○野間口
参考人 三菱電機の野間口でございます。
昨年の三月まで産業技術総合
研究所の
理事長をさせていただいておりました。
このたびは、
独立行政法人改革について
意見を述べる機会をいただき、どうもありがとうございます。
民間の
研究開発や企業の経営、
研究開発
独法である産総研の
理事長をしました経験を踏まえまして、私の考えを述べさせていただきたいと思います。
総じて、今回の
改革が
独法制度の本来の趣旨に沿った形で進められていることに賛成でございます。特に
研究開発
法人につきましては、新たな
制度の
必要性を常々実感しておりまして、いろいろなところで
意見を発信させていただいておりましたけれども、今回、
中期目標管理法人、
行政執行
法人とともに国立
研究開発
法人の三つに分類して、それぞれの特徴を最大限に発揮できるような法
整備を目指そうということでありますので、大いに期待しております。
国立を名乗ることは、
研究所の職員の意欲の向上、それから一般社会の人が
研究所を期待を持って活用しようとする上でも、大変よい効果を発揮するものと考えます。
例えば、米国では産総研的存在の
研究所がたくさんありますが、アルゴンヌ国立
研究所、アルゴンヌ・ナショナル・ラボラトリー、再生可能エネルギーに関しては、国立再生可能エネルギー
研究所、ナショナル・リニューアブル・エナジー・ラボラトリーなど、ナショナルラボ、国の
研究所であると名乗っているわけでございます。
実は、産総研も、英語名ではナショナル・インスティテュート・オブ・アドバンスト・インダストリアル・サイエンス・アンド・テクノロジーと言っておりまして、外国の人に御理解いただくようにしておるわけですが、ならば国内向けも率直に国立を名乗ることが自然であり、
役割や期待を明確にするものだと思います。
低炭素への
取り組みなど、国を背負って世界の
ルールづくりに参加するとか、先進的なフロンティアの開拓競争などに携わる
研究、これが国立
研究開発
法人が取り組んでいるところでございます。
現在、世界は、もうこれは先生方、釈迦に説法でございますけれども、科学技術イノベーション競争の時代であり、先進国、途上国を問わず、国、地域間で競争しております。昔は南北問題というような表現がありましたけれども、今は、科学技術イノベーション競争の時代でありまして、新興国等の追い上げも厳しく、国、地域が入り乱れて世界的な競争をしているわけでございます。
また一方、現代社会は、科学技術の進歩によりまして大変な恩恵を日々我々は享受しておりますが、その反面、気候変動問題とか危険物質による被害などなど、地球規模の大きな難しい
課題に直面しております。
これらのような状況下での科学技術イノベーションの推進は、学者の先生方の知的好奇心主体の
研究に重きを置く大学や、利益確保を優先せざるを得ない企業の
取り組みだけでは不十分でありまして、公的な
研究機関も参加して、我が国の力を結集して進める形をとることが必要だと思います。
役割を全うし、成果を
最大化するためには、それぞれの
機関の特徴を生かせるような裁量の柔軟性を担保することが必要であると思います。
私は
理事長になりまして、すぐに職員の
皆さんといろいろ
議論しました。
独法化によって大変
改善されたところがある、マネジメントがやりやすくなった、資金の使い方がやりやすくなった、人材の招聘等もやりやすくなったなど、よい点を
指摘してくれました。したがいまして、過去の
独法化によるメリットはしっかりと
評価し、維持すべきであると考えます。
しかしながら、現在の
独法制度では、定型的な
業務を効率的にしていくための
組織を想定したつくりになっておりまして、先ほど宇賀先生の
指摘にもありましたように、
研究開発のように、長期にわたり試行錯誤を繰り返しながら世界最先端の知見を生み出していくというような
組織に対しては、必ずしも適したものにはなっておりません。
基本的なたてつけに問題があるように思います。かえって、効率化という所期の
独法化の狙いからも逸脱してしまうおそれがあるように感じておりました。
二、三の例を申し上げます。
国内外の人材活用、流動化に関して述べます。
産総研には優秀な人材がおりますが、全ての
研究者が世界的なノーベル賞級の
研究者になるとは限りません。しかし、ノーベル賞級ではないが、企業や地方の公設研に行くと相当の力を発揮してくれるという人材が多くおります。
そういう人材を産総研で応援して、各県の公設研の
研究者として活躍してもらうなどのことを考えますと、例えば、国の資金を地方の資金へ援用していいのかとか、
民間的センスでは出てこないような、いろいろな
課題が生じます。そういったことをしっかりと
説明して、問題がないような形で進めようといたしますと、その間にチャンスを逃して、せっかくの機会を逸するということも多々ありました。
また、ブレーンサーキュレーションという点で申しますと、特にアジアとの交流でいいますと、国のプロジェクトに、アジアの優秀な人材あるいはアジア国の礎となるような人材をチームに招聘することがありますが、プロジェクトが存在する間はそれでいいのでございますけれども、プロジェクト
終了とともに資金的に窮屈になりまして、
研究所の中でいろいろ非常に工夫、苦労をいたしました。
それから次に、調達について述べます。
調達の際の
問題点としては、先端的な立派な
研究が進展し、次のステップへの構想が成り立った際に、成果を具現化する、試作するための設備をつくることが多々あります。そのような場合でも、必ず相見積もりをとって競争入札にするという制約があります。そのための手間と時間の浪費、知的財産の競争でタイミングを失するなど、大きな問題を感じました。大きな時間的ロス、費用的なロス、成果喪失の問題などの影響が出てくると思います。
産総研では、先端的な
研究機材に関しましてたくさんアイデアが出ます。スピーディーに成果につながる
仕組みが必要ではないかと考えます。
それから、
研究力の
強化、経営の柔軟化についてコメントいたします。
自己収入の獲得、期中の外部からの収入、寄附などがありますと、それらを経営の現場に十分活用したいのでありますが、
現行制度では、むしろ次に獲得する予算が減るという
方向の力が働き、
研究の柔軟化、効率化という点で工夫して、それを生かすというインセンティブが働きにくい形になっていると思います。
無駄遣い防止は当然であります。しかしながら、獲得した資金で
研究をスピードアップさせ、結果として
研究費トータルの節約にもつながるということ、そういった工夫が
評価されるような
制度が望まれます。
それから、
現行制度では、
中期目標、
中期計画、年度計画、
評価結果について全て公開の
ルールとなっておりますが、
業務の
透明性から全て公開が必要な
法人もあると考えますが、先端的な
研究開発に関しましては、全て公開することが国益にかなうのかどうかという検討も必要かと思います。世界との競争ということで、公開のタイミングをそれぞれの
独法の工夫に任せるというような柔軟性も必要かと思います。
それから、実を言いますと、このようなことは
理事長のときにいろいろなところで申し上げたのでございますが、それは
理事長の裁量でできるという
指摘や、
理事長が勇気を持って決断すればできるという
指摘がありました。ただし、それを突破するには大きな労力と時間を要することも否定できません。
むしろ、成果の
最大化、経営の柔軟化、
研究開発のマネジメントの最適化などについてのさまざまな工夫がポジティブにインセンティブとして実感できるような
仕組みにする必要があると思います。今回はそれに近づいていると私は思っております。