○
中川(正)
委員 私は、
提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
少し長くなるので恐縮ですが、案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
著作権法の一部を
改正する
法律案に対する附帯決議(案)
政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一 我が国の「知の再生産」や「
日本文化の創造と伝搬」に貢献してきた
日本の多様で豊かな
出版・活字
文化を、グローバル化やデジタル化が進展する新しい時代においても一層発展させ、著作者の
権利を保護しつつ、多様な
著作物を多様な
出版形態でより多くの国内外の利用者に届けていくことが重要であることに鑑み、真に実効性ある
海賊版対策の実施など、本法により拡充された
出版権制度の更なる利用促進に向けて必要な
対策を講ずること。
二 我が国が
世界に誇る
出版・活字
文化は、著作者と
出版を引き受ける者との間の信頼関係に基づく企画から編集、制作、宣伝、販売という一連のプロセスからなる
出版事業がその
基盤にあることを踏まえ、本法によって
設定可能となる
電子出版に係る
出版権の下でも従前の
出版事業が尊重されるよう、その具体的な
契約及び運用の在り方を示して関係者に周知するとともに、その実務上の効果について一定期間後に具体的な検証を行い、必要に応じた見直しを検討すること。
三
電子出版の流通の促進を図るためには、
契約当事者間で適切な
出版権設定を行いつつ、関係者の協力によって有効な
海賊版対策を行うことが必要不可欠であることから、これまで
出版権設定が進んでこなかった雑誌等、
複数の
著作物によって構成される
著作物などについても
出版権設定が可能であることについて周知に努めるとともに、具体的な
契約モデルの構築について関係者に対する支援を行うこと。また、物権的に細分化された
出版権が
設定された場合に、当該
出版権が及ばない形態の
海賊版が流通した場合には効果的な
海賊版対策を行うことができないため、効果的な
海賊版対策を講ずる
観点から適切な
出版権が
設定されるよう推奨すること。
四 効果的な
海賊版対策を講ずる
観点からは、著作者が
契約締結時において
電子書籍を
出版する意志や計画がない場合であっても、
紙媒体の
出版と
電子出版等を合わせて一体的な
出版権の
設定がなされることが推奨されるが、その後、
電子書籍の
出版を希望するに至った場合において、著作者の意図に反して
出版が行われず放置されるといったいわゆる
塩漬け問題が生ずることのないよう、適切な
対策を講ずること。
五
電子的な
海賊版については、ひとたび
インターネット等で
公衆送信が行われればもはや完全に
差し止めることは困難であり、甚大な被害が生じてしまうことから、
電子出版に係る
出版権しか持たない
出版者においても、
違法配信目的で
複製がなされた場合には、第百十二条第一項の「
出版権を侵害するおそれがある場合」としてその
段階で差止
請求を行うことができることを
出版者に対し周知すること。
六
出版権者及び
著作権者による
海賊版対策の取組の状況を踏まえ、
紙媒体の
出版についてのみ
出版権の
設定を受けている
出版権者であっても、
インターネット上の
海賊版又はDVD等の
記録媒体等による
海賊版に対し差止
請求を行うことができる
契約慣行の改善や「みなし侵害
規定」等の
制度的対応など効果的な
海賊版対策について検討すること。
七
海賊版については、
日本国外での被害が圧倒的多数であることから、その
対策強化を図るための国際的な連携・協力の強化など、海外での不正流通取締
対策に積極的に取り組むとともに、
出版物の正規版の海外流通の促進に向けて官民挙げた取組を推進すること。
八 本法によって、多様な形態の
出版権設定が行われる
可能性があることから、
著作物における
出版権設定の詳細を明らかにするため、将来的な利活用の促進も視野に入れつつ、
出版権の登録・管理
制度等を早急に整備するため、具体的な検討に着手すること。また、
当事者間の
契約上の紛争予防及び紛争が発生した際の円満な解決の促進を目指し、
出版契約における裁判外紛争解決手段(ADR)を創設すべく、必要な措置を講ずること。
九 教科用拡大
図書や副教材の拡大写本を始め、弱視者のための録音
図書等の作成においてボランティアが果たしてきた役割の重要性に鑑み、障害者のための
著作物利用の促進と円滑化に向け、
著作権法の適切な見直しを検討すること。特に、障害者の情報アクセス権を保障し、情報格差を是正していく
観点から、障害者
権利条約をはじめとする国際条約や関係団体等の意見を十分に考慮しつつ、障害の種類にかかわらず全ての障害者がそれぞれの障害に応じた形態の
出版物を容易に入手できるよう、第三十七条第三項の
改正に向け、速やかに結論を得ること。
十 視聴覚的実演に関する北京条約や関係団体等の意見を十分に考慮しつつ、俳優、舞踊家などの視聴覚的実演家の
権利に関し、
契約及び運用の在り方や法制上の在り方も含め検討を行うこと。
以上であります。
何とぞ御賛同くださいますようお願いを申し上げます。