○村岡敏英君
日本維新の会、村岡敏英でございます。
会派を代表して、ただいま
議題となりました
農業の担い手に対する
経営安定のための
交付金の
交付に関する
法律の一部を改正する
法律案と
農業の有する
多面的機能の発揮の
促進に関する
法律案について質問させていただきます。(
拍手)
今議論を始めようとしているこの法案は、必ずや
農業の大改革につなげなければなりません。
今、
農業は、このまま衰退していくのか、それとも成長
産業へ変革していくのか、岐路に立たされています。
国会の中には、変化を望まない抵抗勢力の議員もいるでしょう。しかし、我々維新の会は、既得権益にしがみつく抵抗勢力にひるむことなく、
農業を、国際競争力のある成長
産業へと脱皮させ、真に、
農業者、農村
社会の
発展のために、大改革を
推進する原動力となります。
さて、
安倍総理の、第一次及び第二次政権における、
農業への言及について振り返ってみます。
第百六十六回
国会の施政方針演説では、「
地域の主要な
産業である
農業は、新世紀の戦略
産業として大きな可能性を秘めています。意欲と能力のある担い手への
施策の集中化、重点化を図ります」と述べられました。
さらに、第百八十五回
国会の所信表明演説では、「成長する
世界の食市場への農水産物の輸出を戦略的に倍増し、一手間かけて付加価値を増す六次
産業化を進めます。 これらによって、今後十年間で、
農業、農村全体の所得倍増を目指してまいります」と宣言されました。
その言葉どおりであるとすれば、
農業の大改革を
推進していくという強い決意を我々維新の会と共有されていると期待し、以下、具体的な質問に移らせていただきます。
日本は、米の価格を維持するために、需要と供給のバランスに鑑みて、減反及び生産調整の政策をとりました。減反開始は一九七〇年です。
しかしながら、現実には、その翌年から一九八三年にかけて、約千三百四十万トンもの米余りが生じました。これらの過剰米に対して、
国民の税金を三兆円もかけて処理せざるを得なくなったという結果に追い込まれてしまいました。
さらには、WTOでミニマムアクセス米を輸入することとし、それに対する対策で、実に、六兆円を上回る税金投入を余儀なくされてしまいました。
この間、大きな予算を投入してきたにもかかわらず、農家の所得は下がり続け、今や、
農業従事者の平均年齢は六十六・二歳です。まさに、現在の
日本の
農業は厳しい現状にあり、このままいけば
日本から
農業が消えてしまうとも言える、大変な岐路に立たされていると思います。
しかし、我々は、自立する国家を実現するためにも、
農業が非常に大きな位置を占めていると強く認識いたしております。今こそ、
日本の食文化を守る
農業を、
産業として再生していかなければなりません。
では、なぜ、毎年二兆円以上の予算をかけながら、
農業が、魅力ある
産業にならなかったのでしょうか。
実は、一九七〇年代には、農産物の輸出額で、
日本は、ドイツ、オランダ、アメリカとほぼ同じだったのです。ところが、ドイツ、オランダ、アメリカは、当時、生産技術や
農業機械の
開発によって飛躍的に
農業生産高をふやしていく中、自国の農産物を
世界に輸出するという戦略をとりました。現在、これらの国の農産物輸出額は、飛躍的に伸びています。
一方、
日本は、
日本の一番強みである米について、国内市場だけを見て、減反政策に踏み切りました。成長を目指す
産業であったならば、当然、
世界市場を見据えた
農業政策を展開しなければなりません。しかし、そうしなかったために、
世界市場でおくれをとってしまったのです。
日本の
農業がこれまで衰退した最大の原因は、選挙のたびごとに政策を変えてきたからではないでしょうか。つまり、
農業政策が、その場その場の選挙の事情に振り回され、
農業者の、国に対する信頼を失わせ、競争力を失わせてしまったのです。
農業の大転換を進めるためには、戦後農政の総括が必要であるのではないでしょうか。
安倍総理、
林農林水産大臣は、戦後の減反政策、生産調整の政策についてどうお考えなのか。なぜ、今、生産調整の見直しをしなければならないのか。御
答弁をお願いいたします。
次に、
日本の
農業の将来像について質問します。
このたび、二つの法案が
提出されました。
一つは、
経営安定のための、いわゆるゲタと言われる
交付金と、いわゆるナラシと言われる
交付金を、
対象者の
要件を見直して
交付するという法案です。もう一つは、
農業者が共同で取り組む
地域活動のコストに着目した支払い制度、中山間地や
環境保全型農業に対する直接支払い制度の創設等の法案です。
いずれも、個々の政策としては、否定するものではありません。しかしながら、
農業がどの方向に進んでいくか、はっきりと方向性が示されていない点で、大いに問題があります。一体、どのように将来像を描いているのでしょうか。
我が党は、
農業が成長に向かうには、大きく、七つの視点があると考えています。
まず、一つ目は、食文化を、
世界市場を見据えて、輸出
産業にする。
二つ目は、全国一律の
農業政策を、気候や土壌や生産技術に鑑みて、適地適産の政策を打ち立てる。
三つ目は、企業参入による
経営感覚を持ち、六次
産業化を目指す。
四つ目は、若者にとって魅力のある
産業にする。
五つ目は、農協の
機能を進化させる。
六つ目は、観光
産業との融合です。
そして、忘れてはならないのが、
日本の
環境を維持するために、中山間地の
農業は、
環境保全として考えるべきであるということです。
以上七つの視点から考えると、いわゆるゲタ、ナラシという対策は、今現在の
農業の対策にとって、それによって将来どのような
農業が実現されるかという視点がありません。
また、後者の法案では、初めて
日本型直接支払いという取り組みを
法律的に位置づけるという意義はあるでしょう。
しかし、重ねて言いますが、いずれも、
農業の将来像をどのように描いているのかが見えてこないのは明らかであります。
本日
議題になりました二つの法案によってどのような
農業の将来像を描いているか、
安倍総理、御
答弁をお願いいたします。
次に、成長
産業への戦略について質問します。
日本の
農業が衰退したのは、輸入がふえ、自給率が下がったことが原因という主張があります。裏を返せば、
日本の
農業は、規模が小さく、競争力がないので、関税が必要だということです。
しかし、
世界第二位の農産物輸出国オランダは、農地面積が百九十万ヘクタールで、
日本の農地面積の三分の一しかありません。それにもかかわらず、
農業輸出は約十一兆を超えています。
規模の大小だけでは語れないということです。最も重要なのは、市場のニーズをつかみ、
経営感覚を持ち、常に挑戦し続けることなのです。
フードバレーと呼ばれているオランダの中心地区には、大学とその他多数の公共、民間の農食品研究センターの拠点があり、六十万人以上が食品製造、研究、貿易に従事しています。知識と企業家精神が相互作用して、価格決定力を持ち、オランダの
農業は成長
産業へと
発展しています。
以上のことから、オランダのように、企業家精神ある
農業者が価格決定力を持ち、
農業が
産業化するにはどのような対策が必要だと考えているか、お聞かせください。
次に、
農業が魅力ある
産業へ転換するための戦略について質問します。
農林水産委員会で、我が党同僚の岩永裕貴議員が、現在、
農業高校の卒業生は二万人、その中で、
農業につくのは七百五十人、五・二%しかいないという状況を指摘しました。
魅力ある
産業には、何も言わなくても若い人たちが集まってくるものであります。それが、
農業の場合、将来像が描けていないために、魅力が感じられないので若い人たちが就農してこないのではないでしょうか。
そこで大事なのは、新しい世代の
農業者の姿をどのようにつくっていくかということであります。
将来の
農業を支える若い人たちに、IT化を初めいろいろな
農業の最先端の知識を得てもらう取り組みを、ぜひ行わなければなりません。十五歳から十八歳という大事な時期に
農業高校で学ぶ人たちのために、
農業は成長
産業だ、これから伸びていくんだと本当に感じられる、
農業の教育プログラムをつくらなければなりません。そこには、思い切った予算も投入しなければなりません。
ここで、もう一度、第百八十三回
国会、施政方針演説の言葉を紹介させていただきます。
攻めの
農業政策が必要です。
日本は瑞穂の国です。息をのむほど美しい棚田の風景、伝統ある文化。若者たちが、こういう美しいふるさとを守り、本当に希望の持てる強い
農業をつくってまいります。
私は、IT化や
農業ビッグデータなど最先端の技術を取り入れて若者に魅力ある
農業を目指してこそ
日本の
農業は強い
産業になると思います。将来に、若者に対する対策が見えてきません。ぜひその点をお答えください。
総理、この農政の大改革には、冒頭に申しましたように、抵抗する勢力も根強くあって、あつれきも生じれば、痛みも、汗も流さなければなりません。
我々維新の会は、これまでの選挙目当ての
農業政策に決別し、真に、
農業、農村
社会の
発展のため、
農業の大改革を目指してまいります。
日本民俗学の父として名高い、あの柳田国男氏は、戦前の農商務省に入って、農政官僚の仕事に従事したことがありました。そのとき、柳田国男氏は、
日本は農国なりという語をして
農業の繁栄する国という意味ならしめよと主張しました。
一世紀以上も前の言葉ですが、この柳田国男氏の言葉は、現在もそのまま当てはまります。ぜひ、
日本を、
農業の繁栄する国にしようではありませんか。
安倍総理、この
農業の大改革にどれほどの決意をお持ちか、ぜひお聞かせください。
最後に。
世界の人口は、今世紀半ばに九十億を超えると予想され、経済
発展に伴う新興国の食の改善とあわせて、今後、大幅な食料増産が必要となります。国内市場のみでなく、
世界規模の食料事情を見据えて
農業政策を決定していくことが重要です。
そして、
日本にとっても、
農業を成長
産業にできなければ、
日本のふるさと、将来の展望は開けません。
我々維新の会は、
農業の成長
産業化で農村に新たな人々の参入を呼び起こし、田園からの
産業革命を起こして、ふるさとを再生する、
農業の
発展なくして
日本の将来はあり得ないとの強い意思を持つことを述べて、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕