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太田参考人 西村法律事務所の弁護士の
太田でございます。
本日は、本
委員会にお招きをいただきまして、
意見を申し述べさせていただく
機会を頂戴いたしまして、まことに光栄に存じております。
私は、
企業法務を専門としておる
法律実務家でございますので、その立場から、今回の
会社法改正に関して
意見を申し述べさせていただきたいと思っております。
お
手元にA4の横置きの資料をお配りしておるかと思いますので、全体的にそれに沿った形で
意見を申し述べさせていただきたいと思っております。
まず、全体的所感でございますけれども、今回、
内閣提出に係る閣法二二号の
会社法改正法案でございますけれども、
我が国の
コーポレートガバナンスを大きく前進させるものでございまして、非常に高く評価できるものではないかと考えております。
全体的には、
平成五年商
法改正、これは
社外監査役の
選任の義務化等が盛り込まれた
改正でございましたが、それから約二十年ぶりに
規律を
強化する。これまでの間、ずっと規制緩和が続いてきたわけですが、その間、
対応が少し積み残されていた部分の
規律を
強化するという
意味で、大きな
意味があるものと思っております。
主として、今回、
コーポレートガバナンスの
強化と
親子会社の
規律について
改正がされているわけでございますけれども、
コーポレートガバナンスの
強化に関しては、
監査役制度の
強化が限界に来ている中で、
社外取締役の
活用を中心に、
取締役会の
監督機能を
強化するという
改正がされているものと
理解をしておりますし、
親子会社の
規律に関しましては、
多重代表訴訟の導入等を初めとして
規律がされたということで、画期的ではないかと思っております。
特に
多重代表訴訟は、アメリカや香港ぐらいでしか認められておらないところを、
我が国が世界に先駆けてこういう
制度を導入するということで、非常に
先進的なものとして高く評価できるのではないかと思っております。
次に、「
社外取締役の
選任「準」義務化」というタイトルにしておりますけれども、これは今回、
法案の
提出に当たりまして、
東証の方で
社外取締役の
選任の努力義務
規定を盛り込むことといたしましたり、それから、
法案の附則では二十五条で、二年後の
見直し、これは
社外取締役の
選任義務化等を含めて
検討するとされているわけでございますけれども、
社外取締役を置くことが相当でない
理由の開示等を含めて、全体的に見ますと、
選任の義務化こそされていないものの、事実上、
選任を促していく方向に誘導するという
意味で、準義務化と言っていいような
状況になっているのではないかなと思っております。
ここで、今回、閣法二二号と議員
立法で出されております
衆法一五号の対立点となっております、
社外取締役の
選任の義務化の是非について、
一言意見を述べさせていただきたいと思います。
三ページ目でございますけれども、
監査役会設置会社が
我が国で非常に広く普及しているわけでございますけれども、
海外の機関
投資家の方からは、モニタリングをする存在としての
監査役には代表
取締役の
選解任ですとか
取締役の
報酬について投票権がないというところが、モニタリングの
実効性という
意味から若干の
懸念を持たれているところでございます。世界の趨勢は、
監督機関が
業務執行者に対して人事権等を背景にモニタリングを行う
モニタリングモデルというものが大勢を占めておるわけでございますので、
モニタリングモデルを
我が国でも普及させていくという
意味でも、
社外取締役の
選任の義務化というのは大きな
意味があるのではないかなと思っております。
これに対して、
人材が十分確保できないのではないかという御
意見もあるやに伺っておりますけれども、
社外取締役の主なミッションは、
経営者への助言というよりは、むしろ、業績が不振の、それから何か不祥事等があった場合の
経営者の更迭というところが大きな
役割ではないかと思っております。有事の御
意見番という存在であろうかと思っておりまして、その
意味では、事業の
内容に精通していることよりも、ある種のコモンセンスと、
経営者が任にたえないというときに
意見を申し述べる勇気が必要ということでございましょう。その
意味では、
選任の適格者というのはそれなりにおるのではないかなと思っております。
また、今回、
監査等委員会設置会社という第三の道も開かれることになりまして、この中で、
監査役に、事実上、代取の
選解任や
取締役の
報酬についての投票権を付与するということになっていますので、この
監査等委員会設置会社に
監査役会設置会社が移行することはかなりハードルは低いと思っております。その
意味でも、
選任の義務化について、これもかなりハードルは下がってきているのではないかなと思っているところでございます。
次に、諸
外国の動向を見てみますと、アメリカ、イギリスでは、
取締役会の過半数が
独立性を持った
取締役であるということが必要であるとされていることはよく知られたことでございますけれども、実は新興国においても、例えばお隣の韓国では、資産二兆ウォン以上の
上場会社については、
取締役会の二分の一以上かつ三名以上が
社外取締役であることが必要とされておりますし、インドでは、昨年
成立いたしまして、ことしの四月から
施行されている
会社法におきまして、
取締役会の三分の一以上が
独立取締役であることが必要というふうにされております。ある
意味では、新興国でも、こういう
独立取締役を
取締役会のかなりの部分入れていくというのが趨勢になっているところでございます。
こういった中、五ページ目でございますけれども、
我が国の
上場企業におきましても、
会社法改正の
議論を受けまして、最近では、
社外取締役の
選任というものが急速に進んでいる
状況にあるというふうに
理解をしておるところでございます。
例えば、昨年の八月末現在では、
東証一部
上場企業では、六二・三%が既に
社外取締役の
選任を済ませておるところでございまして、さらにその中で、三〇・四%の
企業というのがもう既に
社外取締役を複数
選任している、こういう
状況にあるわけでございます。
対象を全
上場企業に広げて見た場合でも、全
上場企業のうち、五四・二%が既に
社外取締役を
選任しているという
状況でございます。例えば、
ベンチャー企業が中心のマザーズ
上場企業でも、六五・二%が既に
社外取締役を
選任しているということでございますので、ある
意味では、
社外取締役の
選任をそろそろ
法律で義務づけることも可能な
状況になってきているのではないかなというのが私の感想でございます。
最後に、
社外取締役の
選任以外の
改正項目について、二、三、私の方から所見を申し上げさせていただきたいと思っております。
少し技術的なテーマであるわけでございますけれども、今回の
会社法の
改正法案の中でも、大規模な第三者割り当て増資に関する
規律の
強化ですとか、不公正ファイナンスに関する
規律の
強化というものが盛り込まれているわけですけれども、もう
一つ、エクイティーファイナンスに関しては、ライツオファリングと呼ばれます、これは、非常に大ざっぱに申し上げると
株主割り当て増資に近いものでございまして、
株主の権利の希薄化を招かない形での資金調達方法として欧州各国では広く普及している方法でございますけれども、これを利用しやすくするための
改正が含まれているところでございます。
現在ではこのライツオファリングを実施するまで大体約二・五カ月程度かかっているところを、一カ月程度にまで短縮できるというものが、今回の
内閣提出法案の中に盛り込まれているわけでございます。
ただいま、ライツオファリングを日本でも普及させるべきだという声が前々からある中でございますけれども、現状、やはりこの期間が長いということで、これを実施してる件数、二十三件ということでまだ少のうございます。
そういう
意味では、今回の
改正の中で、ほかの
改正項目、
ガバナンス等に関しては、それなりに
施行までに準備期間を要するというところはあろうかと思いますけれども、このライツオファリングの実施の部分については、
法制審議会での
議論の際にもほとんど反対論はなかったというふうに
理解しているところでございまして、このライツオファリングの利用を容易にする
改正の部分については、ここだけでも、ほかと切り離して
施行期日を早めるべきではないかというふうに思っております。
それから、あともう
一つですが、
法制審議会で
決定をされました、金商法上の公開買い付け規制に違反した者による
議決権行使に対する差しとめ
請求制度の創設、これは、かつてライブドアがToSTNeT1を使ってニッポン放送の
株式を三五%買い付けた例について、公開買い付け規制をかけなくていいのかという
議論があったところでございます。
そのときに、ある種のエンフォースメントの
議論として、刑事罰が科されるような状態にならないとほかの
株主の側で対処ができないというのは問題ではないかということで、
法制審議会で
決定された要綱の中にはこの差しとめ
請求制度が入っていたと
理解をしておりますが、これは、残念ながら、今回、内閣法制局による法
案審査の際に項目ごとドロップされたというふうに
理解をしております。
法制審で要綱として
決定されたものが項目ごと削除されるというのはかなり異例でございまして、今回、幸いにもといいますか、附則の二十五条の方で二年後の
見直しということが盛り込まれておりますので、少なくともこの件につきましては、二年後の
見直しの際には再考すべきではないかというふうに思っている次第でございます。
以上で私の方からの
意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)