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鈴木義弘君
日本維新の会、
鈴木義弘です。
ただいま提案されました
法律案について、
日本維新の会を代表いたしまして
質問いたします。(
拍手)
昨年十二月、
ユネスコ無形文化遺産に
和食が
登録されたのは、
先ほど質問がありましたとおりであります。
「
日本の
食文化 その伝承と食の教育」では、次のように定義されています。一、主食と副食の分離、二、一汁三菜の
食膳形式、三、自然を生かした調理、四、
発酵食品の発達、五、
食生活に対する態度。
しかし、現代の私
たちの
食生活はどうでしょうか。
西洋化が進み、パン食当たり前、
動物性たんぱく質や脂肪のとり過ぎで、メタボや
生活習慣病の
国民が年々増加しているという
データもあります。逆の見方をすれば、
無形文化遺産として
登録をしなければならないほど
食生活が変わってしまったということです。
一方、「
伝統野菜、
地域耕す」と題した新聞の記事が目に入りました。
時代とともに忘れ去られた
伝統野菜を復権させようとする動きが活発になっている。青森県八戸市は、絶滅の
危機にあった
糠塚きゅうりの
生産を後押しする
取り組みを二月に開始。山形県や長野県では、
需要拡大に向けて
情報発信を強化する。
生産者の
高齢化が進み、
種存続への
危機感が強まっているほか、独自の
食文化を
地域おこしの
起爆剤にしようとする狙いもあるというものです。
戦後、私
たちの先人は、
栄養状態が極端に悪く、とにかくおなかいっぱい御飯が食べたいと、仕事をし、
食料の増産に突き進んできました。そのため、
大量生産、
大量消費、
大量廃棄の
時代が今日まで長く続き、
バブル崩壊以降も、
もとの
価値観に戻ることはできなく、対外的な
経済力により、
海外からさまざまな
食材が手に入り、私
たちの胃袋を満たしてくれる
時代が続いてまいりました。
さらに、安く大量につくって供給することに力点が長らく置かれ、
農林水産物も、
国際競争の中で翻弄され続けてきました。
今まさに、その
競争の
視点とは違う
取り組みとして、
伝統野菜、すなわち、
地域風土に合った特産と言われているものを見直し、オンリーワンの青果物を育成することが、
競争に勝ち抜くアイテムになると
考えられるようになってまいりました。
そこで、今回、おくればせながら、
特定農林水産物等の
名称の
保護に関する
法律案が
提出されました。
この法律の
趣旨では、原
産地表示、
地理的表示も、
知的財産の一部に位置づけられています。
知的財産とは、本質的に、合理的な独占形態を実現するための一手法であると定義されています。
今回
提出された
地理的表示の
保護法と、現在既に法制化されている法律との関連の中で、疑問点を
指摘していきたいと思います。
まず初めに、
知的財産の訴訟について、国内的には、迅速性や、判決の正確性や信頼性に対する問題点の
指摘はなく、運用されているとお聞きします。
その中でも、二〇〇五年に
知的財産高等裁判所が設置されました。現在までの約十年間、審決取り消し訴訟が行われた事例がどのくらいなのか、専門性の高いものとそれ以外のものの峻別を明確にしているのか、
お尋ねいたします。
さらに、
知的財産専門の裁判を扱うところと、それに係る技術的専門性を兼ね備えた人材を育成し、裁判に当たらせるような
制度の確立を
検討する
考えがあるのか、
お尋ねいたします。
一方では、隣の中国や韓国はいまだに
模倣品が横行しているのが、たまにマスコミで報道されます。アジアの
模倣品の流通
状況の資料に目をやると、いまだに、中国、韓国、台湾で製造されたものがアジアで販売、提供され、
知的財産権を取得している企業は
被害を受けています。
日本では知財の訴訟
制度が高度化しているとはいえ、対外的には、周知しているとはとても思えません。
他方、シンガポールでは、知財ハブ構想を立ち上げ、アジアの知財の中心にしようという話も聞いております。国内で幾ら法
整備を進めても、近隣国で
模倣品が多く流通するようでは、
知的財産の
考え方すら崩壊しかねません。
模倣
被害の
被害件数や額は示されていますが、
被害額を回収できたのでしょうか。取り締まりの
状況、相手国に対する対応を
お尋ねいたします。
地理的表示保護をすることで
農業の六次
産業化が促進されると言われていますが、
加工度が上がれば上がるほど
地域との
結びつきは薄れていくし、
加工度が上がれば逆に
市場性が上がると言われています。この矛盾で、どうして六次
産業化が進むのかわかりません。
海外では
模倣品がつくられています。法律の
制度の運用は
農林水産省が行うのでしょうが、損害賠償の
申請や取り締まりは誰が行うのでしょうか。本場は
日本であっても
第三者が他国で
商標登録をして権利をとってしまっている事例が一時期問題になりましたが、
地理的表示の
保護制度では、国が責任を持って相手国に対応するということでよろしいのでしょうか。
お尋ねいたします。
また、
我が国の知財紛争解決
制度の
情報発信と、アジアの新興国において、
日本の企業が国内で知財権の取得ができるのと同じように、各国への支援や
環境の
整備に
取り組みを実施していることは承知していますが、実態は、縦割り行政で支援が進められていて、特許庁の所管する権利化の過程に特化するばかりで、
知的財産権に係る紛争解決、法執行の中核を担う裁判所の手続
整備や能力強化を
対象としないものが大半と言われています。
知財ハブ構想を立ち上げているシンガポールでは、司法省が中心に、
知的財産権の権利化過程と裁判所などでの紛争解決、法執行とを
一体的に政策立案しているとお聞きしますが、
我が国は、今回の
地理的表示の
法案でも、知財権の一部に位置づけられているのにもかかわらず、所管が
農林水産省となっています。これで、
模倣品をつくり続けている国と対峙できるのでしょうか。
お尋ねいたします。
日本においては、私的独占の禁止及び公正取引の
確保に関する法律の第二十一条では、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法または
商標法による権利の行使として認められる行為は、独禁法の適用除外と定められています。
しかし、著作権法等による権利の行使と見られるような行為であっても、
競争秩序に与える
影響を勘案して、
知的財産保護制度の
趣旨を逸脱し、または同
制度の
目的に反すると認められるような場合まで、同条で言う権利の行使と認められる行為とは
評価されない場合があるとの判断をしています。
公正取引
委員会が示した判断で、今回の
地理的表示として
農林水産物を
保護することは、該当しないということでしょうか。これに抵触するおそれのあるものは
保護の
対象にならないのか、
お尋ねいたします。
日本弁理士会では、
商標の定義について、次のような提案を行っています。
他の産業財産権法と比較しても、特許法、実用新案法、意匠法は、その
保護対象の本質をそれぞれ定義規定において
特定しているのに対し、
商標法では、
商標の本質である識別性がその定義に含まれていない。これは、産業財産権法全体から見ても整合性に欠けていると言わざるを得ない。
国際的にも、TRIPs
協定や多くの国や
地域において
商標の定義としてその本質的機能である自他
商品役務の識別性を含めており、
日本の
商標法のように、識別性を定義に含めず
保護対象を限定列挙している規定は、見当たらない。
識別性を定義すれば、現実の
商標と法文上の
商標との乖離を解消することができ、
保護対象が法文上明確になり、立体
商標制度の
導入、新しいタイプの
商標の
保護対象への追加など、必要が出てきてから初めて個別具体的に
商標を定義することなく、
多様化している
保護対象にも柔軟に対処可能となる。さらに、国際的にも調和がとれた規定となる。
こういうものです。
識別性の定義の明確化をする
考えはあるのか、
お尋ねいたします。
地理的表示の国際的
保護に関して最も多くの
議論を呼ぶものの
一つになっているのが、普通
名称化の問題と言われています。普通
名称化されたかどうかの判断は
商標法の原則に従って行われ、
商標制度には、既に
商標登録されている呼称も含めて、
商標の普通
名称化を防ぐことができないと言われています。
訴訟を起こすのにも多額の費用がかかりますが、今回の法律に基づいて国がどこまで
登録者のサポートをするのか、
お尋ねいたします。
我が国においては、包括した法
整備、法律ごとにばらばらに所管する監督官庁に対して、知財を国家戦略の位置づけとするならば、所管庁を
一つにする
考えがおありか。
今回
提出された
農林水産省において、
農林水産物、
食品に係る
地理的表示の
保護の
対象は
農林水産物等に限定されており、あらゆる
産品やサービスを
対象とすることができません。
地理的表示のさらなる積極的
保護が望まれる中で、他の
産品やサービスに
対象を広げていく
考えがおありか、
お尋ねいたします。
さらに、同会は、
商標権の問題を提起しています。
使用により識別力を獲得した
商標については、一度
登録されてしまうと、その後は、使用、不使用にかかわらず、不使用取り消し審判等が提起されない限り、
商標権が存続してしまう。
国際的に見ても、米国、
EU、イギリス、ドイツ、フランスなど多くの国が、
登録後に識別力を喪失した
商標登録を無効、取り消す
制度を採用している。
登録後に普通
名称化した
商標の取り消し、無効
制度を設けていない国は、中国と
我が国のみであります。
したがって、事後的に識別力を喪失した
登録商標の取り消し、無効審判
制度の創設が望まれる。
こう
指摘していますが、政府はどのようにお
考えか、
お尋ねいたします。
また、
地理的表示の
保護の法律と
商標法との調整規定を設けるべきと
考えますが、
お尋ねいたします。
さらにです。
国際
商標登録出願の手続、審査に相当の時間を要するため、通常の出願
商標の
登録後に国際
商標登録出願が
登録になる、いわゆるマドプロサブマリンの問題が
指摘されています。
日本以外に
登録後異議
制度を
導入している国は、全体の一割にすぎません。TPPでは、出願
商標に対する
登録異議申し立ての機会と
登録商標に対する取り消し請求の機会を設けることが義務づけられています。したがって、
登録後異議
制度を採用している
我が国の
商標制度がTPPの要請に合致するか否かは、疑問であります。
一旦設定
登録という行政処分がなされた
商標登録に対し
登録異議申し立てがあったとしても、朝令暮改のごとく、その判断を覆すことが困難なことは理解できるところであるので、より妥当な判断がなされるためにも、設定
登録の前に
登録異議申し立てが望まれる。
また、
商標権の異議申し立て
制度は、中国や韓国では
商標権設定
登録前、
我が国では
商標権設定
登録後。査定系審査の処理期間は、
我が国の特許が約十六カ月、意匠、
商標が約七カ月。中国では、専利が約十二カ月、
商標は明らかでありません。韓国では、特許が約十カ月、意匠、
商標が約七カ月と、違いがあります。中国では期間がはっきりしない。
こう
指摘もされています。
商標権
登録後異議
制度と
地理的表示の
保護も、同じように、
登録前に変更して知財の
保護に当たるべきと
考えますが、
我が国の対応を
お尋ねいたします。
一度
商標登録をしてしまうと、
申請人の申し出がない限り、今の
制度では、ほとんど取り消しになりません。不使用
商標が極めて多いのが、
我が国の
商標制度の現状です。
このような不使用
登録商標が多数現存することは、
第三者による
商標選択の自由を阻害するものと
考えます。
商標法第五十条第一項に基づく取り消し審判の請求件数は、ここ数年、一千五百件程度で、取り消し率は約八〇%です。しかし、不使用取り消し審判によって取り消される不使用
登録商標は、
登録件数の〇・一%程度にすぎません。
この実態から、不使用取り消し審判の利用が促進され、不使用
登録商標の減少が図られるような方策をお
考えなのか、
お尋ねいたします。
以上で
質問を終わりにいたします。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣林芳正君
登壇〕