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奥山恵美子君 御
紹介をいただきました、
仙台市で
市長を務めております
奥山と申します。
きょうは、このような
発言の機会をいただいたことを大変うれしく思っているところでございます。
先に私の職歴を若干述べさせていただきますと、
仙台市の職員として三十数年勤務をいたしまして、その中で、
教育委員会では生涯学習課長、また
教育長を務めさせていただいたということがございます。現在は
市長として、
政令指定都市という形での基礎
自治体の業務を預かっているところでございます。
それでは、まず、今回の
政府案について思うところを述べさせていただきたいと思います。
昨年度の中教審の
議論、答申、また
政府案の与党合意によります修正等を経た上で、
現行の
教育委員会制度におきます問題点を踏まえて策定されたものと私は認識をしておりまして、
教育行政におきます
責任の
明確化、また迅速な
危機管理体制の構築を図る、そうしたことの一方で、
教育の
中立性、継続性、また安定性を
確保できるようにということで、
教育委員会を
執行機関として存続させる案となったことにつきましては、
評価をいたしたいと考えてございます。
大宗、そのような前提のもとに、三点について私の
意見を申し上げさせていただきたいと存じます。
まず一点目は、新
教育長についてでございます。
法案によりますと、
教育委員長と
教育長を一本化し、
教育委員会の最高
責任者を新
教育長に統一したということでありますけれ
ども、これは、
責任の所在の
明確化や緊急の
事態に迅速に対応する観点から、
評価できるものと考えてございます。改めて、新
教育長の
任命責任を私
ども首長もしっかりと認識しなくてはならない、そのように考えているところでございます。
現行制度を振り返ってみますと、
教育行政の
最終的な
責任の所在がどこにあるのだということになりましたときに、いささか不明瞭な点があると私自身はこれまで考えておりました。現在におきましても、
教育予算の措置権は
首長にございます。また、
教育行政の
事務を実質的に取り仕切っております
教育長を選任して
議会に提案するのも
首長でございます。こうしたことを考えますと、
最終的な
責任は
首長が持つべきと考えてまいりました。
このことは、
改正案におきまして、
教育行政の
最終責任者となる新
教育長を
首長が直接任免するということで、これまで以上に明確になったものと私は受けとめ、今後の
制度の
運用の中で新しい力を発揮することを期待しているものでございます。
その中で、
教育の
中立性を
確保し、
教育行政を適切に進めていくためには、
教育委員会は、改めて
首長との間でしっかりと情報を共有し、緊密な連携を図っていくことが極めて重要と考えております。
私
ども政令指定都市は、御承知のとおり、教員の人事権を持っております。この教員の人事権を持つかどうかということは、
教育委員会行政の中で非常に大きなことであると私は考えております。なぜなら、自分たち自身で決定した人事を行うことによって、
学校の教職員のしかるべき
体制を
確保し、また、そこで何か問題が起こったにしても、自分たちの人事の結果であることについてきちんと
責任をとる、こういう一貫性が図られると思うからでございます。
そういうことで、
政令指定都市におきましては、人事権を持つとともに、指導主事を初めとして
事務局の
体制もこの間充実を図ってきておりまして、こうした
首長と
教育委員会の適切な
関係を構築するという
意味では、双方がこの力を持っているものと考えているところでありますけれ
ども、基礎
自治体の中には、御承知のとおり、
町村など、
事務局の
体制を堅固なものにするには人員的にも大変厳しい規模の
自治体というのもございまして、そういう
意味では、今回の
制度がそれぞれの基礎
自治体の規模に応じてどのように
運用されていくかということについては、なお
課題があると考えているところでございます。
次に、二点目として、
総合教育会議について述べさせていただきたいと思います。
法案によりますと、
教育施策全般に係る重要事項や緊急事項を
首長と
教育委員会が
協議する、このようなことでございます。
首長と
教育委員会が、お互いの考えを知ることとともに、情報を共有しながら
教育施策を真摯に話し合うということには、大きな意義があると考えております。
本
法案は、従来から、例えばマスコミ紙上などでも、この間の法改正をめぐってさまざまに取り上げられてまいりましたけれ
ども、
首長と
教育委員会のそごを少しでも埋めていくという
意味で、この
総合教育会議が
一定の役割を果たすことが可能である、また、そうあるべきであろうと私自身は思っております。
しかしながら、
主宰いたしますのが
首長でありますことから、
会議において取り上げる重要事項を
首長の裁量によってのみ決定したり、これは余りあってはならないですし、そうそうあるとは思いませんけれ
ども、万が一にも、
首長が、強引に事を進め、
調整を独自に行ったりすることにより、実質的に
教育委員会の意思が無にされたり、もしくは
教育委員会の機能が
形骸化するようなことがあってはなりませんので、こうした
教育の
中立性が担保されるように、この
運用につきましては、国において今後
一定の
方向性を示す、もしくは、
総合教育会議がスタートします前に、それぞれの
自治体において、規模や地域の実情等を踏まえながら、
議論をする事項や
会議の
運営方法について、それぞれの
自治体の
議会などであらかじめ
議論を深めることが必要ではないかと思っているところでございます。
また、それぞれの
自治体におきまして
議会に提案する議案や予算案につきましては、
議会との
関係から、提案前に決定したかのような
協議が
総合教育会議で行われることは、まことにふさわしくないと考えるところでございまして、それらを考えますと、
会議のテーマとその
開催の時期、また具体の項目等についても配慮をしていく必要があろうというふうに受けとめております。
一方、
教育委員会側にとって、この
会議は新たな試みということになろうかと思いますけれ
ども、これを自分たちへの制約と捉えるのではなく、
首長への、また、広くは有権者、市民の皆様への
教育施策のアピールの場として、高い問題意識を持ち、この
会議を上手に活用することが求められるというふうに考えております。
首長と
教育委員会の
両者間の活発な
意見や考えのすり合わせの場となって、広く市民、国民の方にとっても
教育に関する知見の啓発の場となることを期待したいと思っているところでございます。
続いて、大綱について述べさせていただきたいと思います。
各
自治体は、
教育の振興のための施策に関する基本的な計画として
教育振興基本計画を策定しているところでありますが、本市におきましては、私と
教育委員会が、さまざまな
意見交換を行いながら
調整を図り、共通の認識を持ってこの策定に当たっているところでございます。
総合教育会議において新たに策定することになります
教育の振興に関する施策の大綱がどのような位置づけになるのか、既に策定しております
教育振興基本計画との
関係がどのようになるのか、私はいささかまだ不明瞭だと考えておりまして、大綱のレベルや
内容によりましては、
教育振興基本計画と重複することになりかねないと思っております。
国におかれましては、
教育振興基本計画との
関係を整理された上で、大綱に盛り込むべき事項など、策定に当たっての具体的な
内容を例示的に示す必要があるのではないかと現時点で考えてございます。
以上、
政府御
提出の案について三点申し述べさせていただきましたが、引き続き、民主党、日本維新の会の方から御
提出いただいている
法案につきまして、若干の私の考えを述べさせていただきたいと存じます。
この
法案は、
首長が
教育行政の
責任者であるということでありますし、また、
教育長は
首長の指揮監督のもとに
教育に関する
事務をつかさどるとしているわけでございますが、
首長の補助機関である
教育長は、
首長が直接
任命をし、任期中においても解職できることになっておりますようで、さらに、任免については
議会の
同意を必要としていないということでございます。
こうしたことにより、
責任の
明確化や迅速な
事務の
執行等が期待されることが大きくございますけれ
ども、一方で、
首長の
意向が
教育行政にダイレクトに強く反映されるようになり、
制度の
運用次第によりましては、
首長が
教育行政を一方的に進めることにつながりかねない危険性はあるものというふうに受けとめております。
選挙で選ばれました
首長、私もその一人でありますけれ
ども、これが
民意を反映した
教育行政を推進するという狙いそのものは間違ってはいない面があると思いますが、
選挙の争点は、御承知のとおり、えてしてその時々におきまして市民の関心が最も高いテーマによって戦われることが多く、必ずしも
教育が争点となるものでもないわけでございます。
教育というものは長期的な視点に立って行われるべき営みであることを考えますと、この
制度については、私は、やはりさまざまな危惧の念が払拭できないでいるところでございます。
また、
法案におきましては、
執行機関である
教育委員会を廃止するということでありまして、
教育行政の
チェック機関として、
首長の処理する
事務の実施
状況を
評価、監視し、勧告を行う
教育監査
委員会を設置することとしておられます。
そういう
教育監査
委員会でございますけれ
ども、これは、
首長の
教育行政に対する
チェック機関としての機能を持つという点で、
首長と
議会、また、
首長と監査
委員との
関係に、若干、屋上屋を置く感がするというふうに私は受けとめているところでございます。
なお、この
法案におきまして、県費負担教職員の
任命権を市
町村に移すことについて検討を加え、必要な措置を講じるという点が触れられているわけでございますが、先ほど申し述べさせていただきましたように、県費負担教職員
制度に関しましては私自身問題意識を持っておりまして、私の問題意識と共通する
課題を取り上げておられるという点で、私として
評価をするものでございます。
今後、県費負担教職員
制度の問題と
教育行政の
あり方については、国会におかれましてもなお検討を進めていただきたいと願っているものでございます。
以上、私からの
意見を申し述べさせていただきました。
ありがとうございます。