○遠山
委員 公明党の遠山清彦でございます。
本年も、昨年に引き続きまして、
法務委員会理事として、また公明党の
法務部会長として、与党の側から
谷垣大臣をお支えすることになりました。本年もよろしくお願い申し上げます。また、
委員長もよろしくお願いいたします。
まず、資料の一番でつけさせていただいております、後で言及をさせていただきますが、昨年の夏、八月に
法務委員会の海外視察がございまして、石田前
委員長を団長とした視察団の一員として、一週間ほどアメリカ合衆国に行かせていただきました。
首都ワシントンDCとロサンゼルスの二つを回りまして、大変貴重な経験をさせていただきました。FBIの本部を訪問したり、軍警察あるいはロス市警などの捜査現場の視察、また連邦地裁の
裁判の見学、それからカリフォルニア州立刑務所の中の視察等々、普通の訪米ではまず行けないような現場に参りまして、丁寧な
説明を伺って、
日本の
司法制度のあり方と比較しながら、本当に勉強になりました。
ここで、改めて、本当にこのすばらしい視察日程を調整いただいた石田前
委員長を初め、
委員部や
調査部の職員の皆様、また、現地でもアテンドしていただきましたけれども、
法務省並びに外務省の職員の皆様に心から感謝を申し上げたい、このように思っております。
さて、昨年の訪米で私どもが、特に私
個人としても一番衝撃を受けた施設が、
法務大臣、御存じかもしれませんが、ディランシー・ストリート財団という民間団体の取り組みでございました。
きょうお配りをした資料の一枚目は、恐縮ですけれども、私が視察の直後に書いたメルマガから抜粋をしたものでございます。
このディランシー・ストリート財団、DS財団と略してありますけれども、一枚目の三段落を見ていただきますと、これはサンフランシスコに本部を置く受刑者に対する
社会復帰支援施設でございまして、まず、政府からの補助金を一切受けずに運営をされております。しかも、驚いたことに、この施設の運営というのは、この施設に入所して更生した元受刑者
たちがしている。
奥野副
大臣、後で御
答弁いただきたいと思います、副
大臣も一緒だったんですけれども、私
たちに対応してくれた方は男女二人おられたんです。その次の段落に少し詳細が書いてありますけれども、男性の方がデイブさんという方なんですけれども、この人はこの施設に来て八年なんですが、その前二十五年間、薬物中毒者、薬物売買人でありまして、刑務所に送られること四回といういわば絶望的な境遇にございました。それから、女性のローラという方も
説明してくれたんですが、彼女ももとは重度の薬物依存症でありまして、刑務所に二回送られているという方でございました。しかし、私どもが会った昨年の時点では、二人とも大変立派な
方々でございまして、施設の取り組みを
説明していただいたわけでございます。
次のページを見ていただきますと、この施設がどういうルールで運営されているか、彼らの答えを私の方で要約させていただいたわけですが、特に二段落目と三段落目をちょっとごらんいただきたいと思います。
二段落目には、政府から補助金をもらわずに、しかも元受刑者だけで運営されている施設がどういうふうに運営されているかといいますと、まず、これはおもしろいんですが、ディランシー・ストリート財団のことを、例えばカリフォルニア州立刑務所に入った受刑者全員に、向こうは
法務省と言うか何と言うかわかりませんけれども、向こうの政府当局が、こういう財団がありますということを通知するんですね。
受刑者全員に通知をした上で、受刑者の中で、刑務所じゃなくてそういう
社会の中にある施設で自分は更生したいという意思を持った人は、手紙を書きます。この財団に手紙を書いて、手紙を受け取ると、もちろん手紙の段階で少しスクリーニングをかけるんだろうと思いますが、財団の方から、この人は可能性があるかもしれないという方に面接に行きます。当然、刑務所も協力します。
面接をして、そこで本人の意思が強いということを判断すると、理由書をつけてディランシー・ストリート財団が
裁判所に行きまして、
裁判所判事の許可を受けて、その対象の受刑者の残りの刑期、ですからまだ受刑中なんですね、だけれども残りの刑期を
裁判所の許可で保留してもらって、保護観察か仮釈放という状態に法的にして、その受刑者を刑務所からこの財団の施設に移すわけです。
ここからはルールがいろいろあるわけですが、そういう形で入った入所者は、誰でも最低二年間、施設にいなければいけないと決めております。
三段落目、次の段落を見ていただくと、ちょっと細かいことですけれども、ルールがいろいろあります。例えば、施設にいる間は、携帯
電話、インターネットアクセスは全部禁止ということですので、携帯
電話で誰かと話すということは禁止をされておりました。有線の
電話は中にありまして、一定の条件のもとで使える。ただ、
電話は使えるんですが、これはルールが厳格にありまして、入所してから十五カ月間、みずからの子供に連絡をしてはいけない、それから配偶者や恋人との接触も十八カ月間は禁止。これを破ると、即、施設から退去ということだったと思います。
さらに、この財団の特徴は、入所している間に
教育をしておりました。我々も見てきたんですけれども、学校のような授業をして、基礎的な
教育が欠けている方には
教育をする。それから、職業訓練もして仕事も与え、仕事については報酬を出しております。職業訓練は十五種類。
仕事も、ここに書いてありますけれども、引っ越し会社とか装飾会社をやりまして、済みません、報酬はないですね、無報酬で働くかわりに財団の収益はあり、そのかわり、入所者の居住費、食費、
教育費を全て無料にするということ。
我々が訪問したロサンゼルスの施設の入居者は現在百九十名程度でございまして、成果としては、二年間ここにいて出所した人の再犯率は三割を割り込んでいて、
裁判所とか警察機関から高い評価を得ている。
ちなみに、
大臣、私、アメリカにいるときに、ディランシー・ストリート・ファウンデーション、財団というキーワードでインターネットで検索したんですね。一番最初にヒットしたのは、びっくりしたんですが、こういう受刑者のための自立更生施設としてのホームページではなくて、サンフランシスコで最も規模が大きい引っ越し会社の一つとしてインターネットに出てくるんですね。
私
たちが訪れたロサンゼルスの施設は、もともとたしかヒルトンホテルだったところを財団が買い取って、そこの中を変えて施設にしていまして、
大臣、これは、元受刑者というか、はっきり言うと、まだ刑期のある受刑者を入れているにもかかわらず、誰も警官がいないんです、周囲に。だから、本
人たちがその気になれば幾らでも道に出ていけるような、かなりフリーな状況の施設であったんです。
ここの施設の
人たちは何の仕事をしていたかというと、装飾会社。クリスマスのときに町をデコレーションする仕事をしておりまして、我々、地下に行って、八月に行ったんですけれども、ことしの冬のクリスマスにはこういうデコレーションをやるんだと。結構、大企業から仕事を受注しておりまして、何千万円の売り上げになるような大きな仕事をしていたわけでございます。
このように、
日本ではちょっと
考えられないんですね。まだ刑期がある受刑者を、
裁判所の許可を得て、厳格なルールのもとに受け入れて、その
人たちに職業訓練を施して、かつ、実
社会で働いてもらって、それで二年間過ごして、最終的には実
社会に出ていくんだけれども、再犯をしない、こういうことをしていたわけでございます。
そこで、せっかくですから、私、一緒に同行していただいた
奥野副
大臣に御
答弁いただきたいと思うんですが、副
大臣は副
大臣で
個人の御感想があるかもしれませんけれども、私は、この財団に行って、
日本でもこういう民間主導の取り組みが出てくれば、やはり再犯率を下げることができるのではないかというふうに思いました。
もちろん、民間の団体ですから、
法務省とか政府が人為的につくることはできないわけでございますが、例えば、今、
日本にあるいろいろな規制を見直すことで、もう少し今までよりも自由な発想で、つまり、
法務省が管理している矯正施設、刑事施設ではないところで、本人の自立更生の意思が非常に強くて、そして真面目に働くような
方々を予備段階的に受け入れてやるようなことを、ある程度民間にやらせるというようなことも
考えてもいいのではないかと思ったわけでございますけれども、
奥野副
大臣の御
答弁を伺いたいと思います。