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大森参考人 どうも、おはようございます。
本日は、
地方教育行政制度の
改革のための
二つの
法案に関し私見を申し述べる機会を頂戴し、まことにありがとうございます。
さて、今、
大阪市という名前も挙がりましたですけれ
ども、
大阪の方では、
条例に基づきまして、
首長の関与とそれから
責任の
明確化という面で、ある
意味、国に先行するようなことを、
現行制度の枠内ではありますが、開始しているところでございます。
具体的には、
総合教育会議に近いような形で、
首長と
教育委員の
協議の場を経て
教育振興基本計画というものを策定するということが、
条例に基づいて行われております。
そこで、今、
橋下市長という御
発言もありましたですけれ
ども、さぞ、
教育委員、
教育委員会というのは無
意味な存在になっているんじゃないかというふうに、報道を通じてしかわからない
全国の方はお
思いだと
思いますけれ
ども、全くそれは事実と逆でございます。
橋下市長が私
どもに一貫して言ってきていることは、
全国のほかの
教育委員会がどうであろうが、ここは、
法律どおり委員が
合議制の
機関としてあらゆる
権限と
責任を担ってくれということをずっと言ってきておりまして、私
どもも、それに応えるべく、
委員として
任命されて以来やってきております。
ただ、これは大変なことでございます。書類は夜中に読んで、それに基づいてメールを
事務局に返すとか、
会議は毎週ほぼ朝から晩までかかるというふうなことをやっております。ちょっと
非常勤の枠を超えております。
何が言いたいかというと、こういうことを
全国の
教育委員会に求めることというのは、ほぼ無理、
制度論として無理ということです。よく、大所高所の
議論だけすればいいとか言うんですけれ
ども、それは
行政を知らない人が言うことでございまして、現実問題は、重要なことというのは、神は細部に宿るといいますけれ
ども、ディテールにありますので、きちんと読んで、きちんとチェックして、きちんと、場合によっては
事務局ではなくてというか、結構多いんですが、我々
自身が
提案するというふうなことをやらないと、とてもじゃないけれ
ども、
責任は果たせません。
ということなんですけれ
ども、では、無理だと、そうなったら、
合議制のこの
委員会にかわって誰が
法律上の
権限と
責任を担うべきかということでございますけれ
ども、それは
教育長であってはならない、
首長でなきゃいけないということですね。なぜか。この
改革の発端というのは、もう先ほど来話に出ていますけれ
ども、これは
大津市の
教訓でございます。
大津市の
教訓というのは何か。
いじめの事案に関する
第三者委員会が
報告書で何と言っているかということを皆さん
思い出していただかなきゃいけないと思うんです。そこで言われていることは、
教育委員会が「
組織防衛に走った」とか「
隠蔽的行為」とか、こういう言葉がつづられております。ここで言う
教育委員会というのは何か。先ほどの
新藤参考人の
お話にかかわりますが、これは実は
事務局でございます。
事務局を率いるのは
教育長でございます。
教育長、
事務局に問題があったわけです、
隠蔽等々。
そういう中で、今般の
改革というのはそこから始まった
議論のはずなのに、どうして
教育長の
権限と
地位を
強大化するという答えになるんでしょうか。
問いの立てとして、問題はそういう
教育長率いる
事務局の
隠蔽体質、そういう
問題意識で始まったはずなのに、その答え、
答案は
教育長の
強大化です。それはおかしいんじゃないですか。私は
大学教員ですので言わせていただけば、そういう試験の
問いにそういう
答案を出す学生には、零点をつけるしかないと
思います。
では、
法律上の建前、建前というのは重要ですからね、本来、
日本は建前と本音が離れていることが多過ぎるんです。ですから、建前どおりの
法律を次はつくっていただきたいという願いがあります。それは
首長をおいてほかにない、
教育長に渡すというわけにはいかないということです。
その面では、先ほどの
新藤参考人と同じでしょうか、民主と
維新の会の
議員各位が
提出された
法案においては、そこが、
首長が
執行機関で、要するに、
教育長はその指揮監督を受ける補助
機関ということで
明確化されているということで、すっきりしております。
他方、
内閣提出法案につきましても、私
ども大阪市
教育委員会では、与党合意の前に要望書を事前に出しております。一定評価あるいは歓迎させていただいております。
総合教育会議の
仕組み、そこで
首長が大綱ですか、策定するということが明定された
法案でございますので、ある
意味、
大阪のやり方に近いということもございますし、そこは評価させていただきたいと
思います。
ただ、今申し上げましたように、新たな
教育長は、これはすごいですね。「会務を総理し、」
委員長になかった言葉まであるんです、会務を総理というふうなこと。形式的には
合議制の
委員会であり続けるという建前ですけれ
ども、これは実質的には
教育長が独任制の
執行機関じゃないかというふうな、そういう存在になるんじゃないかというふうに危惧しているところでございます。
具体的には、
教育長を監督する人間が、あるいは
組織がないんですね。要するに
教育委員というのは、言ってみれば格下の同僚みたいな存在になっちまいますから、
首長は、
任命はできるかもしれないけれ
ども、その後は糸の切れたたこみたいなものですから、めったなことで首にできませんので、もちろん、指揮監督権というのは
首長にはないということです。
ですから、
内閣提出法案は一定評価しながらも、この
教育長の
強大化、これは何とかしなきゃいけないという、最低限、
任命した
首長の任期よりも超えて
教育長の任期が続かないように、そういう
規定というのを、今までの
法律にはその手のものはなかったかもしれませんが、ぜひ検討いただきたいなというのが私の
考えでございます。
大阪で起こったことというのは、自慢できることばかりではございません。あの桜宮高校の暴力行為がございました。あそこで指摘されたことも、
大津の話だけして
大阪の話をしないわけにいきません。学校と
教育委員会事務局の各段階において報告がとまっちゃうんですよ、体罰、暴力行為の。最終的に処分
権限、
人事権を持っているのは我々
教育委員ですので、そこに上がってこないんです。そのことが弁護士さんのチームによって明らかにされました。
ですから、そこです。体罰はだめですよと言ってもだめで、何か起こったら必ず報告させる、報告しないことの方が厳しい措置が待っているというふうな形にその後しております。
さて、現在の
教育行政の問題というのは、
いじめや体罰とか、それの
隠蔽の問題だけではございません。それも大事でございますけれ
ども、最大の問題は、民意が反映されないばかりに、例えば、学力を向上させてほしいとか、静かな環境で勉強できるような学校にしてほしいというそういう切実な
保護者や
市民の願いというものよりも、先ほどの
新藤参考人の話にも関連すると思うんですが、どちらかというと、
エリート教員、あるいは、そういった
教育界の出世している人
たちの
お互いに困らないような
教育行政それから学校
運営というものになりがちだということ、これが一番困るわけです。さらには、これは
教育界、学校
現場でのイノベーションというのを阻んでいるということが言えます。
時間の方がもうかなりあれですのでちょっと先を急ぎまして、ただ、
隠蔽だとか閉塞感があるというのは、
現場は今の
システムで決してみんなハッピーじゃありません。ハッピーなのは多分一部の人
たちだけなんですね。ですから、それを何とか変えてあげたいと
思います。
ただ、この問題は、
教育界だけが特殊なんじゃないと
思います。オリンパス
事件を見ても、閉鎖的な
組織というのは、大体、村社会化、共同体化して、本来のその
組織目的よりも、
自分のボスとか
自分自身の保身に走っていくということですので、そこを変えていく、
教育界を風通しのいいものにしていく。
その際、コーポレートガバナンスというのを、近年の傾向としては執行と監督を分けるという傾向が出てきておりますけれ
ども、それに倣えば、現在出ている
二つの
法案につきまして何か接点があるんじゃないかというふうに
思います。つまり、失礼ながら、どちらの
法案においても、いわゆる
委員の役割というのが私は余りぴんとこないんです。
先ほど、
内閣提出法案については、
教育長より格下の同僚と言いました。それから、民主、
維新の
法案につきましては、評価しかやらない割には何か大げさな
仕組みで、行革の時代にちょっとどうかなということがございます。チェック役という役割は明確なんですけれ
ども。そこで、むしろ評価役以上にグレードアップして、
内閣提出法案だって
権限がある
委員会としているわけですから、監督
権限にしたらどうですか。今までと同じ執行では役割を果たせませんよ。
教育長の言うことにうんうんと言うしかないですよ。
ですから、そこを接点に、なぜ私がそんなことを申し上げるかというと、とにかく今の時点で
考え得る最良の制度をこの機会につくってほしいと願う者の一人だからでございます。そうしないと、この知識社会を生きる今の
子供たち、未来の
子供たちのため、また、
日本の経済、政治が世界に
地位を築いて向上させていく上でその基盤ですので、ぜひとも、これまでの違いを超えて審議を尽くされて、最善の制度設計で合意に到達されるように願っております。
御清聴ありがとうございました。(
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