○林(宙)
委員 結いの党の林
宙紀でございます。
本日は、私が
最後の
質疑者ということですので、あと少しおつき合いいただきたいと
思います。
きょうは、私は漆について少々お伺いをさせていただきたいと
思います。
実は、かなりたくさん
質問をしたいと思っているんですが、きょうは二十分ということなので、できるだけ簡潔にまとめていきたいなというふうに思っております。
そもそも漆ということできょうお伺いしたいなと思ったきっかけは何かというと、私は宮城県の人間ですけれども、震災で大きな被害を受けました宮城県の南三陸町というところで、これは全くたまたまなんですけれども、ちょっと視察で行った先が、農地も被害を受けたんですけれども、そこの所有者の
皆さんが、今までと同じような
作物をつくっていくことをもうやめようということになってしまい、たまたまそこを
支援していた、
地元に宮城大学という大学がございますが、その学生さん
たちが、何かかわりにできるものはないのかということで、先生方と一緒に、その農地を使って漆を栽培していきましょうというようなことを始めました。南三陸町の長清水というところなんですが、いろいろな縁があったので、そこに私もたまたま
参加をさせていただいて、私自身も、先日、三月なんですけれども、漆の植樹というところに
参加をさせていただいて、マイ漆が今二本あるという状態でございます。これからは、これの生育を見守りながら、漆について
考えていきたいなと思っているところなんです。
ただ、いろいろ調べてみると、ああ、漆ってこんなにすごい材料なんだということを私自身初めて知ったところもございます。
ということで、今お配りした資料の一枚目に、本当はもっとあるんですけれども、簡潔にと言うにはちょっと多いかもなという量ですが、漆ってこんなにすごいんですよというのをざっと箇条書きでまとめてみました。写真には、
皆さんがよくごらんになっているであろう漆塗りのお重箱ですとかおわんですとか、そういった写真も入れさせていただきました。
全部
お話ししていると長くなってしまいますので、いろいろと抜き出したところだけで、最初に書いてあります、麻布などを漆で固める乾漆という技法がございますね。これは古来から、千年も千五百年も前からやられている技法なんですけれども、漆は、布を固める、しかも、その固めた布が非常に頑丈である、そういう特質があるわけでございます。
例として、奈良の興福寺に乾漆八部衆立像という、これは多分、
皆さん、社会科の資料とかで見たこともあるでしょうし、実際にごらんになった方もたくさんいらっしゃると
思います。有名なのは阿修羅像というもので、あの像の中はどうなっているかというと、布であの像の形をつくっているわけです。中身は空洞になっているわけなんですよ。ですから、非常に軽いんですけれども、実は物すごく頑丈です。
実際に、漆で布を固めて椅子をつくったりする実験というのは、結構過去にあったんですね。そうすると、本当に百キロぐらいの人を載せて実験したりとかしたらしいんですけれども、それでも全く崩れない。木材と同じぐらいの強度があるということもいろいろと証明されているんだそうです。
今は科学技術が進んでいますので、繊維強化プラスチックとかいうのがありまして、それは合成繊維を合成樹脂で固めるという技術なわけですが、昔から漆というものを使って、いわゆる天然繊維を天然樹脂で固めるということは
日本がかなり技術的にリードしてやってきた、そういう背景がございます。
ほかには、もちろん、接着剤として使えるとか、一番
皆さんにお薦めしたいというか、もう御存じの方は多いと思うんですけれども、非常に抗菌作用がある。殺菌作用があるんですね、この漆には。
よく、お寺なんかに泊まりで体験とか座禅修行とかに行きますと、朝、おわんでおかゆを食べて、そこに
お茶を注いで、
最後に拭いてお片づけをするなんということはあったりするんですけれども、あれ、よく
考えたらちゃんと洗っていないなと昔から、子供のころから思っていたんですよ。大丈夫なのかと思っていたんですが、そのとき用意されていたのは、随分使い込んだものでしたけれども、実は、確かに漆塗りのおわんだったんです。これは経験的になんでしょうけれども、漆に抗菌、殺菌作用があるがゆえに、余りごしごし洗わなくても非常に清潔に保たれているということなんですね。
そう
考えると、例えばお節料理なんかもそうですね。漆塗りのお重箱でお節を用意するというのは、昔ながらの家ではやっていたりすると思うんですが、これも、冬はなかなか雑菌が繁殖しにくいという環境があるにせよ、やはり漆の殺菌作用でもって、何日かお料理を入れておいても非常に清潔に保たれるということがあるのであろうということは、いろいろな学者さんの中でもう定説になっているというふうに伺っております。
ということで、いろいろとあるんですね。耐水性ですから、実は水回りに使うと大変よろしいとか、あと、ヨーロッパなんかでは、中世で、フレスコ画というんですけれども、白いしっくいの壁に絵を描くと、黒がなかなか黒くならないということがあって、あれは、白いしっくいの上に黒を塗っても、何か濃いグレーにしかならない、そういうことがあったらしいんですけれども、そのときに、
日本の漆に鉱物なんかを入れて黒くした、いわゆる漆黒という言い方がありますけれども、この深い黒に当時のヨーロッパは非常に注目したとか、そういうことがあるんだそうです。
最後に、ちょっと意外だったのは、非常に手ざわりがよくて、使っていくほどに味が出てくるというのはよく言われるんですけれども、プラスチックの、特に、色の濃い、黒いプラスチックの製品なんかに手をつけると、指紋がつくんです。この指紋を消すのに結構躍起になったりするときがあるんですけれども、実は漆というのは、人の皮脂というんですか、脂との相性がいいということで、指紋がつきにくい、こういう特徴もあるんだそうです。なので、最近は、デザインの最先端でもこれを使って、
皆さんお持ちでしょうけれども、例えば携帯電話、スマートフォンといったもののカバーをつくってみようとか、こういう
取り組みもなされているということで、非常に有用な材料ということなんですね。これは私も初めて知って、びっくりしました。
では、そんな漆の何がそうさせているのかというと、この下に書いた主成分ウルシオールという、まさしく漆が持っている機能だからウルシオールということで命名された化学物質だそうです。
ということで、おめくりいただいて、裏、二枚目になります。その中でも国産の漆というのは非常にすぐれているという
お話でございます。
参考までに、今言ったウルシオールというのが、
日本産だと、いろいろばらつきはあるんでしょうけれども、大体六割後半から七割ぐらいは漆の樹液の中に含まれているそうなんですが、これが中国産になると、平均して大体五%から一〇%ぐらい少ないんだそうです。六〇%前後と書きました。同じく、漆の生産が盛んなベトナム産というのがあるんですけれども、これはもっと低いです。三〇から四〇%程度だということになっています。かわりに、構造が似ているんですけれども、ラッコールというものが成分になっているんですが、先ほど言った抗菌作用ですとか固める作用というのは、ラッコールに比べたらウルシオールの方が圧倒的に強いんだというような
お話でございました。
ちなみに、
皆さんが恐らく好きであろうマンゴーも、これはウルシ科なんですね。それはただのなるほど
情報なんですけれども。
そんなわけで、特に私がお勧めしたいのが、抗菌作用というところなんです。京都に漆器工芸協同組合さんというのがありまして、そちらのホームページで公開されている一部の図がこの表でございます。ごらんください。MRSA、これはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌というものですが、そういう強い感染症を引き起こすような細菌、大腸菌、こういったものが、上に「対照」、下に「うるし」と書いてありますけれども、漆処理を施したものとそうでないものでは、全くもって六時間後あるいは二十四時間後の結果が違ってくるというようなことも実証されているんだそうです。
ということで、今は結構、お子さんが多い保育
施設ですとか、あとは介護
施設といった福祉
施設、それから住宅なんかでも清潔な住宅をということで、いろいろなところに適用されているということでございます。
その下の写真は宮崎県の中央保育園というところから使わせていただいているんですけれども、トイレの床、これは木材に漆加工をしたりとかして、これもまた清潔だ、あるいは園児
たちが遊ぶ木製のおもちゃ、木でつくったおもちゃ、ここにも漆処理を施して、お子さん
たちが変な病原菌に触れないようにということでなされているんだということでございます。
漆のすごいところというのを今かなり簡潔にしゃべらせていただいたつもりなんですが、そうなると、では、一体この漆というのはどのぐらい生産されていて、そもそも国内で賄えているんですかというところを国としてどのように
認識されているのかということで、まず、国内の消費量、それから国内
生産量、さらに輸入量等について御
質問申し上げます。