○玉木
議員 農業者戸別所得補償法案及びいわゆるふるさと
維持支払い三法案につき、その提案理由及び内容を
説明いたします。
まず、
農業者戸別所得補償法案についてであります。
我が国の
農業の現状を憂い、民主党を中心とした政権のもとで導入したのが
農業者戸別所得補償制度であります。その結果、
農業所得が回復傾向に転じ、
農家の皆さんからも高い評価を得てきました。
自民党に政権交代した後の一年間も含む四年間、何の変更もなく安定的に続けられてきた農政はほかになかったと思います。猫の目農政からの脱却を図り、
農家の予測可能性を高めてきた制度を、政権がかわったからという政局的な理由で変更することは、
生産現場に混乱を与えるものであります。この戸別所得補償制度を安定的な制度とするため、昨年六月、今般の法案を
提出した次第であります。
この
法律の最大の目的は、恒常的にコスト割れしている米、麦などの
生産を行う
農業者に対し、そのコスト割れ部分を補填することで、価格のいかんにかかわらず、再
生産可能な
農家所得を直接補償し、
農業経営の安定を図り、あわせて
多面的機能の
維持を図ることであります。いわゆる欧米型のダイレクトペイメント制度を参考にして導入した制度であります。
ただし、政府・与党案との大きな違いは、私たちは、麦や大豆などだけではなく、米の
生産についても恒常的なコスト割れが生じていると認識し、必要な
支援策を講じることとしていることであります。米については、国境
措置以外の
対策は不要だとする政府・与党案とは、根本的な考えが異なります。しかも、その国境
措置さえ守られるのかどうか、
農家は不安な気持ちで、今、TPP
交渉を見守っています。
もちろん、私たちも、
農業の構造改革を否定するものではありません。そもそも、
全国一律の
交付単価を導入することで、例えば、二ヘクタール以下の
農家については、
交付金を受けてもなお、
生産費と販売価格の差を埋め切れません。そのため、面的集積を通じて
生産コストの低減を図るという誘導策が制度の中に組み込まれています。つまり、戸別所得補償制度は、いわば静かな構造改革を促す制度となっております。
なお、米の固定支払いについては
生産調整を前提としておりますが、逆に言えば、
交付金を放棄すれば、
生産調整にかかわらず、今でも、幾らでも作付できますし、安くつくった米を幾らでも輸出できます。つまり、民主党を中心とした政権で戸別所得補償制度が導入されたことを機に、自民党が進めてきたいわゆるペナルティー型の減反制度については既に廃止をされており、いわば事実上の選択的な減反制度に移行しています。よって、安倍政権で四十年ぶりに減反制度を廃止したとの発言は、全く事実に反します。
次に、
農地・
水等共同活動の
促進に関する
法律案についてであります。
農村集落における共同活動は、
農業生産活動を
維持し、あわせて
多面的機能を
維持する上で不可欠であり、共同で行う水路や農道の保持に必要な費用について
支援することとしております。
ただし、本法案が政府・与党の日本型直接支払いと大きく異なるのは、私たちの案は、あくまで非
農家も含めた共同活動を
支援対象とし、農村コミュニティーの
維持、ふるさとの
維持を明確な法目的としていることであります。
これに対し、政府・与党案は、従来の
農地・水の制度の中から、
農家のみの団体でも
交付を受けられる新たな区分を切り出し、日本型直接支払いを創設したとしておりますが、私たちの案では、個々の
農家の活動によって
発揮される
多面的機能の
支援については、あくまで戸別所得補償制度などによって行うものと明確な整理をしております。必ずしも個々の
農家への直接支払い、つまりダイレクトペイメントになっていない制度を無理に日本型直接支払いと呼ぶことで、政府・与党案は、
生産現場に混乱を与えるとともに、制度や事務を複雑にする可能性が高く、問題があると考えております。
次に、中
山間地域その他の
条件不利地域における
農業生産活動の
継続の
促進に関する
法律案についてであります。
中
山間地域その他の
条件不利地域における
農業生産活動は、国土の保全等といった、金銭的には評価しにくい恩恵を国民にもたらしています。しかし、こうした
地域での
営農継続は他の
地域より困難であるため、その
生産条件の不利性に着目し、それを補正しようとするのが本
法律案の目的であります。
なお、私たちの案では、政府・与党案とは異なり、
支援の要件となる条件不利性について、単に傾斜の度合いだけではなく、分散錯圃の
状況など連担化の困難性などにも着目し、平地における条件不利地についても
交付可能な仕組みとしております。
最後に、
環境保全型農業の
促進を図るための
交付金の
交付に関する
法律案でありますが、これについては、有機
農業など自然環境の保全に資する
農業を推進するため、その農法の導入に要する費用を補填することとしております。
以上が、これらの
法律案の提案の理由及びその内容であります。
私たちは、私たちの理念に基づき、また、三年三カ月の与党時代の実績も踏まえ、
農家にとって、そして日本の
農業にとってベストだと思える案を
取りまとめました。
農家所得の向上や農村集落の
維持の観点からは、政府・与党案よりもすぐれているとの自負があります。
正々堂々、議論を行ってまいりますので、何とぞ、十分な審議時間を確保していただき、徹底した審議の上、可決していただきますようお願い申し上げ、提案理由の
説明といたします。