく
予算でも、そういったコールセンターの運営費も計上されているのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
さて、これを読み進めていきますと、まず最初に「主な人権課題」というのが出てくるわけでございます。十七項目ございます。最初は「女性」でございますね。何が書いてあるかといいますと、女性に対する暴力はいけませんということが書いてあるんですね。当たり前なんですね、こんなこと。女性に対してであろうが、男性に対してであろうが、子供に対してであろうが、高齢者に対してであろうが、障害者に対してであろうが、暴行すれば、これは傷害でございますから、こんな当たり前のことを書いて啓発活動をやっているということになっているわけでございます。
一方で、女性に関しては、
大臣、男女共同参画基本法の紹介もしてあるわけですね、
内閣府の所管だと思うんですけれ
ども。先ほ
ども言いましたけれ
ども、法の支配を貫徹することが信条とされている谷垣
大臣におかれては、男女共同参画基本法第四条、我が国の伝統や慣習を真っ向から否定するように読み取ることができるような第四条を持つ男女共同参画基本法なんて、まさしく法の支配を揺るがすものではないかと恐らく問題意識をお持ちなのではないかと拝察するわけでございますけれ
ども、それはともかく、女性、子供、そして障害者、そして高齢者とか、さまざまな人権問題があるというふうに紹介をしてございます。
ページをめくっていきますと、先ほどの啓発教材、「デートDVって何?」というのが出てくるわけですね。「デートDVって何?」という、これが何というふうに思うわけでございますけれ
ども。私は、これは動画を見てみました。
まあ本当に余計なお世話でございまして、三組のカップルの話が出てくるわけですね。
大臣はこれをごらんになったことがございますか。ぜひ一度ごらんになってください。恋人間の痴話げんかでございますよ。女性が男性に嫉妬をして、例えば大学生のカップルなんですけれ
ども、ゼミでほかの女性と話しているのが気に食わないからゼミに行くなとか、バイトに行くとバイト先にかわいい子がいるから、あなたが行くのは心配だから行くな、あげくの果てには、携帯電話のメモリーを全部消去したというドラマがまずあって、それに対して、これは精神的苦痛を与えるんだとか解説がされております。
さらには、例えば女性に対して、つき合っている男性が、ミニスカートが好きだからミニスカートをはいてほしい、ショートカットが好きだからショートカットにしてほしい、これも精神的苦痛を与えるおそれがあるとか、まあ本当に、どこまで個人の嗜好や恋愛に対してまでいちゃもんをつけるのかというふうな印象を持つDVDでございまして、余計なお世話を通り越して、私は背筋が寒くなる思いをするわけです。
ジョージ・オーウェルの「一九八四年」、
大臣は恐らく御存じですね。国家権力が個人の私生活のありとあらゆるところにまで介入して、個人の自由を奪っていくさまを皮肉にもつづったジョージ・オーウェルの小説でございますけれ
ども、まさにそれを思い起こすものでございました、この「デートDVって何?」というDVDが。
私は、そういう余りにも個人の嗜好や本来
政府が介入する必要がないところにまで、こうして、やれ人権だという旗を正義のごとくはためかせて介入していくこと、これはやはり、ハイエクが言う隷属への道につながっていくものではなかろうかというふうに思うわけでございます。
個人の努力もしくは才能、もしくは幸運に恵まれて、そして個人が自由を担保していくこと、こういった当たり前の
状況を侵害していくのは、何も行政が私生活に介入するというのが先にあるわけじゃない。私は、これは、私たちが求めるから、私たちが求めて、国家権力に私生活に介入する権力を与えてしまうからいけないんだというふうに思います。逆に、人権の擁護というのがそういった国民意識の啓発につながっているのであれば、私は、断固こういったことはやるべきではないというふうに思います。
大臣の御所見をいただいて、
質問を終わりにしたいというふうに思います。