○瀬尾
参考人 日本写真
著作権協会の常務
理事をしております、
写真家の瀬尾でございます。
きょうは、このような発言の機会をいただきましたことにまず感謝申し上げます。
私がまず幾つか申し上げたいことがきょうございますが、まず、
権利者として
写真家団体から来ておりますけれども、私が申し上げますことは、
写真家としての
権利者だけではございません。この間、四年、五年、たくさんの
権利者団体、さまざまな分野の方たちともお話し合いをし、また、
出版さんともお話し合いをいたしました。その結果として、今我々が提案されている条文に対してどのような考えを持っているのか、また、それに付随しまして皆様に一言御説明させていただきたいことをまとめさせていただきました。
まず最初に、私は写真
著作権協会の法人化から十数年、ずっと常務
理事をしておりまして、
権利者をできるだけまとめて、いろいろなことをしていこうということに努力しておりましたけれども、今、集中処理機構の執行役員、それからクール・ジャパンのプロモーションをする責任者の立場を持って、つまり
権利者から発信するところまで、かなり広い範囲でいろいろなものを見せていただいております。その上に立った
意見も入っているというふうに御
理解ください。
まず、今回のお話で一番不幸なことは、対立。
出版者と
著作者が対立している、そしていろいろな利害が対立していて、外国のプラットフォーマーと
日本の
出版も対立している。非常にわかりやすい二元論で最初から語られてしまったところに私は大きな不幸があったと思います。
つまり、これは対立するものではなくて、連携していく、どのように協調していくかということが重要なテーマであったにもかかわらず、悪と善のような、または侵攻と防御のような言われ方をしてしまった、ここに一番大きな問題点があるのではないかなというふうに思っております。
私は、たとえ外国のプラットフォーマーであっても、これからは融和をする
時代に入ってきていると思いますし、例えば、ウィンドウズのパソコンそれからマッキントッシュのパソコンを使わずしてどのパソコンが今
日本で動いているのか。でも、そのパソコンが動いていても、
日本はきちんと
日本の
文化をつくり、そして新しい次の未来へも進もうとしています。そういうことは融合だと思います。
ですので、そういった二元論ではなくて、私は、どのように協調して、どのように連携しながら
日本の
文化を発信していかれるのか、よりよい
日本文化をつくっていくのかということが主眼ではないかなというふうに考えております。
次に、具体的なお話として、この条文ですが、私、非常に最初のころ、三省デジ懇と呼ばれた三省合同の懇談会から隣接権ということが提案されて以来、
文化庁で
電子書籍の流通と
利用の円滑化に関する
検討会、これが十四回、それからさらにその後、
平成二十五年からは
審議会の
著作権分科会
出版関連小委員会で九回、非常に精力的に
関係の皆さんと一緒に議論させていただいたと思っております。
正直申し上げますと、
権利者として、もしくは
著作者として、
出版者と利害が相反する
部分があることは確かでございます。ただ、
出版者と
著作者はパートナーであるということもまた真理でございます。つまり、どこを譲り合うかということが今回の焦点でした。
そして、それについて非常に非常に細やかでかつデリケートな問題を、この四、五年、本当に鋭意お話し合いをさせていただいたと思います。また、それは誠意を持ってさせていただいたとここで申し上げてよろしいかと思います。
ただ、その結果としまして今回条文が出てまいりましたけれども、この条文で全ての
出版物をカバーできるような
契約が可能になるというふうなことは、
法律によってではなくて、
当事者同士の
信頼関係に基づいた細かな調整によって成るものだというふうに思っています。
つまり、全てを
法律で担保して、全部安心感でリスクテークを全くしない
契約というのはあり得ないですし、例えば、今回の議論の中でよくわかってきたことの一つに、
出版物についても各分野で大変違います。
例えば写真。写真というのは、全面にしてしまえば、それは版も何もございません。ただ一枚の写真です。ただ、一ページの文書をつくるためには、構成者、
著作者が何度も何度も、それこそ夜を徹してつくり上げるような一ページもございます。例えば
漫画のように、
著作者が、こま割り、いわゆる画面全てにまで描いてしまうようなつくり方をするものもあれば、そうではないものもある。
その多様な
出版物に対して、では一本の
法律でいけるのかといったときには、やはりそうではなくて、大枠は
法律に基づきますし、
出版権を
設定しましょう、ただし、その細部に至っては、
個々で、これは力
関係もございますし、強い
著作者、弱い
著作者、たくさんいろいろございます。その中できちんとお互いの
信頼関係で細かく詰めることで、初めて
両方が納得できる状態で物をつくり出せるというふうに考えております。
ですので、今回は、どこまでを大枠とするのかということで話し合いを行ってきました。そして、その微妙な微妙な
部分の一番大きいコンセンサスとしてできたのが今回の条文だというふうに私は考えております。
そういうこともございまして、このプロセスによって生まれた今回の条文というのを、私としては、できるだけ速やかにこれを骨子として、第一歩として成立をお願いしたいというふうに思います。
ただ、あともう一つ申し上げたいことは、この
電子書籍の立法は第一関門であって、これが目的ではないと思っております。
それは何かというと、
電子書籍の流通というのが最初に言われたときに、いかに
日本で
電子書籍を流通させて世界に発信するかということを
検討した上で、その最初の一番目として出てきたのが、まずはこの
権利が必要であるという議論だったというふうに伺っております。
そのような中で実際に私が思いますのは、やはり今の
日本の立場で考えますと、これはちょっと今回の
電子書籍の
趣旨から外れますが、
電子出版の
権利創設は、ナショナルアーカイブ、それから、孤児作品の資料をきょうつけさせていただきました、まさにこれを今喫緊の課題として
日本が施策としてやっていくことで、
文化政策でもあり経済政策でもあるそこに入れる、いわゆる本丸に入れるというふうに考えております。
ヨーロッパもアメリカもこの問題に取り組んでいます。そして、その中で非常に強いリードを今受けております。いち早く
日本もこの問題を端緒として、そのナショナルアーカイブをどのように使っていって流通させるのか。
それともう一つ、それこそ
コンテンツの埋蔵金と言って申し過ぎではないと思いますが、
著作者不明の
著作物が五割とも六割ともあると言われています。これは使えないまま眠っているわけです。これをきちんと流通させて発信する、それが、
日本の
文化、ひいては経済政策、全てにとって私は重要な問題であるというふうに考えております。そのためにまずここを通らなければいけないということがあるというふうに考えております。
最後に一つだけつけ加えさせていただきますと、今お話ししているのは、今
政府で行っていらっしゃるクール・ジャパン政策、ジャパン・ブランド、
日本がいかにアジア、世界に
コンテンツを皮切りにして、そしていろいろな流通を図り、この前、知財が過去最高を更新したという輸入の報道もございましたけれども、もっともっと
日本は世界に発信して、経済的にも
コンテンツを
利用していくべきではないかなというふうに考えております。
そのような大きい施策を後ろに控え、ここの
電子出版権をまず御審議いただいて、一刻も早く、
日本の
文化、そして知財、
コンテンツが
海外にも
評価され、国内でもちゃんと流通し、かつ、豊かな創作を生む創作者たちが自由に物をつくれるような
時代を迎えていただきたいというふうに考えます。
このことについてぜひ御審議いただき、前向きにかつ喫緊な課題として御
検討いただければというふうに思います。
以上でございます。(拍手)